転生先が百合キャンセラーのバケモンとかどうにかならなかったんですか!?   作:サク&いずみーる

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更新ペースの低下を感じる……
それはそれとして、いよいよ聖恋ちゃん実装ですね……! 貯めてきた3万もの石を全解放の時じゃ待ってろい!!!


ドキッ、リリィだらけの大運動会!

 みんなに見守られながら、机の上に置かれたCHARMが起動する。

 コアの部分にはルーン文字が浮かび上がる。

 これで、結梨ちゃんは正式にCHARMと契約成立ってわけよ。

 

「おぉー……」

 

 原作通り、結梨ちゃんの相棒はグングニルだった。

 グングニルといえば、北欧神話の最高神 オーディンが使った武器だろう。

 『決して的を外さない』『敵を貫いた後、持ち主の手に戻ってくる』という伝承を持ち。

 オーディンの手で指し示せば『絶対なる勝利』を確約するとも言われる、まさに必勝の槍。

 

 

 

 

 ……なんだけども。

 俺的にはグングニルっつーか、『ガングニール』なんだよなあ。

 あーいかん、心の『司令』が叫び出しそうになっとる……!

 というか、この世界にOTONAが来たらもう最強なんじゃね?

 あの人が元の世界で無双できなかったのは、敵が『触れたらほぼ即死』とかいう人間特効だからであって。

 アサルトリリィでの敵は、触るだけなら普通は問題ないはず。

 ……転生させる人材、間違えたんじゃね?

 今からでも司令を異世界召喚しようぜ??

 あの人OTONAだし人格者だから、確実にリリィ側に来てくれるよ俺には分かるぞ!!

 

「ふん。北欧の田舎メーカーじゃなくグランギニョルでしたら、社割でワンランク上のが手に入りますのに」

「このグングニルは中古じゃが、わしら工廠科が丹精込めて全ての部品を一から組み直しておる。新品よか扱いやすいぞい」

 

 「あらそ」と輪の外でお茶を飲む楓さんは投げやりな返事。

 それに対して、ミーさんはちょっとムッとした顔だ。

 方や大手CHARMメーカーのご令嬢、方や優秀なアーセナル。

 どっちもプライドってもんがあるからなあ。

 ……それはそれとして。

 

『いいなぁ……やっぱりオレもCHARM欲しかったなぁ……』

「まぁまぁ。アルンさんはその人工声帯を改良してもらったんですよね? それはそれでよかったじゃないですか」

『そうだけどー……!』

 

 ──昨日の呼び出しの内容は、要するに人工声帯のバージョンアップ。

 今まで無感情だった声に、より人間らしい感情が入った。

 具体的かつメタ的に言うなら、台詞に感嘆符が入るようになった感じ。

 あと、喜怒哀楽も入るようになったし、声の強弱もつくようになったんやで。

 百由様ってやっぱすごいんやなって……

 

「よかったね。今まで声と表情がちぐはぐなのが、その……不気味だなって思ってたから」

『……割と容赦ないところあるよね、雨嘉さん』

「あ、そういうことじゃなくて……! えっと……!」

『雨嘉さんがしっかり意見を言えるようになってて嬉しい限りです……』

 

 胸の辺りを押さえて、被弾したオタクの構え。

 いや、自覚はあったからいいんだけどさ。

 そうやって、茶番にあわあわする雨嘉さんはかわいいなあってしてたら。

 

「ねぇ梨璃。リリィって、なんで戦うの?」

 

 前に聞かれたのと同じような質問を、結梨ちゃんがポロッと零した。

 

『それは前にオレが──』

「うん、でもわたしは梨璃たちからも聞きたいんだ」

 

 純粋で、でも強い意志を感じる目を向けられてしまえば。

 俺は何も言えなくなってしまう。

 でも、結梨ちゃんの考えは正しいものだ。

 前に答えたのは、あくまで俺という個人の意見でしかない。

 より多くの話を聞いて、自分の考えを固めていくのは大事なことだ。

 

「え……? えと……それは、ヒュージからみんなを守るため……」

「誰だって、怯えながら暮らしたくない。それだけよ」

 

 言い淀む梨璃ちゃんに対して、夢結様は淡々と答えた。

 伏せ目がちに答えたのは、何か過去の出来事を思い出しているからだろうか。

 ふと、結梨ちゃんが近づいてきて「くんくん……」と匂いを嗅ぎ始めた。

 

「……夢結、悲しそう」

「そう? 表情が読めないとよく言われるけど」

「なんだ、匂いで分かるのか?」

 

 夢結様の次は雨嘉さん、その次は梅様……という感じに。

 結梨ちゃんは一柳隊みんなの匂いを嗅いでいく。

 犬でも匂いから感情の判別は難しかろうよ。

 その特技は某長男の方では?

