転生先が百合キャンセラーのバケモンとかどうにかならなかったんですか!? 作:サク&いずみーる
作者「バッッッカてめ『相手が男の子だと思ってたら実は女の子だったけどそれはそれとして好きな気持ちは変わらなくて困惑する女の子の感情』からしか摂取できん栄養素だってあるんやぞ!?」
友人「でもNLも好きなんだよな?」
作者「普通に好き」
基本的に雑食なオタクはお得なのです。
「じゃあ始めるわよー! あ、それ私が作った処分予定のやつだから、できるなら遠慮なく壊しちゃってー!」
『了解です』
──一柳隊が出撃した後、控え室に祀が来た。
なんでも、アルンに「戦闘データを取るから来てほしい」という百由の召集があったそうだ。
結梨を一人にしていいものか、と迷っていたが。
そのために来たという祀の後押しもあって、役目を交代した。
自己嫌悪でムシャクシャしていたアルンにとっては、ありがたいタイミングである。
そして、指定された場所に来るや否や。
軽い説明……要するに『的をぶっ潰せ』という指令を受けて。
さらに「準備があるから」と待たされ、約20分。
で、今に至る。
待ちくたびれたとばかりに、肩をぐりんぐりん回してやる気は充分である。
上を見上げれば、ドローンがホバリングの真っ最中。
前を見れば、百由の傍らに鉄屑の小山。
……どう考えても嫌な予感しかしなかった。
「──それじゃ、開始っ!」
合図と共に駆け出す。
人外の足が地面を削った。
黒い豪腕はマフラーか何かのように、後ろになびかせる。
手始めに、一番槍のドローンを叩き落とす。
直後、迫る弾幕。
驚いた顔を見せたアルンだが、反応は実に早い。
横にかっ跳んで、犯人を睨む。
『撃ってくるとか聞いてませんよ?』
「そりゃ言ってないもの。訓練弾だから安心して、痛いけど」
『ふざけんじゃねぇです』
声こそフラットなものの。
表情は言葉以上に気持ちを代弁していた。
とはいえ、ギブアップなんて以ての外。
やけくそ気味に、まとめて薙ぎ払った。
しかし、既に大量のドローンが包囲網を固めている。
なるほど、処分予定でもなかなか性能が良いらしい。
『……流石は百由様だ』
早くもアルンを追い詰めてきた機械たち。
だが、囲まれた程度で竜の子は負けない。
一斉射撃が来る。
腕にマギを固めて防御、そのまま突き進む。
1カ所手薄な部分を見つけて。
ドローンが一瞬止まったのを見極める。
『よい、こら、さっと』
殴る、蹴る、砕く、薙ぐ。
CHARMがなくとも、己の身体一つで突破する。
この程度なら、何度も切り抜けてきた。
それどころか、さらに数が多いことだってあった。
ある時はヒュージ相手に、ある時はリリィ相手に。
前者なら容赦なく屠り、後者なら傷つけないように逃げ回り。
仕留めるために、生き延びるために。
その成果もあって、体捌きと見切りは抜きん出ていた。
「半分もやっちゃうなんてねぇ……なら、これはどうかしら?」
ピピッと鳴った不穏極まりない音。
音の主は、あの鉄屑──もとい、歪な形のヒュージだ。
『だから、聞いてないって言ってますよね』
「ついでだから試作品も動かしちゃおうと思って」
『オレへの事前通告は?』
思わず、ドローンの1体を地面に叩きつける。
『前世の記憶』からして、これの改良版が競技会の代物なのだろうか。
「■■■■■!」
機械の異形が突っ込んでくる。
その図体を活かした一撃を、掴んで受け止める。
余波で砂埃が踊った。
『重っ……』
刃物とかそういった小細工はないが。
質量頼りの攻撃は立派な脅威だ。
無防備なリリィ相手なら、それだけで肉片に帰することができる。
尤も、身体の頑強さが取り柄の──防御特化の肉体を持つアルンには。
有効打とは言い切れないのだが。
競り合う、踏ん張る。
力比べに負けそうな足を、前へと進めようとして。
ざり、という音を聞いた。
押し負けて後退している。
『くそ、前なら拮抗くらいできたのにっ』
苦い顔が隠し切れない。
その隙に、ドローンがガラ空きの横っ腹を狙っていて。
『やば──』
咄嗟の判断。
尻尾の先端に付いた刃で切り裂いた。
周囲のドローンも巻き込むように、連鎖的に爆発させる。
辺りは煙に包まれて、状況が不明瞭になる。
「あれ?」
メカヒュージが腕を振るい、晴れた視界を目にして。
百由は困惑した。
竜の少女の姿がどこにもなかったのだ。
ドローンが根こそぎ破壊されているのは分かるが、あの子まで破壊されては困る。
と、冷や汗が出てきたところで。
『どうやら、モノになってきているみたいですね』
声が聞こえた。
ドローンの雲が晴れた空に、竜の翼が広がる。
「ちょ……!? まだ飛べるなんて聞いてないわよ!」
『まぁ言ってませんし』
意趣返しのつもりか、舌を出して目を逸らすアルン。
翼を打ち、一気に急降下。
黒い爪を突き出すように構える。
身体が小さくなって、力は弱まったが。
位置エネルギーと重力はいつだって、小柄な戦士の味方なのだ。
──ズガン、と響く衝撃。
細かな鉄の破片が、雨の如く降り注ぐ。
風穴をこじ開けられた機械の異形と、それを為した異形を纏いし少女の姿があって。
『オレの勝ちです。良いデータは取れましたか?』
振り向いた勝者が、鉄屑の雨の中で笑っていた。
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さーて、鬱憤ばらs……じゃねえや戦闘データのチェックも終わって。
無事に戻ってきた一柳隊、っていうか梨璃ちゃんがしごかれてた。
その後、遅めの昼飯だってんで便乗させてもらった。
食堂の人に味覚云々の事情を話したら、快く辛味系調味料を貸し出していただきまして。
なかなか刺激的だったぜ……!
