超破壊兵器アマトリチャーナ   作:名も無き二次創作家

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これしかないのか……(絶望)

~数日前~

 

 

「……ん?」

 

「どうした、迅」

 

玉狛支部所属のS級隊員(実力派エリート)(じん)悠一(ゆういち)副作用(サイドエフェクト)は未来視だ。

本人の実力もさることながら、目の前の人間の少し先の未来を見ることが出来るその副作用は強力無比な効力とボーダーへの貢献度から、組織上層部に厚い信頼を寄せられている。

そんな彼の副作用に、奇妙な物が映った。

 

「(あれは、近界民(ネイバー)?まさかこの世界に侵攻してくるのか?それもブラックトリガー使いだ。貴重なブラックトリガーを最前線に出してくるなんて、何処か知らないが相手は相当本気のようだな……)」

 

ブラックトリガーは数が少なく、強力な力を持つとされている。

過去、ブラックトリガー1つで戦局が左右された例も珍しくは無く、もし敵に奪われた時の損失は計り知れない。

故に、通常は奥の手として出し惜しみされるのがブラックトリガーである。

敵がその使い手を単身で敵地(こちら側)に乗り込ませるという、尋常では無い光景が迅の副作用に映ったのだ。

 

それも奇妙ではあるが、彼にはもう一つ気がかりがあった。

それは────

 

「(最後の爆発はなんだ?とんでもない威力だったが、敵のブラックトリガーか?それにしては敵のブラックトリガー使いに炸裂していたように見えたけど……仲間割れか?)」

 

謎の大規模爆発。

ボーダーで爆発、いや自爆と言えば例の彼だ。

だが先程の爆発は明らかに彼のものでは無かった。

彼の自爆は迅も何度か見たことがあるが、最大出力の彼の自爆でもここまでの威力は出ていなかった。

 

「(ボーダーの自爆トリガーが改良された?いや、開発組は自爆をこれ以上改良する気はなさそうだった。じゃあやっぱり敵の攻撃?仲間割れ?第三の勢力?)」

 

謎だ。

常に正誤入り交じった未来の欠片を精査し、数々の危機を乗り越えてきた実力派エリート迅悠一の頭脳を持ってしても謎すぎた。

というか、情報量が足りなさすぎる。

 

「おい、迅!」

 

「うお!ああ、風間さん。すみません」

 

「また何か見えたのか?」

 

「いや、まあ……。ほんの僅かな可能性なんでまだ断言はできませんけど、ブラックトリガーを使う近界民が攻め込んで来る様子が見えました」

 

「なに!?」

 

「この程度じゃまだ情報ともいえないんで、数日他の人の未来からも探ってみることにします。気のせいならいいんですけどね。上への報告もそれからにしようかと」

 

「わかった。あまり一人で抱え込むなよ」

 

その後迅は数日間調べ回り、近界民の大規模な侵攻が起こる可能性がかなり高まっていることを確信した。

だが、例の爆発についてはなんの情報も得られなかった。

とりあえず第二次大規模侵攻について報告するか、と考えて上層部にアポイントメントを取り付けておいて支部へ帰還。

人の多い本部で未来視をしまくるために長らく帰っていなかった第二の実家。

彼の心が安まるのは自然の摂理と言えよう。

 

ガチャリと扉を開けて中に入ると、いつもの玉狛メンバーと新入り3人が揃っていた。

その中の一人、雨取千佳の顔を見た瞬間に彼の副作用が衝撃映像を映した。

 

自爆である。

ビルが吹き飛び、川が吹き飛び、地形が変わるその様子は、まさしくマップ兵器。

可愛い後輩の少女が、例の自爆バカよろしく盛大に爆発(物理)していた。

というか、そいつに指導されていた。

 

「(……こ、これかあ!!!!?)」

 

誰がそんな馬鹿なことを許したんだ。

と、玉狛のメンバーの顔を思い出して考える。

みんな仲間思いで努力をコツコツ積み上げる大切さを知っている者ばかりだ。

戦闘の素人にいきなり自爆技を使うのをよしとする者はいないはず。

この中で、なにか理由さえあればこの状況も許してしまいそうな人物がいるとすればそれは──────

 

「(……俺しかいないなあ)」

 

謎だった大規模爆発の正体と、その状況に加担している可能性がある未来の自分に複雑な思いを抱く迅悠一であった。

 

