転生先が百合キャンセラーのバケモンとかどうにかならなかったんですか!?   作:サク&いずみーる

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こんなにラスバレストーリー引きずるつもりはなかったのに、ずるっずるです。とはいえ、決めちまったものは仕方ないし、つまらなくても大事なシーンなので貫いてやります(断言)


「尻尾を追いかけ回す」ってこういうことじゃないと思う

「──競技会参加者へのインタビュー記事、ですか?」

「神琳と雨嘉にも、お話聞いてもいーい?」

「ふふっ、ご遠慮なくどうぞ」

 

 前回までの反省を活かし。

 身内(レギオン)の2人を尋ねることになった。

 結梨が慣れていない相手に質問すると、トラブルになりかねない……というか、なった。

 故に、ある程度慣れている一柳隊の仲間なら。

 気兼ねなく話も聞けるだろう、ということだった。

 

 ──要は、結梨のインタビューの練習相手だ。

 本来なら、二水が他のリリィに一通り聞き終わった後で。

 最後に一柳隊の記事を作る予定だったそうだが、そうも言っていられないらしい。

 ちなみに、二水は他のリリィにアポを取っているし。

 アルンは検査があるため、方が付き次第合流するとのこと。

 

「そういうことなら、積極的に協力しないと、ですね」

「うん」

「じゃあ、まずは2人の『いきごみ』を教えて!」

「そうですね……参加する以上は相手が誰であろうと、もちろん勝つつもりで臨みます」

「おぉー……!」

 

 流石は神琳、というべきか。

 『ワールドリリィグラフィック』のモデル経験もあるからだろうか。

 慣れた様子でインタビューに答えていた。

 しかも、自信のある強気な発言が彼女らしい。

 

「私は……いくら学院の催し物といっても、ヒュージとの戦い以外でCHARMを振るうのは、あんまり……」

 

 対照的に、雨嘉はあまり乗り気ではないコメント。

 しかし、決してやる気がないわけではない。

 彼女が持つ、優しさ故の考え方だ。

 

「雨嘉はみんなと遊びたくないの?」

「ううん、そういうわけじゃないの。ただ……」

「そんな踏ん切りのつかない雨嘉さんのために、わたくしに考えがあるんです」

「えっ?」

 

 神琳によると。

 百合ヶ丘の戦技競技会は何も、リリィとしての力や技術を競い合うだけではない。

 もっと穏便な、けれども一風変わった種目もあるそうな。

 

「それって一体どんな……!?」

「準備はこちらで進めておきますので。皆さんには当日までのお楽しみ、とさせて頂けませんか?」

 

 神琳はただにっこりと。

 意味深な微笑を浮かべるばかりだ。

 

「それはそうと、競技に使えそうな資料を独自に揃えてみたのですが……雨嘉さん、この本にご興味はおありですか?」

「『世界全史服飾図録』? 随分分厚い本……」

「お洋服がいっぱい」

 

 結梨も一緒になって覗き込む。

 ページ一面に様々な服が載っている。

 エレガントな印象を与えるドレスや、かわいらしい洋服。

 中にはエジプトのミイラ男、といったちょっと場違いな気もする衣装まで。

 とにかくジャンルを問わずに。

 『服飾』の定義に当てはまるものを全て詰め込んだような内容になっている。

 聞けば、古い時代の民族衣装から、各ガーデンの最新の制服事情まで。

 あらゆるデザインが網羅されているという。

 

「結梨、これがいい!」

 

 その中でも結梨が興味を示したのは、セーラー服の丈をうんと短くしたような服。

 プリーツタイプのスカートも短いため、露出はそれなりに多い。

 だがむしろ、かわいらしさの方が目立つ。

 快活な印象を与えてくれる『応援といえば』な衣装。

 つまり──

 

「これは──チア衣装ですね。確かにとてもかわいらしくて、結梨さんにお似合いですよ」

「チア……衣装?」

「頑張る人を応援する時に着るお洋服です」

「ふ〜ん……」

「えっと……これと競技会に、一体何の関係があるの?」

「それは……先程申し上げた通り、当日までのお楽しみです。ふふふっ♪」

 

 聞いても、神琳は意味深に微笑むばかりで。

 しかも、その微笑みが。

 何を考えているか分からなくて少し怖い。

 

