ラスボスの子に転生したのでNO.1ヒーローを曇らせたいと思う   作:タメガイ連盟員

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ヴァイト様、244様、土屋 四方様

誤字報告ありがとうございます。

ヒーロー科の入試内容について独自解釈があります。


15.入学試験

 修学旅行が終わり早5ヶ月、2月25日の夜を迎えていた。

 

 そう、雄英高校ヒーロー科入学試験である。

 

 特に語るべき事がないんだよ。あれからずっと受験勉強とトレーニングと雑務しかしてないし。

 

 試験日程は2日間。1日目が筆記試験、2日目が実技試験だ。普通科と経営科は筆記のみ、サポート科は事前に製作したものを提出する形になっているため、2日目の実技試験はヒーロー科のみである。

 

 この日程で全国から受験生が集まるため、雄英高校周辺の宿泊施設は学生で埋め尽くされることになる。私が今いるのも、雄英高校から3つ離れた駅の近くにあるビジネスホテルだ。一時的ではあるが、人口が激増するため、警察官も増員されているようだ。これから受験だから馬鹿なことをする学生はそういないと思うけど、大変だね、警察も。

 

 既に1日目の筆記試験は終わり、明日の実技試験に備えるばかりだ。筆記試験の中身は、まあ問題あるまい。ケアレスミスさえなければ。

 

 しかし、受験者が1万人を超えるというのに、この日程で試験を行えるんだから雄英の規模どうなってるの。試験会場も既存の校舎だけでは足りないから仮設の建物が大量に用意されていた。セメントスをはじめとする建設系個性持ちや、建設補助の機械類が多数いるにしてもこれだけの……って、あ、そうか。緊急時の避難所にもなるのか。だから最終章であれだけの避難民を受け入れることができたわけか。そりゃそうか、学校って災害時の避難所に指定されてるんだから、これぐらいの装備や備蓄があってもおかしくないよね。なるほどなー。

 

 それにしても、これだけの敷地をどうやって確保したのやら。北海道の農業高校並の敷地面積あるぞ。国立だから土地は国が所有者から買い上げたとして。記録を見た感じだと、超常黎明期の混乱って第二次大戦後もかくやだし、当時の政府もなんとか統制しようと少なからず強引な手を使っていたことがわかる。まあ、普通に土地買い取り交渉もしてるけど、設置予定地の土地評価額を滅茶苦茶につり上げるということも。これやられるとすんげえ税金かけられるから、所有者は税金を払えずに土地を手放すことになっちゃうわけだ。ひでえ。

 

 ちなみに、百は既に推薦で合格を決めている。推薦入試の方は筆記試験と3000mの障害走だっけ。うちの学校からの推薦は百で最初から決まっていたようなものだけど、私に話が来ても断っていたと思う。個性登録で出している『念動力』は汎用性は高いものの、素早く移動することには向いていない。私の身体能力は飛び抜けているけど、夜嵐くんや轟くんみたいな個性持ちと競争となると流石に勝てない。なので一般入試の実技試験の方が向いているわけだ。

 

 こっちは試験内容を既に知っているから有利だ、と言いたいところだけどさすがに実技試験の内容は割と世間で知られている。そりゃそうだ、毎年1万人も受けてるんだから知られていないはずがない。その割には審査制であるレスキューポイントの存在は知られていないのは、合格者のみに通知されているということだろうか。ついでに口止めもされてるかも。レスキューポイントはヒーローとしての適性を評価するもので、受験者の本性を問うことになるから伏せられているのだろう。

 

 受験生でレスキューポイントの存在を知っているのは私だけということになるわけで、ちょっとズルしてる気もするがズルは今更だしね。周りの人を助けるなんて、ヒーローなら当然なんだろうけど、あいにく私は意識しないとまずやらないだろうから、持っててよかった原作知識というわけだ。むしろ『念動力』以外の個性を使わないように気をつけないといけない。ズルばかりでもこの辺は線引きしておかないと。というか、しばらくは『念動力』一本であるように見せないといけないんだよね。面倒な。

 

 個性と言えば、出久くんは1月の中旬頃に海浜公園の清掃を完了して無事ワン・フォー・オールを継承している。というか、原作でも指定された場所以外も清掃しているから、オールマイトの想定よりも早く仕上げてるんだよね。そこまでやらなければ当日ギリギリにならずに済んだのでは、と思わずにはいられない。ブレーキぶっ壊れてるよね、出久くんって。

 

