本当にありがとうございます。
これからも宜しくお願い致します。
「ですから、雨取千佳に
ボーダー本部、会議室。
そこで迅が上層部相手に「雨取千佳に緊急脱出を付ける必要性」を説いていた。
「なるほど。それで?今の話を聞くに、雨取訓練生よりも三輪隊員や諏訪隊員などの方がよほど危険な目に遭うように判断できる。それに、雨取訓練生の友人である夏目訓練生も危険度はそう変わりないように聞こえたな。そんな話をしながら、「うちの子だけ特別扱いしてください」などと君が言うとは考えがたい。本題を早く言い給え」
「城戸さんの信頼が厚くて照れますね。わかりました。では皆さん、落ち着いて聞いてくださいね?特に鬼怒田さん」
「ぬ?」
「俺はこの
「それは?」
「はい。まず結論から言うと、今から伝える作戦を承諾して頂ければ敵ブラックトリガーを奪える確率がかなり高まります。場合によっては複数個、なんて未来も」
「「「「!!!!?」」」」
瞬間、会議室中がどよめいた。
当然だ。
敵のブラックトリガーを複数個奪えるなら、場合によっては大規模侵攻の被害を差し引いてもお釣りが来る利益となりかねない。
今後この世界を防衛していくにあたって、戦力は幾らあってもありすぎるなんてことはないのだから。
どの世界でも貴重なブラックトリガー。
それの保有数が変われば、世界の戦力図が書き換わる可能性すらある。
また、「うちにはブラックトリガーが沢山あるから、攻めてきたら酷い目に遭うぞ!」という牽制になり、今後下手なちょっかいをかけられづらくなるという効果もある。
界境防衛機関として、敵のブラックトリガーを奪える機会を逃す手は無い。
「だが、話が見えんな。それと雨取訓練生になんの関連がある?まさか訓練生が敵のブラックトリガー使いを倒す、などと言うわけではあるまい?」
「そのまさかだと言ったら?」
「……」
静まりかえる会議室。
幹部達が頭に疑問符を浮かべる中、最高司令官である城戸だけが頬をほんの僅かに引きつらせた。
「ええい、わからん。もっとわかりやすく言いえ!」
「そうですよ、迅くん。ちょっと回りくどすぎるのでは?」
「いやいや、鬼怒田さんも根付さんもなに言ってるんですか。俺は直球ストレートしか投げていませんよ」
「……つまり、なんだ。君は訓練生が敵の精鋭を倒せると、そう言っているのかね」
「そうとしかいってないでしょ。特に鬼怒田さんはこの件でいつも頭を抱えてるように思いますけどね」
迅の言葉に、さらに混乱する城戸を除いた幹部達。
確かに雨取千佳のトリオン量は凄まじい。
だが、それだけで倒せるほど訓練された一流の兵士は甘くない。
「みなさん、覚えはありませんか?
瞬間、会議室に本日二度目の動揺が走った。
誰もが全てを悟りながら、誰もがその理解を拒もうと必死になっていた。
だがいつまでもそんな生産性の無いことをしているわけにもいかないため、代表してさきほどまで迅と活発に話していた鬼怒田開発室長がみんなの考えを代弁するかのように口を開く。
「……まさか?」
「そう、自爆です」
完璧なタイミングで入室してそう言ったのは、例の自爆マシーン。
誰もが頭を抱えながら、嫌々彼を認識する。
「いかん!此奴は雨取隊員に悪影響じゃ!絶対認めんぞ!!」
「落ち着いてって言ったじゃないですか、鬼怒田さん。娘みたいに可愛がってるのは知ってますけど、流石に過保護はまずいと思いますよ」
「ぐぬぬ……」
「気を取り直して、具体的な話は自爆トリガー使いの第一人者兼雨取千佳専属自爆トレーナーの彼にお願いしようと思って呼んでおきました」
「はい、呼ばれました。ではまずはわたくしの普段から提唱している「戦場での自爆トリガーの効率的な使い方」から改めて解説させて頂こうと思います。えーボーダーの自爆トリガーの性能は威力速度共に優れていますがなんといっても慣れればその場でそれらが調整できるところが利点ですよねそこは────」
「手短に頼む」
「あ、はい」
城戸指令の冷徹な声音の叱責に、流石のバカも怯んだ。
「では改めまして、自爆のデメリットは当然継続戦闘能力の完全放棄です。これは世界間規模の大規模な抗争の際、致命的なデメリットとなります。故に、大規模侵攻防衛側としては自爆など使い物になりません」
まずは事実の共有と確認。
それが出来ているのか、それぞれの顔を見渡して大丈夫そうだと判断した自爆男は、話の核心に入る。
「逆に言いましょう。そのデメリットが解消されれば、自爆はボーダーのノーマルトリガーの中で最高火力を発揮する一番の攻撃手段になります。それこそ、上手く活用すれば訓練生が人型ネイバーに手傷を負わせられることも不可能では無くなる。それが雨取のトリオン量で行われればどうなるか……わかりますよね?」
