転生先が百合キャンセラーのバケモンとかどうにかならなかったんですか!?   作:サク&いずみーる

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勝ち確が見えたってことだよ


サブタイでふざけられるようになったってことは、どういう意味か分かるか?

 ──時は少し遡る。

 夢結がダインスレイフを持ち出した直後。

 唐突に、ピトスが弾かれたように固く閉ざした(あぎと)を開いた。

 ごろりと縮こまった結梨を吐き出すと。

 淡いマギの光に包まれ、輪郭を曖昧にしていく。

 

「ん……」

 

 一足先に目を覚ました結梨は、それを見届けていた。

 まるで蛹から蝶へと羽化するような変化(メタモルフォーゼ)を。

 

「ふ、あ」

 

 やがて光は剥がれ落ち、露わになる新たな身体。

 あの不思議な場所で見たのと同じ姿だ。

 さしあたり、結梨には真っ先にすべきことがあった。

 

「ゆ、り……ちゃん」

 

 座り込んでいる竜の子は。

 初めて自力で話すこともあって、ほんの少しだけ舌が回っていない。

 そこに結梨は遠慮なく、ずいっと近づいて。

 

「これいる?」

「……ありがと」

 

 傍らに置かれていた衣服を差し出す。

 文字通りに生まれたままの姿──素っ裸のアルンは目を逸らしつつも。

 しっかりと受け取ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っし、見た目の問題はこれでいいとして」

 

 外からは厳重なセキュリティーが施されたこの部屋だが。

 中から出ることは容易かった。

 2人の復活を見越して、百由がそう設定していたためである。

 アルンは次の問題に着目する。

 工房の中は人も灯りもない。

 故に、一対ある尻尾の片割れ──コードの先端に大振りなナイフを取りつけたようなものから放たれる微かな光で照らせば。

 あのダインスレイフが見当たらなかった。

 その事実から『割とクライマックス』らしいことを察する。

 

「どうする?」

「多分……今の外はヒュージと戦ってる最中なはずだから、まずはCHARMがないと出られないと思う」

 

 アルンはともかく、結梨が丸腰で戦場に出るのはマズい。

 とはいえ、結梨のCHARMはあの日コアが砕けてしまった。

 あれから百由が直していれば話は別だが、あのままでは使えない。

 そもそも直してあったところで、どこに保管されているかが分からない。

 だからといって、今の結梨に逃げろと言っても。

 素直に従うと思うには前科が邪魔だった。

 

「んえぇぇ……マジでどうすん──」

 

 不意に、ドクンと『脈動』を感じた。

 自分からではなく、工房内の何かから。

 

「アルン?」

 

 結梨の不安そうな声には、軽く頭を撫でて応じて。

 『脈動』の根源を探す。

 光がなくとも感覚で分かる。

 導かれるように辿っていく。

 答えはすぐに分かった。

 

「これ……」

「……グングニル?」

 

 ヒュージに囚われていたCHARMの中でも、最も損傷の激しいものだ。

 百由曰く、解体予定だというグングニル。

 それが確かにアルンを呼び寄せた。

 

「お前……」

 

 文字通りの壊れ物に対する触れ方で。

 グングニルに指を滑らせると、刃に紫電が奔った。

 己のマギと、グングニルに残されたマギが共鳴し合っているのを感じる。

 連れていけ、とCHARMが訴えているようだ。

 

「ふっ……!」

「何してるの?」

「武器作り」

 

 アルンの判断は早かった。

 ナイフの尻尾を引きちぎり、CHARMにかざす。

 痛みはなく、ただ感覚が途切れただけ。

 CHARMの紫電が激しさを増す。

 虚空をのたうち始めた雷が尻尾にぶつかる。

 大振りなナイフは分離、あるいは変形してパーツに変わった。

 それらはまるで、グングニルの損傷部分を補うように取りついていく。

 

 程なくして完成する、歪で刺々しい一振りの剣。

 増幅し、溢れたマギはアルンにとって身に覚えがありすぎた。

 

「あー、そういう……」

「?」

 

