せっかくTSしたので親友(♂)を全力で落とそうと思う 作:らびっとありす
この2人、街の中で歩いてたらただの芸能人カップルだよ。全然一般人だけど。
「おーい。」
俺たちが付き合って約1年くらいたった。
「優ー。葵くん呼んでるわよー。」
「わ、分かってるよ!」
この1年、本当に色々なことがあった。修学旅行で担任もノリノリで俺たちを同じ部屋にしたし、初日の出も見に行った。初詣で委員長と神楽坂にあったり。もうほんとに色々。なかなかに濃い生活だった。でもそれ以上に本当に楽しかった。なにせ、今まで雲の上だと思っていたあいつと一緒に過ごせてるんだから。
「今年こそは。うん。今年こそは。」
今年のクリスマスこそはクリスマスっぽいことというか。カップルっぽい事をしたい。なにせ去年、あいつがバイトでクリスマスっぽいこと出来なかったし。まぁ仕方ないよ。忙しかったもん。
「ごめん。待った?」
「待ってねぇよ。」
不器用に笑うこのイケメンが俺の1番大切な人で彼氏『白井葵』。俺が女になっても何も変わらずずっとそばにいてくれた元親友。
そして超鈍感野郎。もうほんとに鈍感。俺の彼氏っていう自覚あんのかってくらいに。何もしてこないし襲いもしない。3大欲求のうち性欲を無くして睡眠欲に全振りした超鈍感野郎。
「似合ってんじゃねぇか。」
「ありがと。行こ。」
「おう。行くか。」
……くぅ。やっとだ。やっとこいつと恋人っぽいことできる。苦節何ヶ月。確かに今大学入試に向けての勉強とか引越し作業とか忙しかったけど。やっと時間が出来た。まぁ大学入試の勉強は言うてそんなにしてないというか、葵も俺も自慢じゃないが自頭はいい方だし成績は上位1パーセントには入ってるし。学園長とかの後ろ盾とか色々あって割と余裕があると言えば余裕がある。
「真面目に生きててよかった。」
「なんだよいきなり。」
「なんでーも。」
正直、もう男に戻るのはやめた。というより諦めたというか。こいつは男でも関係ねぇよって言ってくれたけど。やっぱりその。なんて言うか。将来的には子供も欲しいし。それに……。
「なぁ。そろそろいいんじゃないの?」
「お前には早いわ。」
ほら。こんな感じで。
「お前はまだガキだろ。」
「はぁぁ?ガキじゃないですぅ!」
「そういうとこがガキだってんだよ。」
お前が大人すぎるだけだわ。
「……ていうか。手袋はどうしたんだよ。マフラーは巻いてんのに。」
「忘れた。」
「……はぁ。」
仕方ないじゃん。急いでたんだし。……いや。俺がゆっくりしてたのが悪いかこれは。
「うぅ……。指がかじかんできた。」
「ほれ。これやるよ。」
葵はそう言って俺に手袋の片方を渡してきた。
「わ、ありがと。でもいいの?片手だけで。」
「良いんだよ。」
すると葵が手袋を渡した方の手で俺の手袋をしていない手を優しく握った。
「あ、あおい!?」
「……これで。これで寒くはならないだろ。」
葵が耳と頬を赤くしながら呟く。
「照れてるの?」
「は?寒いだけだわ。」
……照れてるなコレ。こいつ。ほんと可愛いな。……俺の彼氏、可愛すぎ。ほんと。
「ふふっ。」
「なんだよ。」
「なーんでも。」
「おぉぉぉ!!」
歩くこと数分。俺たちは駅の広場に来ていた。並木道には彩りみどりの綺麗なイルミネーションに真ん中には大きいクリスマスツリーが堂々と立っていた。
「綺麗だな。」
「さすが。うちの町一番の広い広場。イルミネーションもそうだけど人もすごい。」
周り見ると子供連れや恋人と思わしき人達が止まることなく動いている。……昔はなぁ。羨ましいって思ってたけど。今は。今は!!俺にもかっこいい彼氏出来ちまったからな。
「なんでどやってんだ。お前。」
「え?あ。」
ていうか、凄い視線の数。なんでみんな俺たちの方見てんだろ。
「……なんかすごい見られてるな。俺たち。」
「注目されてんな。なんでだ。」
「絶対お前だろ。」
「なんでだよ。お前の方が注目されてるじゃねえか。」
「「………。まっ。いっか。」」
気にしたら負けだ。気にしたら負け。
「それにしても綺麗だね。ほんとに。」
「毎年ニュースとかでも取り上げられてるからな。」
そういえばここらじゃかなり有名だったっけ。
「取材とか受けるのかな。」
「俺たち取材してもなんもないだろ。」
「だねー。さて目的のもん、買いに行きますか。」
「だな。」
俺たちがここに来たのはイルミネーションを見るっていう目的もあったが、ケーキやらを買いに来るというのが1番の目的だ。
「なんだかんだ。これで家でクリスマス過ごすのは最後なんだよねぇ。」
「どうせならみんなで過ごしたいしな。来年からは二人で好きなように過ごせるわけだし。」
「だね。あー来年から楽しみだなぁ。」
「気がはえぇよ。さっさと買うぞ。」
こいつほんと可愛げねぇ。
「あぁ!!帰ってきた!!おしどりカップル!」
「うげっ。姉さん。」
えー。帰り際、生放送の取材の人に捕まりました。それも俺がくっそ照れて葵の後ろに隠れる姿まで全国放送。ホント泣きそう。ほんと恥ずかしい。
「Twitterに載ってたわよ。」
「わーわーやめてくれー!!」
「姉さん。それぐらいにしておいてくれ。ほい。買ってきたぞ。」
「わーさんがつー!ほらほら、おふたりは部屋に戻ってゆっくりしときな。」
葵に手引きされながら俺は葵の部屋に入っていく。
「相変わらず。変わり映えしない。」
「そりゃどうも。」
黒と白を基調としシックな感じの部屋。ほんとオシャレというかなんというか。
「……エロ本の1冊もねぇ。」
「恋人の部屋入って色々見て第一声がそれかよ。」
「うわ。このベッドあれじゃん。10万くらいするやつじゃん。」
「バイトの給料、あんま使うこと無かったからな。元々大学はここら辺受験しようと思ってたし。」
「睡眠欲にはやっぱりこいつ抗えないのか。……ってそうなの?元々近所の大学受けようって。」
「いいよ。そんな申し訳なさそうな顔しなくても。俺だって後悔はしてない。」
「あ、ありがと。」
「心配なんだよ。お前のことが。危なっかしいしトラブルメーカーだし。」
「そこは嘘でも俺の彼女なんだからみたいなこと言えや。ムードねぇな。」
「そもそもいんのかよ。そんなの。」
ご最もでございます。
「……まぁ。お前が心配なのは事実だ。それ以上の理由は無い。」
「そっか。」
素直じゃない。……まぁそこがいいんだけどさぁ。
「ふぁぁ……。」
小鳥のさえずりが聞こえる。俺の横にはスースーと気持ちよさそうに寝ている葵。……幸せとはこのことを言うのか。
「……ん?あれ。」
「起きてたのか。優。」
「おはよ。葵。」
「んはよ。俺もうちょっと寝るわ。」
……まじかこいつ。クリスマスなのにほんとに何もしなかったのか。
「……かぷッ。」
「ひゃっい!?お、お前。首筋噛むなよ……。」
「今年はこれで勘弁してやる。ボケナス。」
息抜き程度に書きました。皆さん良いクリスマスを。