「ところで雨嘉さんは、巫女服、猫耳、メイド。どれがお好きですか?」

「な、なんでそんなことを聞くの……?」

 

 ほら、例えば今とか。

 競技会とこの質問の関連性が全く見えてこない。

 

「ねぇ、神琳。その手に持ってる丸いのは何?」

「これは、巻き尺ですよ。結梨さん、少し手伝ってもらっても──」

 

 

 

「──キィーッ!」

 

「っ!?」

「わぁっ!?」

 

 2人の間を何かがすり抜けた。

 明らかに人ではない、小さい何か。

 青白い残像はマギのそれ。

 形状としては、ブレイドモードのCHARMにも通ずるものがあるが。

 動き回るだけならまだしも、普通のCHARMは鳴き声をあげない。

 ということは。

 

「まさか、ヒュージ……!?」

『ちょ、誰かあいつ捕まえてくださーい』

「キキィー!」

 

 遅れて走ってきたのは、検査に出向いていたはずのアルン。

 大きい布を網のように構えているのは、『アレ』を追っているからだろう。

 現に、竜の少女を認識するや否や逃げ出した。

 

『あーくそっ、すばしっこい……』

「何あれ、ヒュージ?」

『……オレの分身、みたいな?』

「え?」

「はい?」

 

 アルンの説明ではこうだ。

 検査の過程で、たまたま尻尾が切れてしまったのだが。

 痛みは特になく「とりあえずちょうどいいからサンプルにしよう」なんて。

 百由が拾い上げようとする直前で、尻尾が勝手に浮上。

 そのまま逃げ出したのだという。

 アルンがベースだからなのか、リリィや設備を破壊する素振りは一切ない。

 とにかく逃げに徹されている状態だ。

 

「あ、だから尻尾がないんだね」

『はいー……』

 

 確かに、いつもはマントの下から生えている刃がない。

 一体どれだけこの追いかけっこを続けているのか。

 アルンの顔には苛立ちが見え隠れしていた。

 

「わたくしたちも手伝います」

『……そう、ですね。すいません、助かります』

「で、わたくしたちはどうすればよろしいのかしら?」

 

 早期解決を選んだアルンは申し出を受け入れた。

 なりふり構っていられないのである。

 

『オレがここまで上手く誘導するので、これでとっ捕まえてください』

 

 バサッ、と持っていた布を梨璃に手渡す。

 

『あと最悪仕留める気でいるので、ダメそうなら殺っちゃってください』

 

 そう言い残して、竜の少女は『尻尾』が逃げた方向へと駆け出した。

 いつも鬱陶しがっていた尻尾がないからか。

 心なしか身軽そうな気もする。

 

「結梨はちょっと下がってて」

「うん」

「雨嘉さん、これ一緒に持ってくれる?」

「分かった」

 

 程なくして、「キィー!」という鳴き声が大きくなる。

 ドタドタと走る音も近づいている。

 

『お願いしますっ』

「「了解です(わ)!」」

 

 手始めに出たのは楓と神琳、司令塔組だ。

 まずは、楓がアルンと挟み撃ちにする形で立ち塞がる。

 ……実質『剣がそのまま向かってくる』という状況に対して。

 両手を広げて構えているだけ、というのはいろいろ不安だが。

 

「キィッ!」

「なぁっ……!?」

『お前ーっ』

 

 急に超低空飛行になった『尻尾』は。

 そのままするりと足の間を抜けた。

 

「なら、次はわたくしが!」

 

 神琳が超低空飛行を続ける『尻尾』を追う。

 マギによる身体強化も施しているのか、微かに体が光を帯びている。

 しかし、『尻尾』は机などの設備品を障害物と為し。

 自身は細身な身体を活かして、ジグザグと逃げていく。

 流石の神琳とて、障害物があっては追いつくことが難しくなる。

 

 ──だが、想定の範囲内だ。

 

「合わせて、梨璃!」

「うん、行くよっ!」

 

 障害物が邪魔なのはあちらも同じ。

 それを逆手に取って、待ち伏せしていた。

 雨嘉と梨璃が覆いかぶさるように、『尻尾』を捕まえる。

 

「キィッ!?」

「やった……!」

「捕まえたよー!」

 

 超低空飛行の『尻尾』は見事に布の中だ。

 バタバタともがくが、リリィ2人がしっかり布を押さえているため逃げられない。

 