 あっさり融合、適合してしまった理由に納得して。

 CHARMの柄を手に取る。

 流れ込んでくる情報は、新たな武器のスペックについてだ。

 

「これ、結梨ちゃんも使えるかも」

「ほんと!?」

「うん。グングニルなら、結梨ちゃんも慣れてるしな」

「よーし……!」

 

 生まれ変わったことを喜ぶかの如く、纏わりつく紫電は。

 仮の主を傷つけることはない。

 むしろ従順に主を守り、力を高めてくれている。

 それは、やはり紛れもなくアルンのマギだからか。

 

「じゃ、お手並み拝見といこうか。お前もCHARMなら、今度こそ持ち主を守って見せろよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 俺、参上ッ!!

 いや、スポンサー繋がり的には「アタシ、再生産!」の方がいいんかな?

 俺はとんでもねえクソデカ感情抱えた『緑色ちゃん』が好きです。

 梅様からは想像できないくらいキャラ違うんだよな……やっぱ声優さんってすごい。

 You〇ubeの一挙公開で見たけど、5話での暴走ぶりは良かった。

 とにかく! 生死の狭間からトンボ返りしてきたぜ!!

 

「アルン、さん……?」

「あぁ。結梨ちゃんもいるよ」

「梨璃ーっ!」

「あ……」

 

 後ろからひょっこり現れた結梨ちゃんは、呆然とする梨璃ちゃんに抱きついた。

 さっきCHARMをぶん投げたのは結梨ちゃん。

 飛んでる俺の背中に立って、思いっきりね?

 

「2人とも、生きて……?」

「うん。言ったろ、『責任持って必ず守る』って」

「だから──」

 

「「ただいま、梨璃(ちゃん)」」

 

「っ……!!」

 

 じわっ、と梨璃ちゃんの目に涙が滲む。

 一番背負い込んでたもんね。

 もう会えないと思ってたのに、また会えたらそうもなるよ。

 泣き出したって仕方ない。

 でも、梨璃ちゃんは強かった。

 ぐしぐし目元を擦って、涙をこらえて。

 

「おかえり、2人とも!」

 

 笑顔で迎えてくれた。

 ほんっと強くなったなあ……どうしよ、おじさんの方が泣きそう……!

 

「──おかえりなさい。結梨、アルンさん」

 

 柔らかい笑顔で声をかけてきたのは夢結様。

 髪はいつもの黒髪、瞳は紫色。

 手に持ってんのはダインスレイフ。

 レアスキルの恩恵か、原作ほど揺さぶり案件がないからか。

 暴走してた素振りはない。

 

「ただいまです。あまり驚かないんですね?」

「ええ。だって、貴女たちなら戻ってくるって信じていたもの」

「まさかの信頼フルバースト」

 

 いやあ、嬉しいねー!

 夢結様に梨璃ちゃんがいなかったら惚れてまうような表情ですことー!

 それに割とメンタルも安定してそう。

 これなら大丈夫かな。

 

「でも、一柳隊の皆にはしっかり説明なさい」

「うぐ」

「黙って独断でいろいろ危険な綱渡りをしてきたようだし」

「うぐぐ」

「特に梅は2度目だから、ちゃんと謝らないと泣くわよ」

「おおぉぉぉ……!」

 

 思わず目を片手で覆う。

 ええ分かってます、分かってますよ……!

 これが全部片づいたら土下座して回る予定なんで。

 楓さん、神琳さん……は分からんけど。

 初手からビンタもあり得そう。

 何気に一番怖いの梅様なんだよなあ。

 何してくるか、じゃなくて『どういう反応されるか』が分からない。

 初っ端から泣かれたら俺もう分かんない。

 フリーズする自信しかねえ。

 でも、これは俺がツケにしてきた問題だ。

 もちろん、ちゃんと向き合うから安心してほしい。

 

「梨璃、苦しいよぉ〜」

「あっ、ごめんね! 嬉しくってつい……」

 

 こっちはこっちで、ほっこりした雰囲気。

 久々に尊い光景が拝めたぜ(歓喜)

 ……ところで。

 

「──『バスタード』っ!!」

 

 突然の俺の叫びにみんな驚く中。

 結梨ちゃんに投げさせたCHARMが、独りでに飛んできて応じる。

 受け止めたのは赤いヒュージの『腕』。

 あんちくしょうめ不意打ち狙ってきやがった。

 テメーいくらここが戦場だからってよォ!!