 ギャング……は味覚か。

 しかもあいつ嘘か本当かしか判断できなかったわ。

 ちなみに、しっかり俺も嗅がれた。

 だ、大丈夫かな?

 一応、体拭いたりしてもらってるんだけど。

 変な匂いとかしてなかったかな……!?

 

 なんて、一人でアホみたいな心配をしている隙に。

 結梨ちゃんは夢結様と梨璃ちゃんの間に、ぽすっと収まって。

 

「みんなも、悲しい匂いがする……」

 

 そう、不思議そうに告げた。

 

「誰だって、何かを背負って戦っているわ。そういうものかもね」

 

 神琳さんの言葉に、なんとなく重みを感じたのは。

 彼女が、故郷奪還に人一倍の想いを抱いているからなのか。

 それとも俺が知らないだけで、もっと背負っているものがあるからなのか。

 今の俺には分からないことだった。

 

「アルンは怒ってる匂いもした」

『まぁ、ね。ヒュージがいれば、リリィも傷つけられるわけだから。いい気はしないでしょ』

 

 ……それなりに隠してるつもりだったんだけどなあ。

 というか、悲しい匂いとか怒ってる匂いってどんな匂いなんだろうね?

 最後に、梨璃ちゃんに寄ってって匂いをすんすん。

 

「梨璃はあんまり匂わないのに」

「お気楽なのかな、私。はは……」

「いーんですのよ、梨璃さんはいつまでもそのままで。純真無垢さが、梨璃さんの取り柄ですもの〜!」

 

 今回は密かに楓さんに同意。

 こんな暗い感情、欲するもんでもないよ。

 持たなくて済むなら、それに越したことはない。

 

「ないものねだり……」

「じゃなじゃな♪」

 

 結梨ちゃんは再び夢結様をすんすん。

 

「あ、でも今の夢結は梨璃がいるから喜んでる。梨璃がいないと、いつも寂しがってるのに」

「そ……そうかしら?」

「夢結様が動揺してます……!」

「匂いはごまかせんようじゃの」

 

 そうですよ夢結様。

 結梨ちゃんの前で気持ちの隠しごとは無意味ですよ。

 なのでほら、素直にもっと梨璃ちゃんと絡んでください?(強欲)

 

「分かった! 結梨もヒュージと戦うよ!」

 

 その言葉に、誰よりも反応したのが梨璃ちゃんだった。

 

「無理しなくてもいいんだよ? まだ記憶も戻ってないんだし……」

「うん、ちっともわかんない。だから、たくさん知りたいんだ!」

 

 「好奇心は猫を殺す」なんて言葉があるけど。

 今にして思えば、この好奇心があんな結末を招いてしまったのか。

 そう思わずにはいられなかった。

 

「結梨ちゃん……」

「あははは、そんなこと言われたら断れないな」

「──これで、梨璃と同じになれる?」

『え、結梨ちゃん?』

 

 それってどういうこと、と聞き出す前に。

 パンっ、と神琳さんが手を叩く音。

 

「さて、結梨さんのこともひと段落したところで、次は雨嘉さんね」

「ふえっ?」

「これとこれ、この日のために用意したの」

 

 神琳さんが持っていたのは、ミニスカタイプの巫女服とちょっとフリフリなエプロンみたいなやつ。

 現時点であざとさマシマシな衣装だ。

 ……余談だけど、当時の実況で『夜のプレイの相談かと思った』って言ってたやつがいたらしい。

 それ聞いた時は思わず飲み物吹き出したよね。

 

「こーんなのもあるぞい?」

「はぁぅ〜……猫耳は外せない!」

 

 ミーさんも鶴紗ちゃんも、それぞれ衣装を持ち込んできた。

 隅っこに追い詰められた雨嘉さんに、もはや逃げ場なし。

 「ひげは……やめて……」と、せめてもの抵抗で精一杯。

 3人がかりで囲まれて、あれよあれよと身ぐるみを剥がされていく。

 

「神琳さんたち何してるのかな?」

「雨嘉さんをコスプレ部門に出場させるって」

「雨嘉さんを? ちょっと地味じゃありません?」

『楓さんそれはちょーっと聞き捨てならないですよー?』

 

 地味って。

 よりにもよって雨嘉さんを地味て。

 あのコスプレをキメた雨嘉さんの破壊力はすごいんだからなー!?

