転生したら影の国に流れ着いてしまった件   作:辛味噌の人

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 アーチャー登場。
 オリ主君の介入によって何やら変化が…?
 どうぞ。


第5話 アーチャー・エミヤ

 ランサーと入れ替わるように現れた赤い主従。

 新たなサーヴァントの登場に、セイバーはもちろん、士郎も緊張感を高めるが、宗次だけは赤い男─アーチャーの顔をチラリと見ると、ふっと笑って槍を消した。

 

「剣を降ろせよセイバー。そこのうっかり娘は敵じゃないぜ」

 

「誰がうっかり娘よこの麻婆!…え?何?あんた魔術師だったの?」

 

「落ち着きたまえ、凛。化けの皮が剥がれているぞ」

 

「うるさいアーチャー!そうじゃなくて!そこの麻婆!質問に答えなさい!」

 

「誰が麻婆だ、誰が。…まあいい。とりあえず入れよ、飯の時間だ。詳しくは飯を食いながらでどうだ?」

 

「コホン、そうね。衛宮君も何がなんだか分からないだろうし、私も色々聞きたいことがあるからね。お邪魔するわ、衛宮君」

 

 コントじみたやり取りの果てに、どうにか話がまとまり、衛宮邸に入っていく宗次と赤い主従。取り残された士郎とセイバーは、困惑した表情で顔を見合わせるのだった。

 

 

 

 

 

 

「とりあえず座ってな、遠坂。アーチャー、手伝えよ。飯だ」

 

「私としては構わんが…いいのかね、凛?」

 

「いいわ、むしろお願いしたいくらい。そこの麻婆に任せておいたら、どんなものを食べさせられるかわかったもんじゃないわ」

 

「お前は俺にどんなイメージを持ってんだ?」

 

「筋トレ&麻婆愛好家の変人」

 

「うーん否定できない。まぁ安心しろよ。今日は普通のハンバーグだぜ」

 

「ありがとう兄さん」

 

「ダメでござる。お前は俺が忠告したにも関わらず遅れて帰ってきやがったので今日は断食でござる」

 

「そんなぁ!」

 

「えーと、マスター?私はどうすれば…」

 

「テメェも座ってなセイバー。ああ、アーチャーに襲いかかったりするなよ」

 

「失礼な!流石に私も時と場合はわきまえます!」

 

「どうだか。っと不味い、焦げる焦げる…」

 

「やっておいたぞ」

 

「ありがとアーチャー」

 

 ワイワイ、ガヤガヤ。衛宮邸の居間は、朝以上の喧騒に包まれていた。英霊2人に魔術師、逸般人にブラウニーが揃ってはさもありなん、と言ったところか。

 

「遠坂は士郎に聖杯戦争について説明しておいてやれ。現実逃避で若干幼児退行してやがる」

 

「わかったわ。でもアンタにも説明してもらうことは沢山あるんだからね!」

 

「ハイハイ。アーチャー、ちょっといいか?」

 

「なんだね?」

 

 凛が士郎にどもったり赤面したりしながら聖杯戦争について説明しているのを尻目に、宗次とアーチャーは食事の準備を進める。セイバー?ただのカカシですな。

 

 テキパキとハンバーグを焼きながら、宗次はアーチャーに小声で話しかける。

 

「やはり黙っておいた方がいいか?アーチャー…いや、()()?」

 

 宗次の問いかけに、アーチャー─エミヤシロウは驚きのあまり、持っていたじゃがいもを取り落とす。

 

「…なぜそれを」

 

「ハッ、俺は兄だぜ?弟の顔がわからねぇわけがねぇだろ?」

 

 不敵に笑う宗次の顔をしばし呆然と眺めたあと、エミヤはふっと肩の力を抜いた。

 

「はぁ…やはり兄さんには敵わないな」

 

「あたりめぇだ。兄より優れた弟はいない…なんてな。それよりなんだその話し方。遅めの厨二病か?」

 

「見たくもない現実を直視し続けて、その果てに抑止にこき使われる身になれば嫌でもこうなるさ」

 

「へぇ?なら後悔したか?正義の味方という願いは間違いだと、あの日の自分は間違っていたと思ったか?」

 

