ラスボスの子に転生したのでNO.1ヒーローを曇らせたいと思う   作:タメガイ連盟員

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噛み砕かれた乳酸菌様、等識人間様、あとりえ様、はしびろ 様、佐藤東沙様、ヴァイト様、ジャック・オー・ランタン様、土屋 四方様、tanabe様、豚バラ煮込み様、リア10爆発46様

誤字報告ありがとうございます。

2月7日、UA300000達成しました。ありがとうございます。

第2部開始となります。


第二部
01.入学


 雄英高校入学の日である。

 

 普通なら入学式とガイダンスが行われるところだが、実際にはA組担任、相澤消太先生の独断による個性把握テストが始まることになる。持ち物に体操服と運動靴などと書いてある時点でお察しである。まあ、相澤先生は生徒の除籍・復籍権限持ってるぐらいだから、これぐらいは大したことではないのだろう。自由な校風とは言うけど、教員に与えられている権限が大きいんだよね。つまり生徒をどうするか自由という意味だ。ひどくない?

 

 正直、授業も普通科は6限なのにヒーロー科は7限だし、土曜も授業あるしでどの辺が自由なのか、と思わないでもない。職員・生徒問わず、こういうことをやりたい、というのを実際にやらせてくれるところが自由な校風と言われているのだろうけど。

 

 でも部活動をやる暇がないから、左右はともかく上下の付き合いは希薄になりがちだし、ヒーロー同士の付き合い、コネクション作りと言う意味では先輩後輩の付き合いはあった方がいいと思うんだけど、今度は学閥的なものができる恐れがあるしなぁ。まあ、作中にそういうのはなかったように思う。雄英出身のトップヒーローの3人――オールマイト、エンデヴァー、ベストジーニストはいずれも世代が違うというのもあるのかもしれないが、うーん、してみると、インターンの方が繋がりが強くなりやすいのか? サイドキックとしての有力な就職先候補にもなるし。いやでも、先輩後輩の間柄のミッドナイトがイレイザーヘッドを雄英の教師に誘ったって話だから、やっぱり無視できるものじゃないよね。

 

 うん、先の話はおいておこう。私の悪い癖だ。

 

 中学の卒業式の翌日にそれまで住んでいた部屋を引き払って、雄英高校近くのワンルームアパートへ越してきた。ちょうど雄英3年生が卒業して空いたところに入った格好になる。このアパートは雄英の女子生徒だけが利用しているが、1年生は私だけのようだ。先輩との交流を持てると良いなぁ。学生らしい荷物――参考書と言ったかさばるものはそこそこあるけど、寝起きできる程度の広さが確保できればそれでいいから家具は最低限だ。本当に必要なものは八斎會に用意してもらったセーフハウスの方に置いてあるし。

 

 当然と言えば当然なのだが、雄英周辺にはこう言った学生向けのアパートが少なからずある。全国から学生が集まってるわけだから、その辺を見越したアパート経営者もいるわけだ。朝夕2食用意してくれる下宿とか寮もあるようだけど、そっちの方は人気があるみたいで早々に予約で埋まっていた。まあ、個人的自由度が欲しいから、仮に空きがあっても選ばないんだけど。

 

 ちなみに、百の実家は愛知にあるんだけど、こっちに新居を建てて引っ越してきている。娘1人のためにそこまでするのか……お金持ち怖い。八百万邸の建築計画は前々からあったようだけど、百の雄英志望も結構前からだから、雄英に通うことも想定していたのでは、という疑惑が。八百万父はやり手の事業家だから、先々を見通してのことだろうけど、うん。さすがに一緒に住もう、とは言われていない。私が既に引っ越し先を決めていたことには何か言いたげだったけど。いや、百と一つ屋根の下に住むって頭おかしくなるからね? ヤラナイヨ。

 

 んー、ヒーロー科の授業内容を考えると、昔で言えばスポーツ強豪校みたいなもんなんだし、最初から寮が整備されていてもいいと思うんだけど。A組にも東北や九州から来てる人もいるんだし。あー、いや、ヒーロー科だけだとただでさえ特別扱いされてるわけだから、普通科からのヘイトが更にたまるからダメなのか?

