転生先が百合キャンセラーのバケモンとかどうにかならなかったんですか!?   作:サク&いずみーる

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そういえば初期の頃、感想を送り続けてくれたことで作者のモチベーションを支えてくれていた人は今どうしているんだろう……と考えてたりする今日この頃。


方向性の違う無自覚3連発

「あれ? えっと……あの教本どこやったっけ?」

「キュイ……」

 

 どこにもない、と探し始める梨璃ちゃん。

 ……俺、知ってるよー。

 今頃、夢結様が寂しそうに読んでると思う。

 

「へっぷし!」

 

 ──今時、なかなか聞かないくしゃみ。

 結梨ちゃん……いや、まだ『ユリちゃん』って呼ぶか。

 とにかくユリちゃんが目を覚ました。

 梨璃ちゃんは、もう「ぱあぁぁ……っ!」って勢いで顔を輝かせて。

 

「具合はどう? 気分は? どこから来たの? 名前は? 年はいくつ?」

 

 これがマジでグイグイ来る。

 なんだろう、新手のナンパかな?

 

「あっ、急にいろいろ言われても困るよね。ごめんね? 私、一柳梨璃!」

「り……り?」

「うん!」

「ふふ……ふふふ……!」

「えっ? なんでそっち向いちゃうの? いいでしょ、笑ってる顔見せてよぉ」

 

 そゆとこ、そゆとこだと思うんだ梨璃ちゃん。

 その距離の詰め方。

 だから『女たらし』とか言われるんだぞ。

 そして、手をどけたユリちゃんがふわっと笑って……

 あ、アカン(確信)

 これは見惚れてまいますわ。

 何この異常な美少女率。

 俺いらないじゃん、ねえこの空間尊いが過ぎない??

 

「えっ? 指輪が……」

 

 さりげなく触れていた手。

 梨璃ちゃんが付けていた指輪が淡い光を放つ。

 

「これ、私のマギじゃない」

「──そう、その子はリリィよ」

「祀様……と百由様」

「ごきげんよう梨璃、それにあなたも」

「キュイー」

 

 現れた2人はにこやかに微笑んでいる。

 ……なんだかなあ。

 こう、祀様のにこやかな笑みは普通に優しそうな感じなんだけど。

 百由様が同じことすると危ない感じがするんだよな。

 マッドだから?

 まあ、百由様はまだマシな方なんだけどね。

 

「ちょうどさっき2人とも結果が出たところでね」

 

 まずはユリちゃんの結果発表から。

 保有マギの値を示すスキラー数値は50だったらしい。

 確か、50以上がリリィになれるかどうかのボーダーラインなんだっけ?

 

「ちょっと心許ないけど、リリィはリリィね」

「スキラー数値50って……私がリリィに受かった時の数値と一緒です!」

「あら奇遇ね」

 

 梨璃ちゃんは、ユリちゃんに目を向ける。

 当の本人は何も分からない様子で、こてんと首を傾げるばかり。

 

「この子が、リリィ?」

「で、次があなたなんだけど……」

「キュイ……?」

 

 え、なんで祀様の方見たんです?

 なんでそんな難しめな顔になるんです?

 

「簡潔に言うとね、保有マギだけなら数値はカンストだったわ」

 

 はいー……?

 

「身体がヒュージになったからかしら、人間ならあり得ない量のマギよ」

「え? ヒュージになったからって、どういうことですか?」

「あ」

 

 梨璃ちゃんの質問に、百由様は『しまった』という表情だった。

 ため息ついた祀様は「まあ、その内話そうとは思っていたからいいわ」と呆れた様子。

 さすがに、ユリちゃんに聞かせるのはアレだからか。

 俺に話していいか許可だけ取って、ちょっと出ていった。

 ユリちゃんは少しむくれてたけど。

 

 ──どうやら、俺のことは『G.E.H.E.N.Aによる強化実験の果てに肉体がヒュージ化したが、何らかの影響を受けて自我を取り戻した(もしくは維持に成功した)人間』だと思われているらしい。

 前に質問してきた祀様が、そういう感じのこと言ってたから。

 そういうことにしておいた。

 そうした理由は2つ。

 

 1つは、そう言い張れるだけの証拠を見せているから。

 感情を持ち、人の言葉を理解できるだけならともかく。

 読み書きもできるほどの知能は、ただのヒュージにはまず得られるもんじゃない。

 既に「それだけの知能があった」と考える方が現実的なはず。

 もう1つは、今後の俺のためだ。

 俺の性格上、いつかポロッと前世の経験を話してしまうかもしれない。

 その時に怪しまれないようにするためだ。

 「これは俺が人間だった時の話なんだけどさ」で乗り切るってわけ。

 

 ……まあ正直、あのマッド集団に問い合わせされたりしたら、一発で分かる話なんだけどね。

 尤も、信頼ないからその真実も信じてもらえるとは思えねえ。

 アイツらなら冤罪の100個や200個被っても問題ないよな!