 百合と声優同士のリプに割り込むのは万死に値するって知らんのかオオォン!?

 キッサマああ死にてーのかそうか殺してやろうか殺すぞ!!

 空気読めや空気を!!!

 キレても仕方ないのは分かってっけど、それはそれとして気が済まねーんだわ!

 

「これは……」

「お察しの通り、前に回収したあのグングニル──それがオレのマギやサーバントと混ざってできた武器『グングニル・バスタード』です」

 

 火花を散らす二振りを見て、夢結様は信じられないような顔をした。

 そりゃ俺だって予想外だったよ?

 でも、現になってんだから。

 使えるもんは使ってかないと勝てない。

 いくら原作では勝ってたとはいえ。

 そう思って油断してたら足元掬われた、とか笑えないだろ。

 俺はAUOじゃないからね、基本いつでも全力だぜ。

 

「あ、あれはオレか結梨ちゃんしか扱えないので気をつけてください。他のリリィが使うと、秒で内包されてるマギに呑まれるんで」

「はい?」

「最悪、命に関わりますよ」

「待って、何故そんな危険なものを扱えるの? 貴女はともかく、結梨まで」

 

 あー、そうっすね……

 その辺り説明したいのは山々なんすけどね!

 こう……そろそろバスタード君が自動操縦じゃ押し切られそうなんでね!

 

「その辺の説明はまた後にしません?」

「……そうね。梨璃、結梨! 早く退きなさい!」

「は、はいっ!」

「うんっ!」

 

 まだちょっと呆然とする梨璃ちゃんを、結梨ちゃんが引っ張る形で下がり。

 入れ替わりで俺が前に出た。

 留めてくれている剣の柄を握る。

 俺の中で有り余るマギ──みんなに分けてもらっただろうマギを流し込めば。

 バスタードはさらに力を増す。

 

「そぉーぅらっ!!」

「■■■■■!?」

 

 ブン、と振り抜けば『腕』が遠くまで弾かれた。

 うえーい、威力マシマシでやんの!

 

「みんなに分けてもらったマギのおかげで、腹が膨れてるっていうの? フルチャージな状態なんだわ」

 

 そうは言っても、身体には力が漲り。

 心はスッと軽くなってて。

 完全にヒュージだった頃でもなかったくらいの調子の良さだ。

 絶好調なんてもんじゃない。

 

「だから、食後の運動にちょいと付き合ってくれや! 動くスクラップよぉ!!」

 

 こんなの……負けるとか考えらんないだろ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「あれは……結梨ちゃん!?」

「何じゃと!?」

「生きていたというんですか!?」

 

 いつの間にかマギが使えるようになっていたかと思えば。

 状況把握のために、二水が展開した鷹の目は信じ難い光景を映していた。

 

「しかも、梨璃さんと夢結様以外に見たことない人がいます! 青くて短い髪で、え? 角と尻尾、って……まさか、アルンさんですかぁ!?」

「────っ!!」

 

 その報告に、梅の目頭がカッと熱くなる。

 ──生きていた。

 もう二度目にもなる生存報告だ。

 なのに、まだこんなにも嬉しいなんて。

 

「……梅様?」

「っ、大丈夫だ。ちょっと嬉しくなっちゃっただけなんだ」

 

 でも泣かない。

 後輩たちの前で弱いところは見せられない。

 さりげなく拭った熱が弾けて消えた。

 聞きたいことは山程ある。

 何故、どうやって戻ってきたとか。

 何故、人型になったのかとか。

 何故、楓はさして驚いていないのかとか。

 しかし、それよりもここは戦場だ。

 仲間が戦っている、自分たちも戦える。

 なら、見ているだけでは終われない。

 

「どうします? まだ近寄れる感じはしませんけど……」

「──ノインヴェルト戦術、してみませんか?」

「夢結様と梨璃の分はどうする?」

「2人もいるなら、そこに私たちがマギスフィアを届ければ……!」

 

