せっかくTSしたので親友(♂)を全力で落とそうと思う 作:らびっとありす
歌う曲は皆さんの想像におまかせします。実在する曲は色々な問題で出せないので。
「あぁぁぁぁ。ダメだァァァ。キンチョーする!!」
文化祭本祭前の前夜祭。俺は1人、部室にいた。
ーー後夜祭で告る。
うへぇ……。まだ本祭すら始まってねぇってのに。つか今前夜祭だって言うのに。ダメだ。
「優?」
「うぉあ!葵!?」
「いやなんでこんなに驚いてんだ?」
「あーいやー。えっと。あ、明日本番ですごいほら。緊張してて。ついにこの日が来たかぁって。」
「大丈夫だろ。お前なら。」
「う、うん。」
多分あいつからしたらというか話的には明日の本番大丈夫だろって感じなんだけど。はぁ。ダメだこりゃ。俺。
「おっ。おったおった。」
「どもー!」
「神楽坂。先輩。」
「2人ならここにいると思ったよ。」
「後夜祭中だけどちょっと練習しない?ちょっと不安になってきた。」
色んな意味で。
「ええんちゃう?俺も最終調整したかったし。」
「みんなクラスのところ行かなくていいの?」
「後で行くって伝えてるから。少しくらいなら大丈夫っす。」
とりあえず今は目の前の目標というか。明日の本祭。本番のことだけを考えよう。
「うっし。行くぞ。ワンー。ツー。ワンツースリー!」
「すげーな。やっぱこの学校。」
前夜祭とはいえこの数の生徒がいると考えるとこの学校やっぱり広い。
「あおっちあおっち。ほい。」
「サンキュ。」
「ゆーくんは?」
「優?あいつは女子と一緒にいるよ。」
「もうゆーくん女の子やな。」
「……いや。多分違うと思う。あいつはなんつーか。女子とか男子とか。そう言う区切りではないと思う。」
ずっと自分の気持ちに向き合ってた。あの日、家に帰ってから俺はずっと。俺にとってあいつがどういう存在だったのかを考えていた。
「屋上シチュって普通は異性といるもんやけどな。」
「………。」
「なんか悩んでんのか?」
「俺さ。あいつのこと。好きみたいなんだよな。」
「お前。……そんな顔できるんやな。」
「そんな顔ってどんな顔だよ。」
多分表情が緩んでる。そんなことは分かってた。
「逆に今更とちゃう?」
「そうかもな。」
多分あいつが男でも女でも関係なかった。優が優であることには変わらないし。でも。なんだろこのムズムズする感じ。
「後夜祭にでも告ったら?」
「簡単に言うな。そもそもあいつがどう思ってるからすら知らないし。」
「大丈夫とちゃう?」
それが分からない。大丈夫なのかもしれないけど。それを裏付ける根拠も何も無い。
「はぁぁぁぁ。」
「恋すると人ってこうなんのやな。」
「お前には言われたくねぇよ。」
「俺はずっとやから。」
「大丈夫やと思うで。あの子なら。お前が1番知ってるはずやで優の事。俺は葵が付き合うことが1番あいつにとって幸せになる生き方やと思う。どこの馬の骨ともわからない人と付き合うよりは。」
「………。はぁ。ほんと俺って。勇気がないな。」
チキンだ。ほんとに俺って。決意が緩い。
「告白する。俺、後夜祭で。」
「いい結果。期待しとるわ。頑張れ。」
富士咲が丘高校。俺たちの学校の3日間に渡る文化祭が始まった。
「うぉあぁぁぁぁ。やっぱり多いよォ!」
イメトレはしてた。イメトレはしてたんだけど。
「いやー。多いなぁ。今年も。」
「つかこんな服まだあったんすね。」
「舐めるな?うちの部室。」
「ていうかなんで3人はそんなに余裕そうな雰囲気出してるの!?」
「「「慣れてる。」」」
だよねぇ。そうだよねぇ。
「今日のために練習してきたんだろ。」
「だ、だって。」
「だったら大丈夫だ。自分の思いを。願いを歌に込める。それだけでいいんだよ。」
思いを。願いを歌に込める。
「それがいけるなら大丈夫だ。」
頭をわしゃわしゃと撫でて葵はギターの最終チューニングに入った。
「まだ付き合わないの?」
「うっ。」
「それにしても今年は例年より多いな。」
「最近新しい学科増やす話してるじゃん。それで。」
「なるほど。」
まだ増やす気なのこの学校。
「うっし。チューニング終わった。」
「そろそろ呼ばれる頃合ちゃう?」
「よし。それじゃあいつものアレ、やっちゃいますか。」
アレ?