ていうか、前は辛いもん得意じゃなかったんだけど。
味覚がないからかな?
意外と楽しめてしまった。
今度はもっと強めなやつに挑戦してみようと思う。
なお、ミーさんと結梨ちゃんには距離を置かれた、物理的に。
2人とも甘党だもんね、しょうがないね。
午後はみんな講義、俺はメディカルチェックの結果を聞いたりして。
時間は、思った以上にあっという間だった。
「はぁ……どうしてこんなことになったのかしら?」
『……本当ですね』
「楓とアルン、頭が重いの?」
『まぁ、だってこんなつもりじゃなかったし……』
「予想を超える展開になってしまって、どうしたものやらと……」
揃って頭を抱えたのは俺と楓さん。
今いる場所は、前世ですらお世話になったことのないスイートルームみたいな部屋。
3部屋ほどブチ抜いたという、だだっ広いこの部屋は楓さんの一人部屋だ。
こうなったのには理由がある。
──夕方に、一柳隊でまた集まった時のことだ。
「えっ? 結梨ちゃんたちを寮に?」
「ええ。リハビリが済んだ以上、結梨たちをいつまでも治療室に住まわせておくわけにはいかないでしょう?」
結梨ちゃんは百合ヶ丘の学生として登録された。
だから、しばらくしたらお引っ越しになるんだろうなとは思ってた。
でも、ちょっと待ってほしい。
『え、オレもですか?』
「そういう風に理事長代行から通達があったわ」
『オレ、前の住処に戻ることを前提に考えていたんですが』
「学院内なら自由に動き回ってもいいかもしれないけれど、あそこは違うわ。最低でも、1人はリリィが同伴しないと無理でしょうね」
ぐぬぬ、女の子を地べたで寝かせるなんて真似はできんぜよ……!
そんなことしたら野郎として終わってらァ……
「そっかぁ……結梨ちゃんたちも私たちと一緒に暮らせるんだね!」
「梨璃といっしょに!?」
『でも、部屋割りはどうする気です?』
「こちらで相談して決めてほしいと言われているけれど……一人部屋を割り当てられるわけじゃないから。メンバーのベッドの空き状況で、自ずと決まってくるわね」
確か、梨璃ちゃんのところはルームメイトがいたはず。
閑さん、だったっけ。
「私の部屋、埋まっちゃってます……」
「梨璃といっしょはダメなの……!?」
「結梨ちゃん……あ、でも私のベッドで一緒に寝れば──」
「そういう訳にはいかないでしょう」
それはそれで素敵な光景だとは思うけどね。
俺? そら床でゴロ寝よ。
……いや、そもそも梨璃ちゃんたちの部屋にお邪魔する前提な時点でおかしいわ。
「わたし、梨璃といっしょなら狭くてもいいよ?」
「わたくしも一向に構いませんわ!」
「いや、規則で二人までと決まっておるじゃろう! それに、どちらにしろお主は関係ない!」
楓さんと梨璃ちゃんを同じベッドに入れたら、確実に梨璃ちゃんが危ない。
主に梨璃ちゃんの貞操的な意味で。
「食っちまいますわぁ」ってされちゃう。
基本ゆゆりり派の俺としては、簡単には看過できない問題ですぞ!
