ラスボスの子に転生したのでNO.1ヒーローを曇らせたいと思う   作:タメガイ連盟員

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のりひこa様、鱸の丸焼き様、佐藤東沙様

誤字報告ありがとうございます。


21.職場体験

「ユーモアの方はともかく、元気はあるようだな。ユーモアと元気は未来ある社会に欠かせないものだ」

 

 ああ、そういやこういう人だったな、サー・ナイトアイって。

 

「ヒーローネームを聞こう。活動中はそちらの名で呼ぶ」

 

「はい。フーディーニです」

 

 それにしても、本当に部屋中オールマイトグッズだらけだな。オールマイトが好きだってヒーローはそれなりにいると思うけど、自分の事務所にここまでするのってちょっとなぁ。いや、自宅ならわかるんだ、プライベートな空間だから。ここはそうじゃないじゃん。サイドキックだっているし、他のヒーローや警察が立ち入る場合もあるだろうに。

 

「概要は既に学校で聞いているな。ヒーローの業務を実地を交えて説明していく」

 

 それはさておき、ナイトアイ事務所である。構成員は所長であるサー・ナイトアイ、サイドキックのセンチピーダー、バブルガール。そしてインターン生であるルミリオン。それにしてもバブルガール、すごい格好だな。下乳見えてるし。百のコスチュームも大概だけど、やっぱり体から何かを出すタイプの個性だと露出を上げないといけないとは言えなぁ。冬場どうしてるんだろうこの人。

 

「インターンと言うと、仮免取得者がヒーロー事務所で直接ヒーロー活動を学ぶこと、ですよね」

 

「そうだ。うちでは雄英3年の通形を預かっている。面識はあるか」

 

「3年生とは今のところ交流がありませんので、残念ながら」

 

「そうか。土曜日にこちらに来る予定だ、親交を得ておくといい。プロになったとき、独立するか、サイドキックとして事務所に入るにしても、同じ学校の先輩後輩関係は有用だ」

 

「はい」

 

「基本的には、こちらのバブルガールに付いて行動してもらう」

 

「よろしくね」

 

「よろしくお願いします」

 

「では、本日の業務を開始する」

 

 まずはバブルガールの案内で更衣室に行きコスチュームに着替える。私のコスチュームはUSJ襲撃後の治療のために裁断されてしまったのでこれは新造品だ。特に変わった部分はない。2回着ただけで廃棄になったのは惜しい気もするけど、一応補助金の対象みたいだから気にしないでおこう。そもそもヒーローのコスチュームが損傷するのは珍しくないし、その度にマイナーチェンジを繰り返すものだしね。少しずつ自分にあったものにしていくって感じだ。

 

 ヒーロー事務所は警察の下部組織、もしくはそこから委託を受ける民間協力者、と言う法的位置づけになっているらしい。元々はヴィジランテとして活動していたものを民間の人気に後押しされ、公的な場所での個性使用が認められた公認免許資格制度と言った法改正が行われたのが、これに関して言えば個性犯罪に対する法的整備にもたついていた当時の政権の人気取りの面があるので、なんともまあ、って感じだ。平行して、個性規制法も制定されている。そりゃ個性使用が免許制になったんだからこれは当然だ。と同時にこれはデストロを指導者とする解放主義者と政府との戦いの決着も意味している。それでも獄中執筆した本が現代にまで影響を及ぼしているんだから大した人物だったんだろう。しかし、彼は政府との対立から暴力活動へと傾倒していき、ヴィジランテとも敵対したことで民衆の支持を失い、投獄された。当時がいかに混乱した時期と言ってもそれを更に荒らす存在なんて支持されるわけがない。ある種のカリスマはあったんだろうけど、民衆心理への理解はなかったようだ。

 

