転生先が百合キャンセラーのバケモンとかどうにかならなかったんですか!?   作:サク&いずみーる

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7月にあるイベントに行きたくてバイトを探してるわけですが。
条件が合わないわ、普通に落ちるわ、1時間かけて現地に行って1時間半待ったけど誰も対応してくれなくて仕方なく帰ったら2時間かかった上に日焼けで皮膚が大惨事になって、危うく病むところでした。


2つの逃避行、暗躍する思惑

 ──っていうわけなんだけど。

 いや、「ちょっと頼みがあるんだけどさ」って軽い感じで頼む内容じゃないことくらい分かってるよ?

 でも、お前らのこと信じてっからさ。

 

 ……ホント、頼むよ。

 既にあいつは要求を呑んでくれたぜ?

 それに……これマジなお願いだから、さ。

 

 ……うん、ごめん。

 ああ、違うな。

 ありがとう。

 大丈夫、ちゃんとお礼は考えてるよ。

 みんなにも伝えといてくれ。

 期待してくれていいぜ?

 

 

 

 俺は、約束を守る男だからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「どうするんですかどうするんですか!? アルンさんが行方不明な上に、結梨ちゃんがヒュージで、梨璃さんと一緒に逃げて逮捕命令って……!?」

 

 大半のメンバーが揃った一柳隊の控え室。

 まず、口火を切ったのは二水だった。

 

「少なくとも、アルンはむしろ放っておいた方がいい。あいつは本気で逃げに徹したら、リリィでも見つけられないからな」

 

 梅の提案に多少の心残りはあれども、全員が頷く。

 アルンは、かつて人間だったといっても。

 今や自他共に認めるヒュージの体だ。

 ただでさえ、結梨の一件で揉めているというのにアルンにも気を向けていたら。

 完全に『ヒュージを擁護している』と見做されてしまうだろう。

 そうなれば、現在進行形で逃げている結梨やアルンたちどころか。

 百合ヶ丘のリリィに「ちょっかい」をかける口実になりかねないのだ。

 いくら心配だとしても、アルンの方は信じるしかない。

 

「じゃあ、梨璃たちの方はどうする?」

「そんなの決まってますよ! だって結梨ちゃんがヒュージのはず、ないじゃないですか! 梨璃さんは間違ってないですよ!」

 

 雨嘉の問いに、二水は即答と断言を以て応じた。

 結梨は一柳隊の仲間だ。

 それは、誰がなんと言おうと揺らぐことなき事実なのだ。

 

「だけど、『学院から逃げた』ということは、ここも安全ではないと判断したということよ」

 

 アルンは直感(と原作知識)によって。

 梨璃と結梨は一度追い詰められたことで。

 逃亡という選択肢を導き、あるいは迫られた。

 その結果に、沈黙が降り立つ。

 

 

 やがて、ここに来て。

 ずっと沈黙を貫いていた鶴紗が口を開く。

 

「私はブーステッドリリィだ。昔、G.E.H.E.N.Aに体中を弄り回された」

「ブーステッドリリィ……?」

「リリィの能力を人工的に強化しようという試みです……」

 

 強化リリィとも呼ばれる、いわば改造人間だ。

 G.E.H.E.N.Aによってブーステッドスキル──通常のレアスキルにはない人工的なスキルを付与され。

 代償として、身体や精神への副作用を背負うことになる。

 当然、付与そのものにも壮絶な苦痛を伴うが。

 G.E.H.E.N.Aはリリィのことなど考えてはくれない。

 さらに、強化はヒュージ細胞を用いて施される。

 これは端的に言えば『強化すればするほど、リリィをヒュージに近づけている』ということを意味する。

 そして過剰に強化されたり、強化に耐えられなくなったリリィの末路が。

 完全なヒュージ化──狂化リリィだ。

 現状、アルンがこれに当たると考えられている。

 

 百合ヶ丘は代表的な反G.E.H.E.N.A主義のガーデンだ。

 G.E.H.E.N.A製のCHARMや、G.E.H.E.N.Aそのものとの接触を固く禁じ。

 強化リリィの保護や救出も積極的に行っている。

 鶴紗が今こうしていられるのも、百合ヶ丘のおかげだし。

 アルンが突き出されなかったのも、そういう理由が噛んでいた。

 

