転生先が百合キャンセラーのバケモンとかどうにかならなかったんですか!?   作:サク&いずみーる

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いや、逃げ出すとは言ったけど1話で逃亡はさすがに早すぎるでしょと思ったので……



イルカって賢くてかわいいよね

 アサルトリリィの世界において、少なくとも鎌倉は廃墟の割合が多かったと思う。

 あと、敵の集め方が鎌倉時代の思考だった気がする。

 とりあえず「人類絶対殺すマン」のヒュージご一行には地球上から退場してもろて……。

 で、唯一の「友好派」である俺は何してるかっていうと。

 

「キュッキュイー……」

 

 呑気に海で泳いでまっす。

 いや、厳密には体を洗ってるっていうか。

 そういう生活習慣を実行することで、人としての心を保っていこう、みたいな?

 ……「海水で体を洗うってちょっと」というツッコミは却下で。

 どうせ体はヒュージなんだから!

 こういうのは気分が大事なんだよ!!

 

「キュイー……」

 

 ちなみに、これが今世の俺の声らしい。

 イルカみてーな声なんだよなあ。

 おかげで現在、本家のイルカが群がっとります。

 うん、そのぐらい沖に来ないとこんな頭まで浸かれんのよ。

 そこそこ図体デカいんだから。

 これが結構不便。

 下手に浅い所にいたら体が隠れないし、リリィの皆さんに見つかるだろ。

 

 さてさて。

 前回逃げおおせてから、特に大きな動きは俺もあっちもしてない。

 強いて言えば、俺が道中エンカしたヒュージを一つ残らず駆逐したくらい。

 「俺の姿を見て生き残ったヒュージはいない……」を地で行く感じ。

 今までヒュージを倒してきて分かったことがある。

 俺の性能はどうやら防御力に振り切れてるっぽい。

 速度はそこそこあって、あとは平均的くらい?

 戦い方としては「火力でゴリ押す」じゃなくて「殴られてるけどとりあえずこっちも殴り続けよ!」ってとこ。

 多分、持久戦の方が得意な気がする。

 要はジェノサイド向きの性能じゃない。

 それができてたのは、まあ……今まで運良くミドル以下しか会わなかったってだけなんで。

 運勢の良さも伊達じゃないんだぜ。

 

「キュイキュイ♪」

「キューイ……」

 

 今後の作戦方針は実に明快。

 「日常パートはすっ込んでる」、これに限る。

 だって考えてもみてほしい。

 もしかしたら、今この瞬間。

 本編では取り上げられてなかっただけで、どこかのカプが「イノチ感じて」たら?

 残念ながら、俺にステルス機能は実装されてない。

 俺にそんな気はなかったとしても、警報に引っかかったらキャンセルしちゃうわけじゃないですか。

 ふっつーに嫌じゃん?

 そんなん当人たちどころか、オタクにも殺されてまうやないの。

 もちろん単純に、死にたくないってのもあるけど。

 俺は空気が読めるヒュージとしてスローライフで生きていくんや!

 

「キュッキュー♪」

「キュイー!!」

 

 さしあたり、まずは集まってきたイルカと戯れよう。

 んで、その後は良さげな拠点見つけて引きこもり生活するのが理想。

 平和にゆ○キャン△ですわな。

 ところでこのイルカの群れ、魚でも捕ってきたら懐きますかね?

 この体ならぶっちゃけ呼吸とかいらんから、イルカよりも潜水できる。

 よっしゃ行くか。

 では、流行語大賞にもなった某朝ドラのOPをBGMに!

 行ってきまーす!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「わー、いい景色……!」

 

 出会いと始まりの季節、それが春。

 そんな春の日差しに照らされた木々が眼下に広がり、鳥の声も相まって爽やかな音色を奏でている。

 森の向こうには、水平線だって見えるくらい澄み渡り、輝く海がキラキラと眩しい。

 なんとも心地良く、平和な光景であることか。

 自他共に認めるリリィオタクの小柄な少女『二川(ふたがわ)二水(ふみ)』がこぼした一言は、全てを物語っていると言っても過言ではない。

 

 この春に出会った梨璃と楓も、隣に腰掛けて同意する。

 それほど素晴らしい光景なのだ。

 そして、彼女たちを温めている足湯もまた、少女たちの心身を癒すという役割に一役買っていた。

 

「足湯なんてあるんだ。でも、いいのかな? 朝からこんな…」

「講義は明日からですから」 

「理事長の方針だそうですわ。学院はヒュージ迎撃の最前線であるのと引き換えに、リリィにとってのアジールでもあるべきだって」

「アジール?」

「聖域のことですわ。何人にも支配されることも脅かされることもない常世…」

 

 『要は大人が小娘に頼っていることへの贖罪ということだろう』と楓は締めくくった。

 仕方がない、ということはリリィなら誰もが理解していることだった。

 ヒュージに対する主な対抗手段はCHARMしかない。

 その頼みの綱たるCHARMも、マギクリスタルの性質上、まともに扱えるのは10代の少女のみ。

 自分たちが向かわばならない戦場に立てないことが、どれほど歯痒かったことか。

 故に「せめて力にならねば」という大人たちの意思が、ガーデンという名の箱庭を生み出した。

 そうして、ガーデンはリリィに安らぎをもたらす純然たる楽園──第二の故郷となり得る場所となった。

 だが、それはそれとして。

 