 と、いつも通り脱線したけど、このようにヒーローは公務員ではあるものの、成り立ちからして異なっている。給与体制も通常の公務員や会社員なら基本給+諸手当だがヒーローは歩合だ。一般的な職業で言えば営業職やクリエイターがこれにあたる。警察からの要請を受け、逮捕協力、人命救助などの貢献度を申告し、専門機関の審査を経て給与が支払われる。これは月ごと、事務所ごとだ。これに加えて副業も認められているが、当然反発を受けたものの、ヒーローを広告に起用したい広告業界を始めとした各業界の後押しもあったりする。まあ、これが商業主義化の原因でもあるからなんとも言えないんだけど。歩合制なのも食えないヒーローを生むことになってるし。固定給の公務員化はできなくはないんだろうけど、前述の世論の反発が強いからできないんだよね。広告業界、ヒーローからの多額の寄付金を活動資金としているNGOなどなど。ヒーローが社会での存在感を増したことで改革が難しくなっているし、よほど大きな事件でもない限りは今のままだろうね。

 

 ヒーローの活動は基本犯罪の取り締まりだ。この辺は警察とあまり変わりがない。このため、業務時間の多くがパトロールにあてられることになる。担当する地域に複数の事務所があるのはもはや当たり前だけど、事務所ごとに巡回ルートや時間は概ね決まっている。それ以外の時間は各種書類の作成、トレーニング、戦闘訓練となる。事務所自体も24時間365日稼働しているわけではなく、当然ながら休日が設けられている。エンデヴァー事務所みたく人数の多いところは例外である。ナイトアイ事務所の場合、基本誰かが出勤している状態にしているそうだ。夜間は別だけど。

 

 ところで、ナイトアイには暗示をかけている。“私と直接会うまで私が『死柄木常夜』であると思い出せなくなる”と言うものだ。まあ、体育祭の映像でも見たことで私を指名してきたわけだから、解けかかっているようだけど。流石に2年も放置してたらそうなるよね。で、さっきの挨拶をしたとき、ついでに“私は『死柄木常夜』ではない”と“私の未来を見ない”と言う新しい暗示をかけなおしている。なので今ナイトアイの頭はぐちゃってるんじゃないだろうか。バブルガールに丸投げしたのも無意識に私を遠ざけたいからかもね。

 

 早速バブルガールと一緒にパトロールに出る。雄英祭であれだけ目立ったんだから私も注目されると思ったけど、あまり気にされていない。私の髪は色に特徴があるから気づく人はちらほらいるんだけど、思ったほどではない。んー、服装も全然違うし、時期が時期だからどっかの新人とでも思われているのかもしれない。私自身、今までにも街中でヒーローを見ることは珍しくなかったし、まさにヒーロー飽和の時代、こんな石を投げたらヒーローに当たるような環境でよくもまあ、強盗とかやろうと思うよね。それだけ自分の個性に自信があるのか、それともヒーローを舐めてるのか。まあ、ヒーローと言ってもその実力はピンキリだしね。並のヒーローだと、下手するとA組のみんなの方が強い場合もあるし。いや、雄英生は上澄みも上澄みなんだから強くてもおかしくないんだけど。オールマイトは言うに及ばず、トップヒーローの管轄地域で犯罪行為に及ぶ人、度胸あるよ。それだけに雄英にカチコミかけてきた弔、ヴィラン連合のやばさが際立つわけだけど。

 

 ちなみに。ナイトアイは基本パトロールはしない。そりゃそうだ、あの人どこからどう見てもサラリーマンだもの。と言うか、あれでよくコスチューム申請通ったな。学生当時は違うデザインのコスチュームだったのかも知れないけど。なので彼がパトロールしても特に意味がない。代わりに監視のような目立たないような活動は得意だそうだ。ヒーローって目立ってなんぼなところがあるからそれはどうなんだ? でも、ヒーローと言う仕事としては隙間をつく感じだからうまいとは思う。ナイトアイの個性なら容疑者の行動を先読みできるから、そう言う風に警察に捜査協力をしていることも多いそうだ。当然、ナイトアイの格好なら容疑者に近づくのも容易だし。と言うか、原作でもそうやって八斎會の下っ端に接触してたし。

 

「死穢八斎會、ですか」

 

「そう。この地域にある指定ヴィラン団体なんだけど、昔はヤクザとか極道とか呼ばれていたところだね」

 

 パトロールルートには八斎會本部が含まれていて、ちょうどその近くにまで来たところだ。

 