 次々と紡がれる勝利への道筋に。

 一柳隊の士気と期待が高まっていく。

 

「んなこと仰られても、肝心なノインヴェルト用のバレットはどこにありますの?」

 

 だが、楓が指摘した現実に。

 白熱しつつあった議論が冷静さを取り戻す。

 基本的に、ノインヴェルト戦術の特殊専用弾は司令塔を担うリリィが持ち運ぶものとされているが。

 レギオンによっては隊長が持っていることもある。

 一柳隊は後者だ。

 つまり、この場に特殊弾は存在しないはず。

 ため息をついた楓は、ふと身に覚えのない感触に気がついた。

 

「あら?」

 

 違和感に手を突っ込んで取り出せば。

 正体はすぐに明らかになった。

 

「これ……」

「バレットです!」

「なんで楓が持ってんだ?」

「あの時……?」

 

 ──梨璃について行こうとした時。

 マギが入らず、よろけた体を梨璃が支えてくれた。

 おそらく、あのタイミングで忍ばせていたのだろう。

 

 彼女は最初から、一人でどうにかしようと思っていなかった。

 仲間に託し、その上で自分ができることを考えていた。

 一柳梨璃はその点において、もう立派な一人のリリィなのだ。

 

「とにかく作戦は始められる、ということじゃな」

「はい」

 

 勝利への道は開けた。

 足りないピースも揃った。

 机上の空論は実現可能な範囲にまで降りてきている。

 託されたのなら、全力で応えよう。

 それが、リリィの生き様というものなのだから。

 

「では、最初は雨嘉さんからお願いします」

「う、うん」

「その次は……二水さんですわね」

「えぇっ!?」

「わたくしが多少はカバーして差し上げますから、しゃんとしなさいな」

 

 テンポよく順番が決まっていく。

 もちろん、これはあくまで『予定』だ。

 実際に何が起こるか分からないのが戦いというもの。

 だがまあ、その時はその時だ。

 

「それでは、作戦開始ですわ!」

 

 司令塔の一声で、一柳隊は散らばっていく。

 信頼が勝利を掴む、ということを怪物に見せつけてやるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 駆け出す一歩。

 先行して飛んでくマギの斬撃2つ、目っぽいとこに当たった。

 飛びついて思いっきり追加をねじ込む。

 スパーク受け取れゴラァ!!

 

「■■■■■■■■■■!?」

「だらっしゃぁあああああああああああ!!」

 

 テンションは実にフルスロットル。

 気分はまさにロックンロール(錯乱)

 おうおう唸れバスタード!!

 お前の力はそんなもんか!?

 もっとやる気出せるんちゃうんけ!?

 

「す、すごい……!」

「……アルンさん、あんなに叫ぶような子だったかしら」

 

 若干引き気味に驚いてる声が聞こえる。

 夢結様、残念ながら元々そーゆー奴です!

 いつもは抑えてんですよ!

 でもちょっと今は現場復帰にテンションバグってまして!

 調子良すぎて止まんねーの!!

 

「アルンさん危ない!」

「全っ然大丈夫ー!」

 

 梨璃ちゃんの忠告はヒュージの『腕』が来てる、とかそういうのだと思う。

 その辺は対策してあるから問題ないねん。

 

「あれ……?」

 

 ほらね?

 俺が飛びついてる部分を避けて攻撃してやんの。

 すごいねー、まるで()()()()()()()()()()()()()()じゃん?

 まあ事実こいつにゃそう見えてるんだけどな!

 正体は俺のレアスキル『ユーバーザイン』。

 俺の位置情報をずらして認識させてる。

 実際コイツも絶賛混乱中だと思う。

 「めっちゃ顔痛えのにあいつあっちにおるやんけ!? なんでなん!?」ってなってそう、多分。

 だって、『腕』が迷い気味だし。

 大いに悩めー! そして大いに苦しめー!(外道)

 おかげで目の部分はぐっちゃぐちゃ。

 これでビームは撃てまい……!