 私(の分身)による強化で予定より早く終わったことで、受験勉強やワン・フォー・オールの制御訓練をする余裕ができたのはなによりだ。もっともワン・フォー・オールの制御についてはさっぱりのようだが。夢の中でもイメトレさせてるんだけど、なかなかうまくいかないもんだ。しくじると体が壊れちゃうから仕方ないんだけど。許容量は10から15%ぐらいだと思うんだけど、こればっかりは本人が感覚を掴まないことにはどうにもならない。この調子だと、明日の実技試験は原作同様0と100のオンオフだけで挑むことになりそうだ。

 

 あー、あと彼の場合仮想ヴィランを攻撃できるかって問題もあったな。根っから体にしみついたビビりはどうにもならん。暗示かけてあげてもいいんだけど、そこまでするのは何か違う気がするし。

 

 ……うん、緑谷出久くんの雄英高校合格を祈りつつ今は眠ろう。人生綱渡りだなぁ、彼。

 

 

 

 

 さて、快適な目覚めができたところで、まず顔を洗ってから前日に買っておいた朝食を食べる。朝食はホテルからも提供されるが、食堂が混むことは考えるまでもないので最初から朝食なしで予約してある。身だしなみを整え、受験票やジャージなど忘れ物がないか改めてチェックする。よし、問題なしと。電車で10分ちょいぐらいで雄英の最寄り駅に着くが、混雑することは確実なので余裕を持ってホテルを出る。

 

「志村さん、おはようございます」

 

「おはようございます」

 

 普通科を併願している同級生だ。併願と言ってもほぼ記念受験、でも、もしかしたらワンチャン、ぐらいの気持ちらしい。怪我しないようにね。私や同級生以外にも同じホテルから何人も受験生らしき人たちが駅へ向かっている。

 

「いよいよですね、緊張します」

 

「そうですね」

 

「さすがに余裕ありますね」

 

「常に冷静であれ、ですよ」

 

 駅の構内には既に受験生の姿が多く見られる。3駅離れていてもこれだ。最寄り駅の雄英高校前駅はどうなっていることやら。この日のために増便までされているらしい。試験に必要の無い荷物をコインロッカーに預ける。またこの駅で降りる必要が出てしまうが、最寄り駅の方に空きがあるとは思えない。

 

 目的地である雄英高校前駅で下車し、人の流れに乗ってそのまま移動する。昨日も来てるけど、この人の流れ、ビッグサイトを思い起こさせるなぁ。そういや今でも即売会ってやってるのかなぁ。我ながらどうかと思うけど、今まで気にしてなかったから試験が終わったら調べてみよう。行く暇なさそうだけど。

 

 しばらく歩いていると、H型の校舎が見えてきた。直接見るのは二度目だけどスケールおかしい。昨日の試験会場の教室もやたら天井高かったし。

 

 校門を通り敷地内へ。受付で受験票の確認をすると、試験概要のプリントとリストバンド、3cm四方の小箱のようなものを渡された。実技試験で使うとのことだ。試験概要によると、リストバンドは仮想ヴィランを撃破した際のポイント計算を、小箱は小型ドローンで不正行為がないか見るためのものらしい。なるほど、原作でどうやってあれだけの人数の採点を行っているかわからなかったけど、こういうことだったのか。現実として接してみないとわからないことだ。小型ドローンの方はレスキューポイントの審査にも使われるのだろう。

 

 こういう機械技術が平成と比べて随分発達してるのを見ると、この世界は近未来なんだなぁ、と感じる。リストバンドもかなり丈夫にできてるわけだし、ドローンもこのサイズで10分間動き回る受験生を追随できるだけの速度を出せて、かつ撮影もできるんだから驚くばかりだ。仮想ヴィランも自律稼働できるものが大量に用意されているし、タルタロスや刑務所の警備にもロボットが使われていることを考えると、現代は個性社会である以上にロボット社会でもあるわけだ。

 

 でもこれ、転移系や高速移動系個性の人がいたら追うの難しいんじゃないか? 補助として監視用のロボット配置してると思うけど。まあ、転移系はレアらしいからそんな気にしなくてもいいのかも。作中でも黒霧とパパしか使ってないし。高速移動系もホークスぐらいしか思い当たらない。あの人、全速力だとどんくらい出るんだろう。

 