 

 ……ちょくちょく聞こえる「ひゃぁっ!?」とかいう声は無視の方向で。

 ちょっとえちえちなのよ。

 

「まだ何にも染まっていないのがいいそうです」

「そういうものですか」

「お前ホントに梨璃にしか興味ないんだな」

「そらそうですわ〜!」

 

 ブレない楓さんに、梅様ともどもジト目を送る。

 今に見てろよー……

 

「はっ!?」

 

 楓さんの反応に「そら見ろ」と思って雨嘉さんの方を見て。

 

『ぷあっ』

「アルンさんっ!?」

 

 ──尊さで目が灼けるかと思った。

 

 真っ白な巫女服に、メイドさんが着けるようなホワイトブリム。

 ミスマッチかと思ったら、これが存外イケる組み合わせだ。

 和洋折衷とは、こういうものを指すのだろう。

 どういう原理か、ぴこぴこ動く白の猫耳と三毛の尻尾も愛らしさに一役買っている。

 しかもあざと過ぎない程度にかわいいんだ。

 リボンやチョーカーなどの小物は、巫女服に合わせて赤色。

 編み込まれた赤い靴なんて、格好も相まって魔法少女みたいな印象を受ける。

 少し大きめに開いた胸元や、ニーソとスカートが生み出す『絶対領域』は。

 見る者の視線を惹きつけるに違いない。

 属性盛りすぎて渋滞を引き起こすかと思っていたけど。

 実際には、想像以上にまとまっているというか。

 白と赤を主体にした衣装に、雨嘉さんの黒髪と翡翠の瞳はよく映えた。

 

 

 

 

 ……いや、オタクが慣れない語彙を並べるもんじゃねえや。

 早い話、アニメで見ていたのと生で見るのは全然違った。

 ほら、よくライブや舞台を「映像より生で見ろ」っていうけど。

 あの心境に近いわ。

 破壊力と感動が直に伝わってくる……!

 

「やりましたわ」

「やりきったのう〜!」

「かわいい……!」

「おー! わんわんかわいいな!」

 

 これは、やったよ。

 やってくれたな一柳隊よォ……!(歓喜)

 着せ替え人形にされた本人は「えっ……」と困惑気味だけど。

 他の一柳隊メンバーからは大変好評だった。

 

「ちょっ、アルンさんが泡吹いてますわよ!?」

「あらあら」

「結梨、知ってる! こういう時は『えーせーへい』って叫ぶんだよね!」

「ちょっと違うと思いますけどね……」

「ははは! やっぱりアルンは面白いな!」

 

 あーもう、滅茶苦茶だよ……

 ……俺のせいなんだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「さーて……本日の『客人』は?」

「15名が敷地内に侵入しています。また、ドローンが3機ほど」

 

 ──戦技競技会が、ついに開催された。

 しかし、生徒会長を担う史房の報告通り『招かれざる客』の姿も見られる。

 連中の存在はまさに『百合の楽園を踏み荒らさんとする邪魔者』と言えよう。

 

「素性は?」

「偽装していますが、大半は国内外の政府系組織です」

 

 中にはCHARMメーカー、反政府組織や自然保護団体と思われる者の存在も確認されているという。

 まだ分析の段階でしかないが。

 彼らの対象は一貫して『一柳結梨』にあることで間違いないようだ。

 

「アルン君に関心を持つ者は?」

「問題ないかと。存在にすら気がついていないと思われます」

『ユーバーザインとマントさまさまですねー』

 

 理事長代行と生徒会三役と共に、テントの影の中で。

 竜の少女──アルンが呟く。

 その表情は苛立ち、尾にすら不機嫌が伝達している。

 

 競技会の見学こそ許されたものの。

 素性が素性故に、見学できる場所も制限されているのだ。

 こうして見られるだけでも、ありがたいことだと分かってはいるが。

 やはり、気に食わないものは気に食わないものである。

 

『連中、ちょっと「めっ」ってしてきたらダメですか?』

「やめておきなさい。急に通信が途絶えたりしたら、逆に怪しまれるわ」

「というか、お前が手を出すと私たちが動いた時以上に問題になる」

『ダメかぁ』

「そもそも、やろうとしてることが絶対に物騒なことじゃない。却下よ」

『むえー』

 