 ちなみに、自分や身内の名前、実験されてた時の記憶は分からないで押し切った。

 記憶喪失ほど便利な言い訳ってないと思う。

 

「えーと、続けるわね? 保有マギはカンスト、おそらく100は超えてると思っていいわ」

「キュイ……?」

「極端な話、他のリリィと同じようにCHARMを持ったら爆発待ったなし、って言ったら分かりやすいかな?」

「キュイ!?」

「あはっ、伝わったようで何より!」

 

 そんな数値が出たのか……

 くっ、俺のCHARMデビューは遠のいたぜ。

 

「それと一応、レアスキルについても調べてみたの。そしたらあったのよ、レアスキル」

「キュキュイ!?」

「とはいえ、完全に制御できてない感じかな。だから、そのスキルに覚醒する兆しがあるくらいに思っておいて」

 

 頭の中の先頭民族が「ウソでしょ……」って言ってんのが聞こえた。

 いやいや待て待て待ちなさい!

 俺ヒュージだよね、ヒュージなんだよね!?

 中身はともかく身体はさあ!?

 なのにレアスキルってどうなってんの??

 

「レアスキルは『ユーバーザイン』ね」

「……???」

 

 思わず首を傾げたのは仕方ないと思う。

 だってアニメとゲームで聞いたことねえもん。

 そんな俺の仕草に、百由様はしっかり説明してくれた。

 

 ──ユーバーザインというのは、所謂(いわゆる)超感覚と呼ばれるスキル。

 自分の気配を隠したり、飛ばしたりすることができる。

 敵味方関係なく気配を消すことができ、全く相手に気取られずに行動できるのだとか。

 しかも、それだけじゃなくて、気配や存在をものに移せるらしい。

 まさに、敵の陽動・攪乱向きのレアスキル。

 

 ……要するに隠密特化のレアスキル、という風に解釈しておいた。

 なるほど、そういうことだったか。

 今までちょっと謎だったんだよな。

 だって普通、そこそこ大きい図体してた俺がうろついてたら。

 リリィはもちろん、防衛軍とかが気づかないわけないじゃん。

 なのに、普通の人間に見つかって攻撃されたことは、ほとんどない。

 もちろん、偶然リリィに鉢合わせて危ない目に遭ったことはあるけど。

 それだって、『あっちから追ってきた』というよりか。

 『たまたまそこでバッタリ会いました、そしたらヒュージだったんでいっちょ潰す(殺意)』って感じだったし。

 ……っ、ちょっと悪寒が走った。

 少し待って。

 

 ふー……気を取り直して。

 

 完全に制御できてるわけじゃない、っていうのはマジだと思う。

 だって、俺もそんなマジもんステルスが常時発動してた、って自覚がなかったわけだし。

 しかも、直接出くわしたリリィにはバレてたし。

 多分あれだ、レーダーやマギを操れない者には認識できないけど。

 マギが使えて、俺を目視していたら見える……とかだったんじゃね?

 生き残りたいと思ってたら、そんな代物をパッシブスキルにしてたとは……

 いやー、この身体も侮れんわー。

 

「りり!」

「ごめんね、戻ってきたよ!」

 

 話し終えた梨璃ちゃんと祀様が戻ってきた。

 めっちゃユリちゃん嬉しそう。

 んー、かわいい(にっこり)

 ちなみに、百由様は入れ替わるように出ていった。

 ……帰る直前で俺の首元を測ってたのがすごい気になるけど。

 

「……あなたも大変だったんだね」

 

 俺のところに来た梨璃ちゃんは、本当に心配そうな目で。

 真っ直ぐに見ていて。

 

「キュ──」

「もう、大丈夫だからね」

 

 そっと、俺を抱きしめた。

 身体の装甲は邪魔だろうに、それにも構わず。

 優しい声で、呼びかけた。

 

 ……ヤバい。

 なんか、この……なんていうかさ。

 こんなちょっと真面目そうな雰囲気で、こういうこと考えるのは良くないって重々承知してんだけど。

 普段は元気で明るい、年頃の女の子ってイメージの梨璃ちゃんなのに。

 今は、溢れる慈愛と母性がすっごい……!

