転生先が百合キャンセラーのバケモンとかどうにかならなかったんですか!?   作:サク&いずみーる

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──前回、雨嘉さんと話して見送った後くらい。

主「よーし、そろそろやな! この辺りで見るのが一番見やすいか、なっと!」ドポン
(ここからしばらく待機)


ただの(原作通りの)しぇんゆーが来るぞ! 総員構えろ!!

 思わぬ収穫を得て、張り切る梨璃たちが向かったのは。

 百合ヶ丘に併設される学生寮──その新館。

 モダンな建築様式であるこの寮には、基本的に1年生が多く暮らしている。

 

「わたくしを一柳さんのレギオンに……?」

「ええと、お姉さまのレギオンで……」

 

 梨璃たちとはクラスメイトの郭神琳。

 二水の紹介によると、中等部時代から活躍する台北市からの留学生であり。

 幼少期から百合ヶ丘女学院に所属する、いわゆる『生え抜き』のリリィ。

 その実力は1年生ながら、高く評価されているとのことだ。

 

「そう。とても光栄だわ」

「えーと、それは……?」

 

 ──先日の勧誘の記憶が蘇る。

 「光栄だわ」とかなんとか言われて『お、引き込めそうだぞ』と思ったら既に引き抜かれていたという。

 この台詞が出たら警戒が必須であることを学んだ記憶である。

 

「謹んで申し出を受け入れます」

「へ……ほんとですかぁ!?」

 

 良い意味での裏切りに、ささやかに身構えていた梨璃は大歓喜。

 二水に至っては有名なリリィを引き込めた興奮のあまり、鼻血を堪えるので精一杯だ。

 

「ありがとうございます! 梨璃って呼んでください!」

「はい、梨璃さん」

「で!」

 

 そして、今まで会話に入ることもなく。

 黒猫のストラップをぶら下げた携帯電話を弄っていた雨嘉に注目が集まる。

 たまたま梨璃と目線が合ってしまった雨嘉は、慌てて目を逸らすが。

 それくらいで集まった視線は散らないのである。

 

「あなたは?」

「……私?」

「クラスは違いますが、同じ1年生の王雨嘉さん。ご実家はアイスランドのレイキャビクで、お姉様と妹さんも優秀なリリィです」

「姉と妹は優秀だけど、私は別に……」

 

 ここまでくると、一種の条件反射のように出てくる謙遜の言葉。

 しかし、他の姉妹との実力差を引け目に感じているのは。

 どうしようもないくらいの本音で。

 

「どうですか? せっかくだから神琳さんと一緒に……」

「私が、レギオンに……?」

 

 心が揺らぐ。

 迷って、躊躇している。

 ──そうやって、もたついているものだから。

 

「──自信がないならおやめになっては?」

 

 神琳がやんわりと。

 だが、はっきりと告げた。

 

「え?」

「うん……やめとく」

「ええっ!?」

 

 あっさりと引き下がる雨嘉に、驚くばかりの梨璃。

 楓は「素直ですこと」と半ば呆れたように呟いた。

 

「な、なんでですか!?」

「神琳がそう言うなら、きっとそうだから……」

 

 そう語る雨嘉の表情は、明らかに満足とは程遠いもので。

 どこか引っかかるその顔つきに、梨璃は納得がいかない。

 故に、問いかける。

 

「あの、お二人は知り合って長いんですか?」

「いえ。この春に初めて」

「だったら、どうして……?」

 

 大して知らない相手に対して、どうしてそこまで言えるのか。

 その答えを、神琳は持っている。

 

「わたくしはリリィになるため、そしてリリィであるため。血の滲む努力をしてきたつもりです。だから……というのは理由になりませんか?」

 

 その場で思いついたようなものではなく、前から考えていたような返答に。

 一瞬だけ、梨璃は言葉をなくした。

 

