転生先が百合キャンセラーのバケモンとかどうにかならなかったんですか!?   作:サク&いずみーる

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前書きネタが特にないので、いつも感想を送ってくれる方やお気に入り登録、そして高評価をくれる方々に感謝を。
誤字報告も助かっています。でも『先頭民族』は誤字じゃないよ、わざとだよ……


子どもって好奇心に正直だから(震え)

 ミーティングは特に問題なく、あっさり終わった。

 楓さんがぐったりしてたり、急に元気になったり……そういうのはあったけど。

 みんな講義に出たり、それぞれ寄るところがあったりで。

 みんなバラバラに出てった。

 かくいう俺もその一人で、また検査があるわけです。

 ていうか、百由様って単位とかどうなってんだろうね。

 夢結様みたいに、取れる分はもう取ってあるとか?

 うーむ、あの人ならそういうのすっ飛ばして卒業論文さらっと出せそうじゃね?

 

「じゃあ、お願いねー」

「キュイー」

 

 久しぶりに地声を聞いた気がする。

 今の俺は人工声帯とマントをキャストオフした状態だ。

 下手すりゃ壊しかねないから。

 ──中途半端ながらも人っぽい姿を得た俺だけど。

 「これ、前のピラトゥスって呼ばれてた姿に戻れないの?」って百由様は考えたらしい。

 そんな疑問を解決するべく、屋内の広い場所まで来た。

 可逆系TFはロマンだもんな。

 俺もそれができるなら、戦闘で使い分けられて便利だと思う。

 名前に不満はあったけど、見た目は気に入ってたし。

 

 しっかし、どうしたもんかな……

 生まれてこの方、意識してメタモルフォーゼとかしたことないからなあ。

 まあ当たり前だけど。

 

「──ッ」

 

 適当に、ありがちな感じに。

 身体に力を込めてみる。

 ……ぶっちゃけ、元の姿には戻れると思う。

 人型になった時から、ちょっとした窮屈な違和感があったんだよ。

 だからまあ、直感なんだけどね。

 

「────キュ」

 

 ──メキッ、という感覚。

 きた、と思った。

 

「──ッ!」

「あ──」

 

 押し込めていたものが、殻をこじ開けるような感覚。

 元々人間やめてた手足が肥大化する。

 身体が、硬さを増していくのが分かる。

 見ていた世界が、少しずつ高くなる。

 尻尾も長く、太くなる。

 意外なのは、思っていたほど痛くないこと。

 軽い成長痛みたいな痛みはあるけど、全然許容範囲だ。

 

「キュイー!」

 

 翼を軽く広げる。

 いやはや、解き放たれた感がたまりませんなあ。

 

「ホントに戻れちゃったわね」

「キュイ!」

「今度は人型になれる?」

「キュイキュイー」

 

 そりゃできると思いますけどねー。

 また身体に力を込める。

 今度はただ力むんじゃなくて、体全体を縮こませるイメージ。

 押し込んで、抑えて、封じ込む。

 

「キュキューイ!」

 

 「じゃじゃーん!」って言ったつもり。

 思った以上にあっさり人型になったなあ。

 なお、いつものゴツい腕やら尻尾やらは健在。

 それ以上はやっぱり進まないか……

 

「それじゃあ、今日はヒュージの時の身体をメインに調べてみるわ。よろしくね?」

「キューイ!」

 

 はーい、頑張りまーす!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 てな感じで。

 人になったり竜になったりを繰り返して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日の検査は早めに切り上げることができた。

 その割にはいろいろ分かったらしい。

 俺の頭じゃ専門用語だらけで理解なんてできなかったけどな!

 念仏聞いてる馬の気持ちが分かったぜ……

 

『いつものくださいなー』

「はーい」

 

 何はともあれ、昼休み。

 ちょっと顔馴染みになりつつある百合ヶ丘のキッチンスタッフさんに注文。

 いつもの、って言えるようになると嬉しいよね。

 

「あ、そうだ。すごいものあるけど、使ってみない?」

『すごいもの、ですか?』

「調味料の話。ちょっと前に、半分冗談のつもりで仕入れたバカがいてね」

『……ちょっと見せてもらっても?』

「待ってて」

 

 程なくして戻ってきたスタッフのお姉さん。

 その手には、黒いキャップに真っ赤な中身の入れ物。

 ラベルには唐辛子の幽霊みたいなやつが描いてあった。

 ……顔合わせ早々、やべー予感しかしない。

 顔が引きつってるのが自分でも分かる。

 

「はいこれ」

『これ、試した人いるんですか?』

「ええ。酔っ払ったうちの職員が1人と、辛いもの好きっていう生徒が3人」

『……対戦結果は』

「全敗だったよ。うちのバカは失神したらしいし、生徒さんもしばらく痛みが引かなかったって」

『危険物じゃん』

 