 開けたらアカンタイプの扉がオープンしようとしてる……!

 鎮まれ遠い過去の、原初(乳児期)の俺。

 今お前が目を覚ましたら一番アホな理由で百合ヶ丘を去ることになるぞ……!!

 

「ああっ!?」

「キュイッ!?」

 

 ちょ、耳元で叫ばんといて……!

 

「いっけない! 明日の実技の練習忘れてた!」

 

 バッと俺から離れて、荷物を手にした梨璃ちゃん。

 でも、その歩みを止めたのが。

 

「ん?」

「……りり?」

 

 ギュッ、と制服を引っ張るユリちゃん。

 

「ない……ない!」

「えっ? あの、大丈夫だよ。また来るから」

「りり、いかない」

 

 その姿は、生まれたての雛鳥が持つ刷り込みのような。

 それか、幼い子どもが出かける親を止めるような。

 本人にもまだ自覚がない、不安の現れにも見えた。

 

「梨璃さんはもう行かなくちゃいけないの。代わりに私で我慢して?」

「ないっ! いーっ!」

「ああっ……ハートブレイク……」

「キュイー……!」

 

 祀様は呆気なくフラれた。

 あの、元気出してくだせえ……!

 

「ありがとう……」

「あの……私、いた方がいいんでしょうか?」

「じゃあ、こうしましょう?」

 

 祀様の提案はこうだ。

 梨璃ちゃんは当面、ユリちゃんのお世話係になる。

 その間の学業やレギオンの諸々は学院側からもフォローする、ということ。

 なるほど……原作通りだな!

 

「そんな、そこまでしてもらわなくても……」

「この子たちのことは、理事長代行直々に任されているのよ。梨璃さんがいてくれれば私も安心だし、レギオンの人たちには私から伝えておくから」

 

 えっ、俺のことまで一緒くたにされてんですか?

 俺そこまで手のかかる存在じゃないんだけどなあ……

 いや、存在自体が爆弾なのか。

 

「あっ、いえ……それは私から言わせてください」

 

 そして、自分のことはしっかり自分で話そうとする梨璃ちゃん。

 こういうところは偉いと思うよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 保護した少女にまた引き止められる、という一悶着はあったが。

 とりあえず、梨璃は控え室に集まっていた一柳隊のメンバーに。

 今までの事情を全て話した。

 

「あの子、リリィだったの?」

「どこの誰か分かったのか?」

「それは……何も思い出せないみたいで」

 

 単純に心配する者、少し考え込む仕草が見える者。

 一柳隊の反応は、少しばらつきがあった。

 

「差し出がましいですが梨璃さん、少々入れ込みすぎではありませんか?」

 

 神琳の指摘は現実的なもので。

 

「あの子にだって、家族や大切な友達がどこかにいるんです! それを思い出せないって……自分の全部がなくなっちゃったのと同じだと思うんです! だから……せめて一緒にいてあげたくて」

「だとしても、それが梨璃さんの役割である必然性のないことは分かってらっしゃいます?」

「それは……そうなのかもしれないけど」

 

 いつもは梨璃の発言に全肯定気味な楓も。

 今回は甘やかすことなく、問いかける。

 

 人の世話をする、ということは曲がりなりにも『人の命を背負う』ということに等しい。

 ましてや、相手は完全な『記憶喪失』──自分で考えて動くことは難しいだろう。

 つまり、戦場で共に戦う仲間たちとは違う。

 当分の間は、梨璃が全てを握っている。

 軽率な判断は、下手をすれば戦い以上に危うさを生む。

 ──故に、一柳隊の司令塔を担う2人は厳しい言葉を向けていた。

 

「貴女は一柳隊のリーダーよ。その穴は、誰にも埋め合わせることはできません」

 

 夢結は一柳隊の副隊長として、梨璃のシュッツエンゲルとして。

 その事実を述べる。

 

「埋められないものは埋まりません」

 

 が、と続いた言葉は。

 

「それでも何とかするしかないでしょう。心配しないで、梨璃」

 