 

「っしゃあ!!」

「■■■■■……!」

 

 思いっきり蹴りつけて一時離脱。

 マギで強化された脚力はでっかい図体を揺らがせた。

 そして、梨璃ちゃんたちのところに降り立つ前に。

 確かに見えた、翡翠の光。

 自然と口元がにやけるのを感じた。

 

「「マギスフィア!(?)」」

 

 梨璃ちゃんは安心したように、夢結様は驚いて見上げている。

 結梨ちゃんは……なんかもう楽しそう。

 いやあ、俺も高まってきたぜ!

 脳内で『君の手を離さない』がかかっとるで!

 結界外からの超長距離(ロングレンジ)パス……改めてすげえな!?

 いざ現場で見たら分かるけど!

 

「2人とも、もう戦えます?」

「ええ、おかげさまで」

「私も大丈夫です!」

 

 しっかりCHARMを構えて万全の様子。

 これで手がすっからかんなのは結梨ちゃんだけか。

 梨璃ちゃんもそこが心配らしい。

 

「わたしも戦う!」

「でも結梨ちゃんはCHARMが……」

「そんなら、はいこれね。あ、これだとノインヴェルトには参加できないから気をつけて」

「うん!」

「え、アルンさんはどうするんですか!?」

「そらもうオレはあれよ、これ()これ()

「本当に大丈夫かな……」

 

 心外な!

 今の右手は人外要素を残してるから、引っかくくらいはできるんだぜ!?

 あと強いて言えば、蹴りって手段もあるから!

 鎖……っつーか尻尾だって充分使えるぞ?

 そのまま振るうも良し、腕に巻いて殴るも良し。

 某アイドル大統領とか『金ピカ』を知らんのか。

 ……いや、前者は短剣メインだから違ったわ。

 

「まぁ、とりあえず信じてみてよ。足引っ張るつもりはないから」

「……無茶はしないでね?」

「もちもち」

 

 そんなに心配せんでも……

 まあ、それが梨璃ちゃんの素敵ポイントなんだけどね!

 おっと、それはともかく。

 視界の上の方で、目まぐるしく飛び交っては色を変えていたマギスフィアが。

 2人に目がけて光の尾を引いてくる。

 

「マギスフィアが来ます!」

「私が受けるから、フィニッシュは梨璃が! 結梨とアルンさんは援護を!」

「分かった!」

「はいはーい」

 

 完成まであと一歩、というところまで来て。

 ヒュージの赤い『腕』に青が走る。

 次の瞬間には、3つだった『腕』が9つになっていた。

 うん、知ってる(白目)

 

「えっ!?」

 

 一体何回夢結様を驚かせば気が済むのか。

 マギスフィアは横取りされ。

 赤いボディの上を滑るたびに、色鮮やかだった光が一転して、真っ黒く淀んだ色に塗り替えられていく。

 ぬあー!!! アニメで見てっから知ってたけど!

 やっぱバチクソ腹立つ!!

 百合の間に挟まるなと! あれほど言っとるやろがい!!

 1回くらい言うこと聞けよ!?

 あと人様のモンをパクんなっつってんの!

 お前ら借りパクがブームなのか!?

 殺されてーのか殺すけど!!

 戦略に組み込んではいるし対策もあるけどそれはそれとして溢れ出る殺意……!

 

「失敗だわ。逃げなさい、梨璃!」

「いえっ、お姉さまが逃げてください!」

 

 それだけ言って梨璃ちゃんが飛び出した。

 あのマギスフィアを取り戻すためだ。

 夢結様と結梨ちゃんも後を追う。

 怒ったような夢結様の声が聞こえて、胸の内から「てぇてぇ」が溢れ出す。

 んー、もう展開知ってる身からすればこれただの痴話喧嘩なのよね!

 だってその間にも手ぇ繋いだり、背中合わせで戦ってるもん。

 俺こういうの大好き(直球)

 できればずっと拝んでいたいけど、そうもいかんのが悲しいところ。

 そろそろ梨璃ちゃんが、黒くなったマギスフィアに追いつきそう。

 

「結梨ちゃん! マギスフィアを思いっきり跳ね上げて!!」

「分かんないけど分かった!」

 

 正直でよろしい。

 結梨ちゃんが一瞬加速して、梨璃ちゃんを追い抜く。

 多分縮地使ったなこれ?