「ねぇ、ヒュージって人類の敵なんだよね?」

「え? それは当然ですよね?」

「そう、だよね」

 

「じゃあ、昨日のアレはなんだったのかな……?」

 

 「不安というほどでもなく、平穏というには少し引っかかる」くらいの、ほんの小さな違和感。

 それが頭の隅っこに居ついて離れない。

 梨璃の思考はなんとなく絡まったものとなっていた。

 

「昨日のアレ……あ、もしかして昨日乱入してきたっていうヒュージのことですか?」

「……うん」

「ヒュージがリリィを守るなんて、変わったこともありますのね」

「うん……」

「そのヒュージ、確か特型ヒュージとして近々個体名が付けられるそうですよ?」

「へぇ……」

 

 緩やかに加速する思考回路。

 過去の出来事を脳内再生する代わりに、梨璃は生返事を返した。

 その後に続く二人の会話も、もはや上の空だった。

 

 ──とても、人らしいヒュージだったのだ。

 

 突然すっ飛んできたかと思ったら、元々いた方のヒュージを握り拳作ってぶん殴るところとか。

 その後振り向いて、梨璃たちの方を見て胸を撫で下ろすような仕草とか。

 明らかに梨璃たちを狙ったような攻撃を仕掛けられた時、身を挺して庇ったところとか。

 そんなヒュージの攻撃に、怒ったように吠えたこととか。

 

 そして、ヒュージを仕留めた後に武器を向けられて。

 なんとなく悲しげに揺れた、目のような光とか。

 

 「アレ」を単なるヒュージと呼ぶには、あまりにも感情が剥き出しだった。

 飛び去る後ろ姿だって、どこか寂しげに見えた。

 逃げ出したヒュージも難なく倒せるほどの強さで。

 見た目だっておっかないのに、怖いとは不思議と思わない。

 むしろ、その力で人を守ったのだから優しいとすら思った。

 だから、あのヒュージは。

 

「──本当に、ヒュージなのかな?」

「梨璃さん?」

「あ、えっと……ごめんね! それで、なんの話だったっけ?」

「お父様の作るCHARMは世界一という話ですわ!」

「へ、へぇ……」

 

 できれば、遭遇したくない。

 できるなら、共闘することができないだろうか、なんて。

 そう考えたくなるのは、悪いことなのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 銃声が響く。

 一定の間隔を保って、人の少ない訓練場に第2世代CHARM『ブリューナク』が吠えている。

 射手は白井夢結。

 回数を重ねるごとに、的に穴が広がっていく。

 

「──夢結」

 

 それを見守っているのは、同じく2年の『吉村・Thi(てぃ)(まい)』。

 その表情は何かを案じているようなもので。

 でも、自分では変えてやれないのがもどかしくて。

 

「──梅?」

「お、どうしたんだ?」

「いえ、全弾撃ち終わったから一旦引いただけよ」

「そうか!」

 

 夢結の意識がこちらに向いた途端、梅の表情はいつもの快活そうなものになる。

 

「ところで、何故まだここにいるのかしら」

「んー、ちょっと夢結を見てただけだゾ?」

「そんなことしている暇があるなら訓練に励みなさい」

「あはは、考えておくゾ」

「……」

「……」

 

 沈黙。

 誤解なきよう、この二人は仲が悪いわけではない。

 ただ、こういう関係なのだ。

 

「そういえば、昨日変わったヒュージに出くわしたんだってな! どんなヒュージだったんだ?」

 

 梅は途切れた会話を繋ぐための、何気ない話題を持ち出した。

 そんなつもりだった。

 

「そうね……ヒュージを倒し、でもリリィには攻撃しない個体だったわ」

「……え?」

「大きさはラージ級以下、ミドル級以上といったところかしら。それで──」

「──まるで、竜みたいな見た目?」

「ええ……ちょっと待って。何故貴女がそれを?」

 

 簡易的なCHARMの点検をしていた夢結の手が止まる。

 梅はあの場にいなかったはずだ。

 一瞬、「他の誰かに聞いた」という最もそれっぽい可能性もよぎったが。

 目の前の反応は、そんなものとは思えない。

 

 

 

 

「──梅、()()()()()()()()()()()()()

 

 夢結もあまり見たことがない顔をした梅は、ぽろりと衝撃の可能性をこぼしたのだった。

 




【キャラ設定】その2

動物にモッテモテ。転生してからはなんとなく動物と意思疎通できるようになったが、別に転生特典ではない。動物たちも本能で「あ、こいついい奴やんけ」と理解しているため、ついつい寄ってくる。
ヒュージとしての見た目イメージは、FGOのアルビオン+ラスバレの本家特型アンジェラス(形態変化してゴツい腕出てきたりしたアレ)を足して2で割った感じ。
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