 マジかよ……うわ、俺でも知ってるやつ入ってる。

 『キャロライナリーパー』って、世界記録叩き出したやつじゃなかったっけ。

 これは少なくともJKのお口に入れちゃアカンやろ……

 

『使うかどうかは今後考えることにするので、もらっていいですか?』

「むしろそうしてくれると助かるよ。うちじゃ処分に困ってたから」

 

 なんでも、食べ物を無駄にするのは後味が悪いそうで。

 というか食べ物に関わる仕事をしている人間が、食べ物を粗末にするってどうなの、という問題があったと。

 

『じゃあ最初から仕入れない方がよかったのでは?』

「よく言っておきます」

 

 受け取るだけ受け取って、マントの内ポケットに入れといた。

 なお、昼飯に使うのは普通の唐辛子系調味料にした。

 さてさて、どの辺りの席を使おうかねー……うん?

 

「まずは、戦技競技会についての意気込みを聞かせてください!」

「意気込み……と言われても難しいですね。できる限り日頃の成果を発揮できればいいなと……」

 

 二水ちゃんが手帳片手に、知らない子に何か聞いてる。

 リリィ新聞の取材か?

 分からないのは、梨璃ちゃんと楓さん、結梨ちゃんが傍らにいること。

 ……思い切って聞いちゃえ。

 

『何しているか聞いても?』

「あっ、アルンさん!」

「二水のお手伝い!」

 

 楓さんの説明によると、こうだ。

 戦技競技会を盛り上げる一環として、二水ちゃんはリリィ新聞特別号の発行を決意。

 そのメインが、出場する有力者や二水ちゃん個人が気になるリリィへのインタビュー記事だそうで。

 ところが、インタビュー予定のリリィが多すぎて一人でやってちゃ間に合わない。

 そこで、3人にお手伝いを頼んだということらしい。

 まずは、二水ちゃんがお手本を見せる、というのが今現在。

 

『大変だねぇ……』

「ええ、でも二水さん本人がご自分の意思でやっていらっしゃることですから」

『そりゃ良かった』

 

 うむ、好きなことがあるのは良いことだ。

 

「それじゃ、注目しているリリィはいますか? ルームメイトや先輩、他のレギオンの人でも構いませんよ」

「白井夢結様ですね。私の周りでも大勢の子が気にしているので……」

「やっぱり! ですよねぇ!」

 

 夢結様はやっぱり人気あるんやなあ。

 でも、この人も二水ちゃんが注目してるってことは、何か光るものがあったってことだよな。

 やっぱ百合ヶ丘すげー……と思った矢先。

 ある種とんでもない爆弾が放り込まれた。

 

「夢結のこと気になるの? じゃあ梨璃は?」

 

 結梨ちゃんだあ。

 

「結梨さん、突然何を訊いてらっしゃるの?」

『ちょーっと静かにしてようね、この人困っちゃうから』

 

 あれだ、ちっちゃい子の純粋な疑問アタックだ。

 『赤ちゃんってどうやってできるの?』みたいな。

 いや、全然レベルが違うし結梨ちゃんの方がマシなんだけどね?

 

「梨璃……?」

「梨璃は梨璃だよ。ほら」

「ど、どうもー……一柳梨璃です、あはは……」

「あ……そうか、一柳さん」

『あれ? 知っているんです?』

「結構有名ですよ。夢結様のシルトで、同じレギオンに所属しているっていう……」

「夢結のことは気になるのに、梨璃は気にしてないの? 他の人もそうなの?」

『ヘイヘーイ、ストップ結梨ちゃん』

 

 どっちにしろ、この程度の『待て』に従う結梨ちゃんじゃなかった。

 やめたげて! 純粋さは時に人を傷つけるんだぞ!

 

「ゆ、結梨ちゃん、私のことはいいから……」

「この子も一柳隊のメンバーなの?」

「結梨さんのことは気にしないでいただけるかしら? 好奇心旺盛なお年頃なのですわ」

「は、はぁ……」

 

 楓さんも大変だ……と思う間もなく。

 結梨ちゃんは「誰かきた!」と、てってけ走っていった。

 

「今度は、わたしがお話を聞いてくるね!」

『……うん?』

「ちょ、ちょっと結梨さん!?」

 

「ねぇ! 『いんたびゅー』してもいーい?」

 

 アカン(確信)

 これ絶対無自覚で爆弾発言かますゾ。

 

「インタビュー?」

「結梨さん、まず挨拶は『ごきげんよう』と教えたでしょう!?」

「そうだよ結梨ちゃん!」

『違う、そうじゃない』

 

 SNSでよく見かけたコラ画像が脳内でチラついた。

 ちなみに差し替えた元ネタは、ヴァンパイアハンターを演じた俳優さんだったはず。

 ハーフヴァンパイアって、それだけで響きがカッコいいよね。

 俺は武器に心が踊ったぜ。

 ……話がそれた。

 

「貴女たち1年生? 何をしているのかしら?」

「あなたは、夢結のこと気にしてる?」

「ゆ、結梨ちゃん! まずはちゃんと事情を説明しないと──」

 

 ゴーイングマイウェイな今の結梨ちゃんに。

 二水ちゃんのアドバイスが届くはずもなく。

 

「夢結って、白井夢結さんのこと? そりゃ、同じリリィとして気にならない人の方が少ないでしょうけど……」

「夢結と競争したいんだ? じゃあ、『いきごみ』を教えて!」

「夢結さんと競う意気込みですって? 貴女、一体何を……」

 

 うをおおおーい!!