 

 設置目的からして、ヒーロー科がメインで他はおまけみたいなもの、普通科だって進学校レベルだけど、設備規模が違いすぎるし。学校は社会の縮図とは言うけど、不合理だよね。実際になんとかするのは立法とか行政の仕事だから私にはあまり関係ない。私にできることは騒動を起こして制度改革のきっかけを作ることだしね。

 

 私の住宅事情はさておき、雄英高校に入学するのだから私の服装もリニューアルだ!

 

 グレーの2つボタンのジャケットに緑無地のミドルスカート、紺のハイソックス。

 

 雄英高校の指定制服に身を包んだ私の姿が、鏡に映し出されている。洗面所のだから上半身しか映ってないけど。ちょっとその場で一回転したりしてみる。

 

 うーん、いいね!

 

 堀須磨大附属のセーラー服もよかったけど、ブレザー制服もなかなか。やっぱり原作キャラと同じ制服を着るのってテンション上がる。

 

 でも、デザインとしては地味目だよね。ジャケットがグレーだし。国立だから奇抜なデザインは取り入れられなかったんだろう。奇抜さはヒーローコスチュームの仕事だし。でも赤のネクタイがワンポイントになってちょっとおしゃれかなぁ。私のおしゃれ理解度で適切な評になっているかはわからないけど。

 

 基本私は朝が早い。あれやこれやでやることが多いので『睡眠効果向上』で少ない睡眠時間でも問題ないようにしているのと、単純に早朝の雰囲気が好きなのもある。私の朝のルーチンは、洗顔、朝食(食べながらのネットニュースチェック)、着替え、メイク等の身嗜みを整えて、となる。つまり今日はすでにだいたい終わっている。うん、そう、メイクとかやるようになったのよ、百に教わって。簡単なのだけどね。しちゃいけないとは校則に書いてないし。

 

 この部屋が雄英に近いと言っても、歩いて2、30分程度の距離はある。早く着いて困るということはないのでさっさと登校してしまおう。そう思って部屋を出ると、お隣さんも同じタイミングで出てきた。引っ越しのときに手伝ってもらった2年の先輩だ。

 

「おはようございます、不和先輩」

 

「おはよう、志村ちゃん」

 

 不和真綿(ふわまわた)さん。ヒーロー科で2-Aだそうだ。ということは、相澤先生による除籍と復籍経験者ということになるけど。

 

「先に言うとくね、入学おめでとう、雄英高校へようこそ!」

 

「ありがとうございます」

 

「A組だっけ? ということは、担任はイレ先生かー。苦労するよ」

 

「厳しい人なんですか?」

 

「うん。ばり厳しかよ」

 

 そりゃね、彼女の経験からしたらそう言わざるを得ないだろう。九州から来てるそうで、そっちの方言が出るのなんかカアイイよね。ご本人もかなり可愛いし、良いお隣さんに巡り会えたもんだ。

 

「そん分成長できたっちゃ実感あるけん、良い先生なんやけどね」

 

 彼が実は生徒思いであることは作中で描写されることが多いしね。ヒーローという仕事の過酷さを知っているからこそ厳しく指導しているわけだ。

 

「今日の持ち物に体操服が指定されてたんですけど、なにがあるんでしょうか」

 

「あー、あれやね」

 

「あれ?」

 

「まあ、行ってみてのお楽しみってことで」

 

 そりゃかつて自分が経験した理不尽を後輩が味わうんだから内緒にするよね。日常に潜む小さな愉悦だ。

 

「はぁ。ところで、私は単に早起きだからですけど、不和先輩はなぜこの時間に?」

 

「入学式の準備の手伝いとか、いろいろね。ヒーロー科に暇なし。じゃ、急ぐけん、じゃーねー」

 

 そう言って不和先輩は走り去って行った。結構速い。

 