ブラックトリガーにすら火力で対抗できるかもしれない。
それも素人が使うノーマルトリガーで。
ごくり、と誰かが生唾を飲んだ。
「ではデメリットをどうすれば無くせるのか。それはみなさんご存じでしょう?」
「お前の副作用か」
「そうです城戸司令。僕の副作用、トリオン超回復があれば簡単です」
それは高いトリオン能力を持つ人間の中でも極一部にのみ起こる体内器官の異常発達である。
トリオン能力が高ければ保有トリオンも多くなるが、その膨大なトリオンが脳や感覚器官に影響を及ぼすことが希にある。
その結果、異常に耳が良かったり相手が嘘をついていることがわかったり、未来の可能性が見えてしまう者が生まれることがあるのだ。
あくまでそれは人の能力の延長線上であり、炎を出したり空を飛んだりなど超常的なことは出来ない。
人間は誰しも心臓の横に見えない臓器を持っている。
これはトリオン器官と呼ばれ、筋肉などと同じく性能には個人差がある。
そして、この器官は使われた体内のトリオンを回復する──トリオンを生成する機能がある。
彼の膨大なトリオンがその機能になんらかの影響を与えたらしく、その回復力が尋常では無く高まっている。
生成力ではなく回復力とされているのは、彼の体内トリオン量が基準値に至ったらトリオン生成がストップするからである。
際限なく超スピードでトリオンを生成し続けるのでは無く、あくまで減った分の急速な補充。
それがこの場の誰もが知る、彼の副作用だ。
「君の副作用があれば、確かに数分後にトリオン全回復の状態で出撃できるだろう。そして、ボーダーのトリガーには臨時接続機能が搭載されている」
「さっすが城戸司令、話が早い。臨時接続で相手にトリオンを流し込めば、僕のトリオンは消費され続ける。消費されれば直ぐに補充される。つまり半永久的に他人にトリオンを横流しし続けられるんです。疲れますけど。これで雨取に僕のトリオンを渡して全回復させ、彼女の保有トリオン量を使った自爆で敵のブラックトリガー使いを粉砕します」
こちらの弱点(強制脱出と戦闘力を持たず、トリオン能力だけは異常に高い雨取千佳)を逆に最大の戦力にしてしまうなんて、向こうからしたらたまらないだろう。
そして敵のブラックトリガーを複数個奪取。
さらに、迅の未来視によってこの変則的な作戦が裏目に出ることはほぼ無いと言える。
素晴らしい作戦だ。
「ですので、雨取千佳を特例で緊急脱出の使えるB級に上げていただきたいです」
「わかった。ただしポイントの価値が揺らぐ可能性がある。存在しなかったポイントを作って流すわけにはいかない。既存のポイントでやりくりしなければならないが……」
「勿論、僕のポイントを彼女に譲渡します」
「よろしい」
会議が終わり、皆が自分の仕事に戻る。
だが、会議室に二つの人影が残っていた。
当然頭を抱えて。
一人は雨取千佳を実の娘に重ねて可愛がっている鬼怒田開発室長。
まさか可愛い娘(のような存在)が例の自爆バカによって自爆を指導されることになるなんて思いもしていなかった彼は、娘をヤリサーのチャラ男にお持ち帰りされた父親並に脳が破壊されていた。
そしてもう一人はボーダー本部所属メディア対策室長の根付栄蔵である。
彼は主にボーダーの印象向上や問題処理・隠蔽を行っている。
ボーダーが「近界民と似たような力を使う恐ろしい組織」ではなく「街を護る正義の味方」と認識されているのもこの人のお陰なのだ。
だが、その必死に保ってきたボーダーの印象が今脅かされようとしている。
雨取千佳のトリオン保有量で自爆などされたら、どれほどの被害が出るのか分からない。
地形は勿論変形するだろう。
戦場が警戒区域内に収まればぎりぎり、本当は辞めて欲しいけど、まだなんとかできる。
だが戦場が広がってしまうと、住人を避難させるとはいえ民家をボーダー隊員が跡形も無く吹き飛ばすことになるかもしれない。
そこを目撃でもされれば、民家爆破と未成年の隊員を自爆させる異常性の二点を各方面から叩かれること間違い無しである。
本当は死ぬほど辞めて欲しいけどブラックトリガーを逃すわけにもいかないため、自分が死ぬ気で隠蔽するしか無い。
それが分かっているから先程の可決を黙ってみているしかなかったのだ。
“勝った後”も考えなければならないのが、メディア対策室長の辛いところである。
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修妹ポジの幻覚を見たことがあるかどうか
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オリキャラ(&原作キャラ)である
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