転生先が百合キャンセラーのバケモンとかどうにかならなかったんですか!? 作:サク&いずみーる
いや本当「何事!?」ってぐらい突然ブワってなったから一周回って怯えてるまでありますよ……でもありがとうございます……!(というか何故ここまで増えた……?)
──それは、
「ヒュージからもたらされた、マギの知識。それが、ヒュージに対抗する力をヒトに与えた……」
白い空に、青い大地。
天地の色がそのままひっくり返った世界に二人きり。
「リリィも、ヒトがヒュージ化した姿と言われている」
抱きしめてくれているのは、夢結のシュッツエンゲル。
なのに、呼吸が乱れる。
安心するはずの抱擁に、胸の苦しさが増していく。
──ああ、そうだった。
「リリィだけが、マギに操られることなく自分の心を保つという──その一点を除いて」
また、夢を見ているのか。
これは幻想、会えるはずのない幻。
幻に温もりなんて、あるはずがない。
「それだけが、リリィとヒュージを決定的に分け隔てる」
握った黄金の大剣に、この大地のような『青』が伝う。
それは、どこか彼女の涙にも見えて。
「夢結。自分を思い出して……」
──梨璃が辿り着いたのは、古い隠れ家の中。
指輪を重ねるように、夢結の手に触れれば。
薄暗い空間を、マギの淡い光が照らした。
「お姉さま……」
「見ないで梨璃……私を見ないで……」
心配そうな梨璃に、夢結は弱々しい声で拒否をこぼす。
「ルナティックトランサーは、とてもレアスキルなんて呼べるものじゃない……こんなもの、ただの呪いよ」
スキルを発動した瞬間、何もかも憎くなって。
狂気と憎しみに呑み込まれて。
周りにあるものを傷つけずにはいられなくなる。
守りたいものすら、壊してしまう。
「……呪われているのよ、私は……」
顔を覆う手に、力が込もる。
「美鈴様を殺したのは私だわ……! 私が……この手で……あのダインスレイフで……」
「お姉さま、しっかりしてください!」
「嫌よ! 私もヒュージと何も変わらない……!」
「夢結様!」
「いや……来ないで!」
「こっち向いてください!」
駄々っ子のように、今まで抱えていたものを溢すように。
拒絶を繰り返す夢結に、梨璃は何度も訴える。
「美鈴様はヒュージと戦ったんです……お姉さまのせいじゃありません!」
「そんなの梨璃に分かるわけない!」
「分かります! お姉さまがこんなに想っている人を手にかけるはずないじゃないですか!」
確かに梨璃は、美鈴とまともに話したことすらない。
夢結のことすら、全てを知ることはできないだろう。
でも、断言できた。
だって、目の前にいる少女は。
どうしようもなく悲しんでいるから。
「私には貴女を守れない……」
ほら、今だって。
「シュッツエンゲルになる資格もない……!」
大切なものを守るために苦しんでいる。
「一人でいたかったわけじゃない……一人でしかいられなかっただけよ……私には、何の価値もない……」
傷ついてほしくないと泣いている。
だから──
「お姉さまとシュッツエンゲルになれて私、すごく嬉しかったんですよ?」
「分からない……私には分からないわ、貴女の気持ちなんて……私に、愛されるのが、嬉しいなんて……!」
──精一杯の気持ちを込める。
言わなきゃ伝わらない。
言えなかった人の想いも、自分なりに考えて。
「美鈴様だって、きっと私と同じです!」
「貴女に何が分かるのよ!!」
「分からないけど、分かります!」
こつん、と合わせる額と額。
心と心を通わせるように。
「お姉さまがルナティックトランサーを発動したら、また私が止めます」
──それは、誓い。
夢結の肩を掴んで、離さない。
憧れていた「孤高のリリィ」ではなく、不安と恐怖に揺らぐ一人の少女を繋ぎ止めるために。
「何度でも止めます。何をしても止めます」
──それは、覚悟。
梨璃は約束を違えない。
それがリリィのあるべき姿だと思うから。
「例え──刺してでも」
そして、シルトがこんな覚悟を決めた以上。
もう、
「だから」と呟いた梨璃の手を取って。
「ありがとう、梨璃……」
夢結は不器用な微笑みを向けた。
泣きはらしたせいで、
「はい、お姉さま……!」
その成果は、梨璃の笑顔だった。
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ヒィーハァーッ!
風穴がとりあえず塞がった野郎が行きマースッ!!
俺が引きちぎったやつ1本に加えて、残った一柳隊が斬ったのが1本。
敵さんの触手は残り2本でござんす。
「先端部は大松3丁目と6丁目交差点に展開中!」
地理苦手だからそんなこと言われても分からねえ!
片方は神琳さんと鶴紗ちゃんが牽制している。
「あのダインスレイフ、絶対取り戻す!」
「無論です! ヒュージがCHARMを使うなんてっ、あり得ませんわ!」
梅様が一気に加速する。
これが噂の『縮地』か、すげえ……!
じゃ、ちょっち手助けしますかね!
「キュイッ!」
「■■■!?」
楓さんの言う通り、ヒュージにCHARMは扱えない。
でも、ヒュージがヒュージを扱うくらいはできる。
どういうことかっていうと。
「キュッキュイ!」
「助かるゾ!」
引きちぎった触手を鞭とかに見立てて、ガラ空きの触手を絡めとる。
梅様は俺の意図を汲み取って、触手を足場に駆ける。
んぐぬぬ……抵抗するんじゃねえ!