 アルンの言う「めっ」──親指に該当するであろう爪で首元を掻っ切るジェスチャーに、全会一致で否決が下る。

 

「こちらは何を探ります?」

「情報のルートを徹底的に。通信の量とその行き先じゃ」

「挑発行為があった場合は?」

「出歯亀が分を超えた場合の対処は、諸君らに頼む」

「はい。結梨さんには指一本触れさせません」

『出歯亀って、今日日聞かないですよ……』

 

 人工声帯のバージョンアップで感情が乗るようになったことによって。

 不貞腐れた声でぼやくアルンに、何か思うものがあったのか。

 咬月は顎をさすりながら、少し考えて。

 

「──ドローンなどの無機物による挑発は、アルン君に任せるとしよう」

『えっ、いいんですか?』

「君はリリィを守りたいのだろう?」

 

 眼鏡の奥の、一見冷たそうな咬月の瞳に。

 気遣ってくれているような優しい光が見えた気がして。

 

『ありがとう、ございます……!』

 

 竜の少女は深く頭を下げたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 競技会はクラス対抗戦から幕を開ける。

 梨璃たちの所属する1年椿組は、2人一組で技を競うことになっている。

 ペア作りに少女たちが動き回る中、楓は怪しい笑みを浮かべていた。

 

「お邪魔虫の入らないここならば、無防備な梨璃さんはわたくしの思うがままですわ〜!」

 

 しかし、嬉々として振り返り、握ったのは。

 梨璃ではなく、きょとんとした結梨の手だった。

 

「ん? 何故結梨さんがここに?」

「わたしも椿組だから」

「何ですって!?」

「編入されてもう1週間は経ってるよ」

「お邪魔虫2号〜……」

 

 なんなら、同じ部屋で今まで生活していたというのに、この仕打ちである。

 

「先生の話を聞いていないのですか?」

「生憎都合の悪いことは記憶に残さない性格(タチ)なので」

「ポンコツか」

 

 楓の言い分はいっそ清々しい。

 結局、梨璃は結梨と組むことになったため。

 楓の企みは砕け散った次第である。

 

「昨日練習した通り、いい?」

「うん!」

 

 標的は、上空に設置された百合ヶ丘のエンブレムが入った的。

 あれを誰よりも早く取ってくればいい。

 しかし当然ながら、ただのジャンプ程度では届かない位置にある。

 

 梨璃がCHARMで地面に円を描く。

 できあがった光の陣に、結梨が飛び乗ると。

 マギが渦巻き、結梨の体を天へと打ち上げた。

 リリィが空中戦に持ち込む際、マギで足場を作る技術がある。

 それを応用したのが、マギによる跳躍だ。

 

 もうすぐで的に手が届く。

 ついに結梨が手を伸ばし、掴むというところで。

 

「あーっ!」

「いただきっ!」

 

 コンマ数秒の差で、先に的を掴んだ少女の影が空を舞う。

 軽やかに着地した紫髪の少女──レギオン『ローエングリン』が一人『妹島(せじま)広夢(ひろむ)』は。

 取った的を指一本でスピンさせて、どこか挑戦的に笑っていた。

 

「初めまして! 初心者にしてはセンスいいのね」

「うー……!」

 

 結梨は幼い子どものように頬を膨らませる。

 しかし、広夢は決して馬鹿にしているわけではなかった。

 最近リリィになったばかりだと聞いていたのに、あれほどマギをしっかり扱えているというのは。

 紛れもない才能(センス)の一片といえる。

 加えて、ふらついたり軌道が逸れたりすることもほとんどない体幹の良さ。

 それらを正当に評価した上で、そう言ったのだ。

 

「やったね結梨ちゃーん!」

「できなかったぁー!」

「そんなことないよ、すごいすごい!」

 

 尤も、今の結梨がそこまで見透かすことはできなかったが。

 梨璃が抱きついてベタ褒めするが、やっぱり結梨は不満そうで。

 なんだか『負けず嫌いの娘と、娘の頑張る姿が嬉しい母親』のそれに見えなくもない。

 少なくとも、楓が「きぃーっですわ!!」とハンカチを噛むには十分な光景だろう。

 そんな2人を中心とした1年生たちを見守るのは、待機中の2年生たち。

 