 

「やぁっ!」

「あっ、マギスフィアが……!?」

 

 結梨ちゃんがバスタードで『腕』を叩きつける。

 シーソーの要領でマギスフィアは直角真上にかっ飛んだ。

 ちゃんと伝わってて安心した!

 

「これでいいー!?」

「超完璧っ!! 梨璃ちゃん夢結様、追ってくる『腕』を抑えてください!」

「何か策があるのね?」

「ばっちこいです!」

「お願いします!」

 

 高く打ち上がったマギスフィアを追って、翼を打つ。

 あのままじゃCHARMにはちょっと毒だ。

 今後のことを考えたら、まともに動くCHARMはなるべく残しておいた方がいい。

 手放された必殺の光を追う『腕』は梨璃ちゃんたちが逸らしてくれる。

 あとは竜の手を残した右手を伸ばして……!

 

「届けぇぇぇぇええええええええ!!」

 

 ──ずぶん、と右手が呑まれた感覚。

 腕の部分は不快だけど、手の部分は優しくて温かい。

 やっぱりそうか。

 負のマギで汚染されてるのは()()()()

 ガチで染めようと思ったら、多分時間も量も足りねえ。

 短時間でそんなことすりゃ、2つのマギが相殺し合って威力が落ちる。

 『攻撃の無効化』だけを狙ってんならそれで充分だけど。

 コイツが狙ってんのは、相手の攻撃を逆手に取った『カウンター』だ。

 だったら外側を取り繕いつつ、じわじわ浸蝕した方がいい。

 なるほど、そら賢い判断だ。

 だって、俺もそうするもんなあ!!

 

「ああぁぁぁあああああああああああああああ!!」

 

 気合いの絶叫。

 『外』と『中』を入れ替える。

 負のマギを押し込んで、綺麗なマギで覆い隠す(コーティング)

 ちゃんとやったことはないけど、俺はやり方を知ってる。

 これでエネルギーの総量を維持したまま、ノインヴェルト戦術は続けられる……!

 

「マギスフィアの色が……!」

「元に戻った!」

 

 あとは表面上は綺麗になったマギスフィアを。

 知ってるマギの気配がする方へ飛ばすだけ。

 

「行け、次に繋ぐためにっ!!」

 

 空気を殴りつける勢いで振り抜く。

 飛び出したマギスフィアが加速する。

 その先を遮るように出しゃばる『腕』。

 いくら梨璃ちゃんたち3人が頑張ってるとはいえ。

 9つも抑えられないことは織り込み済みだ。

 だから。

 

「させっかよぉ!!」

 

 鎖の尾を伸ばして、1つのガイドレールと成す。

 放った弾丸は止められない。

 でも、弾いたり逸らすことなら……!

 銀の道を辿って、急激に軌道を変える。

 『腕』は追いきれず、対応しきれずで抜けてくだけ。

 はっはー! テメーなんかに二度と渡すかバーカ!!

 と、俺の心の中で立った中指はともかくして。

 ジェットコースターばりのルートを滑走したマギスフィアは。

 さらなる加速のおまけ付きで、今度こそ空へ投げ出される。

 

 さあ、こっからが激アツ展開だぜ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「行くよ樟美!」

「はいっ、天葉姉さま!」

 

 竜の少女が繋ぎ止めたバトンを最初に受け取るのは。

 アールヴヘイム主将とそのシルト──天野天葉と江川樟美。

 途中で変えられた軌道の行く先は、樟美のレアスキル(ファンタズムS級)で予測済み。

 そして、少女が視た通りの未来が現実となっている。

 

 地を駆けて、駆けて。

 目指すは約束された着弾点へ。

 跳んでグラムの刃が受け止め、『腕』の軌道からわずかにズレる。

 次いで重ねたモノクロのグングニルが追撃を避けるに至らせる。

 押し込んで、一気に2人分のマギが注がれる。

 