「申請してベッドを増やしてもらうわけには……?」
「難しいでしょうね。仮に申請が通ったとしても、諸々増設されるまで治療室に……というわけにはいかないわ」
『ですよねぇ』
「それじゃあ、私のところも難しいですね……」
「わたくしたちも、既に相部屋になっていますし」
「うん……」
しぇんゆーのとこは本当にダメ(鋼の意志)
俺が持たないから。
「生憎じゃが、こっちも同じじゃの」
「みんな、ルームメイトはもう決まってるから」
ミーさんも鶴紗ちゃんも、やんわりとお断り。
せめて、結梨ちゃんの引き取り先だけでもね……
『やっぱりオレ、単独で山に戻って──』
「「ダメ(です)」」
『ぐぬ……』
一柳隊全員に止められた、解せぬ。
「あれ? そういえば、一人部屋に住んでるやつ、誰かいたような……?」
「……あ。そういえば」
「ああ、確か広い部屋を割り当てられていた人が……」
「割り当てられたのではなく、勝手に部屋を広くしたやつじゃな」
「え」
徐々に視線が一人に集中する。
その主というのが──
「……わたくしですの!?」
──という経緯があったわけで。
おかげで落ち着かないったらない。
だって、何も知らない結梨ちゃんはともかく。
庶民派の元一般人がこんなところにいても、なあ?
あー……昼間にストレス発散したのに、別ベクトルのストレスがまた溜まっていく……
いや、楓さんの部屋自体に不満があるわけじゃないんだよ。
ただ……目につくもの全部高そうっていうのがさ?
今の俺、こんな身体してるから傷つけそうで怖いんだって……!
「まさかわたくしの部屋で、結梨さんたちを引き取ることになるなんて……」
『オレは最後まで反対していたんですけれどね』
「梨璃といっしょがよかったなぁ……」
「ええ、わたくしもですわ……」
結梨ちゃんはともかく、楓さんはまず無理だろ……とは言わないでおく。
夢を持つって大事だと思う。
「はぁ……もしもわたくしと梨璃さんが初めから相部屋だったなら、学院での生活がさらに充実したものになってましたのに……」
『楓さん最初に梨璃ちゃん突っぱねてたらしいじゃないですか』
「もちろん、講義やレギオンのミーティングでご一緒できるだけでも……いえ、百合ヶ丘女学院に入った日に、運命的な出会いを果たしたあの瞬間だけで至福の極みというものですが〜」
『ガン無視かよ』
さすが「過去にはとらわれない」というだけある。
耳の都合がよろしいようで。
「楓も梨璃といっしょにいたいんだね」
「もちろんですわ! 叶うのであれば、それこそ揺り籠から墓場まで……!」
『イギリス福祉のスローガンですか』
そもそも
「結梨も……梨璃といっしょにいると、すごく幸せ」
「それはそうでしょうとも。貴女はしばらく梨璃さんが付きっきりで、二人きりの贅沢な時間を過ごしたんですもの。はっ、もしかしてアルンさんも……!?」
『いや、自分のことはできるだけ自分でどうにかしていましたよ。結梨ちゃんと同室ではありましたけれど、検査に駆り出されることも多かったので』
それこそ、検査が多くなって来てからは。
飯か寝るかでしか病室に戻らない日もあったし。
楓さんは「ふぅん」と納得した様子で。
「まぁ、梨璃さんと分け隔てられた我が身の不運を嘆いたところで、どうにもなりませんわ」
あっさり切り替えたらしい。
「……今はまだ。いずれはきっと……!」
でも、どうしてだろう。
背景がメラパチしてはる幻覚が見えそうなんですが?
「──さて。もういい時間ですし、今夜のところはお休みしましょう。結梨さんは、こちらのベッドをお使いになって……」
──ぐぅー……と誰かの腹の虫が訴えている。
俺の身体は、まだ空腹の概念がないから鳴るわけないし。
楓さんだったら面白いけど、そんなキャラじゃないんだよなあ。
と、いうわけで。
「あ……」
「……随分元気にお腹が鳴ってますこと。先ほど皆さんと夕食を食べたばかりですのに」
まあ、消去法を使うまでもないんだけど。
犯人は結梨ちゃんだ。
「もうちょっと何か食べたいなぁ……」
「ダメですわ。寝る前だというのに余分なものを口にしたら、健康に悪いですわよ?」
「うぅ〜……」
「そんな風に悲しそうに訴えかけても、いけないものはいけませんわ」
『なんか、意外かもですね。楓さんが甘やかさないのって』
「ここで甘やかしても結梨さんのためになりませんもの」
夜中のつまみ食いに幸せを感じる人も多いっていうけど。
楓さんは律せるタイプなんだな。
忘れがちだけど、基本は理性的なタイプだもんね楓さん。
……梨璃ちゃんのことは別として。
ちなみに、俺は前世でも夜中につまみ食いするタイプじゃなかった。
なんていうか、食に対するやる気がないっていうか。
あ、また鳴った。
「我慢してお休みしないとダメ……?」
ワァッ……?!