 バブルガールによると、ここ数年で財政状況が好転していて人の出入りもかなり増えている。フロント企業の好況が、彼らに多くの資金をもたらしている。ただ非合法の活動は逆になりを潜めているため、警察・ヒーロー共に踏み込んだ行動は取れないでいる。そのため、複数の事務所共同での監視に留まっている、とのこと。

 

 八斎會の資金状況がよくなっているのはまず治崎が真面目に仕事するようになったから。それまでも不真面目ってわけでもないんだけど、壊理ちゃんを利用した個性消失弾の研究開発や地下施設の拡張にかなりの資金を投入してたから、それを別のところに使うようになればそりゃ良くもなる。それに加えて八斎會本部に常駐している私の分身による情報提供を活用することで、フロント企業の拡張、裏社会でのイニシアティブを握ることができるようになったわけだ。やりすぎると目をつけられるから、これは色々気をつけながら緩やかに。フロント企業が伸びていけば、裏社会から足を洗う構成員が増えていく。そうしていたら、反社組織としての八斎會は自然消滅していくはずだった。

 

 状況が変わったのは、雄英祭で私に接触してきた土鈴院命の、その後ろにいるパパや黒幣の存在だ。私は八斎會を良い金蔓として使うつもりだったし、いずれ手放しても問題ないと考えていた。しかし、日本の裏社会に再びパパの息がかかった組織が進出してくるとなると話が変わってくる。海外マフィアはオールマイトがほとんど海の外に叩き出してるんだけど、それでへこたれるような連中じゃない。今はまだオールマイトが現役だから手控えているけど、この先彼が引退すれば再進出を狙うのは必然だ。黒幣に関して言えば、フロント企業である神農公司の支社が既に進出してきている。国内の反社組織も小さなものが乱立しているような状況で、黒幣のような大組織が乗り込んできたらどうなるか。パパが再び裏社会で力を持つ状況は私にとってあまりよろしくないんだけど、パパが健在である以上、目立つようなことはできない。その対抗勢力として、死穢八斎會を大きくしていこう、と言うわけだ。

 

 うん、あれだ、日本国内には異能解放軍ぐらいしか大きな組織が残ってないんだよね。ほとんどの組織がパパと繋がっていたもんだからオールマイトに蹂躙されてしまったのだ。いや、悪くはないんだ。ないんだけど、私にとってはいろいろと面倒と言うか。ままならないねぇ。で、私が直接黒幣を叩こうとすると、当然パパとの敵対が確定してしまう。なので代理として八斎會を使おうってわけ。治崎だってそもそもは八斎會を盛り上げようとしていたんだから、Win-Winってわけだ。素晴らしいね。八斎會は零細なんて呼ばれるぐらいには衰退しているからそれを黒幣に対抗できるようにするのは楽な仕事ではないだろうけど、そこはまあ、治崎に丸投げしよう。それぐらいの才覚はあるはずだし、実際八斎會が生き残るにはそうしないといけないわけだし。頑張ってね。

 

 あ、そうそう。壊理ちゃんは現在組長さんに個人的な恩がある一般人の夫婦の養女になっている。ヤクザの孫、なんて世間体が悪すぎるしね。アフターケアとして治崎にいじくられていた時の記憶は排除してあるし、個性も無個性だとやはり面倒事になりそうだから適当な個性を見繕っておいてある。4月から小学校に上がっているはず。住んでいるところは関東北部の県だから会うことはないだろう。これで彼女はただの一般人としての人生を歩むことになる。ついでに壊理ちゃんの母親も壊理ちゃんに関わる記憶を消して、旦那さんも事故で亡くなったことにしてある。どこか遠くでよろしくやっていることだろう。これで壊理ちゃんに関する問題はフィニッシュだ。めでたしめでたし。

 

 パトロールはつつがなく終了、お昼休憩と書類仕事、午後のパトロールでこの日の業務は完了。退勤だ。うーん、一応通える場所だから毎日ここまで出勤しなきゃいけないんだけど、ちょっと面倒な気がしてきた。

 

 帰宅して、食事を済ませてからお風呂に入りながら今回のイベントについて考えてみる。

 