「「やぁぁぁああああああっ!!」」

 

 既に9人を超えたマギスフィアが『次』を求めて空を滑る。

 下から狙った敵の一撃は、アルンが2人を鎖で引き寄せることで回避した。

 

「助かった!」

「ありがとうございます……」

「喋ってっと舌ぁ噛むかもですよっ、と!」

 

 ふんわり降ろす間にも、パスは続いていく。

 最早これは総力戦だ。

 

「壱! 亜羅椰!」

 

 アールヴヘイム司令塔──番匠谷依奈が繋ぎ、繋げるパス。

 しかし直後に響くパキン、という音は。

 通常のノインヴェルト戦術ではあり得ない音だった。

 

「これだけでCHARMが限界だなんて、どんだけのマギスフィアなのよ……!?」

 

 彼女の操るアステリオンの刃は見事に砕けていた。

 たった一度受け止めただけで、この有り様だ。

 確かに、9人分を超えたマギスフィアとはいえ。

 天葉と樟美が有するマギの量が、平均を上回るものとはいえ。

 果たしてここまで凄まじい壊れ方をするものだろうか?

 ……いやそんなことを考えている場合じゃない、と思考を一瞬で切り替えて。

 

「かなりヤバい奴よ! 気をつけて!」

「望むところ、っ!」

「あと頼むわよ──」

 

 田中壱のブリューナク、遠藤亜羅椰の赤いアステリオン。

 次へと託される度に、CHARMを壊していくその様は。

 CHARMごとマギを食らうかの如き光景だ。

 2人に引き継がれ、間もなく直下したマギスフィアは。

 

「「────みんな!!」」

 

 山の中に散開したリリィたちが次々にパスを繋げていく。

 ピンボールマシンにも似た速さで、木々を迷いなく抜けていく。

 『腕』が執拗に追ってくるが、変則的なパスルートに追いつかず。

 あるいはアルンの鎖に絡みつかれて阻まれる。

 

「いっけー!!」

 

 少女たちのマギを、想いを。

 喰らい、受け取り、託される。

 ノインヴェルト(9つの世界)を超えたマギスフィアは止まらない。

 

「やぁっ!!」

「仕方ないわね!」

「あっはははははー!」

 

 他にもローエングリンが、ロスヴァイセが、アールヴヘイムが。

 百合ヶ丘のリリィたちが次へ次へと繋いでいく。

 そして、皆が動いているのに。

 彼女たちだけじっとしている、なんてことはあり得ない。

 

「「私たちももう一度!」」

 

 梅と鶴紗が。

 

「「CHARMの限界まで!」」

 

 神琳と雨嘉が。

 

「「夢結様と梨璃さんに!」」

 

 二水と楓が。

 

「頼むぞ、わしの──!」

 

 そしてミリアムが、それぞれの相棒(CHARM)の名を叫んで最後の一押しに加わる。

 束ね、重ねた一柳隊のCHARMが網のようにマギスフィアを捉え。

 揃えた呼吸でバネの如く弾き出す。

 膨大な量を蓄えた極光に、いよいよ脅威を覚えたのか。

 ヒュージが『腕』を重ねて防御、あるいは二度目の略奪を試みる。

 しかし、全校生徒のマギを食らったそれは。

 ヒュージ如きに御せるものではない。

 CHARMを著しく消耗させた代わりに、絶大な威力を秘めた光が『腕』すら貫いて空を飛ぶ。

 

「……ははっ」

 

 爆発の煙を切り裂く絆の流星に、思わずアルンは口角が上がったのを自覚した。

 前世で『全校生徒によるノインヴェルト戦術』が凄まじい代物であることは、なんとなく知っていた。

 この世界に生を受けてからも、通常のノインヴェルトですらレベルが高いということを思い知らされてきた。

 だがやはり、実際に目の当たりにしてみれば。

 それが己の想像を遥かに凌駕するものであることを理解させられる。

 

 この先の選択を誤れば、自分に向けられかねない断罪の剣だ。

 本来自分のような存在を滅ぼす、浄化の光なのだ。

 だというのに、どうしようもなく魅入られていた。

 あるかも分からない心臓が、鼓動を増すような感覚は。

 きっと恐怖によるものではない。

 

「結梨ちゃん! 最後の仕上げ、行くぞ!!」

「うんっ!」

 

 何をどうする、とは言わない。

 この一言で、自分たちがすることは分かっているから。

 

 ──2人の邪魔は、させないっ!!