 

 

 

 

 

 

 ……()()しっかり押さえていたのだ。

 

「──キ、キィッ!!」

「「あっ!?」」

 

 「逃げ道がないなら作ればいい」とばかりに。

 剣の見た目通りに、布を突き破って出てきた。

 もし、布越しにでも『尻尾』そのものを取り押さえていれば。

 結果は変わっていたかもしれないが、全ては後の祭りだ。

 

『布じゃ無理があったか……』

 

「なら……これは、如何でしょうか?」

「──キィッ!?」

 

 ヒュン、と空気を裂く音。

 振るわれた何かが、『尻尾』の身体──主に、剣なら鍔や柄に該当する部分へと絡みつく。

 神琳が放ったのは巻き尺。

 マギで身体強化しているため、簡単には振り切れない。

 しかも、絡みついた場所が場所なだけに切りにくいときた。

 

「楓さん!」

「ごめんあそばせ、梨璃さん!」

「ふえっ!?」

 

 追い越しざまに、楓が梨璃の制服からリボンを掻っ攫う。

 ふわりとしたリボンが、マギを通したことでピシッと立つ。

 それは梨璃も百合ヶ丘に来た初日に見たもの。

 百合ヶ丘の制服に仕込まれている、ヒュージの体さえ貫く針だ。

 

「乙女の聖域をすり抜けたこと、後悔なさいっ!」

「キ──」

 

 投擲されたリボンの針が、身体を串刺しにする。

 『尻尾』は墜落、ついに沈黙した。

 動きを封じられ、的と化した『尻尾』を仕留めることは。

 楓という少女にとって容易いことだ。

 

「これで解決、ということでよろしいかしら?」

『あ、はい。ご協力ありがとうございました』

 

 あまりにも鮮やかな2人の手際に、アルンは呆けていた。

 二段、三段と構えられた作戦に。

 司令塔の肩書きは、伊達ではないことを見た。

 

「ごめんね、捕まえられなくて……」

「まさか、突き破って出てくるなんて」

『大丈夫、ありがとう。むしろ、そんな装備渡しちゃってごめんね?』

「でも、そのおかげで目眩しになりましたから。良いではありませんか」

 

 神琳のフォローによって、暗くなりつつあった雰囲気がなくなる。

 結局、誰も怪我をしていなかったため。

 結果オーライ、ということになった。

 

『とりあえず、さっきの布は返してもらえる? それにこいつを包んで持ってくからさ』

「うん」

 

 破けた布を受け取り『尻尾』の回収、というところで。

 

『は?』

 

 アルンの声で、視線の先を辿れば。

 『尻尾』は淡い光を放つマギの粒子に変わっていく。

 そのマギも、やがて輪郭すら残さずに散らばる。

 だが、散らばったマギは吸い込まれるように、アルンのマントの中へ潜り込んだ。

 

『──あ』

「どうしたの?」

『なんか、自分のではないマギみたいなものを感じるような……』

 

 混じり物が少しだけ入ってくる感覚。

 だが、いつか一度だけネストに入った時のような不快感はない。

 むしろ、優しくて心地良いものを感じる。

 

「あ、生えた」

『え、ナニが? あ、そっちか。それにしても戻るとはなぁ……まぁ、百由様に相談だな』

 

 ずるん、とマントの下からいつもの刃が出てきた。

 どうやら、無事に尻尾が再生したらしい。

 アルンは頭を深々と下げる。

 

『何はともあれ、ご迷惑おかけしました』

「いえ、お力添えできたようで何よりです」

「尻尾が飛んでくるなんて驚きましたけど」

 

 頭を上げ、ふと結梨と目が合った。

 でも、どこか『心ここにあらず』という風で。

 

「……い」

『結梨ちゃん?』

「すごい……!」

 

 瞳の中で星が輝くように、キラキラしている。

 

「みんなすごかった! わーって追いかけて、シュッて捕まえて……これがリリィなんだね!」

 

 その輝きの名は、憧れ。

 『自分もああなりたい』という、子どもが持つ可能性の種だ。

 その眩しさに、思わずアルンは目を細めた。

 

『そうさ、すごいだろ? これでも、リリィが持つ力の一部だっていうんだから』

「うんっ!」

 