 私は別に急がないので通学路にあるお店の看板を眺めながら歩く。やはりというか、学生向けのサービスをやっている個人店が多い印象だ。それと元ヒーローや雄英のOBOGが経営している店も多いし、ヒーローとの関わりが強い街であることがわかる。もちろん、有名チェーン店も展開しているし、そう遠くない場所に県内最大のショッピングモールだってある。雄英も歴史のある学校だから、一種の城下町と言った感じか。うーん、地域史が気になるところだ。近隣の図書館に行けばあると思うけど。雄英高校の設置時期を考えるとどういう記述があるかちょっとわくわくする。反対運動とかあったり、ヴィランによる建設妨害とかあったりしたんだろうね。

 

 歴史に思いを馳せていたらいつの間にか雄英高校に到着していた。早い時間に来たためか、校舎には人があまり見られない。入学式の準備があるはずだから、上級生は講堂に集まっているようだ。だからと言って私がA組の教室に一番乗りか、と言えばそうはならない。

 

「おはよう!」

 

「……おはようございます」

 

 そう、飯田くんがいるからだ。一番最初に教室に来ているだろうなぁ、とは思ってたけどマジでいたよこの人。それにしても背高いな。ちょっと距離取らないと話しにくい。

 

「ボ……俺は飯田天哉だ。よろしく頼む」

 

「志村常夜です。よろしくお願いします。ああ、そういえば、実技試験の説明のとき、私が質問に被せてしまった方ですよね? 遮ってしまって申し訳ありませんでした」

 

「いや、同じ質問だったから気にしないでくれ。それよりもその後の発言に驚かされた。あれは、もしやあの試験の構造を理解してのものだったのか?」

 

「試験の構造と言うと、レスキューポイントのことですか? まあ、ヴィランポイント以外にも評価基準があるのではないか、とは考えていましたが」

 

「やはりそうか。恥ずかしながら俺がそれに気づいたのは試験終了後、ある受験生が転倒した女子を救わんと0ポイントギミックへ向かって飛び出したことがきっかけだった。彼も気づいていたに違いない。悔しいが、彼や君の方が上手のようだ」

 

 真面目なやっちゃな。そういうところは嫌いじゃないけどね。あとその彼気づいてなかったと思うよ。

 

「私たちはようやくスタートラインに立ったばかりのヒーローの卵なんです、これから共に学んでいきましょう」

 

 会心の笑みと共に握手を求めるように右手を差し出す。飯田くんが私との距離を詰めてガシリと握り返してくる。うわー、手もでけえ。

 

「その通りだ! 共に頑張ろう!」

 

「あー、ところで、席順ってわかりますか?」

 

「っと、すまない、席順は黒板に張り出されているから、確認してくれ」

 

「ありがとうございます」

 

 さて、どんな感じかなー。

 

 

 

 

轟   障子  尾白  青山

 

葉隠  志村  上鳴  芦戸

 

爆豪  耳郎  切島  蛙吹

 

緑谷  瀬呂  口田  飯田

 

峰田  常闇  砂藤  麗日

 

八百万

 

 

 

 うーん、私が1人分増やしたせいで百の席がはみ出しちゃってるな。教室はかなり広いから支障ないようだけど。

 

 自分の席に座り、スマホの学校施設案内アプリを見る。雄英って広いからこういうアプリが配信されているわけだ。この後行くことになるから、更衣室の場所を確認する。既に一度見てるけど念のため。時間潰しついでに他の施設の場所も確認しておこう。にしても移動にバスを使うって……維持整備はロボットがやってるんだろうけど、やっぱりバカ広いところって慣れないね。

 

 そうこうしている間に次々にクラスメイトが登校してくる。近くの席の人とは挨拶と簡単に自己紹介をする。

 

 前の席の障子目蔵くん。寡黙で索敵が得意というイメージぐらいしかないんだよね。要所要所で活躍してたと思うけど。それにしてもでかい。男子でかい人多くない? 口田くんと砂藤くんもでかいし、山脈か? A組山脈だ。

 

