転生先が百合キャンセラーのバケモンとかどうにかならなかったんですか!?   作:サク&いずみーる

33 / 47
苦節30年!(大嘘)ようやくバイトが見つかり採用されました! これでイベントに行けるぞ!!
あと思ってたより短くならなかった。


上層部の戦い(ジャイアントキリング)

 あー、やっと会えた!

 久しぶりだな、ずっと探してたんだぜ?

 ん? あれ?

 その、後ろの……なんか体が丸っこくなってね?

 はー奥さんなのね、なるほd……え、ご懐妊!?

 じゃお前パパになるんけ……?

 うおわー……めでてえじゃん……!

 生まれたらお祝いの品物持ってくよ!

 もうね、うんっと豪華なやつ!

 

 あ、その代わりと言っちゃなんだけどさ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちょっと俺のお願い、聞いてくれない?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──本日早朝に、捕獲命令を出したヒュージを百合ヶ丘のリリィが連れ出し、逃亡したという報告が複数寄せられている」

「事実です。今は彼女たちの身を保護するべく、学院を上げて対応中です」

 

 アルンの話題が一切出なかったことに、咬月は内心安堵する。

 やはり、上層部には『高松アルン』の存在がバレていない。

 

 ──政府の要人たちが集う会議室で。

 わざわざ東京に呼び出された咬月は、今回の件について尋問を受けていた。

 照明は存在を見せしめにするように、ただ1人を強く照らす。

 己に向けられている厳しい詰問の視線に。

 彼が臆することは一切ない。

 これは、彼にしかできないことだ。

 少女たちを守るためには、一歩も退けない戦いなのだ。

 

()()()()? 逃亡した()()()()()()()()()()()()だ。気をつけたまえ」

 

 あくまで結梨を人間とする咬月と。

 結梨をヒュージと見做して譲らない幹部たち。

 咬月は静かな怒りを、鉄仮面の下に隠す。

 

 ──マギという得体の知れない力の傀儡たるヒュージ。

 それに対抗し、人々を守るリリィ。

 一見、正反対に見える両者だが。

 「マギを操る」という点において。

 リリィが潜在的な脅威になり得る、と危険視されているのもまた事実だ。

 人間は未知を恐れるものだから。

 そんな「未知」を操る者を恐れるのは、当然の結果だろう。

 ──自分たちが「無意識な枷」を取りつけたことで。

 そういった害意を抱くリリィは、少なくとも百合ヶ丘にはいないというのに。

 

「今更リリィ脅威論を蒸し返されたくはないだろう?」

「何か言い分は?」

 

 随分と好き勝手言ってくれる幹部たちに。

 ため息を吐きそうになるが、整える程度の息に留める。

 

「はあ……彼女()()の願いは、ただ自由に生きたい。それだけです」

 

 彼女たち──結梨は人間である、と言外に確かな主張を含めて。

 『リリィは道具ではない』と告げる。

 しかし、そんな意図を汲み取ってか否か。

 官僚の一人が小馬鹿にしたように嗤う。

 取ってつけた「失礼」という言葉に、誠意がないのは明らかだった。

 

「そりゃ誰だってそうでしょう。そうは言ってもですよ。マギを扱えるのが人類にとってリリィだけなら、彼女たちにかかる負担というのもそういうものだと納得できませんか?」

 

 『恵まれた力で特別視される小娘には、当然の報いではないか』と。

 そんな本音が見え透いていて。

 咬月は『助けられておいてその態度か』と呆れた。

 眼前の大人には、もはや吐いてやるため息もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──同時刻、百合ヶ丘女学院にて。

 この学院の売店には、ちょっとしたイートインスペースがあるのだが。

 そこに集まったのは3人の少女。

 その内の1人──レギオン ローエングリンの主将『立原(たちはら)紗癒(さゆ)』。

 彼女の前に置かれているのは、売店で買ったパフェと某カップ焼きそばである。

 ……状況が状況だが、百歩譲ってパフェはいい。

 お嬢様学校的にカップ焼きそばも微妙だが、それもまあ……許容範囲としよう。

 でも、焼きそばにパフェという組み合わせはちょっとどうなんだろうか……?