足に力を入れて、爪を地面に食い込ませ。
俺が備える蛇腹の触手や刃物付きの尻尾を。
地面に突き立てて足元を固定。
火力割り増しと防御特化じゃ、力比べに限度がある。
「でりゃ!!」
その間に、梅様はヒュージに取りついたっぽい。
「あっ、くそ!」
次いで取りついたのは鶴紗ちゃんと楓さん。
一人じゃダメでも、みんなでなら。
「お前らっ!?」
「急ぎましてよ」
──誰もが戦っている。
ダインスレイフを取り戻そうとする3人も。
「ふっ!」
「はっ!」
雨嘉さんと神琳さんも。
「わしも目立ちたい!」
ミリアムちゃんも。
「わ、私も行かなくちゃ……!」
初陣の二水ちゃんですら、自分の役目を果たそうとしている。
ここで、俺がへばってるわけにはいかんだろ……ッ!!
「待って!」「待ちなさい!」
「へっ!?」
おおっ! 主役は遅れて登場するってやつですね!
ヒュー、かっけえ!
しかもさらっと手ぇ繋いじゃってまあ……これはもう勝ち確演出ですわ!
「梨璃さん! 夢結様!」
「二水ちゃんはそこにいて!」
飛び上がった2人が二手に分かれる。
ヒュージの胴体目がけてCHARMが火を吹いた。
驚きと苦痛に、耳障りな悲鳴が上がる。
「──抜けた!!」
その声が聞こえたと同時に、抵抗する力が弱まる。
「ッキュキュイ!!」
よっしゃきたァ!
全体重をかけるように、急激にぐりんと一回転。
このくらいの力なら俺のもんじゃい!
「──■■■■■!!」
「キュイ!!」
3本目獲ったりィ!!
よっし、ちょいとねんねしてろッ!
地面を蹴りつけて一気に肉薄。
グン、と切り傷だらけの腕を引き絞って……!
「
さあ、今回は特別意訳でお送りします!
それでは皆さんご唱和くださいッ!!
「──
本家ほどの威力は出ないけど。
それでもヒュージをひっくり返すくらいはできた。
腕1本でその図体が起こせるならやってみろってんだ!
……って、調子こいたこと思ったのがマズかったんだろうな。
迫った横薙ぎの『銀』がその証拠だった。
戦場で慢心ダメ、ゼッタイ(戒め)
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ダインスレイフの奪還を果たした3人が着陸。
次々に一柳隊メンバーも集まって、やがて全員が到着した。
「はー……取り返したゾ」
「っ死守命令、果たしましたわ……」
「だ……大丈夫ですか? 皆さん」
決死の作戦に息を切らす3人。
その隣の廃墟に、勢いよく何かが突っ込んだ。
「わっ!?」
「キューイ……」
崩れた瓦礫から顔を出したのは小さな竜。
腹部をさすっている様子からして。
ヒュージの触手で薙ぎ払われたのだろうか。
「大丈夫ー!?」
「キュイキュイー」
サムズアップで返す余裕くらいはあるらしい。
それに安堵した梨璃は、改めて取り戻したCHARMに目を向ける。
何度見ても、あの満月の日に見た黄金の大剣だ。
「これが……あのヒュージに……」
「これ、やっぱり夢結が使ってたダインスレイフだな。傷に見覚えがある」
使っていた本人も「ええ」と肯定した以上、ほぼ確定だろう。
「■■■■■■■■■!」
──戦場に轟く、ヒュージの咆哮。
触手を3本もぎ取られ、ピラトゥスから渾身のパンチを食らったというのに。
推定とはいえ、ラージ級以上のヒュージというのは伊達ではない。
「あいつ、まだ動いてる……」
「キュイ……」
触手のみならず、CHARMまで奪われたせいか。
心なしか怒り狂っているようにも見えるが。
だが、そもそもCHARMはリリィのものである。
お門違いもいいところだ。
しかしどうするか、と沈黙した時。
「あの……!」
まっさらな水面に石を投げるように、声を上げる者が一人。
一柳隊のリーダー、梨璃だ。
「私たちでやってみませんか?」
「何をです?」
梨璃が提案するのは、結成したばかりのレギオンがやるには無謀な一手。
だが──
「ノインヴェルト戦術です」
開いた手のひらの上には、必殺の弾丸。
──挑戦する価値は十分にある、逆転の一手だ。
メッセージ機能(?)使って直接メッセージくれた人ごめんなさい! あの、作者はちょっとしたトラウマ持ちなもんで、あれ使って返信するのが怖くて仕方ないんです……一応目は通しましたけどお返事返すのは無理です、ごめんなさい……でも感想は返してて楽しいからください……!(わがまま)
【キャラ設定】その15(質問箱から)
『ピラトゥスの前世ってどんな感じやったん?』
20代前半の大卒社会人。年が比較的近い弟と年の離れた妹がいる、一般家庭に生まれた。
学生時代はそこそこオタクしてた。好きな声優のライブに行ったりするくらいには。
割といろいろ器用だし動物にモテていたけど、人間には特別モテるというわけではない。でも、一度だけ恋人がいた。