「ほらほらゆーちゃん。葵の横に。」
「こ、こう?」
「よし。みんな円陣組め!!」
あ、円陣か。
「絶対成功させるぞ!!」
「「「ファイト!!オー!!」」」
円陣を組み終わったところで司会の放送委員の人が俺たちの名前を呼んだのが聞こえてきた。そろそろだ。そろそろ始まる。
「それじゃあ私たち先に行ってるね。」
「遅れんなよ!2人とも!」
ふぅ……。
「行くか。」
「うん!」
カーテンの奥には沢山の人達が俺たちの方を一斉に見つめていた。
「やっほー!!お前ら!!」
先輩が生徒に向けて手を振りながらエレクトーンを準備初めた。
「元気にしてっかー!」
相変わらず神楽坂は元気というか。ミーハーというか。全校生徒に名前が知れ渡ってるなぁ。
「先いくよ。」
葵がギターを持ちながらステージの上に立つとその瞬間、歓声が湧いた。あいつ、やっぱりやばいだろモテすぎだろ。
「あれ、白井先輩だよね!?」
「初めて見たけど。イケメン過ぎない???」
他の学科の子にも噂は広まってたんだ。なんかファンクラブも存在してるらしいけどそれ、多分本当なんだろうね。
「優。こっち。」
静かなステージにトントンと足音だけが響き渡る。聞こえるのは俺の足音だけ。沢山人がいるのにまるで自分だけが違う世界にいるようなそんな静寂が俺を襲った。
………俺ほんとに大丈夫なのかこれ。
「綺麗。」
「まって。天使がいる。は?え?」
「いやいや。あれは女神でしょ。」
うえぇ。俺はそんなんじゃないって……。
「ゆーちゃん。」
こくりと先輩が頷いたの確認した俺はマイクの音をONにした。
「あーうぉっ!?」
めちゃくちゃ響く。いやマイクだから当然なんだけど。腑抜けた声出しちゃった。
「えー。わt……いや。【俺】たちは軽音部です。」
会場がざわつく。
「俺たちは3週間。この日のためにずっと練習してきました。」
緊張と不安で声が震える。すると葵が肩を叩いて『お前なら大丈夫だ』と囁いた。
「……ふぅ。この曲に俺たちは思いと願いを込めて歌います。」
ただ。伝えたいことを歌に乗せて伝えたらいいんだ。
「では聞いてください。ーーさんでーー。」
「ワンーツー。ワンツースリー!」
精一杯歌いきればいい。
下手くそでもそれでいい。
あいつは言った。思いと願いを込めろと。
だから俺は込める。
「ーー。ーーー。」
あいつに対する思いと願いを。祈りを。
たった1人のために。横にいるたった1人の少年のために。
歌いきれ。喉が枯れそうになるほどに歌え。
届け。
届けろ。この歌声を。
「ーーー。」
歌が終わったあと、ステージに一瞬の静寂が訪れた。その瞬間。
「「「うぉぉぉぉ!!!」」」
歓声と。
『パチパチパチパチ!!』
拍手がステージを包み込んだ。
「「「ありがとうございました!!」」」
「葵。」
「おう。やったな。」
「おう!見てたかコノヤロー。」
「見てたよ。良かった。やるじゃねぇか。」
「うへぇ。」
思わず表情が緩むと葵は恥ずかしそうにそっぽを向いた。……全く。可愛いとこもあんじゃんやっぱり。
「あ、今軽音部は絶賛部員募集でーす!!」
「廃部の危機なんでよろしくお願いします!!」
ここぞとばかりに宣伝始めたし。この2人。
ライブよかったす。