 職場体験編で焦点となるのはヒーロー殺し・ステインだ。

 

 こいつについて改めて考えてみたんだけど。うん。

 

 結局何がしたかったんだろう。

 

 いや、本人が正しき社会のために、とか言ってるんだけど、その正しい社会って何? って話。未来についてのヴィジョンがさっぱり見えてこないのだ。

 

 ヒロアカに登場するヴィランは大別して自分の意のままに社会を変えようとする者、自分の個性で好きなようにしたい者、状況や環境に流されてヴィランになってしまった者。この3つに分けられる。最初のものはパパ、リ・デストロ、オーバーホール、そして弔が該当するだろう。2つ目はマスキュラーにムーンフィッシュ、3つ目はトゥワイスやトガちゃんあたりか。

 

 で、ステインはこの内最初のものにあたるんだけど、こいつだけ目的が曖昧と言うかいまいちはっきりしない。パパも魔王になる、なんてふわっとした目的を掲げてるけどパパの場合オールマイトが日本に帰ってくるまでは裏社会を牛耳ってたわけだから、パパが天下を獲った場合どういう社会になるか想像できる。パパが魔王なんて荒唐無稽なものになれるだけの力を持っているからこそ説得力があるわけだ。

 

 治崎の場合は死穢八斎會の復興と裏社会の支配が目的。ようするに極道の最盛期よ再び、ってわけだ。極道がブイブイ言ってたのって昭和の時代、戦後の混乱に乗じて拡大していったわけだから、世の中が安定していけば既存の経済に寄生して利潤を上げているヤクザは邪魔なだけだ。平成の頃には暴対法やらと構成員の高齢化で萎んでいくばかりだった。超常黎明期は当然混乱が続いていたから再び盛り返してきたけど、今度はヒーローに取り締まられてしまう。ようするに先がないんだよね、ヤクザって。所詮犯罪組織だし。

 

 治崎は個性消失弾と血清を利用してなんとか盛り返そうとしていた。だけど仮にヒーローに目をつけられずに計画通りにできたとしても別の問題が浮上してくる。パパとリ・デストロの存在だ。自身の傘下に収まる、と言うのなら八斎會を生かしただろうけど治崎がそれを受け入れるとは思えない。となればどちらの勢力にとっても脅威になる個性破壊弾の製造者なんて生かしておくわけがない。パパは現状でも単独で、異能解放軍も組織の規模は八斎會とは比べものにならないから彼らをどうとでも料理できる。

 

 かなり良い線行ってるんだけどいかんせん環境が悪すぎだよなぁ。治崎だって長期的な視野をもって計画を立ててたんだろうけど、上記の勢力が強すぎる。後発、弱小組織の悲しいところだ。それに原作通りにヒーローサイドにも感づかれる可能性だって高いし。そもそも指定ヴィラン団体になっている時点で監視対象だしね。極道を復権させるには魔境すぎたな、この国。

 

 で、リ・デストロは異能解放思想に基づく個性の自由化、それに政権の奪取だ。こちらは初代指導者であるデストロを反省してか、水面下で着実に勢力を拡大していった。ヴィラン連合にスパイとして潜入していたホークスが知らせるまでヒーロー公安、それどころか政府にも存在を知られて来なかったのだから凄まじい。勢力拡大には“心求党”が大きな役割を担っていて、国会はもとより地方議会で議席を得ている。10万を越える戦闘員を抱えていたりするけど、合法、穏健的な手段での政権獲得も目指しているあたり現実的と言うか組織が大きいと選択肢も増えるわけだ。実際あと何年かあれば政権取れるところまでいけたんじゃないかな。

 

 まあ、根っこの部分で暴力主義が染みついてるから再臨祭?をおっぱじめちゃうんだけど。もうちょっと我慢したら? いやまあ、ここら辺は治崎と同じで、パパとオールマイトが消えたからベストタイミングだって考えるのは無理ないんだけど。

 