「あははは、なんだかあの2人シュッツエンゲルみたいだ」

 

 楽しそうに笑う梅の言葉は、夢結の顔に優しい微笑みをもたらした。

 普段のクールな表情とは全く違った、慈しむような顔つき。

 下級生たちが気づくことは、ほとんどなかったが。

 その変化に気がついた同級生たちもまた、温かく見守っていたそうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 その後も順調に競技は進んでいった。

 エキシビションでは、2つのCHARMを同時に扱うレアスキル『円環の御手』を駆使して『六角(ろっかく)汐里(しおり)』が。

 精神連結式起動実証機『ヴァンピール』をお披露目する2年生『長谷部(はせべ)冬佳(とうか)』が。

 炎を撒き散らす、格闘特化のガントレット型『ヤールングレイプル』を纏う1年生『ルイセ・インゲルス』が。

 それぞれ見事なCHARM捌きを披露し、大いに盛況を呈した。

 

 インターバルを挟んだ午後一番の競技は、混成レギオンによる的棒倒しである。

 ルールは至極単純、的か棒を仕留めれば勝ちだ。

 

「よし、がんばるぞ!」

「あ、私たちは見学ね」

 

 息巻き、はりきる結梨を留めたのは梨璃。

 そもそも、この競技は各レギオンから選抜されたメンバーで行うもの。

 声のかかっていない結梨はお呼びでないのだった。

 

「結梨、梅と代わるか? 習うより慣れろっていうだろ?」

 

 だが、不完全燃焼な結梨に梅が話を持ちかけにきた。

 

「そんなダメですよ! 結梨ちゃんはまだCHARMにも慣れてないですし、怪我したらどうするんですか!」

 

 梨璃の発言はまるで過保護な母親だ。

 心配なのは、梅とて重々承知しているし。

 なんならアルンの件もあるから、共感がないわけでもない。

 だが、やっぱり大袈裟な気がして。

 「へいへい」と半ば呆れた返事を残していった。

 止められた結梨は、やっぱり納得いかないとばかりにむくれていた。

 

 

 

 

 

 

 選ばれ、集った25人の戦乙女たち。

 学年もレギオンも違えど、その誰もが実力派のリリィである。

 余談だがアルンは『前世』で、登場人物の多さに困惑した。

 しかも、一部リリィの名前が読めなくて一時停止と巻き戻しを繰り返していたそう。

 

 ふと、ミリアムが参加者の中に知り合い──アールヴヘイム所属の1年生『田中(いち)』の姿を見つける。

 

「む……壱も出んのか」

 

 普段は、椿組のクラス委員長を務める真面目な性格をしているのだが。

 こういったイベント特有の雰囲気に中てられてか、なかなか気分が上がっているらしい。

 その証拠に、目が合ったミリアムを身振り手振りで煽ってニヤニヤと笑っている。

 

「あ!? 『ちびっ子には負けん』じゃとー!? んにゃろめぇー!!」

 

 ……何故そこまで正確にメッセージが伝わっているのかは、この際置いておくとして。

 元々見た目相応の精神を持つ──要するに、煽り耐性のないミリアムは。

 見事に挑発に乗ったのだった。

 

 ──競技開始の鐘が響き、上空に1つの煙が咲く。

 

 

「私とお手合わせお願いします夢結様!」

「こんな時でもないと構ってもらえませんから!」

「倒しちゃったらごめんなさいですー!」

 

 開幕早々、夢結のもとへ3人のリリィが駆けてくる。

 アールヴヘイム所属で、その中でも血の気多めな1年生たちだ。

 先日の二水たちによるインタビューで、夢結への挑戦を口にしていたのも彼女たちである。

 

「ちょっと! 抜け駆けしないでよ!」

 

 こういったことに関しては、真っ先に飛び出していきそうな亜羅椰を差し置いての突撃。

 

 3対1という、一見不利な布陣にも。

 夢結は怯えも焦りもしない。

 ただ足を引き、腰を落とし。

 その手に握るブリューナクを、地面と水平に構える。

 輝く瞳と剣先は、戦意の表れだ。

 

「こら! 夢結は敬遠しなさいって言ったでしょ!」

「しょうのない子たちねー」

「いいなぁ……」

 

 彼女の強さを知るが故の戦法を考えていたのに。

 依奈の指示は、ほぼ完全に無視され。

 天葉はやんちゃな子どもを見るような目。

 普段は大人しい樟美も、羨ましそうにしていた。

 