 左隣の葉隠透ちゃん。体が透けてて服だけ見えるの、実際に目にするとなかなか奇妙な感じだ。そういや、内通者が彼女なんじゃないかと疑われてたけど、どうなんだろうね。正直ミスリードなんじゃないかと思うんだけど。まあ、誰が内通者でも私にはあんまり関係な――いやまて、パパからなにか聞いてるかも知れないな。一応確認しておいた方がいいかな。『真実吐き』と『認識阻害』を使えば気づかれずに聞き出せるし。そのためには2人きりになる必要があるからすぐには難しそうだ。

 

 後ろの席には耳郎響香ちゃん。実のところ、通う中学校は彼女と百のところで迷ったんだよね。実はヒロアカの女性キャラだと彼女が一番好きだったんだけど、最後にサイコロ振ったとき如何なる神の采配か、百と同じ中学に決まったわけだ。結果的には良かったと思うけど、実際の人間関係とキャラクターとしての好き嫌いはまた別だからね。

 

 で、右隣は。

 

「おっ! 試験の時の!」

 

「ああ、どうも。合格されていたんですね」

 

「俺、上鳴電気。よろしくな!」

 

 はい、上鳴くんですね。実技試験で会ったけど、そりゃ覚えてるよね。結構印象に残っただろうし。

 

「志村常夜です。よろしくお願いします」

 

「いやー、それにしても試験のときは痺れたぜ! “脅威を目の前にして逃げるヒーローがいるものかよ”って!」

 

 うん? それ話題に出すの? いやまあ、出さない方がおかしいとは思うけどさ。ちょっと。

 

「えっ、なにそれ」

 

 後ろの席の響香ちゃんが食いついてきた。食いつかないで。

 

「えっ、ちょ」

 

「実技試験のとき、0ポイントのギミックロボいただろ、みんな逃げてるところを志村だけ立ち向かって行ったんだよ。しかもそのまま倒しちゃうし!」

 

「マジ? あれ倒したの? ロックじゃん!」

 

「ちょ、ちょっと待って下さい」

 

「ん?」

 

「いや、あの、今にしてみると、会場の雰囲気でテンション上がっていたというか、えっと、その話をされるのはかなり恥ずかしいんですが!?」

 

 顔を見合わせる上鳴くんと響香ちゃん。なによ、そのアイコンタクト。

 

「なんかお堅そうだなぁ、って思ってたけど、案外そうでもないじゃん」

 

 いや、その認識も改めて欲しいんですけど? ああ、また中学のときのような扱いになるのか。いや、いいんですけどね、別に。愛されキャラで行っちゃいますよ?

 

「でもさ、あのロボ相手になにかできたんじゃないか、ってちょっと考えちゃうよな。直接どうこうできないにしても」

 

「うーん……ヒーローになったら逃げ回るなんてありえないしね。ウチの個性だと、どっちから来るかわかるぐらいだから厳しいなぁ」

 

「あー、それならそれで、住民の避難誘導に活かせますし、自分になにかできるかを考えるのは大事だと思いますよ。そうですね、友人とよくやってることですが、事件報道やヒーローの報告書を元に、模擬的な事件状況を想定したシミュレーション訓練を行うんです。舞台となる場所の図面を用意して、ヒーロー側とヴィラン側に分かれて行うことで、自分になにができるか、あるいはなにをすべきか。そして相手がどのように考え、どのように動くかを考えて――」

 

「ちょっと待って、普段からそういうことやってるの?」

 

「え、やりませんか? 図上演習」

 

「自分ならこうする、みたいなことは考えたことあるけど、そこまでは……」

 

「うん。受験勉強とトレーニングで精一杯だったし」

 

 うーん。私と百は基本スペック高いからできていただけなのか? でもやっておいて損はないと思うんだけどなー。これから実践演習をたんまりやることになるけど、回数は限られてるんだからシミュレーションであっても場数を増やす意味はあるはずだ。

 

 2人と話していると、百が教室に入ってきた。すぐにこちらに気づくが、他の生徒に挨拶することは忘れない。大事だからね、挨拶。私も百に向かって軽く手を振ってみせる。

 

「おはようございます、常夜さん。今年もよろしくお願いいたしますわ」

 

「おはよう、百。こちらこそよろしく。上鳴くん、耳郎さん、こちら、八百万百さん。中学からの同級生です」

 