 で、弔は……全部壊したい、だっけ? うーん、だけど結局パパの次の体でしかないもんなぁ、弔って。あと『ワン・フォー・オール』を奪うための憎悪装置。パパ自ら育ててるんだもん、そりゃパパの目論み通りになるってもんだ。パパが怖いから調べてないけど、志村弧太郎にも実は接触してたんじゃないかな、パパ。そうだとしたら、産まれる前から用途が決まってたってことに。かわいそ。

 

 彼らに共通しているのは現在の体制を破壊しようとしている点だ。彼らが思い描く社会と現行社会が不一致である以上これは必然だ。じゃあ、ステインもそうか、と言うと微妙に違うように思う。彼の場合、英雄回帰思想に沿った社会になることを望んでいるようだから、ヒーローの存在を全否定しているわけではないけど、彼の基準だと殆どのヒーローが偽物判定になりそうだからあまり変わらないか。私もヒーローの商業主義は問題だと思うけどさ、これって平和な証拠でもあるんだよね。じゃなきゃ生業としてヒーローなんてやらないわけだし。なんとなくだけど、ステインの理想ってヴィジランテが活躍してた時代なんじゃないかと思う。当時はパパも元気いっぱいだわデストロも暴れてるわ当然治安も悪いわでよほど強い志がなければそれに対抗する活動なんてするわけがない。

 

 となると、じゃあ別にパパが支配する社会でもいいんじゃないの? パパが魔王になってもヒーローを根絶やしにはしないと思う。希望をちらつかせて叩き潰した方が絶望をより味わえるからだ。そんな社会でヒーローをやるなんて強い自己犠牲精神がなければできない。良かったねステイン、魔王が君の理想を実現してくれるよ。させるつもりはないけど。

 

 ステインのこれまでの行動だけど、ずいぶんと悠長にやってるなぁ、と言うのが正直な感想。弔も似たようなこと思ってたはず。んー、ヒーロー殺しとしての悪名を上げている、と考えてもそこまで殺人する必要あるかって感じだけど、贋者のヒーローの粛正を掲げている以上、止めるわけもいかないんだろう。実際、その悪名がなければ、逮捕後に闇ブローカーらが手がけた動画がバズったりすることもなかった。弔のヴィラン連合も雄英襲撃で名を上げてたから、ステインとの相乗効果で多くのネームドヴィランが参入したわけだ。名前は重要だ。これがなければどんな天才でも見向きもされない。最初期の、ヒーロー科を退学した頃は街頭演説を繰り返していたそうだけど、無名の人間がどれだけ主張しようが聞く耳を持たれるはずもない。足りないのは言葉じゃなくて名前だったわけだ。いやまあ、ステイン本人に悪名をあげるつもりがあるかは怪しいところだけど。

 

 しかし、自分の思想が広まっていないことを疑問に思わなかったんだろうか。標的になったヒーローの基準なんて本人しかわからないわけだし、重傷を負わせたヒーローに自身の主張を伝えてるけど、それを広めようなんてヒーローは当然いないし、仮にそうしようとしてもヒーロー公安が止める。殺人の才能はあったかもしれないけど、広報能力が致命的にないのがステインの難点だな。やっぱり世の中を変えるのには、1人じゃどうにもならないね。一匹狼タイプだから誰かと組むってレア過ぎるしなぁ。黒霧がいるとは言え、よく捕捉できたな弔。

 

 ステインと弔が動くのは明後日の夕方から。いろいろ仕込みはしてるけどうまく行くといいなぁ。分身に調整させるけど、私と言うイレギュラーがいることでのズレがどこまで出ているかわからんし。極端な事例は今のところないから大丈夫だと思いたい。

 

 ともかく、ヒーロー殺しもこれまでだ。せいぜい出久くんの実戦経験の糧になって、その思想を広めてさえくれればいい。

 

 そうすればもう用済みだ。

 

 私の世界にヒーロー殺しは無用だ。

 

 

 

 職場体験3日目の夕方。

 

 今日はバブルガールがお休みで、センチピーダーは巡回に出ている。で、残ったナイトアイと私は資料整理をしている。ナイトアイ、仕事関係の書類をデジタルベースと紙ベース両方で残しているので定期的に整理しないといけないそうだ。こういう管理得意そうだしね、ナイトアイ。資料整理と言っても日付順になっているか確認したり、カテゴリー別になっているか、と言った簡単な作業だ。機密度の高い書類は当然ない。そんなもの体験に来ている学生に触らせるわけないしね。