 採点方法はわかったけど、それでも受験者の数が多いから、筆記試験の結果でばっさり足切りしているはずだ。ということは、実技試験を受けている意味がない受験生が多数いることになるが……まあ、そもそもの倍率が倍率なんだから仕方ないか。どんなに優れた個性を持っていたところで、最低限の学力がなければ入学はできない(その最低限のラインが非常に高い点はともかく)。そして、強い個性を持っていても使いこなせなければ実技試験は突破できない。心操くんが良い例だろう。まあ、彼の場合正直努力不足の面があるのは否めない。戦闘能力皆無な個性であるはずの葉隠さんが合格してるわけだし。いや、まだしてないか。

 

 試験概要の説明が行われる講堂に同級生と連れだって着席する。にしても、ヒーロー科の受験者が1万人って誇張設定だと思ってたけど、現実になると呆れるしかない。あ、いや、確か、東大の受験者数が1万人ぐらい……いや、全科での数値だからやっぱおかしいわヒーロー科。

 

『今日は俺のライヴへようこそー!!! エヴィバディセイヘイ!!!』

 

 時間になったらしく、壇上に上がったプレゼントマイクによるパフォーマンスなのか説明なのかよくわからないトークを聞き流しつつ、試験概要のプリントをめくっていく。

 

 『模擬市街地演習』

 

 制限時間10分、各会場に3種・多数配置された仮想ヴィランを行動不能にすることでポイントを獲得することが目的とされている。ポイントはそれぞれ1・2・3ポイントで、攻略難易度に応じている。持ち込みは自由。他の受験者への故意の妨害があった場合はその場で失格となる。

 

 配布されたリストバンド、ドローンを紛失しても失格になる。集計用なんだからなくしたらポイント不明になるし、配布されたものをなくすのは普通にNGだろう。それを考えると、リストバンドは着替えの前につけておいた方が良さそうだ。ドローンの方は、気をつけるしかなさそうだ。

 

 ……うーん、ちょっと目立っておくかな。立ち上がり、挙手する。

 

「質問がありますがよろしいでしょうか」

 

「質問よろしいでしょうか!?」

 

 眼鏡をかけた受験生――飯田くんに先んじて声を出す。私に気づいた飯田くんがこちらに向かって会釈してきた。私の方が先だったので質問を譲ってくれるようだ。こちらも会釈を返す。杓子定規な彼だが、場を乱すような真似はしない。癖の強いA組の面々では付き合いやすい方だろう。

 

『オーケー、受験番号1054番さん、なんでも聞いてくれ』

 

「ありがとうございます。さきほどの説明では仮想ヴィランは3種類とありましたが、プリントには4種類の仮想ヴィランが記載されています。説明がなかった4種類目の仮想ヴィランは如何なる理由で配置されているのでしょうか。あるいは、誤記載なのでしょうか」

 

『おおっと、4種類目の仮想ヴィランは言わばお邪魔虫だ! 各会場に1体! 所狭しと暴れているギミックよ! だから倒したところでポイントは0だ!』

 

「なるほど」

 

 不敵に笑ってみせる。

 

「つまり、別に倒してしまっても構わない、ということですね?」

 

 講堂にざわめきが起きる。回避前提のステージギミックを倒そうなんて普通は考えない。ゲーム的に考えると無敵の雑魚敵を倒してもいいよね、って言ってるようなものだ。うん、星でも取ってるのかな?

 

『YEAH! チャレンジャーなリスナーだぜ! 答えはイエスだ! だが何度も言うが倒したところで0ポイントだから気を取られすぎないようにしろよ!?』

 

「ありがとうございました。質問を終わります」

 

 一礼して着席する。隣の席の同級生が軽くつついてくる。

 

「ねぇ、大丈夫なんですか、あんなこと言って」

 

「大丈夫じゃないでしょうか」

 

「いやいやいや」

 

『一緒に挙手していた受験番号7111君、そっちの質問は!?』

 

「さきほどの彼女と同じ質問です! 有難う御座います! 失礼致しました!」

 

『オーケー、オーケー、他にはいないな!?』

 

 プレゼントマイクが講堂をざっと見回す。

 

『ないなら俺からは以上だ! 最後にリスナーに俺から我が校“校訓”をプレゼントしよう。かの英雄ナポレオン=ボナパルトは言った! “真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者”と!!』

 

 いや、その人大量の死体踏み越える人じゃん、1人殺せば悪人だが100万人殺せば英雄だ、を体現してるようなもんだぞ。ヒーローが引用する人物としてどうなの? いやまあ、不屈の人物であることは間違いないんだけど、今時のヒーロー像とはかけ離れてると思う。と言っても史上の偉人でヒーロー的な人っていないよね、近代以降ならともかく、それこそ神話や漫画の出番だし。