「百合ヶ丘に保護されて、やっと抜け出せた。G.E.H.E.N.Aは嫌いだ。信用できない」

 

 鶴紗は吐き捨てるように呟く。

 だから、結梨が連れて行かれるのが心底気に食わなかった。

 

 ──唐突に、扉の開く音。

 現れたのは今まで不在だった内の一人、白井夢結だ。

 

「──出動よ。梨璃には逮捕命令、結梨には捕獲命令が出たわ。二人を追います」

「それは……なんのためです?」

「一柳隊は、どの追手よりも早く二人を探し出し、保護します」

 

 神琳の質問にも堂々と答える。

 ただし、夢結のそれは独自の判断だ。

 異議のある者は従わなくても構わない、とも付け加えて。

 作戦に参加しない退出者を待つ。

 

「それって、学院からの指示とは違うよな?」

 

 梅が座ったまま振り返って、アメジストの瞳を見つめる。

 エメラルドの瞳は言外に『どういうつもりだ』と問いかけている。

 

「指示は学院ではなく、政府から出たものです」

 

 だけど、と続く言葉は。

 

「私たちはリリィよ。()()()()()()()を守るのは、当たり前のことでしょう?」

 

 仲間を助けたい、という一柳隊の総意に沿ったもので。

 少女たちの期待に応えるものでもあった。

 

「夢結様なら、そう言ってくれると信じていました〜!」

「あ……そういえば、楓は?」

 

 最後の不在者──楓の姿がないという指摘に。

 ミリアムが代わりに答える。

 

「あいつん家も今回の件に関わっとるようじゃからな。バツも悪かろう」

 

 楓の実家はCHARMメーカー グランギニョル。

 G.E.H.E.N.Aとの共同実験に加担した、いわば当事者だ。

 板挟みとなった今の彼女が、何を考えているのか。

 ここに集った少女たちには、分からないことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 ──誰もいない静かな廊下に、楓はいた。

 何度かけても繋がらない携帯端末を耳に当て。

 わずかな苛立ちを滲ませて、壁に寄りかかっている。

 もはや聞き飽きたコール音。

 だが、それも終わりが見えた。

 聞こえていた音は途切れ、相手が応じたらしい。

 

『楓か』

「ようやく出てくださいましたわね、お父様」

『元気か?』

「ええ。ピンピンしていますわ」

 

 通話の相手は楓の父親──グランギニョルの総帥である。

 久しぶりの親子の会話だというのに、雰囲気は張り詰めていた。

 

『すまないが、今は都合が悪い。後でこちらから──』

「でしょうね。随分とやらかしてくれたものですわ」

 

 それもそのはずだ。

 楓は父親の台詞を遮って、不愉快そうに零す。

 続く総帥の言葉は謝罪から始まった。

 

『すまない。この件ではさぞ苦労をかけたと思う。だが会社のことに口を出すのは、たとえお前でも……』

「お父様が許すか許さないかは関係ありません。このままではわたくしがお父様を一生許せなくなります」

 

 婉曲な『関係ない』が再度遮られる。

 父親とはいえ、相手は世界規模の企業を統べる総帥だ。

 だが、楓は怯むことも怖気づくこともなく。

 毅然とした態度で応じている。

 己の信念に従って、真っ直ぐ立ち向かう。

 

 そんな娘の揺らがぬ意志がそうさせたのか。

 やがて、総帥は悔しげに語り出した。

 

『……G.E.H.E.N.Aからの提案は、愚劣極まりないものだった。心から軽蔑すべきものだ。ヒュージからリリィを作るなど……』

「ヒュージから作ったリリィならどうなろうと構わないということですか? 吐き気がしますわ」

『私はお前のような娘たちが、戦わなくて済むようになるならと、それを受け入れた』

 

 それは、弁明か懺悔か。

 言い訳がましく聞こえるかもしれないが、紛れもなく本心だった。

 G.E.H.E.N.Aとは違い、本当に善意や良心に基づいた選択で。

 少女たちが戦場に立つ異常性を正しく理解しているが故の、苦肉の策。

 間違いだと分かっている。

 悪だと分かっている。

 許されざる行為だ。

 ともすれば、罪人として裁かれても仕方がないことだろう。

 でも、だとしても。

 彼も彼なりに、大切なものを守りたかったのだ。

 

