転生先が百合キャンセラーのバケモンとかどうにかならなかったんですか!? 作:サク&いずみーる
無謀を提案した
「梅様。最初、お願いできますか?」
「私だといきなり失敗しちゃいそうで」とも付け加えて。
なるほど、賢明な判断だ。
ノインヴェルト戦術は絶大な威力を誇る分、失敗が許されない戦法である。
それなら、何度か経験している梅に任せた方が成功率は上がる。
そう考えた結果なのだろう。
「ははは。人使いが荒いゾ、うちのリーダーは」
そうは言うものの、梅は楽しそうに笑った。
日焼けした指で挟む特殊弾越しに、次のターゲットを探して。
「じゃあ、梅の相手は……」
パチリ、と。
エメラルドの瞳が捉えたのは、アクアマリンの瞳。
梅と二水の目線がかち合う。
「え、わ、私ですかー!?」
「ほんじゃあ、ふーみんが撃って?」
ピンっと、高額な代物に対する扱いとは思えない仕草で。
あまりに軽々しく弾かれた弾丸は。
よく回転し、綺麗なフォームを描いたまま。
吸い込まれるように、二水が抱えたグングニルに装填された。
そのスタイリッシュ過ぎるセットに、思わずピラトゥスの拍手が飛ぶ。
「ぎゃあー!?」
「キュイー……!」
「あはは、褒めても何も出ないゾー?」
「感心しないでくださいよぉ! っていうか梅様何するんですか!? 何を撃つんですかまさかヒュージですか!?」
「梅をだよ。ほら撃て!」
あまりに軽く、テンポよく進む事態と。
『先輩を撃て』という要求に二水の混乱は加速する。
「えぇ!? 気は確かですか梅様!? 私、人を撃つなんて訓練したこt」
「はーやーくー!」
「はいぃぃ!!」
哀れ、二川二水。
もはや涙目で「ひぃー!」と情けない声を上げながらも。
しっかりノインヴェルト戦術のスタートを切った。
「マ、マギスフィアが……!」
「感じるぞ! これが二水のマギか!」
CHARM『タンキエム』で受け止めたマギスフィアは、二水の瞳を思わせる水色だった。
その色も梅がマギを注入することで、黄色に変わっていく。
「■■■■■■■■」
「キュッイキュイ!!」
「そっちは頼りにしてるゾ!」
「キュイ!」
マギスフィア持ちの梅を狙った一撃を、ピラトゥスが奪った鎖の触手で弾いた。
呆けてられないとばかりに飛翔。
ノインヴェルト戦術の準備時間を稼ぐ。
「じゃあ次は……」
「え!? 私!?」
「わんわん! CHARM出せ!」
駆けてきた梅のマギスフィアを、CHARMごと受け止める雨嘉。
しかし、いつまで経っても離れない。
同極の磁石を強引に重ねようとした時のように、反発する感覚はあるものの。
一向に梅が離さないのだ。
「梅様、近くありません……!?」
「前に夢結と梨璃がやってたんだ! こうすればパスは外れないだろ!」
まるで、バトンを手渡しするような零距離でのパス。
マギの色が緑に変わる。
「こんなの、教本にない……!」
「おっし! 今度はわしに寄越すのじゃ!」
「そんなにがっつかないで……!」
「ちゃんと狙うんじゃぞ……鶴紗!」
「斬っちゃったらごめん」
「っほらよ、神琳!」
「もっと優しく扱えません!?」
「気をつけて、思った以上に刺激的ですよ!」
「望むところですわ!」
一柳隊が繋いだマギスフィアが移ろい、成長していく。
「■■■■■■■■!」
「キュッキュイ!!」
「■■■■■■!?」
「させないっ!」
本能的に危険を察知してか、ヒュージが残された1本の触手で妨害を試みるが。
小さな竜は、それを許さない。
引きちぎった鎖を手に巻き、触手を殴りつける。
ノインヴェルトの役目を終えた少女たちも、牽制の銃撃を撃ち込む。
触手1本で突破できるほど、この戦士たちは甘くない。
「うふふ……! わたくしの気持ち、受け止めてくださいな梨璃さん!」
「み、みんなのだよね!?」
嬉々として突き出されたマギスフィアを受け取ろうとして。
──バキッ、とグングニルの刃が折れた。
「わたくしの愛が強過ぎましたわ!?」
空高く飛んだマギスフィア。
このままでは、ここまでの努力が水の泡となってしまう。
──だが、彼女がそんな結果には至らせない。
「いいえ、限界よ! 無理もないわ!」
既に梨璃のグングニルは、暴走した夢結と一戦交えているため。
ヒビも入っている上に。