 そもそも、リリィになるということ自体が簡単な話ではない。

 元々持っているリリィとしての適性や素質はもちろんのこと。

 積み上げていく努力は、並大抵のものでは足りやしない。

 それこそ文字通り、血反吐を吐くようなものだってある。

 さらには、リリィになった後でも慢心することなく己を磨き上げていかねばならない。

 そして、何年も何年も続けてきたその成果が、自信へと繋がっている。

 神琳はさらっと言ったが、それだけ重みがある言葉なのだ。

 

「私は……才能も経験も、神琳さんみたいな自信も持ち合わせてないけど……」

 

 リリィになって半年も経っていない梨璃に、その言葉の重さは分からない。

 ましてや、神琳が持っているようなものなんて。

 梨璃はほとんど持っていない。

 ──でも、だからこそ。

 

「ううん、だからっ! そんなの確かめないと分かりません!」

 

 ──断言できる。

 誰かの言葉ではなく、自分の目で見て判断するべきだと。

 

「……っ!」

 

 梨璃の言葉に、雨嘉は今朝の出来事を思い出す。

 戻ろうとした自分を呼び止めて、小さな竜が伝えた『メッセージ』。

 

 

『大丈夫』『がんばれ』

 

 

 そんな2つの言葉を書きつけた奴は。

 その後、猫にしばかれていたのがどうにも締まらなかったが。

 それでも、雨嘉は確かにエールを受け取っていた。

 

「また分からんちんなことを……」

 

 何ぞお菓子を頬張る楓は「ま、そこが魅力なんですが」と彼氏面である。

 ……食べながら話す姿は、お嬢様的にどうなのか。

 と、その時。

 

「……ぷっ」

 

 突然、神琳が吹いた。

 何事かと見てみれば、もう耐えられないという風に笑い出したのだ。

 

「……うふふふ……あははっ……!」

 

 一体何がツボに入ったのか。

 目の端に涙が浮かぶほど笑っていた。

 その場の誰もが、彼女が笑っている意味を図りかねて見つめている。

 やがて、神琳の笑いも落ち着いたようで。

 

「はー……失礼。梨璃さんは、雨嘉さんの実力の程を知りたい、というのですね?」

「うぇっ!? 私そんな偉そうなことは……」

 

 わたわた、ぶんぶんと手を振って梨璃は弁明しようとするが。

 雨嘉はもう決意を固めていた。

 

「……ありがとう一柳さん。私、やってみる」

「えっ?」

 

 不思議な竜の応援に、梨璃がくれたチャンス。

 ここまで背中を押してもらったのだから。

 応えたい、応えてみせなければ。

 

「これでいい? 神琳」

「──でしたら、方法はわたくしにお任せいただけますか?」

 

 茶柱が立った淡い色のお茶を一口飲んだ神琳は。

 ふわりと、意味深に微笑んで提案した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

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「私の姉も妹も、今もアイスランドに残ってヒュージと戦っているの」

 

 そう切り出したのは雨嘉。

 山と廃墟に囲まれた場所で、一緒に来た梨璃にぽつぽつと語る。

 

「一人だけ故郷を離れるように言い渡されて……私は必要とされていないんだって思った……」

 

 周囲から『劣れる次女』なんて評されて、自信をなくして。

 自分に才能があるなんて思ってはいなかったし、自慢の姉妹だとも思っていたけれど。

 それでも、姉や妹と比べられるのはつらかった。

 そして、その矢先に母親から言い渡されたのが──百合ヶ丘女学院への転校。

 

「ごめんなさい。百合ヶ丘は世界的にもトップクラスのガーデンよ。ただ……故郷を守りたいっていう気持ちは特別、っていうか……」

「うん。それ、分かるよ」

 

 梨璃は優しい笑みと共感を以て答える。

 彼女もまた、故郷想いのリリィなのだから。

 

 不意に、振動と共に伝わる着信音。

 発信者は──神琳。

 

『雨嘉さん。こちらが分かる?』

 

 どこにいるのかと視界を巡らせ、見つけた。

 自分たちの反対側、何かを反射して煌めいた光を。

 おそらくあれだろう、と結論づける。

 

「あ、うん……」

 

『そこから、わたくしをお撃ちなさい』

 

 告げられたのは、予想もしていなかった一言。

 思わず、一瞬だけ言葉が理解できなくなる。

 