 私が紹介すると、3人がそれぞれ自己紹介をする。それが終わると、百は自分の席へ向かっていった。

 

「つーかあの倍率で同じ中学ってすごくね?」

 

「百は推薦ですけどね」

 

「もっとすごいじゃん。推薦って確か男女2人ずつでしょ、てことは、ここの男子の内の1人がもう1人の推薦合格かぁ」

 

「俺は違うからな」

 

「一般入試の話をしてる時点でわかってるっての」

 

 ふむ。この2人、原作でもよく絡んでたけど、気が合うのかね。本来なら席が隣同士だからというのもあったんだろうけど。推薦入試が3000mの障害物走のタイムアタックだったと話すと2人とも絶対無理とのこと。2人の個性って移動向きじゃないしね。しかし、百と轟くん以外で推薦いけそうなのって誰だろう。あ、爆豪くんか。推薦受けられてたらそっちで通っていたかもしれない。

 

 などと考えていたらその爆豪くんが教室に入ってきた。一応挨拶したがスルーされる。おう、返事ぐらいしろや。そのまま自分の席にドカリと座ると机に足をかける。そしてそれを見咎めた飯田くんが注意するが聞く耳持たないわ、ぶっ殺すとか言うわ……いや、爆豪くん、リアルで見るとやっぱりすごいわ、駄目な意味で。彼がああなのは過剰なプライドと精神の未熟さゆえのアンバランスさから来てると思うんだけど、後々精神的な成長をすることになるにしても、現状では君大丈夫なの? としか思えない。私が言えたことじゃないけど、ヒーロー志望には見えないよね、本当。

 

 彼の前の席の葉隠さんは意識を向けられないように空気に徹している始末。大丈夫? これから1年は席動かないよ?

 

「なんかすごいね」

 

「実力主義だそうですからね、雄英」

 

「実力があれば良いってもんでもなくない?」

 

 まあねえ。ヒーローは人気商売と言う面が強くなっていて、エンタメ性重視とまで言われているぐらいだ。オールマイトの活躍で世の中平和になっている証拠でもあるのだが、ヒーロー殺し(ステイン)が批判しているように拝金主義的な面が強くなってしまってもいる。ヒーローとお金の関係は自分でもしつこいぐらい考えてしまう事柄だけど、制度上の問題でもあるから、よほど劇的な出来事でもない限り変革は起きないだろう。

 

 それはともかく、態度が荒いヒーローもいないでもないが、彼らの場合それに見合ったバトルスタイルや実力があるからこそ許容され支持されているわけだけど、現状の爆豪くんは態度が悪い学生でしかないからなぁ。一度でも悪いイメージつくと敬遠されちゃうよ。

 

 おっと、飯田くんが出入り口へ駆け寄っている。出久くんが登校してきたようだ。遠目には何度も見てるけど、近くで見るのは実は初めてなんだよね。出久くん担当の分身とは定期的に記憶共有しているけど、これは会ったうちにも入らないし。続いてお茶子ちゃんも登場。これで全員登校してきたことになるわけだ。

 

 出入り口にいる3人が廊下にいる何かに気づき、びくりと後退する。スペースが空いた出入り口からボサボサの長髪に目が血走った男がヌゥっと現れる。

 

「ハイ、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限、君たちは合理性に欠くね」

 

 イレイザーヘッドこと相澤先生のエントリーだ。ついさっきヒーローはイメージ大事みたいなこと考えてたけど、この人みたいにメディアを敬遠するアングラヒーローならビジュアルは気にしなくても……いや、世間的に知られていないと誤解されることもあるだろうから、どうなんだろう。イレイザーヘッド自身は他のヒーローや警察からの知名度は高いっぽいけど。

 

「担任の相澤消太だ。よろしくね。早速だが体操服着てグラウンドに出ろ。持ち物に指定していたから用意してあるな?」

 

 クラスの皆が困惑したようにざわつくが、私は気にせず体操服を入れた袋を持って立ち上がり、後ろの方にいる百に頷いてみせる。百は以心伝心というか、私に頷き返すとすぐに教室後ろの出入り口から出て行き、私もそれに続く。前の方は出久くんたちがいるから通りにくい。その場の勢いと言うべきか、他のクラスメイトたちも更衣室へ向かうのであった。

