ただの短い話のことだと思ってた……。
てわけで短話から連載へ変えました。
今更ですがw
「出ます!」
敵位置を捕捉してから韋駄天とテレポーターを交互に使用・急接近することでアフトクラトル側に強襲をかけるこの作戦も、繰り返せば容易に対応されてしまう。
移動速度がどれだけ速かろうと、スタート位置が毎回同じであるのだからそこを観察していればいい。
「隊長、敵基地から何物かが高速射出されるのを確認しました。金の雛鳥と思われます」
『よし、作戦を開始する』
「了解」
ボーダー基地を監視するための小窓*1を閉じて、アマトリチャーナに気を配る。
彼女は軍事国家アフトクラトルの精鋭だ。
相手がどれだけ高速で動こうとも、通るルートとタイミングがある程度絞れていれば捕捉は簡単だった。
雨取千佳は反射神経がイマイチなのでトリガーの切り替えにタイムラグがあるし、高速機動も付け焼き刃なため若干ふり回され気味だから、というのもあるが。
酷いときはテレポートで急に変わる視界にバランスを崩し、よろめいた状態から韋駄天で無理矢理前に進んでまたバランスを崩し、そこをまたテレポーターで無理矢理跳んで、ということになっている。
奇襲性を奪われた今、そのような動きではアマトリチャーナは正に飛んで火に入る夏の虫になっていた。
◇◇
「余裕こいてんじゃねーぞ、このわくわく動物野郎。わかってきたぜ、てめーのトリガーはトリオン体にしか効かねえと見た!」
「ほう」
「
A級1位部隊
その衝撃で瓦礫と化した家が降り注ぐ物の、根本的に量が足りなさすぎてハイレインへの攻撃にはならなかった。
「瓦礫の量が足りなかったな」
「あーあ、もっとビルとかあるところならなあ……なーんてね」
「なに?」
出水の視界外から、突如光の筋が伸びてきた。
否、それは弾丸だ。
かなり離れたビルの上に陣取ったA級7位、三輪隊
撃たれたハイレインにとっては、いきなり自身の腹に穴が開いたように感じられた。
先ほどの出水の
「俺と正面から撃ち合い、頭も回る。いい駒だ。捕らえて部下に加えたい」
「……随分と余裕そうじゃねーか。傷口からトリオンが漏れまくりだぜ?」
卵の冠はほぼ毎秒弾を出し続けている。
これはどう見ても使い手のトリオン消費速度が速いと判断できる。
ただでさえトリオンを消費するトリガーを使っているのに、さらに土手っ腹に開いた穴から体内のトリオンがガンガン漏れている。
絶体絶命のはずの状況。
にもかかわらず余裕の態度を崩さないハイレインに、出水は警戒し出す。
そして、事が起こった。
「……おいおい、そりゃ反則だろ」
ハイレインの腹に開いた穴がみるみる塞がっていく様子に、出水は驚愕する。
出水の弾トリガーとハイレインのブラックトリガーである
先程までの戦闘で周囲に大量に転がったそれを卵の冠が吸収し、ハイラインのトリオン体を回復し出したのだ。
これには出水や古寺も驚愕し、同時に脳裏を敗北の予感が掠める。
形勢逆転だ。
だが、ハイレイン達の現在の目的は出水たちを倒すことではない。
金の雛鳥を捕らえることだ。
先ほど近くの民家が爆破されて射線が通った。
だが、それによって得をするのはボーダー側だけでは無かった。
見晴らしの良くなった空。
そして
その眼前に突如、ワープゲートが開かれた。
敵に韋駄天で急接近し、あとは合図と共に自爆するだけ。
そう思っていた雨取千佳。
だが、急激に視界が変化したかと思ったら、目の前には腹を開けて自分を捕らえようとしている新型トリオン兵の姿があった。
気が動転し、思考が白で塗り潰される雨取。
やけにゆっくりとうつる彼女の視界の端には、幼馴染み兼隊長の三雲が居た。
彼が雨取の名前を叫びながら駆け寄ろうとするも、明らかに間に合わない。
現在ラービットは全て投入している。
その中で一番余裕のありそうだったのが、適当にC級を襲わせていたこの個体だったのだ。
どこもかしこも新型には実力者が対応している中、ここだけは基地から最も遠かったためカバーが間に合わず「居合わせた実力の低い正隊員が訓練生を護りながら戦う」という、ラービットが圧倒的優位な戦況となっていた。
三雲と一緒に居た空閑は隣で他の新型3体を相手にしているため、追加でやってきたラービットの一体くらいは彼が相手をしなくてはならなかったのだ。
仲間の少女が捕らえられ、トリオンキューブにされてしまう。
玉狛第二の誰もがその光景を見た。
