読者の方々も何となく予想は着くかもしれませんが、オリ主の介入によって割を食うのは主にセイバーと桜です。
Fateルートはともかく、HFルートはオリ主君的に容認できないそうで。
セイバーが不遇になるのは士郎の護衛をオリ主君がするからですね。その上成長に必要な戦闘はきっちりやらせる。うーん有能(現時点で)。
少年が運命と出会うよりも以前に時間は遡る。
ある日、冬木市某所に白い少女の姿があった。人間離れした─事実純粋な人間ではないのだが─容姿や日本では基本的に見られない白銀の髪も相まって、「雪の妖精」という言葉が似合う少女だった。
街に1人でいるにも関わらず、少女は機嫌良く鼻歌を歌っている。もっとも、実際は1人ではないのだが。
のんびりと歩いていた少女だったが、ある人物を見つけて足を止める。視線の先には、ランニングをしているくすんだ黒灰色の髪をした青年がいた。
少女がいる側へと駆けてくる青年に、少女の顔が期待と嗜虐の笑みで歪む─が、少女はすれ違いざまに青年の手の甲を確認すると、ハズレかぁ、と呟いた。
「なーんだ、参加しない方のお兄ちゃんだったのね」
少女の声に、青年が足を止める。
「参加しないなら逃げなくていいの?…死んじゃうよ?」
只人であれば間違いなく困惑するであろう言葉を聞いた青年は、当然訝しげに振り向く─
「へぇ?心配してくれるのか?優しいもんだな、イリヤスフィール・フォン・アインツベルン?」
かと思いきや、振り向きもせずに堂々とした声で答える。見れば、心底愉快だと言わんばかりに口もとが歪んでいる。
これに驚いたのは少女─イリヤスフィールの方だった。アインツベルンからは、冬木市に住んでいる2人の切嗣の養子は魔術師ではなく、この黒灰色の髪の方─衛宮宗次に至っては、魔術のまの字も知らないと聞かされている。しかしこの様子では、魔術についての知識を持っているようにしか見えない。
イリヤスフィールの名前を知っているのは理解出来る。おそらくは切嗣が教えたのだろう。しかし、聖杯戦争については、魔術師ではない衛宮宗次は知る由もない情報であるはずなのだ。
(魔術師じゃないなんて嘘っぱちじゃない、役立たず)
少々出鼻をくじかれた形になってしまったイリヤスフィールだが、すぐさま立て直し、問いを投げる。
「へぇ?知ってたんだ?なら尚更逃げるべきなんじゃない?魔術師だったのは予想外だったけど…聖杯戦争に参加しないなら、ここで土下座して、無様に命乞いをするなら見逃してあげる。じゃないとほんとに死んじゃうよ?私のバーサーカーは最強なんだから♪」
嗜虐的な声音で言うイリヤスフィール。ここまで罵倒されたからには、流石に激昂するだろう、そんな意図を持って投げた言葉は、またしても予想外の返しを受ける。
「嬉しい申し出だが、断らせてもらおう。俺は易々と殺されるほど弱くないんでね。…それに私のバーサーカーは最強?ハッ、理性を失ってその技量を活かすことができないばかりか、ろくな武器も、必殺の宝具も持たない、ただの肉達磨に成り下がったヘラクレスが最強?…笑わせてくれるな」
─俺はもっと強い
このセリフには、流石のイリヤスフィールも激昂した。相手の話術に乗せられているとはわかっているが、全幅の信頼をおくバーサーカーをバカにされて我慢できるような質ではない。
「ッ!もう許さない!命乞いしたって助けてあげないんだからね!夜になったら覚悟しなさい、この世に生まれてきたことを後悔させるくらいに惨たらしく、じわじわといたぶってから殺してあげる!」
振り向いて激情のままに放ったセリフを背中に受けて尚、衛宮宗次は余裕を崩さない。
「そりゃあ楽しみだ。せいぜい最強のバーサーカーがやられた時のために、癇癪を起こしてみっともなく泣きわめく練習でもしとくんだな」
そのまま1度もイリヤスフィールの方を向かないまま、立ち去って行く衛宮宗次。残されたイリヤスフィールはあまりの悔しさに地団駄を踏むのだった。
一方、立ち去って行った衛宮宗次はと言うと。
(やっべぇ、煽られてカチンと来たからついつい煽り返しちまった…すまないイリヤ、許してくれ。あとバーサーカーも。UBWとHFのイリヤを守って戦うあんたは最高だったよ。肉達磨なんて言ってごめん。全バーサーカーで1番好きだよ…不味いな、流石にバーサーカーと真っ正面からやり合っても死にはしないだろうが勝つ自信はないぞ…どうしよう)
内心めちゃくちゃ後悔していた。彼は戦場ならともかく、命の危険がない状況なら煽り耐性の低い男だった。
ヒロインと初会話がこんなんでいいのかオリ主君…なおバーサーカーと真正面からやり合って勝てずとも負けはしないと言えるあたり冬木に出てきてからも逸般人化が止まらない。
今回短くてすみません。でもイリヤとの会話で1話使いたかった。兄貴との会話はもうちょい待ってください。特に力を入れたいところなので。
お読みいただきありがとうございました。
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