 

 更衣室に入って百から離れた奥の方のロッカーを開ける。中にはハンガーが数台あるだけで特に目立つものはない。

 

「静かになるまで8秒かかった、なんて言ってたから急いだ方がいいよね」

 

 隣に立った響香ちゃんが上着を脱ぎながら話しかけてくる。チラリと横目でそちらを見る。うん。

 

「そうですね、でないとグラウンドに出たときいろいろ言われそうです」

 

 遅まきながら気づいたんだけど、着替えのときってみんな他人のことあんまり気にしてないんだよね。私が意識しすぎていただけだったわけだ。あと割と女子しかいなくても隠してる人多いんだよね。百は隠さないけど。隠して。まあ、私も面倒だから特に隠さないんだけど。というか、百はともかく私の体を見て何が面白いのか。いや、本当になにが面白いのかわからないけど、中学のときは同級生によく体触られてたんだよね。抗議してもやめやしないので放っておいたけど。

 

 手早く制服を脱いでそれぞれハンガーにかける。衣服の取り扱いも常に丁寧に、を心がけてきたから変に皺ができたりはしない。ああいう学校に3年も通っていれば、身嗜みも身につくというものだ。元々気を遣っていたつもりだったんだけど、それでも足りなかったんだよね。その辺は百や同級生のお世話になったわけだけど。

 

「ん?」

 

「どうかしましたか」

 

「あー、うん、なんでもない」

 

 私の体をチラ見していたらしい響香ちゃんが言葉を濁しながら視線を逸らす。自慢じゃないけど、私は結構着痩せするタイプで、脱ぐとすごいからね。女の子らしくは全然ないんだけどねー。格闘技系アスリートみたいな感じ。

 

 まあ、私も他の女子の着替え姿が気にならないわけでもない。じろじろ見たりはしないけど、梅雨ちゃんみたいな動物系個性持ちがどういう体つきをしているか気になるし、なんなら直接触りたいし、透ちゃんは見えないから(見ようと思えば見られるけど)直接触らないとどういう体になってるか、わからないしね。私を触るのOKって言ったら触らしてくれるかな。

 

 体操服はさすが雄英というか、耐火耐水と言った各種耐性素材のいいものを使っている。どっかで破けてる描写あったから限度はあるんだろうけど。しかし、UAって書いてるの何なの……YUUEIじゃないの? 校章もUAだし。うん。あまり気にしても仕方がないのでさっさと着てしまう。これ、Sサイズなんだけどこれでもちょっと大きめ。これから先成長することを考えれば適切なサイズだと思うけど。ちなみに百はXLサイズ、いろいろ大きいからね。うーん、私も160cmぐらいは欲しいんだけどなー。

 

「うっし、いこっか志村さん」

 

「あ、ちょっと待ってください」

 

 今日はポニーテールにしておこう。たまにやるんだよね。イメチェンでもないけど、こっちの方が気合い入る感じ。同じ髪型にするには長さが足りないけどちょっとママっぽくなるし。

 

「おおー、雰囲気変わるね」

 

「その日の気分でやるんです」

 

 更衣室を出ると一足先に着替えを終えた百が待っていた。合流して少し早足でグラウンドへ向かう。

 

「持ち物に体操服とあったので不審に思っていましたが、一体なにをするのでしょう」

 

「グラウンドに出ればわかることだけど、気になるよね」

 

 知ってはいたけど、初日にこういう流れになるのやっぱり妙な気分になる。でもまあ、クラスメイトの個性を直接見られる最初の機会でもあるし、頑張っていこう。




不和真綿(ふわ まわた)
常夜のお隣さん。2-A所属。
原作キャラなのだが常夜は覚えていない。1コマしか出てないからね。
おそらく博多弁。

彼女の博多弁は方言ジェネレーターを使っているのでちょっと違うかもしれませんが、そのときは誤字報告としてあげてもらえると助かります。
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