しかし、それはただの幻視だった。
「なんだ!?」
三雲の目には、幼馴染みを捕らえようとする新型トリオン兵が脈絡も無く真っ二つになったようにしか感じられなかった。
だが戦闘経験の多い空閑は見逃していない。
近くの民家にも切りつけられた線が入っていることを。
「遠隔斬撃……、迅さんか?」
今回の大規模侵攻において、ボーダー基地西部一帯をほぼ一人で制圧するために迅に託された、ボーダーの所有するブラックトリガーの一つ『風刃』。
その能力は遠隔斬撃。
直接見たことはなかったが話にだけは聞いたことがあったその能力。
そこから思い出さたここには居ない頼れる先輩に向けて、呟くようにお礼を言う空閑。
「流石だな。助かったよ迅さん」
◇◇
「えっと、えっと、」
極短時間で色々な事が起こりすぎて、雨取千佳の頭がショートしていた。
元々完全に体得していない韋駄天やテレポーターでの高速移動だけでいっぱいいっぱいだった彼女。
だというのに、急に景色が変わったと思ったら玉狛第二の仲間が居て、目の前にはラービット。
キューブにされちゃう!?と思えば何故か真っ二つにされて停止したラービットを韋駄天の頭突きで吹き飛ばし、現在に至る。
まだ戦闘になれていない彼女がそのまま地面に手を付いてしまっても仕方が無いし、頭がまったく付いてきていないのも仕方が無い。
だが、戦場で“仕方が無い”は通用しない。
誰かのミスは仲間がカバーする必要がある。
『アマトリチャーナ、ルートを再計算した!視界の矢印通りに突っ込め!』
「あ、で、でも!またワープさせられるんじゃ……」
『問題無い。少し手前で自爆してワープごと吹き飛ばす!』
「……了解ッ!」
頭のこんがらがった彼女に出来るのは、先輩を信じて素直に指示に従うことのみ。
ゲート先の爆発被害とかなんだとかは考えることができない。
勿論その指示を出している奴は色々と考えている。
まずワープ使いのこれまでのゲート作成距離的に、市民の残っている市街地までゲートを繋げることはできないと判断した。
また、市街地からトリオン反応があれば即座に上から報告が来る筈だがそれがない。
最後に、ハイレインが敵将だということになんとなく勘付いた。
こいつを倒せばこの大規模侵攻が終わる。
だから他所の戦闘の邪魔になってでも優先するべき。
そう考えたのだ。
例えゲート先にC級が居ようと、ラービットや人型と戦っている隊員がいようとも。
兎に角指示に従って跳ぶアマトリチャーナ。
その視界がハイレインを捉えた。
そしてその次の瞬間には雨取の目の前に、否、彼女の前後左右に1つずつと真上に1つ、大きなワープゲートが出現していた。
囲まれた。
これでは爆発のエネルギーが敵に届かない。
だが自爆する。
『いっけぇえええええええええ!!!』
「はいいいいいいっ!」
「なんだと!?」
轟音。
天地が揺れる。
予定通りワープゲートの上から自爆で殴ったのだ。
だが威力は散らされ、ハイレインを倒すには到底至らない。
元々ギリギリまで近づかなければいけないという話だったのに、この距離で更に障害物まであったのでは当然の結果だ。
隙間からすり抜けた威力だけでは精々爆風で5、6歩後退させるのが限界だ。
ただ、完全に無駄な足掻きだったというわけでも無い。
ハイレインは地面に立っているのだが、その地面が今の冗談みたいな規模の爆発で盛大に揺れた。
地面に立つ敵に突っ込んだため、低空飛行だったアマトリチャーナは前後左右と上を大窓で囲まれた。
だが、下は何も無かった。
衝撃波は大地を震撼させ、ハイレインを物理的にグラつかせる。
それにより、ほんの一瞬だけ卵の冠の制御が緩む。
敵将ハイレイン。
彼は用心深く、常に自身のトリオン供給機関を卵の冠の弾でガードしてきた。
だが、制御が緩んだことにより
針穴。
針が通る。
つまり弾も通る。
「馬鹿な……!」
「ほんと、うちの狙撃手どもは変態だな!」
物理的に通るのなら、例えそれが一瞬であろうと移動していようと関係なく通す。
狙撃手ランク1位、当真
一度ビルの屋上まで登って古寺の横まで来て、「こりゃ揺れるな」と判断した彼はそこから飛び降りながら空中で狙撃したのだ。
射線が通っており、相手が重役出勤してきたところから敵将若しくはそれに近い立場だと判断出来たため、今後の狙撃よりまずハイレインを確実に落とすことを考えた結果である。
地面に降りれば今後の狙撃どころか敵に落とされる危険が跳ね上がる。