「CHARMメーカーの総帥とは思えないお言葉ですね。そのお志には感銘を禁じ得ませんが」

 

 皮肉を込めた称賛で、楓は口元を歪める。

 父親の考えが分からないほど、彼女は子どもではない。

 総帥が今でも苦悩していることくらい察しがつく。

 彼もまた、リリィを憂う人格者で。

 楓の自慢の父なのだ。

 だから。

 

「お父様は間違っています」

 

 ──妥協を、真っ向から否定する。

 そもそもからして、実験は失敗だ。

 だって、本来は一種の兵器として扱われるかもしれなかった彼女は。

 

「あの子、わたくしたちと何も変わりませんもの。結局、どこかに傷つくリリィがいることに変わりはありません」

 

 今、この瞬間にも。

 梨璃と結梨は悲しんでいる。

 そうやって妥協を重ねた結果。

 アルンは犠牲となり、苦しんだのではないか。

 

「お願いですお父様。わたくしに自分の運命を恨むような惨めな想いをさせないでください。マギを持ち、リリィになったことも。お父様の娘に生まれたことも」

 

 そんなものの先に、リリィたちの未来があるとは思いたくない。

 誰かの犠牲でしか成り立たない答えなど、どこまで行っても間違いでしかないのだ。

 総帥は『自分の過ちから目を逸らすな』と。

 そう言われた気がして。

 

『……分かった。今からでも、私がやれるだけのことはやってみよう』

 

 間違いを間違いと言える性格は、元リリィの母親譲りだろうか。

 真っ直ぐ育った愛娘を誇りに思う。

 そして──

 

「ええ、お父様……では、ごきげんよう」

 

 

 

 

 通信が途切れる。

 長く息を吐く音が、暗い部屋に染み渡る。

 ガラスの向こうには、華やかな街の明かりが思い思いに輝いていた。

 それは、一つひとつが人々の営みで。

 自分たちが開発したCHARMが、それを手にしたリリィたちが。

 ヒュージから守ってきた尊い光景だ。

 

「強くなったのだな、私の娘は」

 

 ──まだ15年程度しか生きていない少女に、説教じみた話をされたというのに。

 総帥の心は晴れやかで、口元には微笑が浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 もう出発、というタイミングで控え室の扉に視線が集まる。

 楓がレッドブラウンの髪を揺らして現れたのだ。

 

「皆さん、お揃いですのね」

「「あっ……」」

「どこ行ってた?」

「ほんの野暮用ですわ」

 

 複雑な気持ちを含んだ視線も。

 特に気にするでもなく、受け止める。

 鶴紗の質問には、何かはぐらかすように答えた。

 

「梅たちは梨璃と結梨に付く。楓は?」

「はっ、残念ですわ〜。梨璃さんをお助けする栄光を、わたくしの独り占めにできないなんて」

 

 即答である。

 さっきまで父親を説得していた、とは一言も言わないし。

 そんな素振りも見せない。

 だが、どこかとぼけているような口振りに。

 神琳は何かを察し、色違いの瞳で鋭く見つめる。

 

「……今回の件、楓さんは何かご存知ではないのですか?」

「たとえ知っていたとしても、わたくしには関係ないことですわ」

 

 ──家がどうであれ、自分が一柳隊の味方であることに変わりはない。

 遠回しにそう告げた楓。

 やはり、彼女は頼れる仲間であることを実感して。

 

「そっか。んじゃ、決まりじゃな」

 

 こうして今、残された一柳隊は重大な任務を果たすべく動き出す。

 2人の少女を助けるために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 梨璃は必死だった。

 結梨がヒュージから造られた存在で、連行されると聞いて。

 連れて行かれたら、結梨が結梨でいられなくなるのは。

 夢結の話で、なんとなく分かった。

 だから、梨璃は結梨を連れて逃亡した。

 ……理由はどうあれ、明確な違反行為に変わりはない。

 それでも、何を犠牲にしたとしても。

 結梨の笑顔だけは、守ると決めたから。

 

「ここ、どこ?」

「……ヒュージに襲われて放棄された区域だよ」

 