 ニヤついた表情から一転、真面目な顔になった宗次が問いかける。それに対しエミヤは─

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。どれだけ辛く厳しい、叶うはずのない、青臭い理想だったとしても─

 あの日抱いた、正義の味方になりたい、誰かを助けたいという想いが、間違いなはずないんだからな

 

 反対ににやりと笑い、そう言いきった。

 

「そうか─お前は、折れなかったんだな」

 

「兄さんのおかげさ。全てを捨て、正義の味方を目指すと決めたオレを、それでもそばで支えてくれた。そうまでしてくれたのに、オレが折れている場合じゃない─そう思わせてくれたからこそ、オレはここまでやってこれたんだ」

 

「そうか、俺は、ちゃんと支えられたのか。─ああ、安心した」

 

 宗次は、心底安心したかのように、ひとつ息を吐く。

 

「ああ。あの日、正義の味方になると決めてからの、兄さんと歩んだ日々は、何一つ摩耗することなく、オレの中に残っている」

 

「そりゃいい。…俺も頑張らないとな。…ほら、できたぜ。運ぶのを手伝ってくれ」

 

「ああ、了解した。…私が作った方が、上手くできたと思うが?」

 

「うるせえ。お前の方が長く生きてんだからお前の方が上手いのは当然だろうが。今日の料理当番は俺だ」

 

「ふむ、となると、明日は私ということになるな」

 

「そうだな。…士郎の手伝いをしてやってくれ、アーチャー」

 

「フッ、了解した。マスターの同盟相手…まぁ暫定だが。その手伝いをするのもサーヴァントの務めだ」

 

 語り合う2人。その様子は、誰が見ても、仲の良い兄弟だ、と形容するものであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「随分と話し込んでみたいだけど、いつの間に仲良くなったのよ、あんた達」

 

「ついさっきだよ、ついさっき」

 

「何、気にするな。ただ単純に、気があったというだけだ」

 

「そんなことより、ちゃんと説明したのか?」

 

「もちろんよ!ねぇ衛宮君?」

 

「ああ。殺し合いなんてダメだ、止めないと。誰も犠牲にしない為に、俺は聖杯戦争に参加する」

 

「ああ、それでこそ士郎だ」

 

「フッ、青臭いな」

 

「なんだと!?」

 

「まあ落ち着けよ士郎」

 

「…ああ。それより、なんだよさっきの。兄さんは一般人じゃなかったのかよ。説明してもらうからな」

 

「そうよそうよ!説明しなさい!」

 

「ハイハイ、分かったよ。飯食ったら話すから、とりあえず食べようぜ。士郎は断食でござる」

 

「なんでさ!」

 

「うるせえ!…それじゃ、いただきます!」

 

「「「いただきます!」」」

 

「俺も食べたかったなぁ、ハンバーグ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところでアーチャー」

 

「なんだね?」

 

「遠坂とはどうなった?(ニヤニヤ)」

 

「グフッ!?」

 

「ど、どうしたのアーチャー?」

 

「い、いやなんでもない」

 

「で、どうなんだ?(ニヤニヤ)」

 

ぐぬぅ…(オレもイリヤのことで煽りたいが…現時点では兄さんとイリヤにはほとんど接点がない…くそぅ)」

 

「おーいアーチャー?(ニヤニヤ)」

 

「クッ…殺せ!」

 

 

 

 

 




 Fate/staynight ~完~

 いや、終わりませんからね?
 というわけで既に答えを得ていたアーチャーでした。どうやら生前は凛とくっついたようで。オリ主の恋のキューピット作戦は成功していたようです。

 これはHeaven's_Feelルートなんて入りませんね!勝ったなガハハ。

 あとセリフが少ないセイバー可哀想。
 そして衝撃の事実!オリ主は麻婆愛好家だった!泰山の麻婆を食べれるのは転生オリ主の嗜み。
 なお実際は影の国の食事が不味すぎた(栄養面は完璧)せいで現代の食べ物ならなんでも美味しく食べられると言うだけ。
 あとヒロインはイリヤのタグに違い無し。

 お読みいただきありがとうございました。
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