 興奮気味の結梨をどうどう、と宥めつつ。

 『ところで』とアルンは前置きして。

 

『わざわざ梨璃ちゃんのリボン、引っこ抜く必要ありました? 楓さんも同じ制服なんだから、自分のを使えばよかったのでは?』

「そこに梨璃さんがいらっしゃったらそうするでしょう?」

『さも当然みたいに言うな』

 

 ジト目で見ても、当の本人はいっそ堂々としている。

 逃げも隠れもしないのは、彼女の良いところだとは思うが。

 それにしても、もう少し後ろめたさを感じてほしい。

 被害者の梨璃に至っては苦笑いである。

 

「では結梨さん、改めて手伝ってもらってもいいですか?」

「うん、なんだか分からないけど。結梨、手伝うよ!」

「ありがとうございます」

 

 お礼を口にした神琳は、2人の方を向いて。

 

「梨璃さん、楓さんは雨嘉さんを押さえておいてもらえますか?」

 

 そんな指示を告げた。

 『インタビューに協力する代わり』とつけ加えれば。

 2人が協力しないわけがなく。

 

「これでよろしいかしら?」

「か、楓まで腕を……?」

「ごめんなさい、雨嘉さん。結梨ちゃんの初めてのインタビュー記事完成のために、少しだけ力を貸してください!」

「梨璃……!? そんなことしなくても、私はちゃんと答えるから……」

 

 あっという間に雨嘉は身動きが制限された。

 もちろん、リリィとしての本気を出して抵抗すれば振り切れるが。

 彼女の性格からして、そこまではしない。

 つまり、雨嘉にとっては『詰み』なのである。

 

「結梨は? 結梨は何すればいい? 結梨も雨嘉に抱きつけばいい?」

「結梨さんは、わたくしと一緒に雨嘉さんの身体のサイズを測りましょう」

 

 見せびらかしたのは、さっき『尻尾』の捕縛に用いた巻き尺。

 元々の用途はあくまで「身体の測定」だ。

 あんなアグレッシブな使い方は本来想定されていない、ということも念のため説明する。

 

「じゃあ、これを巻きつければいいの?」

「ええ、その通りです」

「ま、巻きつけないで……!」

 

 子どもというのは、面白そうならとりあえず手を出してみる。

 結梨もその例に漏れず、雨嘉の言葉が届いていない。

 「ぐる〜……ぐる〜……」と口にして、楽しそうに巻き尺を巻きつけていく。

 ……が。

 

「あれ? あれれっ……?」

「結梨ちゃん!?」

「わわわっ……っと!」

 

 ……一体何をどうやったのか。

 雨嘉に巻きつけていたはずの巻き尺は、結梨へと牙を剥いていた。

 おかげで今の結梨は、さっきの『尻尾』のよう。

 それか、少し前に見た本の中のミイラか何かだ。

 そんな格好で、勢い余って倒れ込む。

 

「あら……」

「ああもう! 結梨さんといると退屈しませんわね!」

「梨璃ぃ〜……起こして?」

 

 現状を引き起こした結梨は、なんかもう楽しそうにふにゃっと笑っている。

 周囲はそこそこ混乱中だというのに。

 

「結梨ちゃん、今助けるからね!」

「わ、私も手伝う……!」

「どうやったらそんな器用に自分をぐるぐる巻きにできるのか、不思議でなりませんわ……」

 

 呆れつつも、絡まった巻き尺をみんなで解いていく。

 なお、アルンは一人合掌していた。

 

「……何してるの?」

『やんごとない空間に想いを馳せているところです……はぁ』

 




UA4万を達成したので、続報です。5万行ったらコラボ予定の作家さんに許可だけもらってきます!

【キャラ設定】その24

半人体になってから、尻尾や触手を切り離すことで自律行動する従順なオリ主専用ヒュージ(名称はサーバント)を生み出す能力を獲得していたことが発覚。専用ヒュージは『何があっても絶対に人やリリィを傷つけない』というプログラムを心臓としており、それが崩された場合には即座に自害するようになっている。
(気持ち)攻撃重視の『グラディウス』、速度重視の『エール』の2種が主力となる。
ちなみに各種命名は後にオリ主がやった。
(今回あまり従順な個体じゃなかったのは、オリ主が完全に無意識だったし初めてやったから)
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