「え……」

『訓練弾なら大丈夫よ』

「そんなわけ……」

『装填数10発──きちんと狙えたら、わたくしからはもう何も申しません』

 

 それだけ言うと、神琳は雨嘉の異論反論も聞かずに。

 そのまま一方的に切ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 ──雨嘉たちのいる地点、その反対側。

 

「大丈夫。貴女ならできるわ」

 

 通信が終わった端末に語りかける神琳。

 その言葉には、密かに「信頼」が込められていて。

 

「……直に言ってあげたらいかが?」

 

 声をかけたのは、腕を組んで佇む夢結。

 彼女もまた、招かれた者の一人だ。

 

「……お立ち会いご苦労様です。夢結様」

「お構いなく。梨璃に頼まれましたから」

「──あら?」

「どうかしたのかしら?」

 

 訝しむ夢結に、神琳が小さく微笑んだ。

 

「いえ、どうやら『変わった観客』もいたようですね」

「変わった観客……?」

 

 最初は、意味が分からなかった夢結も。

 神琳の視線を辿って、理解に至る。

 何故いるのかは、彼女には理解できなかったが。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……どうして」

 

 戸惑いに揺れる雨嘉は、唖然とするしかない。

 神琳の考えが理解できなかった。

 いくら訓練弾といっても、当たれば怪我だってする。

 打ち所が悪ければ、死ぬこともあり得る。

 それなのに、何故──

 

「雨嘉さん、猫好きなの?」

「え……? う、うん……」

 

 突然投げかけられた、脈絡のない質問に。

 別の思考を巡らせていた雨嘉は驚きつつも、なんとか応じることができた。

 

「かわいいねぇ、この子」

「……うん」

 

 この子──ゆらゆら揺れる、黒猫のストラップを指して笑いかけてくる梨璃。

 本人はただ、思ったことを言っただけなのだろう。

 でも、そんな何気ない一言が深く心に残って。

 

「あっ!」

「え、何?」

「あれ! あの子!」

 

 声を上げた梨璃が指差す先は、対岸の神琳たち……ではなく。

 それより手前に広がる、湖のような大きな水溜り。

 実は割と深いそこから、頭を半分だけ出した『何か』がいた。

 水面から突き出ているくすんだ銀色の角なんて。

 雨嘉に至っては、今朝見たばかりのものだ。

 

「あの子、なんでここにいるのかな?」

 

 こちらを見て、控えめながら手を振っている呑気なピラトゥスに。

 思わず揃って手を振り返す。

 そして、雨嘉だけは。

 そいつが来た意味が、なんとなく分かった気がして。

 

「……これ、持っててくれる?」

「え……? うん」

 

 ──故に、覚悟は決まった。

 携帯を預けて、準備を整えていく。

 その手に構えるのは、第2世代CHARM『アステリオン』。

 右目に展開するのは、彼女が獲得したレアスキルの証。

 

 ──天の秤目。

 遠く離れたものも寸分の誤差もなく把握し、使用者に異常な視力をもたらす。

 雨嘉のようなスナイパーや中長距離戦を得意とする者にとって。

 非常に相性が良いレアスキルだ。

 

「遠距離射撃? 目標は何なの?」

 

 レアスキルが生み出した、マギのスコープが映し出す世界。

 狭まった視界が見せたのは、ただ一人。

 

「──神琳」

「へっ!?」

 

 

 ──撃ちなさい、雨嘉さん。

 

 ──撃って、貴女が一流のリリィであることを証明なさい。

 

 弱く吹く風に、想いを馳せる。

 神琳の心中は、彼女自身にしか分からない。

 

 

「あぶあぶあぶ危ないよ雨嘉さん!」

「……一柳さんと神琳は私にチャンスをくれたの。ピラトゥスには『頑張れ』って背中を押してもらった。だから私もあなたたちを信じてみる……!」

「え? チャンス……?」

 

 一つ、呼吸を整える。

 心を落ち着かせ、指を引き金にかける。

 不安も迷いも、全て振り切って。

 