 ──月明かりだけが照らす、廃墟の街(ゴーストタウン)

 かつては人が多く住んでいたのだろう。

 ところが、今となっては遠い過去の話で。

 そんな面影はなく、ただ街灯が虚しく光るだけ。

 ここに住んでいた人たちがどうなったか、少女たちには分からない。

 抗って、戦って。

 それでも守れなかった光景。

 ヒュージに居場所を奪われた人々がいる──その事実に、結梨はぽつりと零す。

 

「みんな、ヒュージを憎んでるよね。わたしのことも憎むのかな」

「そんなこと言っちゃダメ!」

 

 言葉を遮るように、結梨を抱きしめる。

 泣かないと決めたのに、堪えた涙が溢れそうで。

 

「ダメだよ……そんなこと言っちゃ……」

 

 見られないように抱きしめるけれど、どうしようもなく声が揺れていた。

 

「ごめん。梨璃、泣かないで」

 

 今にも泣き出しそうな梨璃の頭を撫でる。

 

 少女は、何一つ悪くない。

 ただ生まれて、ただ普通の毎日を過ごしていた。

 この先も、そんな小さな幸せを望んでいるだけだというのに。

 それを、罪だと咎められている。

 生きていくことすら、許してはくれない。

 今こうして追われているのが、何よりの証拠だった。

 そして、そんな謂れのない「罪」を背負わされたのは結梨だけではなくて。

 

「アルン、どうしてるのかな」

「……アルンさん?」

「アルンも、多分わたしと同じだと思うから。みんなに追われたりしてるのかな」

「それは……」

 

 完全な否定なんて、梨璃にはできなかった。

 確かに、アルンは隠密に関して群を抜いたアドバンテージを有する。

 夢結や梅のような歴戦のリリィを以てしても。

 「見つけるのが難しい」と言わせるほどだ。

 でも、それはあくまで「難しい」であって。

 「完全な不可能」ではないのだ。

 他のリリィたちがどういう決断を下したのか、2人は知らない。

 ただ、捕まって突き出されたりしようものなら。

 結梨と同じか、それ以上に酷い扱いを受けるのは目に見えている。

 故に、安心には程遠かった。

 

「わたしも、またみんなに会いたい」

「っ大丈夫、大丈夫だから……」

 

 自分にも言い聞かせるように、梨璃はまた腕に込めた力を強くする。

 バラバラになってしまった一柳隊。

 今は、夢結が助けてくれると信じて。

 

「そっか、この感じ……」

 

 梨璃にすら聞こえない声で、ぼんやりと納得する。

 

(何か足りないように感じるのは、寂しいからなんだ)

 

 生徒会長たちは、結梨をヒュージだと言った。

 アルンは特に何も言わなかったし、梨璃たちもあまり触れてほしくなさそうだったけれど。

 結梨の知る「普通」は、あんな翼や腕を持たない。

 説明されなくとも、アルンもまたヒュージに関係した何かなのは想像に難くなかった。

 ──ヒュージは、梨璃たちの敵だ。

 ならば。

 

(わたしは、梨璃たちの敵……?)

 

 だが、結梨は敵対なんてしたくない。

 梨璃たちを傷つけることは、絶対にできない。

 

 そう考えて、思い出したのは──初めてアルンと会った日のこと。

 明らかに梨璃たちとは異なる外見に。

 結梨は「それ、どうしたの?」と純粋な疑問を口にした。

 一瞬凍りついた梨璃を傍目に、()()()()()()()()()()()()

 

 ──オレ、みんなとはちょっと違うんだよね。

 

 

 そう、苦笑いしていた。

 あの時、どこか諦めた表情をしていた竜の少女。

 薄い雲に隠れた月を見上げたところで、不安は晴れてくれなくて。

 

(わたしは──わたしたちは、梨璃たちといっしょにはなれないのかな)

 




次回はとても大切になってくるシーンですが、短くなるかもです。

【キャラ設定】その32

結梨ちゃんの扱いが「保護」だったのに対して、オリ主の扱いは「監視」「共存」という扱いだった。
現状、確定でヒュージであるオリ主を保護するのはちょっとアレだったから。本人には話してあるし、了承も得ている。
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