 

『“Plus Ultra(更に向こうへ)”!! それでは皆、良い受難を!!』

 

 

 

 更衣室として指定された教室で着替えを済ませ、指定された会場に向かう。

 

 これ、1つの会場に1000人以上いることになるんだよね。模擬市街地の規模からすると適当……なのかね。とりあえず、ドローンを起動させて宙に放つ。これだけの数のドローンがいるのによく干渉し合わないものだ。

 

『ハイ、スタートー!』

 

 プレゼントマイクの声が響くと同時に走り出す。案の定周りの受験生はすぐに反応できず、続くプレゼントマイクの発破でようやく動き出す。その間に会場中央部へ向かう。入り口近くでは他の受験生でごった返しているし、奥だと逆にいなさすぎてレスキューポイントを狙いにくくなる。なので間の中央部がベターだと思う。仮想ヴィランの配置がわからないからアドリブでどうにかするしかないんだよね。さすがにここで探知系の個性使うのはアレだし。

 

 などと考えていたら早速1ポイントヴィランが現れる。

 

『目標捕捉! ブッ殺ス!!』

 

 なんか物騒なこと言ってるけど、わざわざ音声機能つける意味あるのか。作った人、えーとパワーローダーだか誰かの趣味なんだろうか。そして爆豪くんかお前は。

 

「“不可視の手(インビジブル・ハンズ)”」

 

 仮想ヴィランの頭部に衝撃波を撃つ。実際に座標を決めてそこに衝撃波の発生に必要なエネルギーを送り込む、というプロセスを経ているので間に装甲があっても問題なく指定座標で発動する。つまりガード不能だ。まあ、まさか人の内臓に向けて使うわけにもいかないし、マスキュラーみたいに耐久バリバリの奴には効果いまいちだけど。

 

 どんなロボットだろうが制御を司る部品―――おそらく電子頭脳そのものを装甲化することはできない。よって“不可視の手(インビジブル・ハンズ)”で問題なく破壊できる。ヴィランポイントは行動不能にしてしまえばいいのだから必要最低限の破壊で事足りるわけだ。最小限の労力で最大限の効果を得るべし。

 

 仮想ヴィランが動きを止める。これでポイントが入ったことになるのか。うーん、青山くんみたいに可視光線出してる人はともかく、私のように目に見えない攻撃をしている場合きちんとポイント加算されてるか不安になってくるな。んー、『解析』でリストバンドを調べてみると、ちゃんと1ポイント入っている。ああ、ドローンと連動してて倒したという判定になっているのかな? うーむ、謎技術。

 

 ともかく、仮想ヴィランの大きさも確認できたから、ここからは見ただけでバンバン撃破できる。『千里眼』を併用できないから自前の空間認識能力が物を言うのだ。これがなかったらそもそも公的個性で『念動力』を選ばなかったと思う。とりあえず、50ポイントほど稼いでおけばいいだろう。あとはレスキューポイント稼ぎで他の受験者を助けていけば良い。それから0ポイントのやつも倒しておきたいんだけど、試験開始から時間が経ってからじゃないといないのか? まあ、あんなでかいのが最初から闊歩してたら試験にならないか。

 

 さて、目についた仮想ヴィランを倒したり、他の受験生を一声かけつつ助けながら駆け回っていると、会場入り口へ向かう人の波が現れる。ようやく0ポイントヴィランのお出ましらしい。時間は、試験開始から7分ほどか。圧倒的な脅威に対する反応を見るに適当な時間と言えるだろう。

 

 人の流れに逆らって、0ポイントヴィランがいるであろう方へ走る。

 

「お、おい、お前危ねえぞ! でかいのいるんだ!」

 

「脅威を目の前にして、逃げるヒーローがいるものかよ」 

 

 足を止めて警告してきた受験生へ不敵に笑ってみせる。その受験生はハッとした表情でその場に止まる。周囲のビルを破壊しながら進む0ポイントヴィランの10mほど手前で立ち止まり、腕組みなどしてみる。ふむ、なかなかでかい。巨大である、ということはただそれだけで脅威になり得るけど、巨大化個性持ちのヴィランもいるし、これぐらいでビビってたらねぇ。まあ、こういうのが猛スピードで直進するという情景が来年あたり具現するんだけど。

 

「私が来た、なんてね」

 

 右手をかざし、『念動力』で0ポイントヴィランを拘束する。

 