 

 放たれた初撃が、空気を裂いて標的(神琳)に迫る。

 

 

 ──着弾。

 弾丸に込められたマギが、青い稲妻と化して周囲に散開する。

 練習用とはいえ、その威力は十分だ。

 ところが、狙われた張本人はなんともない。

 むしろ、ふっと微笑んで余裕すら窺える。

 

 ──雨嘉たちのいる対岸線の距離は約1km。

 そして、アステリオンの弾丸の初速は毎秒1800mだと言われている。

 これを計算すると──時間にして、人間の瞬きと同じくらい。

 

「──狙いが正確なら、躱せます」

「なるほど、正確ね」

 

 だが、言うは易く行うは難し。

 『できる』と断言した上に、実行して見せた姿は。

 やはり、彼女もかなりの実力者だということを物語っている。

 とはいえ、いくら彼女の実力が高いからといって。

 素手で対応できるほど、人間離れしているわけではない。

 当然ながら、先の狙撃を受けて無事なのは対抗手段があったからだ。

 

 ふと、夢結は傍らにて主を待つCHARMが目についた。

 

「いつものCHARMは使わないのね」

 

 いつもの、とは神琳専用のCHARM『媽祖聖札(マソレリック)』のことだ。

 今の神琳が手にしているのは、わざわざ上級生から借りてきた黒いアステリオン。

 色こそ違えど、雨嘉と同じ機体である。

 

「対等の条件にしておきたいので」

 

 神琳は静かに笑っていた。

 

 

 

 2発目──命中、弾かれる。

 

 3発目──命中、弾かれる。

 

 4発目──命中、弾かれる。

 

 5発目──命中、弾丸が砕ける。

 

 6発目──命中、弾丸が木っ端微塵になる。

 

 7発目──命中、弾丸が真っ二つになる。

 

 

 一定の間隔を保って飛来する訓練弾の全てが、正確に神琳を捉えている。

 少しでもタイミングや狙いがズレようものなら、神琳とて無事では済まない。

 しかし、全てが噛み合った状況では、そんな心配も必要ない。

 続く8発目、といったところで異変が起きる。

 

「……っ! 風が……」

 

 今までそよ風程度だったのが、一気に木々を揺らす強風へと変わった。

 長距離射撃において、風の変化は天敵だ。

 重力、距離、角度、弾の速度……様々な要素を考慮し、計算してきた苦労も。

 一瞬の突風という、小さな横槍で致命的に崩れてしまう。

 

(弾が……逸れる……)

 

 幸いにして、マギの銃弾は普通の弾とは違う。

 ある意味、超常の代物といえるマギは、多少は外部からの影響を軽減する。

 だが、それにだって限度が存在する。

 わずかにアステリオンの角度を修正、発射する。

 

 ──8発目も命中、マギがスパークを引き起こす。

 

(また風が……やり過ごす?)

 

 再度吹き付ける風、しかも今までよりも強い。

 ピラトゥスが浸かっている周囲の水が、大きく波を打っている。

 一瞬、雨嘉は風が止むのを待つことを考えたが。

 

 ──『大丈夫』

 

(……ううん、いける!)

 

 すぐにその考えを打ち消す。

 風の流れに合わせて、トリガーを絞る。

 

 ──9発目、マギの火花と稲妻の中で少女が不敵に笑った。

 

 もう一度修正して、最後の1発を撃つ。

 

 同時に、神琳がCHARMを切り替える。

 それは弛まぬ努力が為した、まさに早業。

 待っていたとばかりに、盾型の機体は瞬時にマギを巡らせ。

 

「はっ!!」

 

 魔力の弾丸を、そのまま弾き返した。

 

「……あっ!?」

 

 そのままの軌道、そのままの速度。

 だが、思いも寄らぬ方向転換に雨嘉の表情が強張る。

 

 ──『がんばれ』

 

 それでも、諦めることだけは絶対にしない。

 即座に立ち上がり、CHARMの姿を銃から剣へ。

 そして──

 

 

「くぅっ!?」

 