キラキラの美少女オーラが見える……!
ぐあッッッッ……やめなさい!
そうやって雨風に打たれる子犬みたいな眼差しで見るんじゃあないよ!
屈しちゃうでしょーが!
「…………」
ほらこれ絶対楓さん揺らいでるじゃないですか!
「うぅ……」
結梨ちゃんの目が、心なしか潤んでいるように見えた。
……楓さんが時計と扉をチラッと見始めて。
「……アルンさん」
『何です?』
「この子の好みをご存知ありません?」
『マジか』
屈しちゃったかあ……
まあ、とはいえ。
『好き嫌いがあるようには思えませんけれど……あ、前に梨璃ちゃんが持ってきていたアレなら好評でしたね』
「アレ、ですの?」
『はい』
俺も加担する辺り、甘いのかなって。
いや、だってほら。
女の子のうるうるお目々見ちゃったらもう無理だろ(諦観)
「はぁ……仕方ありませんわね、もう」
「え……?」
……そんなわけで。
「わぁ……!」
「ラムネ菓子が売れ残っていて幸いでしたわ。それが最後の一つでしたから、幸運に思いなさい」
こっそり購買まで行ってきた楓さん。
え? 俺が行けばよかったって?
購買の場所知らないし、黙認はするけど共犯にはなりたくなかったし(責任転嫁)
「これ、梨璃が一度持ってきてくれたことあるよ!」
「そう。やはりわたくしの勘を信じて正解でしたわね」
『……』
「アドバイスしたのは俺なんだけど」って言いたい気持ちを抑える。
少なくとも前世では長男だったので。
我慢できますよー。
「前に梨璃がわたしに食べさせてくれたんだ。あ〜んって」
「あ、あ〜んですって!?」
「うん。あ、アルンもしてもらってた」
『ちょっ』
「なんですって!?」
結梨ちゃん!!!!!!!!!
やべーな、めっちゃ睨まれてる……!
『ち、違うんですって。最初は力の加減が上手くできなくて、箸とかフォークとかもまともに持てなかったんですよ。それで梨璃ちゃんがやってくるから……』
なんなら、最初のうちは全力で遠慮した。
でも、すごい分かりやすく落ち込むもんだから負けたよね……
なお、その後に死に物狂いで猛特訓を重ねた。
今ではフォークとかスプーンなら、ある程度使えるようになった。
というかしたんだよ、意地で。
「くっ……! わたくしだって、そんな甘いひと時を過ごしたいと日頃から思っていますのに……!」
ハンカチがあったらすごい食いしばってそうな顔。
俺に悪気も下心も一切なかったことは伝わったからか、それ以上は何もなかった。
「そういった距離感の近さも、梨璃さんの魅力ですものね」って感じで。
で、できたお人で……
「あむっ。ふふふ、おいひい〜」
「……人の気も知らずに、幸せそうな顔をしてくれますこと」
『本当ですね……』
油を注いだ本人は呑気にラムネを食べている。
でも、それを見ていて気が抜けるっていうか。
「結梨さん。そのラムネを食べ終えたら、ちゃんと歯を磨いてベッドに入りなさいな。これ以上のわがままには付き合えませんわよ?」
「うんっ! えへへ」
「もう……」
ため息の割には、全然嫌そうじゃなくて。
やっぱり楓さんって良い人なんだよな、って思う。
面倒見のいいお姉さんと、ちょっとお転婆な妹みたいな光景を傍目に。
俺は持ち込んだ寝具を整えた。
『最近やっと慣れてきたんです』
楓「ところで、何故そんなズタボロのマットや布団を持ち込んで寝てますの?」
オリ主『……朝起きたら、こうなっているんですよ』
楓「あ、身体がその状態ですものね……」
オリ主『しかもこれ5枚目なんです。想像できます? 目ぇ覚ましたら毎回布団とか諸々がえげつない姿に変わり果てていて、それを苦笑いで取り替えてもらう心境が』(遠い目)
楓(じ、地雷を踏み抜きましたわ……!?)
【キャラ設定】その21
今のオリ主のステータスはそれなりに変化している。
身体が小さくなってある意味身軽になったことで、素早さは少し上がった。ただし、今までどうにかなっていた力比べは不利。
マギが圧縮されたような状態なため、人外部分の防御力は比較的上がった。その代わり、人型部分が不安定気味に。
ヒュージ体が防御寄りのパワー型とするなら、半人体は防御寄りのバランス型。でも結局「どっちかっていうと」レベルだから、脳筋ならぬ鉄壁バカなのは変わらない。
前回の話、めっちゃシリアスみたいになってて「すまねぇ……」ってなりました。いや、そんなつもりじゃなかったんですって。