 

「わぁ! コンビニなんて久しぶりだわ」

「浮かれないでよ。私たち追跡任務中なんだよ?」

「そういう広夢さんだって、デザート2つも買ってるよ?」

「エ、エネルギー補給だから!」

 

 同じくローエングリン所属『倉又(くらまた)雪陽(ゆきよ)』のからかうような言い方に。

 妹島広夢はほんのり頬を染めた。

 広夢の指摘通り、彼女たちは逃亡者たち(梨璃と結梨)を追う任務がある。

 その証拠に、傍らにはCHARMが立てかけてある。

 「エネルギー補給」とやらが終われば、少女たちはすぐにでも発つつもりだ。

 

「他のガーデンのリリィにも、出動要請が出たそうですね」

「えっ? 防衛軍だけじゃなくて、他所のガーデンまで?」

 

 どうやら、少女たちが思っている以上に大事(おおごと)になっているらしい。

 他校のリリィが、2人を見つけてしまえば。

 逮捕も連行もためらうことはないだろう。

 結梨のことも、梨璃の考えも部外者のリリィはほとんど知らないし。

 分かるはずがないのだから。

 ……少しの間考え込んでいた広夢は、ふと隣の友人たちを見る。

 

「……ねぇ、はっきりしておきたいんだけど私たちはどっちにつく?」

「『どっち』……? それって、命令に従わないこともある、っていうこと?」

「百合ヶ丘じゃなくて政府から出てる命令でしょ? 怒られません?」

 

 「怒られる」程度で済めば良い方なのだが。

 当然、それを知らない彼女たちではない。

 しかし、結梨のことを「正しく」知ってしまった以上。

 考えなしに従うのは違う気がしたから。

 

「……私は、自分で見て感じたものを信じたい。おかしいかな?」

「一つ間違えば、人とリリィ……リリィとリリィ同士の戦いになりかねませんよ」

「ならないよ。私たちはリリィでしょ? 敵はヒュージだけ」

 

 続いた台詞は確固たる意志を以て断ずる。

 だって、人やリリィはヒュージとは違って言葉が通じるから。

 意思の疎通ができるのに、争ったって仕方ないじゃないか。

 

「まぁリリィには、状況に応じた判断を下す権限が与えられてはいるけど。そのための訓練だって、受けてるものね」

 

 紗癒はそれだけ言い切ると、パフェを掬って口に運ぶ。

 心をも癒す甘さを味わう様子は、年相応の少女そのものだ。

 

「じゃあ私たちにとって今大事なのって、結梨はヒトかヒュージかってことよね」

「うん。じゃあ意見をまとめよう。結梨さんはヒトかヒュージか」

 

 色とりどりのパフェを手にする。

 この時点で、3人の少女たちの答えは決まっているようなもので。

 

「「「せーの……」」」

 

 

 

 ──ヒトっ!

 

 揃った声に、響く笑い声。

 百合ヶ丘に悪いリリィなんていない。

 それに、こんな反抗だって。

 みんなで一緒にやれば、怖くないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──失礼だが、理事長代行は話を逸らしておられるようだ」

 

 官僚の指摘に、咬月は心が一筋の冷や汗を落としたのを錯覚した。

 確かに、彼はさりげなく話を逸らして時間を稼いでいた。

 圧倒的に不利なこの状況を覆す「手札」が揃うのを待っている。

 それなりに粘ってはいるが。

 話を逸らしているのがバレたとなると、そろそろ限界も近くなる。

 

 ……焦燥を押し殺す、冷静になれ。

 

「年端もいかぬ娘たちを、戦いの矢面に差し出すのです。我々が何のために戦っているのかは常に問い続けるべきかと」

「リリィを擁するガーデンには、この時勢にも関わらず破格の待遇を許してる。何のためか──明白だ。ましてヒュージを庇うリリィなど、あってはならん存在だ」

「怪物と対峙するものは、気をつけねばならない。自らもまた、怪物になってしまわぬように」

 

 どれもこれも、他人事で批判的な意見ばかりで嫌になる。

 リリィが命懸けで戦っていることなど、データ上の情報でしか知らないから。

 実際の戦場ではなく、机上の理論として高みの見物をしているから。

 もはや『リリィが戦線上で戦うのは当たり前だ』とすら考えているから。

 安全なところから好き放題言うだけというのは、さぞかし気分がいいことだろう。

 それが、咬月にとっては酷く不快だった。

 

「左様。我々も肝に銘じるべきでしょうな」

 