 梨璃の想いが、間違いではないことを示していた。

 そもそも、リリィは助け合いだ。

 1人がダメなら、2人で。

 2人がダメなら、レギオン(9人)で。

 支え合っていけばいい。

 

「は、はい! ありがとうございます、私のわがままで……」

「わがままではないわ。それは思いやりよ。堂々となさい」

 

 夢結の判断を「シルトに甘い」と言う者がいるかもしれない。

 だが、それは違う。

 夢結は梨璃が悩んで、自分で考え、そして導いた答えだと知っている。

 誰かに頼ったものではなく、自分で出したものだと分かっている。

 だから、信じたのだ。

 

「こんな時代だもの。誰だって、身近な誰かが傷ついているわ」

「手の届くところにいるなら、手を伸ばしたいよね」

「そうだ。梅は羨ましいゾ!」

「気持ちは分かる」

「わたくしだって、異存ございませんわ」

「何でも申してみぃ!」

「私もお手伝いします!」

 

 そして、それは一柳隊の総意でもある。

 彼女たちだって「誰かを助けたい」という想いは同じなのだから。

 本当に素敵な仲間に恵まれたんだな、と梨璃の胸が熱くなる。

 

「みんな……ありがとうございます! じゃあ行ってきます!」

 

 かくして、梨璃は憂いなく。

 『少女』のもとへ向かっていった。

 

 わずかな時間、控え室は沈黙に包まれる。

 

「一度言い出したら聞かなくて、それでいて一度に幾つものことをこなせるほど器用ではないのだから」

「本当に。退屈しないお方ですわ」

 

 全く、誰かとそっくりなシルトになったものだ。

 そう思う楓の耳がふと、ある音を捉えた。

 

「ん?」

 

 カタカタ、と鳴るティーカップ。

 中の紅茶は、振動で波紋を生み出している。

 地震だろうかと思ったが、それにしては違和感がある。

 

「……?」

 

 じゃあ何が、と少し行儀悪く下を見ると。

 震源はあっさり見つかった。

 

「……どうかなさいまして? 夢結様」

「何か?」

 

 きょとんとした顔で楓に答えた夢結。

 「姉」らしく、かっこよく送り出したと思ったらこれ(貧乏ゆすり)だ。

 しかも、テーブル上のティーカップに伝わるとか相当である。

 さらには当人、無自覚ときた。

 

「夢結様……そうは言ったものの、どこか落ち着かないのではありません?」

「多少……」

「胸の内がザワザワと?」

「かも、しれないわね」

「ささくれがチクチクと痛むような?」

「何故それを……」

 

 夢結自身も理解していないらしい感情に。

 段々楽しくなってきた楓は。

 

「夢結様。それはヤキモチです!」

 

 ──ビシッと指を突きつけて、断定した。

 

 

「ヤキモチ? 私が、誰に?」

「もちろん梨璃さんの大事なあの子に、ですわ」

 

 さて、ここまでくれば他人の感情に疎い夢結でも。

 目の前の少女が、どういうことを考えているかは分かる。

 

「……楽しそうね楓さん」

「ええそりゃもう。一匹狼として仲間からも恐れられた夢結様が、梨璃ロスで禁断症状とは。ぷぷ〜ですわ!」

「梨璃ロ……!?」

 

 楓の言葉を肯定するように、ローファーの音が大きくなる。

 貧乏ゆすりが激しくなっている証拠だった。

 明らかに動揺している。

 

「こと、このことにかけては、わたくしに一日(いちじつ)の長がございましてよ〜!」

「威張ることか?」

 

 ドーナツを手に取った鶴紗の呟きは尤もだが。

 心底楽しそうな楓と、動揺しまくりの夢結には届かない。

 結局、周囲のメンバーも苦笑いするほかなかった。

 




なお、オリ主の話もしっかりしていた模様。

【キャラ設定】その18

オリ主の前世の記憶は転生の反動なのか、オリ主自身の情報が分からなくなっている。
例えば、家族や友人の顔や名前は思い出せるけれど、自分の顔や名前は元々あったデータが消えてしまったかのように思い出せない。家族の名字も、自分自身の情報になるためか分からなくなっている。
他にも、『自分の誕生日の思い出』は覚えていても『自分の誕生日』は思い出せない……などがある。
どんなアニメが好きだったとか、どういう風に育ってきたかとか、自分の個人情報以外は大抵覚えている。
結局のところ、思い出はちゃんと覚えているため、本人はあまり気にしてない。
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