マギスフィアの零距離パスという予想外の方法によって、通常よりも多くのマギが充填されている。
傷ついたCHARMに、過剰なマギ。
『楓がどうこう』というよりは、なるべくしてなった結果だ。
「梨璃、いらっしゃい!」
「お姉さま!」
伸ばされた手に応え、梨璃が跳び立つ。
繋いだ手の反動を利用して、空中で緩やかに回り。
互いの腰に手を回すような体勢になる。
「行くわよ、このまま!」
「はい!」
マギスフィアを挟み込むように。
そっとCHARMを重ね合う。
「大丈夫、できるわ!」
「……はい!!」
その顔に不安はない。
だって、この手を支えてくれるのは──
「「やあああああああああぁぁぁぁっ!!!」」
光が異形の身体を食い破る。
削られていくヒュージから、マギが散っていて。
まだ油断してはいけない、と分かってはいるが。
この戦いもこれで終わるのだろうと思うと、ほっとする。
「梨璃……」
ふと、光の中で優しい声が聞こえた。
隣の夢結は、温かく梨璃を見つめていて。
「──私は貴女を信じるわ」
「お姉さま……?」
梨璃が何か続きを聞く前に。
「何やってますの!?」
「ほら行くぞ!」
「さっさと離れるのじゃ!」
一柳隊のみんなが2人を引っ張って離脱する。
直後、大きな衝撃とエネルギーを伴って。
ヒュージは吹き飛んだ。
──ヒュージ、討伐成功。
一柳隊は初陣に白星を飾ったのだ。
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全てが片づいた。
赤みを帯び始めた空に、タンポポの綿毛のような粒が舞う。
これが、全てマギの粒子。
みんな、空を見つめて草原に寝そべっている。
腕を目一杯伸ばしてるような、お転婆っ娘もいるけど。
大仕事した後だし、それくらい許されるだろ。
さて、と……
「キュ……イ……」
──俺の身体に、何かしらの異変が起きている。
身体の内側が熱い。
頭が痛い。
時々、視界がぼんやりと揺らぐ。
ヒュージが風邪なんて引くはずがないのに、風邪みたいな感覚がする。
『前世』でだって滅多に引かなかったんだけどなあ。
──異変が起こっているのに、思考が軽いのは。
熱に浮かされているのと「これで死ぬことはない」と分かっているから。
前に本気で死にかけた時は、もっと怖かった。
「死」が本気で自分に迫っているのが、よく分かった。
それがないから……まあ、大丈夫かなって。
「キュイ……」
尤も、休まないといけないのは変わらないと思う。
傷はある程度塞がってるし、疲れを感じない身体とはいえ。
人としての心を保つために、休まなきゃ。
「キュ──ッ」
ふらつく、踏ん張る。
落ちそう、持ち堪える。
飲んで酔った時とはわけが違う。
この図体を支えられる子はいない。
自力で、戻らないと。
「キュー……ッ」
「どうしたの?」
「大丈夫か?」
心配の声は、申し訳ないけど無視。
本当にヤバくなってきた。
マギの粒が掠ったところがジンジンする。
遠く感じる、でもあと少し。
……こりゃ着陸はスライディングかもしれないわ。
猫、いないといいな。
何かあったら、おーやさん辺りが百合ヶ丘に助けを求めに行くかな。
ヤバい、本当にマズい。
思考が回らなくなってきた。
──重く響く音。
ああ、やっぱり墜落したか。
でも、しっかり住処には入ってる、俺すげえ。
見回してみる。
……よかった、誰もいない。
──安心したら、急にねむたくな、って……
ぷつり、と意識が途切れた。
オリ主「ノインヴェルトの時の皆さん、言い回しがえっちくない??」
そして皆さん、お待たせしました。ついに次回、皆さんがメンタルブレイクを食らった「あの子」が参戦します……!
【キャラ設定】その16(質問箱から)
『ピラトゥスの大きさはミドル以上ラージ未満だけれど、強さはどれくらい?』
相性にもよる。そもそもオリ主が火力型・攻撃型ではなく、「防御特化の硬さを逆手に取って攻撃している」という特殊なタイプであるため。要するに「死なないけど強くはない」タイプ。
普通のヒュージ相手なら以下の通り。
ミドル以下→単騎無双可能
ラージ→持久戦や撹乱なら単独でもいける
ギガント以上→リリィとの連携で勝算あり(ただしサポートにしか回れない)、単騎なら即逃亡
特型相手なら相性を見極めて、良ければやれるだけやるし、悪ければ逃げる。