 変形完了と着弾は、ほぼ同時。

 間一髪、アステリオンは主人に応えたのだ。

 

「っはぁ……はぁっ……!」

 

 張り詰めていたせいで、忘れていた呼吸を思い出し。

 雨嘉の肺が酸素を求めて、激しく息を乱す。

 弾丸を受け止めた部分は赤く熱を帯び、マギの残滓が小さくスパークする。

 

「……10発」

 

 目の前で起きたことを見届けていた梨璃は。

 ただ呆然と呟いて。

 

「あっ!」

 

 再び鳴った着信音で我に返った。

 早く伝えたいと言わんばかりに震える携帯を、元の持ち主に返す。

 

 

『お見事でした、雨嘉さん』

「……神琳」

『貴女が優秀なリリィであることは、これで誰の目にも明らかだわ』

 

 成果は、称賛と是認。

 結果が出せたことに、雨嘉はほっと息をついた。

 

「うぅ〜……やったぁ!」

 

 その知らせを聞いた梨璃は。

 まるで、自分のことのように諸手を挙げて飛び跳ねる。

 遠目に梨璃の反応を見たピラトゥスは、掲げた手で拍手を贈った。

 

「ありがとう、梨璃」

「え?」

 

 唐突な感謝と名前呼びに。

 後者はともかく、前者はされるような心当たりがない梨璃は、ぴたりと固まる。

 

「梨璃がこの子を褒めてくれて……私、あなたのレギオンに入りたいって思えたから……」

「それが、ありがとう?」

「……うん、ありがとう」

 

 本人からすれば、何気ない一言だったのだろう。

 でもそれは、雨嘉にとっては嬉しい言葉だったから。

 

「──すぅ……っ」

 

 その感謝は、まだ伝えるべき相手がいる。

 雨嘉は深く息を吸う。

 方向は、水面の傍観者に。

 

「あなたもっ、ありがとう!」

 

 やはり、最初にお礼だけ言われるとみんなこうなるのか。

 一瞬だけ、ぽかんとしていた小さな竜だったが。

 少女の晴れやかな笑顔を見て、弾むような鳴き声で応えてみせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございました、夢結様」

「いえ。貴女も見事だったわ」

 

 振り向きざまに礼を言う神琳に。

 夢結は心からの称賛で返した。

 

「──わたくし、雨嘉さんが妬ましかったんです」

 

 ふと、空を見上げた神琳が意外な一言をのたまった。

 

「エリートの家に生まれ、才能にも恵まれて……なのに本人は自信を持てなくて悩んでいるなんて」

 

 神琳が背負う過去からすれば、雨嘉は本当に恵まれている。

 「故郷」のことも、実力のことも。

 時に、死にもの狂いで掴み取り。

 時に、それでも掴めなかった彼女にしてみれば。

 それほどの苦労もなく、しかし恵まれた自覚がないその振る舞いは──

 

「何なのよこの子はって、腹も立ちませんか?」

 

 ──出会ったあの日から、密かな苛立ちを抱かせていた。

 

「ずっと……腹を立てていたの?」

「はい。でもこれでスッキリしました」

 

 普段聞いている淑やかな言動や表情が。

 今しがた聞いていた話と、どうにも結びつかないのが。

 なんとなく既視感があって。

 

「……私が言うのもなんだけれど、貴女もなかなか面倒な人ね」

「よく言われます」

 

 神琳はにこやかに、でも清々しい笑顔で。

 指摘を認めたのだった。

 




主「なんか今回出番少なかったけどしぇんゆー回だったからヨシ!」

【キャラ設定】その10

実は前世ではかなりのカナヅチだった。根本的に「泳げない」というよりは、息継ぎが致命的に下手で「呼吸ができなくなる」ということが怖くて仕方なかったため。
今の身体では呼吸とかに気を回す必要がないため、なんとなく水泳技術に磨きがかかっている。
……克服の方法が「呼吸しなければいい」とかいうあまりにも人間やめてるやり方なのはツッコんではいけない。

この後、しぇんゆーはしっかりイノチ感じた模様(過呼吸)
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