 不意に、ドアが開く音。

 視線を動かせば、入口からひょっこり顔を出した百由が手を降っていた。

 どうやら間に合ったらしい。

 

「……失礼。新しい報告が入ったようだ」

 

 入るように促すと、『救世主』はローファーの音を響かせて、つかつかと入ってきた。

 遠慮がないのが、実に彼女らしい。

 

「初めまして〜。百合ヶ丘女学院工廠科2年の真島百由です」

 

 重苦しく厳粛な雰囲気とは全く真逆の、軽くて高いテンション。

 場違い感は否めないが、この場の重要人物であることも事実だ。

 

「マギに関する論文は昨年だけで51、その界隈では『週刊百由』って呼ばれてますね」

「百由君」

 

 入場(エントリー)早々にマウントを取っていく百由を軽く窘める。

 「おおっと」なんて、わざとらしい反応の後。

 ──軽い謝罪の言葉を、反撃の狼煙とする。

 

「いきなり結論ですが、結梨ちゃんはヒトです。ヒュージじゃありません」

 

 官僚たちのどよめく声、刺すような視線。

 それら全てを軽く流せる度胸は、リリィとして鍛えられたものか。

 はたまた彼女元来のものか。

 

「はい論拠ですね? 結梨ちゃんのゲノムを解析した結果、99.9%の精度でヒトと一致しました」

「100%ではないのだな?」

 

 タブレット端末を操作し、資料やデータを開示していく中。

 一見すると不完全な結果に、ここぞとばかりに訝しむ声が飛ぶ。

 かかった、と百由の口元がわずかに上がる。

 指摘に対して、若き研究者は否定ではなく「肯定」を返した。

 

「はいもちろんです。100%のヒトというのは存在しません。だって私とあなた同じですか? 違いますよね? みんな違うんです」

 

 煽っているとも捉えられる口振りは。

 その実、論破には十分な証拠を語っていた。

 

 生命の生存戦略の根幹は、多様性の獲得にある。

 そのため、ゲノムは日々更新されている。

 故に、違っているのは当たり前。

 そもそもの話、こういったデータで100%という数値はまずあり得ない。

 誰もが99.9%のヒトである、と百由は説いた。

 

「だがヒュージだ!」

「それなんですが! 『遺伝子的にヒトであると認められたものは由来の如何を問わずヒトと見做す』という国際条約が、20年も前に発効されているんです」

 

 官僚の叫びも、百由はテンション高めに軽くあしらう。

 20年前──倫理的に不適当な研究が横行した時期だ。

 去年とはいえ、日本も批准した条約である。

 このような忌まわしい過去が、今の状況の役に立つとは。

 全く以て皮肉な話ではあるが。

 

「だがヒュージはヒュージだ! 例外などない!」

「ちなみにヒュージ由来の遺伝子は、結梨ちゃんがヒト化した時点で機能を喪失していることが確認されました。なんとこれは今回の当事者でもあるグランギニョル側から提供された資料からの裏付けです」

 

 それは、説得されたグランギニョル社総帥──楓の父親が送ったもの。

 あと一押しが足りず、行き詰まっていた百由を活路へと導いた最後の一片(ラストピース)

 「これがなかったらあと1日はかかってたでしょうね!」と半ば煽り倒すように笑えば。

 政府の人間たちは屈辱に歯を食いしばった。

 

 1日はかかっていた、という言葉は。

 裏返せば『1日もあれば辿り着くには十分だった』という意味になる。

 状況を覆せたのは、間違いなく彼女の才能と根気強さの賜物と言えよう。

 

「もう一度申し上げます。結梨ちゃんはヒトです!」

「ならば彼女は、リリィということでもありますな」

 

 完璧な証拠と完璧な理論。

 百合ヶ丘の勝利(結梨の証明)は言うまでもなかった。

 

 ……だというのに。

 

「ッ、命令違反は!」

「捕獲命令自体に根拠がなかったということです。撤回してもよろしいですかな?」

「我々の処置は適切だった!」

「事実が明らかでなかったのですから、致し方ないでしょう。()()()()()の処分は、学院が後日責任を持って下します」

 

 実にみっともなく、なおも噛みついてくる。

 今まで座してきた地位が生み出したプライドは。

 謝罪と容認を連中から覆い隠していた。

 加えて、人造リリィによってもたらされる利益はそれなりに大きい。

 そして初の成功例たる彼女を失えば、今まで費やしてきた費用や苦労が水の泡だ。

 それは、連中にとって許しがたいことだった。

 