よって、普段は使えない一種の曲芸である。
『後から来て美味しいところだけ持っていきましたね……。ていうか、よく迷いなく降りましたね?その状態でさらに爆風も酷かったのに、頭に当てるなんて』
通信回線を繋げて、当真に呆れ混じりの賞賛を贈る古寺。
『なに言ってんだ。あの自爆の指示出してんのは例のバカだろ?だったらあの状況でも必ず自爆させる。来ると分かってる衝撃なんざ、障害の内にも入らねぇ』
いや、だからって飛び降り狙撃って……。
確かに跳べば地面の揺れは関係ないけど、普通やらないでしょ。
そう思った古寺だが、言ってもどうしようもない事なので我慢して話題を変えた。
「敵、逃げましたね」
「ホントに便利だよなぁ、ワープってのは」
その後
市民の死傷者行方不明者、ゼロ。
隊員の死傷者行方不明者、ゼロ。
原作で数十人のC級誘拐を許してしまったボーダーだが、今回は超破壊兵器ことアマトリチャーナが敵を攪乱し注意を惹きつけ続けたお陰で他の負担が大幅に減り、犠牲者はゼロに終わった。
◇◇
「さて、どうする」
平坦な筈の旧市街地(警戒区域)が山あり谷ありな姿に変貌していた様を他の幹部たちに見せて問いかけるボーダー最高司令官の城戸。
「これは酷い」
「よし、
「そうですね。全部近界民の所為ですよ。奴らが来なければそもそもこんなことにはならなかったんですからね」
「……これがボーダーの攻撃による物だなどとバレたら不味い。いや、不味いなどという域を超えとるなぁ」
◇◇
千佳と自爆バカ本人、更には今回の作戦を知っている者の全てに緘口令が敷かれることとなった。
バカ考案の自爆作戦を闇に葬ろうとするボーダーの陰謀である。
人的被害をゼロに抑えた代わりに物的被害というか地形被害が指数関数的に跳ね上がり、戦後処理が地獄と化している。
例のバカによる「戦場での自爆トリガーの効率的な使い方」は常時には封印されることとなった。
だが、その有用性も認められた。
もし地形破壊を気にしなくていい状況なら?
もしボーダーの、市民からの印象を気にしなくていい状況なら?
そんな環境があれば、神話のグングニルが如く手元に戻ってくる残弾ほぼ無限の超破壊兵器は真価を発揮することになる。
つまりは他所の土地、他所の世界。
そう、遠征である。
三輪さんが風刃を起動したときの根付さんや鬼怒田さんの反応、それと迅の「西部を丸々一人で制圧する」とかいうとんでもない仕事量、そして同じく基地北西部をたった一人で制圧させられた天羽もS級であったことから、恐らくあの大規模侵攻時に本来風刃を与えられたのは迅だったと解釈したので本来の持ち主に持たせてみた。
裏話
もしアマトリチャーナの自爆余波が思ったよりワープで吸えなかったら当真さんでも外してた。(若しくは撃たなかった)
というか古寺諸共巻き込まれてた可能性がある。
その時のためにもう少し後ろに奈良坂さんが控えていたのだ。
隙を生じぬ二段構え。
あとこれは関係ないけど個人的に奈良坂先輩好きです。奈良坂先輩と茜ちゃんの師弟好きなんですよね。
2期1話でこの2人の出番が…!セリフが…!
しかもちゃんと「師弟関係」てわかってる人が見ると尊死するレベルの絡みで、こう、正気を抉られましたよね。
出番が少なく表情筋が動きずらい奈良坂先輩が、歳下の可愛い女の子を咄嗟に守って、それが弟子で、あ、やばい思い出しただけでもやばい。誰でも助けるかはまだわかんないですけど、弟子は大事にしてるんですね。尊味。だからこそ茜ちゃん退役が本当に残念でならない。
もっと奈良坂先輩との絡み見せてくださいよ公式……!なんなら茜ちゃんがボーダー辞めても偶に個人的に会ったり、LINEとかで気軽にお喋りする関係であって欲しい。いや既に私の中ではそうなってる。そういう幻覚が見えてるんですよね。ワ民あるある、「隊員どうしの絡みを幻覚で見る」。
母もアニメワートリを見てるんですよ。隣でそのシーンを見てあまりの尊さに断末魔をあげた私は、案の上母にうるさいと怒られました。
失礼、語りすぎました。
ワートリが好きすぎてw
というわけで最終回、いかがだったでしょうか?
楽しんでいただけましたか?
ワートリ杯自体は日曜日までありますが、この物語はこれにて完結!
修妹ポジの幻覚を見たことがあるかどうか
-
オリキャラ(&原作キャラ)である
-
原作キャラだけである
-
ない
-
そもそも幻覚自体見ない