 

 マギと想いに共鳴したバスタードが力を増す。

 鎖の尾が『腕』を捕らえる。

 封じて、投げて、斬って、刺す。

 ノインヴェルト戦術には参加できないけれど。

 それなら、それなりの役目がある。

 戦場において、役割のない者など存在しないのだから。

 

「跳べっ!!」

「行ってくる!」

 

 封じた『腕』と鎖の道を駆ける。

 必殺の一振りを携えた少女たちの活路を、文字通り切り開くために。

 暗く、しかしどこか温かな力が膨れ上がる。

 歪で継ぎ接ぎな、混ざり物の力。

 なのに、嫌な感じはちっともない。

 

「やぁああああああっ!!」

 

(──あ)

 

 夢結と手を重ねて空へ跳び立つ中。

 あの日の光景によく似ている、と梨璃は思った。

 百合ヶ丘を守るために、結梨とアルンが姿を消したあの瞬間。

 あの攻撃に比べたら、小規模な一撃である上に。

 纏っているのは光ではなく、反転した闇なのだけれど。

 

「梨璃、夢結! いけるよ!」

 

 悪足掻きを試みたヒュージの『腕』が、バスタードの一撃で両断された。

 ──ただ決定的に違うのは。

 あの時のような、嫌な予感が全くしないこと。

 なら、不安も迷いも一切ない。

 

「ありがとう、結梨ちゃん!」

「梨璃!」

「お姉さま!」

 

 百合ヶ丘のリリィ全員のマギが込められた極光が。

 夢結のダインスレイフへ溶け込んで、光の剣となる。

 皆が繋いだ力を、2人(結梨とアルン)が拓いた道を進んで。

 2人(梨璃と夢結)で終わらせる。

 

「「はぁぁぁあああああああああああああ!!!」」

 

 まさしく一刀両断。

 赤い巨体は次の瞬間、大爆発を巻き起こす。

 荒れ狂う爆風、天すら焦がしそうな爆炎。

 少女たちは物陰に隠れてやり過ごす。

 

 

 

 

 

 ……ついに何も聞こえなくなった世界で。

 捕らえていた『腕』で成したシェルターと目を開ければ。

 雪のような光が舞っている。

 

「……やっぱすげぇや、リリィってのは」

 

 晴れた空を見上げて。

 竜の少女は眩しそうに呟いた。

 




前回のラスト、結梨ちゃんに「騎英の手綱(ベルレフォーン)っ!!」ってしてもらう案もあったのですが、それだとオリ主の服がバラバラになって最終決戦で全裸とかいう最悪のオチが見えたのでボツに。

【キャラ設定】その42

オリ主と結梨ちゃんが使っている禍々しい武器は『グングニル・バスタード』。サーバント『グラディウス』と融合したことで、損傷が激しくても扱えるようになってしまったボロボロのCHARM。
通常のグングニルよりも攻撃力と耐久性が高いが、シューティングモードへの変形はできない。上手く使用者と適合すれば、意思に応じた操作も期待できる。
適合してしまったのは傷だらけの手で7話でオリ主が持ってたから。気をつけていたと言っても、わずかにCHARMに体液が入っていた。
(イメージ的には入り込んだ砂鉄に反応して磁石がくっついてる感じ)
ヒュージ由来の代物だから、普通のリリィ(強化リリィ)には扱えない。オリ主が使えているのは100%ヒュージだからだし、結梨ちゃんが使えているのはヒュージの因子を持っていた上にオリ主のマギが溶け込んでいるから。(普通のリリィが使おうものなら、一気に負のマギに呑まれる)
要は『元悪役のヒーローが、悪役時代の武器を正義の力として使っている』みたいな激アツウェポン。

いよいよ次回で完結です……!


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