「お姉さま!」

「おー」

 

 梨璃の不安の声が飛ぶ。

 「いざっ!!」と重なる掛け声3つ。

 各々の得物が1人の少女に迫り──

 

「はっ!」

 

 ──まさに鎧袖一触。

 向かってきた少女たちを一気に吹き飛ばした。

 

 かつて初代アールヴヘイムの一員として、今は百合ヶ丘のエースとして。

 数多の戦場でヒュージを屠り、名を馳せてきた実力は伊達ではない。

 いくら現アールヴヘイムの1年生だからといって。

 歴戦の戦士は、数の利を取った程度で勝てるほど甘くはないのだ。

 

「もっと本気でいらっしゃい」

 

 夢結は余裕の笑みを浮かべている。

 強者は挑戦を拒まないのである。

 

「へへっ、迂闊じゃのう!」

「隙だらけよグロピウスさん!」

「じゃかあしいっ!」

 

 仕掛けてきた壱に、ミリアムは己が相棒『ニョルニール』を叩きつけて応戦する。

 CHARM同士の鍔迫り合いに、弾ける火花。

 ぶつかり合うのは刃と意地だ。

 

「私だって本当は夢結様にお相手してほしいけど、今日はあんたで我慢したげるわっ!」

 

 ハンマーにも似た大振りの武器を薙ぐ。

 黒塗りの片手剣が受け止める。

 打ち付けて、受け流す。

 振り抜く、斬り払う。

 2人の位置がぐるんと入れ替わる。

 何度目かの激突で、弾けるように離れた後。

 

「なんのっ! ひっさぁつ! 『フェイズトランセンデンス』!!」

 

 勝機とばかりに発動する、ミリアムのレアスキル。

 構えたニョルニールが開いて、強力なマギの光線を放出する。

 しかし、相手は回避に優れたレアスキル『この世の理』をS級で保持するリリィだ。

 いや、それがなくとも今の大雑把な攻撃では。

 壱を捉えるには至らない。

 

「避けてしまえばみな同じよ!」

「へっへっへ、避けてくれてありがとうなのじゃ……!」

「……あ!?」

 

 壱が気づく頃には、既に手遅れ。

 紫色の輝きは見事に、標的を木っ端微塵にしていた。

 ミリアムの本命は壱──の後ろの的。

 大雑把な攻撃も、動かない的に当てるのは容易いことだ。

 

 そもそもからして。

 何も、馬鹿正直にライバルと戦って倒す必要はどこにもない。

 本来のルールは『的か棒を仕留めれば勝ち』。

 雰囲気に中てられたことで、無意識に冷静さを欠いた壱の敗因であり。

 挑発を逆手に取って、戦略を組んだミリアムの勝因でもあった。

 

「わぁー!」

「ミリアムさんのフェイズトランセンデンス勝ちです!」

「ふぇいず……?」

 

 梨璃たちの歓声と、壱の悔しそうな顔に気を良くしたミリアムは。

 得意げに、仁王立ちで胸を張る。

 

「まー、わしがちょいと本気を出せばこの、くらい……ほわ……」

 

 パタリ、と。

 突然というべきか、当然というべきか。

 ミリアムが目を回して倒れた。

 ──フェイズトランセンデンスは、その強力さの反面。

 後の反動が凄まじいレアスキルである。

 

『ミーさぁん!?』

「救護班、急げ!」

 

 ……イベントの魔力というのは恐ろしいもので。

 「調子に乗りすぎるとロクなことにならない」ということが……まあ。

 少女たちの教訓にはなったことだろう。

 




書きたかったことが書けて満足している作者です……!

『上空に1つの煙が咲く』→出歯亀ドローンをオリ主が潰した。さらっと百合に挟まろうとしてたからね、仕方ないね。

【キャラ設定】その28

オリ主が普段使っているマントには特別な迷彩効果がある。これにマギを通してフードまで被ると、マギを扱えない人間から存在が認識されにくくなる。
しかし、それだけであればリリィなら気をつけていればすぐ見つけられる。マディックや過去にマギを扱っていた者なら、集中して意識を研ぎ澄ませていればなんとか見つけられる。動物などの本能頼りの相手は割とあっさり見つけてくる。
レアスキルと併用したり、完全な不意打ちだと歴戦のリリィですら見つけるのは難しい。
デザインは工廠科のポンチョに近い。
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