「言うまでもないが、結梨君がリリィと分かった以上、前例に則り彼女の身は当学院で保護するものとします」

「認められるものかッ!!」

 

 本来ならば、ここで屈辱に震えるだけに留まっていたはずだが。

 官僚どもの一人が、青筋を浮かべて絶叫した。

 

「そんなデータはデタラメだ!」

()()がヒュージから生み出されたのは紛れもなく事実なのだぞ!!」

「どれほどの損害になるのか分かっているのか!」

「貴様らのガーデンに金を出しているのは誰なのか、よく考えたまえ」

「その気になれば、我々が支援を絶つなど造作もないことだぞ!」

「理事長代行、君は我々に従っていればいい……そんな基本的なことがどうして分からない?」

 

 そいつを皮切りにして『よく言った』とばかりに投げられる非難の数々。

 しかし、そのどれもが子どものわがままにも似た屁理屈と暴論ばかりで。

 それでいて半端に権力は持ち合わせているものだから。

 強迫じみた妄言が、現実になりかねないときた。

 例えるなら、わがまま放題の幼稚園児に機関銃(マシンガン)を持たせているような状況。

 ……本当に、どうやって切り抜ければいいのか。

 いよいよ咬月が頭を抱えたくなってきたところで──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『はー……これだからお偉いさんってのは嫌だねぇ。自分の間違いを認めようとしないわ、子どもみたいに駄々こねだすわ……もう目も当てられないじゃん』

 

 

 

「だ、誰だッ!?」

 

 ──人間の肉声とは違う声。

 声の方向には、いつの間にか扉にもたれかかっていた『何か』がいた。

 放浪の旅人が着ていそうな、ボロボロのローブを身に纏い。

 目深にフードを被るも、隠しきれない角を有した『そいつ』は。

 だが、百合ヶ丘に直接関係する者なら、今や誰もが知る者でもあった。

 

「まさか……!?」

 

 ここに来て初めて明確な反応を見せた咬月の声に。

 『そいつ』が密かにぺろりと舌を出す。

 瞬間、ローブの中から2つの煌きが飛び出した。

 それぞれ、咬月と百由、政府関係者たちを一纏めに拘束する。

 一つは蛇腹剣に似たものが、咬月と百由を。

 もう一つは細かな結晶が散らばる尾の先端に、大振りのナイフを取り付けたようなものが。

 政府の人間たちを一気に縛り上げている。

 かつてヒュージと戦っていたという咬月は、今となってはただの人間と変わらない。

 そもそも、お役所仕事ばかりの政府の連中に至っては論外だ。

 この拘束だけで顔が青冷め、怯えて引きつっている。

 唯一抵抗できたかもしれない百由は、今回の用件が用件なだけに、対抗手段たるCHARMを持っていない。

 

 ──つまり、この場に居合わせた者たちに為す術などありはしないのである。

 

『お初にお目にかかります、とでも言えばいいのかな?』

 

 紳士のような礼を一つ、その拍子にフードが器用に離れる。

 完全に露わとなった、骨の如き色素の抜けた長髪。

 さらに目を引くのが、頭部に生えた人外の角。

 左眼周辺を覆う、インクをぶち撒けたような黒い痣。

 

『──知能を得た正真正銘のヒュージ、()()()()()だ。ちょっとした取引にきてみた』

 

 今ここに、法にも暴論にも縛られることのない──問答無用の伏せ札(ジョーカー)が顕現した。




紹介された捜索、みたいなやつで本作を選んでいただいたみたいで度肝抜かれました。
ところで、あの直談判のシーンどこでやったんでしょうね? あれは会議室、なのか……? 教えて有識者!

【キャラ設定】その33(質問箱から)

『アルン君は、前世の事をどれ位覚えているんですか?』

思い出なら割と色々覚えている。具体的には、幼少期の物心ついた辺りからの印象的な出来事なら確実に思い出せるくらい。
とはいえ、決して記憶力がズバ抜けていたとかではない。
その一方で、キャラ設定その18でも明かしたようにオリ主本人の情報はほとんど思い出せない。オリ主個人を特定できるような情報は全滅と言っていい。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。