 待て待て待てーっ!!!

 2年生以上は特定の相手にケンカ売ってるみたいになってるんだが!?!?

 

「わっ」

『結梨ちゃんマジで待って?』

 

 慌てて蛇腹の触手で結梨ちゃんを回収。

 この体でも触手が出るのは、今回の検査で把握済み。

 上級生の人は俺の触手に驚いたようで、結梨ちゃんと俺を交互に見ていた。

 

「ごめんなさいっ! 結梨ちゃんはまだ難しいことは分からなくって!」

「これには複雑な……いえ、そうでもない事情があるのですわ」

 

 梨璃ちゃんと楓さんが弁明する。

 上級生さんは、特に楓さんの方を見るなり。

 合点がいったとばかりに頷いて。

 

「貴女たち、白井夢結さんのいる一柳隊ね。戦技競技会を目前にして、わざわざ夢結さんの話題で興味を引いて……一体、どういう了見かしら?」

「ひえぇぇぇっ! ご、ごごごご誤解ですぅっ!」

 

 楓さんが出てきたのが悪手だったらしい。

 火に油を放り込んだように機嫌を損ねてしまった。

 あーもう、無茶苦茶だよ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 閑話休題。

 

 

 

 

 

 

 

「あー、楽しかったぁ。最後はみんなで謝って走って逃げるのが『いんたびゅー』なんだね!」

『絶対違う』

 

 どっちかっていうと、近所の窓ガラスを割った野球小僧の所業なんよ。

 ……あの後、梨璃ちゃんと二水ちゃんは。

 上級生の圧に耐え切れず、結梨ちゃんを連れて逃げ出した。

 そういえば昼飯を食ってなかった俺が、上級生さんに。

 最初の1年生さんには、楓さんが丁重にお詫びした。

 出だしを大いにミスっただけだったから、ちゃんと説明して頭を下げればちゃんと許してもらえた。

 というか、普通に上級生さん良い人だった。

 具体的には、俺のことを何かと気遣ってもらったくらいには。

 なんなら、改めて二水ちゃんが謝りに戻ってきた頃にはちょっと仲良くなりました。

 

「いろいろ大変でしたけど、とりあえず今日のところはありがとうございました」

「そんな。私たち、今日はなんの役にも立ってないのに」

「手伝うって言ってくださっただけで嬉しかったですし、それに……とっても楽しかったですから! ふふふっ、なんだか結梨ちゃんが一緒だと、梨璃さんがもう一人増えたみたいです」

「えぇぇっ!? 私、結梨ちゃんみたいなことしてたの!?」

『あー……うん。割とそうかも』

 

 CHARMと契約もしないで夢結様に付いてったりね。

 普通は上級生から持ちかけるらしいシュッツエンゲルの契りも、梨璃ちゃんからアタックしたりね。

 特型ヒュージで危ないはずの俺を庇ったりね。

 ……今思えばとんだ武勇伝の持ち主だな。

 

「わたし、梨璃に似てる?」

「なんというか……全てが新鮮で、無垢な感じが梨璃さんっぽいというか……」

「確かに梨璃さんの魅力といえば、その純粋さですわね」

『現にそのおかげで、オレも助けられてきたわけですし』

 

 「とはいえ……」と楓さんはため息。

 ぐったりと控え室のソファーにもたれる。

 

「まだ午後の講義も訓練も残っているというのに、どうしてわたくしはこんなに疲れているのかしら……」

『……お疲れ様です』

「次の『いんたびゅー』もがんばるね!」

 

 ……保護者同伴は確定じゃん。

 今日の午後は暇だから、俺も手伝おっかな……

 




インタビューの部分はラスバレでは教室だったみたいですが、うちでは食堂(カフェテリア)になりました。

【キャラ設定】その23

マギ保有量はヒュージ体の時も半人体の時も変わらない。ただ、ヒュージとしては一般的な量である。
18話で『保有マギだけなら数値はカンストだった』と言われていたのは、ガワをマギで作っているから。例えるなら「マギで作った小さいスーツに体を押し込んでいる」状態。なので「保有量を除外したリリィの適性」としてのスキラー数値は割と平凡。
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