 『念動力』には“衝撃波の発生”と“触れずに物を動かす”、という2つの能力を設定してある。厳密には不可視のエネルギーを操っているんだけど、実際、1つの個性で複数の能力って轟くんや治崎みたいにたまにいるのでおかしなことはあるまい。で、“触れずに物を動かす”には不可視のエネルギーを用いて対象を掴むことが必要になる。その応用で、対象の動きを拘束することができるわけだ。これ結構疲れるから持続時間短いし、距離を詰めないとパワーもでないんだけどね。

 

 続いて左手を0ポイントヴィランに向け、握りしめる。

 

「“巨人の拳(ギガント・フィスト)”」

 

 0ポイント仮想ヴィランの頭部内側に衝撃波を放つ。外側からなら100%のワン・フォー・オールの一撃でもなければ通じないだろうが、内部への直接攻撃なんて想定していないのだから耐えられるはずもない。

 

 電子頭脳を破壊され、機能停止したことで0ポイントヴィランの抵抗が弱まり、右手側が軽くなったのがわかる。そのまま『念動力』で支えながらゆっくりと地面に寝かせる。うーん、物を素早く動かす訓練を意図的にしてなかったとは言え、もどかしい。ゆっくりじゃないと周りの建物を破壊したりするから素早く動かせたとしてもできないんだけど。

 

「た、倒したのか?」

 

「うん? まあ、トップ目指すならこれぐらいできないと」

 

 んんー? この人、もしかして上鳴くんか? 同じ会場だったのか。

 

「トップって、NO.1?」

 

「そこまでじゃありませんけどね。っとそろそろ時間でしょうか」

 

『終了~!!』

 

 プレゼントマイクによって試験終了が告げられる。えーと、ヴィランポイントは48か。50ポイント目安だったからこんなものだろう。レスキューポイントの方はこれから採点されるはずだ。

 

『リストバンドとドローンは受付と同じ場所で回収するから忘れんなよぉ!?』

 

 警告音と共に降下してきたドローンを受け止める。本当にずっと監視してたんだなぁ。すぐに退場すると混んでるだろうから、ゆっくり帰るとしよう。今の時間は……うん、ここを出るときはちょうどお昼時になりそうだから、昼食は荷物を預けている駅の方で摂るとしよう。

 

 

 

 試験から一週間、試験結果が郵送されてきた。

 

 まあ、私は既に『ハッキング』を使って知ってるんだけど。筆記は4位、実技の方はヴィランポイント48に、レスキューポイント50の合計98ポイントのぶっちぎりトップだ。うーん、レスキューポイントがそんなでもなかったのは出久くんと比べてウケが悪かったからだろうか。まあ、実力で言えば私の方が上だけど、出久くんはお茶子ちゃんを助けるために飛び出していて、ヒーローとしては彼の方がらしいと言える。出久くんは原作と変わらずレスキューポイント60のみだ。

 

 レスキューポイントは審査制だから、採点基準はあるにせよ、実質プロヒーローたちからの支持ポイントだと言って良い。審査に当たったヒーローの多くが、出久くんにあるべきヒーロー像を見いだしたのだろう。私の方は、まあ、別の意味で見る目があったということかもしれない。

 

 封書を開いて、投影装置を起動させる。空中に映像を投影する技術は平成にもあったけど、このサイズの装置でできるってのはやっぱりすごい。んー、確か切島くんの回想にも出てきてたよね、この装置。雑誌の付録として。そんなところにも使えるほど普及してるわけだ。

 

 映像で根津校長があれやこれや喋っているが、既に結果を知っている身としては入学のための諸手続の方法が知りたいんだけど。封書にはこれしか入ってなかったから、映像の最後の方にあるはずだ。

 

 ……というか話長いなこのネズミ。長い挨拶は嫌われるぞ。画面の外で「マキで」って言われてるし。というかこれ本当にネズミなの? 個性を持ったネズミである、過去に人間にいじくられていた、ということを考えると個性研究の一環としてヒト細胞を植え付けるなりされたマウスだったんじゃないかな。或いは……うーん、個性研究の闇だね!