 

「インゲニウム……」

 

 手に取った書類はインゲニウム事務所と共同活動の際の貢献度申請の控えだ。インゲニウム事務所は多くのヒーローが在籍しているけど、ナイトアイのような個性持ちはいないのでその辺で協力を仰いだと言ったところだろう。

 

「彼は、残念だったな」

 

 私の呟きが聞こえたのか、ナイトアイはパソコンモニターから顔を上げることなく応えた。

 

「復帰の見込みは、やはり薄いんでしょうか」

 

「病状については報道の通りだ。半身不随ではこれまでのようにヒーロー活動に従事することはできないだろう。事務所の経営やサポートに回る可能性はあるがな」

 

「確かに、自分が動けなくても指揮は執れますもんね」

 

 当然、飯田くんは現地にいるし、出久くんと轟くんも向かっている頃合いだろう。

 

「なにか気がかりなことでもあるのか?」

 

「クラスメイトにインゲニウムの弟の飯田くんがいるんです。それで、彼の職場体験先が――」

 

「まさか、許可したのか?」

 

 こればかりは見過ごせなかったのかモニターから顔をあげるナイトアイ。そして話も先取りして問いかけてくるのは流石。

 

「はい。保須市のヒーローからも指名があったみたいですし」

 

「まだヒーロー殺しが潜伏している可能性がある場所での課外活動を認めるとは……」

 

 まあ、確かに職場体験で事件に遭遇することはあるだろうけど、ステインのような危険なヴィランがいる場所に行かせるのは問題あるように思える。A組はつい先月ヴィラン連合の襲撃事件があったわけだし、またそうした事件に巻き込まれるのは避けたいはずだけど。となると、飯田くんがステインに挑みに行っちゃったのは相澤先生のせいってこと? あらま。

 

「ヒーロー殺しは保須市に潜伏しているんですか?」

 

「過去の奴の活動データを見ればその傾向がわかる。ヒーロー殺しは1つの地域で事件を起こすと、さらに何名かに危害を加え続けることがわかっている」

 

 それでも被害を避けられないのはステインの潜伏・奇襲能力が異常に高いからだ。個性と関係ないのにここまで来ると天賦の才としか言い様がない。乱世向けの才能に過ぎるな。産まれた時代間違えてるよこいつ。

 

「じゃあ、飯田くんがステインに接触する可能性があると」

 

「その飯田はどういう人物だ?」

 

「そうですね……真面目で融通が利かないけど、責任感と行動力は非常に強いと思います。あと意外と激情家?」

 

「保須市のヒーローの指名を受けたのはステインへの報復が目的と言うことか……厄介だな。そのヒーローが諭してくれればいいが」

 

 飯田くんも頭ではわかってるんだろうけどね。でも気持ちは抑えられないって感じだからなぁ。一応言うことは聞くけど、結局それを破っちゃうわけだし。

 

「ナイトアイ、保須市に行ってみませんか? ヒーロー殺しの捜索協力要請、ありましたよね」

 

「どういうつもりだ」

 

「クラスメイトが危険なことをしようとしているなら、止めるのが筋かな、と」

 

 席を立ち、ナイトアイの眼前に近づく。

 

「それに、ヴィラン連合もそろそろ動き出す頃です。ええ、なかなか面白いことになるんじゃないでしょうか」

 

「……いいだろう」

 

 ナイトアイが頭を手で押さえながら了承する。ふーん、なかなか抵抗してくれるね。暗示をかけ続けてる分、効きにくくなってるのかな?

 

 まあいいか。さて、楽しいお祭りの始まりってわけだ。派手な号砲を頼むよ、弔。

 




常夜ちゃんの秘密
常夜のヴィランに対する評価は「目的のためにどれだけ準備を積み上げているか」であるため
パパ>リ・デストロ>治崎>弔>ステイン
と言う順序になる
(マスキュラーは準備もなにもないので評価外)(ジェントルの存在は忘れている)
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