転生先が百合キャンセラーのバケモンとかどうにかならなかったんですか!? 作:サク&いずみーる
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3時間後
「どうして」(完成した7話、進展なき課題)
今年最後となるこの投稿は、短い上に大して面白くないと思います。
「私も、前にそいつに助けられたんだ。普通のヒュージなら、手負いのリリィを庇ったり、怪我した人たちを運んだりしないだろ」
梨璃ちゃんの時とは違って、今度は分かりやすく周囲が戸惑った。
言っちゃ悪いけど、新米の梨璃ちゃんが言うより、歴戦リリィな梅様の言葉の方が説得力があるのは事実だもんな。
って、この人今なんて言った?
俺が前に梅様を助けた?
「久しぶりだな! 元気にしてたか?」
俺の方を向いて、梅様が気さくに話しかけてくる。
なんかもう、昔の同級生に挨拶してるみたいな感じで。
「キュイ……」
「しばらく見かけなかったから心配してたんだゾ? あ、あの時助けてくれた人たちはみんな助かったらしいゾ!」
「……」
「もし、あの時助けてくれなかったら梅も死んでたかもしれない。ありがとな!」
「…………」
嬉しそうに話してくれる梅様。
でも、俺は応じることができない。
だって、俺は──
「どうしたんだ? 梅のこと、覚えてないのか?」
「……キュイ」
「──っ」
梅様の問いかけに、小さく頷いた。
周囲は「ヒュージが人間の言葉に応じた」ことに、より戸惑っていたけど。
俺も、多分梅様もそれどころじゃなかった。
──梅様に会った記憶が、俺にはない。
記憶喪失とか、そういうんじゃないんだけど。
大方、その時の俺が死にかけで意識が曖昧だった時に会ったんだと思う。
だって、梅様はアサルトリリィではメインキャラの一人だ。
会ったことあるなら絶対忘れない。
それに『人助けするヒュージ』なんて、この世界には俺だけだ。
たとえ、無意識状態だったとしても。
命に執着する俺なら、人命救助くらいやりかねない。
梅様の方も、一瞬だけ悲しそうな顔をした。
そりゃそうだよな。
お礼もまともに言えないでそのまま消息不明、しかも相手はヒュージだから捜索願いも出せるわけがなくて。
それでやっと会えたと思ったら、そいつは自分のこと覚えてないっていうんだから。
どうにもできないのが、酷く歯痒かった。
「……キュイ」
「気にすんな、お前が死んでないって分かっただけでも安心したよ」
「キュイ」
罪悪感が、梅様の作り物の笑顔が、俺の心に深く突き刺さる。
申し訳なさでいっぱいになる。
身体の傷は癒えたみたいだけど、心の傷はそうでもなくて。
ほんっと、情けないなあ……
「そうだ、アイツから取り返してくれたやつ」
話を変え、梅様は俺の触手──厳密にはそれが巻きついたCHARMたちを指差した。
主を亡くした、道具たち。
「ありがとな。それ、大事なものなんだ。返してくれないか?」
当然の答えだろう。
もちろん、俺もそのつもりだ。
でも。
「キュッキュイ」
首を横に振った。
他のリリィたちが不穏な空気を帯びる中、ただ梅様は何か思うものがあったらしい。
「それを、どうするつもりなんだ?」
「キュイ」
治った腕で指したのは、桜が咲く山。
確か、『原作』で梨璃ちゃんが初めて『夢結様のシュッツエンゲル』にご挨拶に行った時。
あの場所には桜──ソメイヨシノが咲いていた。
その記憶を頼りに、示したつもりだったんだけど。
……その、合ってる?
「──分かった」
どうやら心配なかったらしい。
周りのざわめきと、梅様の優しい声が正解だと教えてくれた。
そして梅様も俺の回答が『嫌だ』ではなく、『待って』だと気づいてくれたようで。
「梅も一緒に行く。また攻撃されるとか、堪ったもんじゃないだろ?」
そんな申し出に、俺は再びこくりと頷いた。
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「ソメイヨシノが花を咲かせるには、冬の寒さが必要なの」
夕焼けの空から、桜の雨が舞い落ちる。
傷ついたかつての街と、百合ヶ丘女学院を見渡すこの山頂には。
人類のために戦い、そして儚く散ったリリィたちが安らかに眠っている。
昔はここに咲くソメイヨシノも、春の訪れを告げるように花開いて。
季節の変わり目を知らせてくれたらしい。
しかし、今や冬と春の境目は曖昧になってしまった。
少しまばらに咲いた花たちの様子は。
夢結には、まるで『いつ咲くべきか』と戸惑っているように思えた。
カチャ、と静かにペンダントが開かれる。
中には一人の少女の写真。
小さく微笑む姿もまた凛々しい、美しいリリィだった。
梨璃にとっては一度だけ会った、夢結にとっては特別な『姉』。
「この方が、夢結様のシュッツエンゲル……」
「そう……私の、お姉様……」
「川添、美鈴様……」
もう二度と会えない人を想い、目を閉じる。
──これからの私たちを、どうか見守っていてください
振り返った先には楓や二水、梅の姿。
そして、本来ならこの聖域に踏み入ることを許されないはずの者もいた。
「……」
浅くもなく、深くもなく。
自立する程度に一つ一つ、丁寧に突き立てたCHARMの墓標たちに向けて。
そして、その先にいる他のリリィたちにも向けて。
ただ、頭を垂れて沈黙するピラトゥス。
黙祷を捧げているというのは、言うまでもなかった。
「──本当に、ヒュージなのかな」
いつかと同じ梨璃の呟きに、居合わせた誰もが考えさせられた。
今まで戦ってきたヒュージは、なんの躊躇もなく人の命を奪ってきた。
人々が築いてきたものを、容赦なく踏みにじり、蹂躙してきた。
だから、リリィは躊躇うことなくヒュージを屠ることができる。
しかし、ピラトゥスはむしろ人々を守ろうとしている。
言葉は話せないが、話せないなりにコミュニケーションを取ろうともしている。
そして何より、亡くなったリリィたちを偲ぶことができる『心』を持っている。
この生き物は、本当に『人類の敵』なのだろうか。
「キュイ」
おもむろに、ピラトゥスの頭が上がった。
終わった、とでも言うように全員を見回す。
「じゃあ、それは返してくれるか?」
「……」
一つだけ、損傷の激しさ故に、突き立てずに横たえていたCHARMを手にして。
道を開けるように、ピラトゥスが身を引く。
夢結と共に近づいてきた梨璃へ、そのCHARMを預けた。
「うん、ありがとう」
「……」
そうして満足気に頷くと、ピラトゥスは跳躍する。
ある程度地上と距離を取ってから、翼を打って去った。
跳躍してから飛んだのは、風圧でなるべく荒らさないようにという配慮だったのだろうか。
「──なんて、報告するべきなんでしょうね」
「事実をそのまま話すしかありませんわ。結局のところ、その辺りの判断を下すのはガーデンですもの」
「そう、ですよね」
「分かってくれると、いいな」
見守る少女たちは小さき竜の安寧を祈る。
桜の雨が、穏やかに降り続けていた。
2話抜粋『夢結もあまり見たことがない顔をした梅』
→怖い顔(負の感情)なんて言ってない。
【キャラ設定】その7
この手にありがちな「人外としての意識に引っ張られて……」という精神汚染的な被害は特にない。考えや価値観もちゃんと人間寄り。
ただ、前世に比べるとわずかに情緒不安定と人間不信(リリィは別)が強化されている。
ついに明日がシンフォギアコラボ……!(準備運動開始)