 

 しかしこれ、37人分いちいち撮ってるのか? 手が込んでることで。さすがに全員分を校長で撮っているわけでもないだろうし、入学したら合格通知が誰だったかみんなに聞いてみるのも良さそうだ。共通の話題だからね。

 

 根津校長の話が終わり、画面外へ出ると背後にあったスクリーンに入学手続きに関する要項が表示される。スマホかPCで専用ページに飛んで、そこで手続きできるらしい。願書受付もネット上だったし、デジタルなのが当たり前なんだよね。個人的には紙の書類がないと落ち着かないんだけど。

 

 さて、百に合格したことを伝えよう。通話通話っと。

 

「百? 雄英の合格の通知来たよ」

 

『おめでとうございます! これでまた来年もご一緒できますね』

 

「うん、そうだね」

 

 無邪気にずっと一緒にいられるって思ってるんだろうな。同じ夢、同じ目標、そのはずだ。

 

「実技はトップ。筆記の方はちょっと落としちゃったけど」

 

『ケアレスミスが多いのは常夜さんの悪い癖ですわ。やはり機会を設けてきっちり治して差し上げます』

 

「勘弁してよ、受験が済んだっていうのに」

 

『まだ期末テストが残っていますし、今後も定期テストはあります』

 

「うーん、まあ、そうなんだけど」

 

 私の本性を知ったら、彼女はどんな顔をしてくれるんだろう。いつもそんなことばかり考えている。

 

「ねえ、百」

 

『なんですか?』

 

「今、こういうこと言うの、なんか変な気もするんだけど、あなたと会えて良かった」

 

『――――私もです』

 

 通話越しに百が微笑んでいるのがわかる。こうしてお話するのも楽しいんだけどね。楽しいんだけど。どうにも物足りなくなる。欲しくなる、壊したい

 

 それからしばらく雑談をして通話を終えた。つい話し込んでしまった。最近時間をとって話をすることがなかったからかな。直接顔を合わせてないからかも。

 

 それにしても、来月から雄英高校に通うことになるのか。

 

 転生してから3年と少し、ここまで長かったような短かったような。

 

 まさか自分が異世界転生するなんて思ってもみなかったもんな。そりゃフィクションとしてなら楽しんでたけど、自分の身に起きることとしては考えてなかった。

 

 そしてそれが『僕のヒーローアカデミア』世界で、そのラスボスであるオール・フォー・ワンの子供だってのがなぁ。ドクターの秘密研究所産まれだからどういう意味でも普通じゃないし、ついでに性別も変わってるし。

 

 心の中では気軽にパパなんて呼んでるけど、怖いんだよあの人。得体が知れないし、何考えているかもわかんないし、そもそも人間なのかも疑わしい。オカルトレベルの説で、個性は異星人によってもたらされてたってのがあるんだけど、ぶっちゃけパパがその元凶の異星人だと言われても納得しかない。

 

 んー、ものすごく気が進まないんだけど、一応報告しておかないとなぁ。

 

「こんばんは、ドクター」

 

『なんじゃ、そっちからはあまり連絡をするなと言っただろう。またどこか具合が悪いのか』

 

「お父様に繋いで頂けませんか」

 

『先生に? そういうことなら、まあいい。番号を送るから待っていろ』

 

「わかりました。ありがとうございます」

 

 通話を切ると、ほどなくしてメッセンジャーアプリに通知が来る。通知された番号にかけ直す。自分で電話しておいて何なんだけど、パパって耳もなかったような。まあ、振動を感知するような個性でも使っているんだろう。

 

『やあ、元気にしていたかい、常夜』

 

「はい。お父様もお変わりないようでなによりです」

 

『ははは、良くもなっていないけどね』

 

「予定通り雄英高校に合格しましたので、ご報告を」

 

『それはおめでとう。なにかお祝いでも贈ろうか?』

 

「お父様のお言葉だけで十分です」

 

 例え祝いの品でもパパ絡みのもの部屋に置きたくないし。

 

「私が雄英高校で何かすべきことはありますか?」

 

『うん? ああ、気にしなくていい。オールマイトが来るんだろう? よく学びなさい』

 

「はい、お父様」

 

 オールマイトが雄英の教職に就くことで弔の方も本格稼働する。私の存在の方が優先度は低いだろうし、こっちもこれ以上の介入で原作からずれると困るから弔の邪魔をする気はないけど。

 

「ですがお父様。私もお父様にお喜び頂きたいのです。これからもどうか見守って頂きたく」

 

『そうかい? なら、素敵なショーを期待しているよ、常夜』

 

「ええ、是非お楽しみください、お父様」




雄英ヒーロー科の倍率はインパクトを持たせるための設定だと思うんですけど、現実として向き合うトンデモないことになるよなぁ、と思ってたのでこういう風に。

話数的にも話的にも区切りがいいのでここで第一部として章分けします。

プロフィール回を挟んで、第二部雄英ヒーロー科編になります。
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