 

 

 

 

◇◇

 

 

 

 

今回の大規模侵攻の最悪の可能性の一つとして雨取千佳が攫われるという未来がある。

そしてその未来が来る可能性は割と高い。

先輩として、仲間として、なんとしてでもそれは防ぎたい。

そのために一番現実的な案は雨取千佳に緊急脱出(ベイルアウト)を付けさせることである。

だが、緊急脱出はコストの問題でB級隊員以上しか付けられない。

実力派エリートが、未来視で得た「雨取千佳が狙われやすい」という情報と共に頼み込めば特別措置としてC級の雨取千佳にも緊急脱出を付けてもらえるかもしれない。

だが、雨取千佳がまだ入ったばかりでボーダーに何の貢献もしていないことも事実。

あの城戸指令を確実に頷かせるにはまだ弱い。

 

そこまで思考した迅は、一つの諦めを口に出す。

 

「やっぱ自爆しかないのか……」

 

迅の副作用は可能性の未来を映す。

当然その中には雨取千佳が自爆トリガーを使わない未来もあった。

彼が本部中を駆け回って得た、雨取千佳が自爆する世界線と自爆しないときの世界線。

その決定的な違いがある。

それは、敵ブラックトリガーの回収率だ。

自爆するときは自爆しないときより、少なくとも1つは多く敵ブラックトリガーを奪えていた。ちなみに自爆無しなら1つも回収出来ない。

たった一つで戦局を左右し得る強力な兵器を手に入れられるのは大きい。

そしてこれが一番大事なのだが、例の自爆バカが推奨する「戦場での自爆トリガーの効率的な使い方」は緊急脱出機能が前提にある。

つまり雨取千佳が例の自爆バカから自爆トリガーの指導を受ければ、ブラックトリガーを回収出来る可能性が上がってボーダーもウッハウハで、さらに攫われる危険の高い雨取千佳(可愛い後輩)に緊急脱出機能を持たせることができるのだ。

実質的にブラックトリガーと引き換えであるため、ボーダー幹部達も雨取千佳に特例で緊急脱出を持たせることに反対できるはずがない。

 

そして迅は悲壮な顔で改めてこう言った。

 

「……やっぱり自爆しか無いのか」

 

他の道を諦めきれないという思いと同時に、副作用でこれしか道はないと分かってしまう者の悲痛さが込められた、藻掻くような叫びが夜の闇に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




未来が見えるということは、常に最適解を模索しなければならないということだ。
「知らなかった」「こうなるとは思わなかった」という“逃げ”が一切許されない。
その重圧に耐えてこの世界の人々のために尽くしてきた迅を英雄と呼ばずしてなんと呼ぶのか。

そして、その英雄に胃薬を使わせたバカがいるとかいないとか。


《自爆訓練を始めた雨取に対して》

修:千佳の「自分の命を軽く見る癖」をよく思っておらず自爆にも反対だが、本人の固い意思と「緊急脱出になれば最悪の事態(ネイバーに攫われる)にはならない」という理由で言いくるめられて渋々見守っている

栞:修に同じくよく思ってないが、本人の固い意思ならしょうがない。けど本人が「やっぱ辞めたい」と言おうものなら直ぐにでも辞めさせる気満々

レイジ:魔改造された弟子を純粋に心配してるし、狙撃手としても変な影響が出ないか心配している

小南:最初期の1人として本当の強さとは仲間を守って自分も生き残ることだと思っているので、自分が死ぬ前提の自爆が嫌い。緊急脱出があるのはわかるが、その自己犠牲的な在り方がやはり好きにはなれない。千佳を心配している。オリ主が嫌い。

迅:「千佳に緊急脱出付けるには、本当の本当に嫌だけども自爆しかない」と判断。可愛い後輩が想像以上に魔改造されて罪悪感がががが。自身の力不足に嘆く。

雨取:最近こんな自分でも戦力になるのだとわかってきて嬉しい。周囲の「心配で堪らない」という態度が心苦しいものの、自分のやるべきこと・進むべき道が見えた気がしている。尚、それは絶対に勘違いである。

オリ主:自爆の浪漫を追求した結果、とんでもない怪物を生み出してしまい軽く背筋が冷えた。だが後悔はない。むしろ一周回ってワクワクしてきたまである。雨取の自爆は世界を取れると思っている。そんな世界はない。


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