ラスボスの子に転生したのでNO.1ヒーローを曇らせたいと思う   作:タメガイ連盟員

45 / 47
うちびたXtreme様、佐藤東沙様、あーるす様、路徳様、刹那@閲覧垢様

誤字報告ありがとうございます


29.林間合宿

 いよいよ林間合宿である。

 

 ちなみにわたしが合宿に参加することについて、職員会議でひと悶着、と言うほどではないけどちょっとあったようだ。ヴィラン連合との3度の接触、最初はともかく、2度目は攫われかけて、3度目はピンポイントでの接触。ヴィラン連合の背後にパパと言う、個性に関しては何でもありな存在があることで1つの疑惑が浮上してくる。つまり、連合はわたしの位置を把握しているのではないか、と言うことだ。

 

 これに関してはそれなりに根拠のある話だ。なにしろ『サーチ』という実例がある。2度3度と続けばそうとしか見えないだろう。なのでこの推測が当たっていた場合、わたしが参加するとせっかく秘匿している合宿場所がバレてしまうわけだ。まあ、実際にはどっちの接触も連合側からしたら偶然なんだけど。かと言ってわたしを参加させずに1人にしておくのも問題だ。わたしの体についての問題は職員全員が共有しているわけではないので、予定を早めて護衛つきの医療施設に行かせよう、とはならないのだけど。

 

 ここで動いたのが相澤先生だ。彼には『志村常夜を林間合宿に参加させるべし』という暗示をかけてある。なのでそれに沿った行動を取ってくれる。もしなにかあったとしても、それは自分の責任だと力説する先生。彼の責任感の強さは教員の誰もが知っているところだからそれ以上の異論は出なかった。信頼されてるんだねぇ、相澤先生。

 

 ともかくこれでこの件については決着。何度も言ってるけど、これは本当に不自然なことなので、こうして当日を迎えるまで不自然さを誤魔化す工作に精を出してきたのだ。他にもやることが色々あるのに! 誰だこんなことを考えたのは。わたしです。ドクターを増やしておいてよかった。

 

 で、今は合宿所へ向けてバスに揺られているところだ。事前に、相澤先生のことだから途中から徒歩で移動させられる、ってみんなに携行食糧と飲み物、女子陣にはスカートの下に何か履くように伝えてある。ここ、原作知識もあるけど、不和先輩から去年の合宿について聞いたから、ってことにしている。いや、実際に聞いてはいるんだけど。先輩、遠い目してたな。ちなみに先輩は6月の仮免試験に合格している。普通なら仮免はこうして2年の6月に取得するわけだから、9月に取得する予定の今年の1年生はかなり駆け足なわけだ。それ抜きにしても相澤先生がスパルタ方針だから合宿はきついんだろうけど。

 

 今のところみんな遠足気分だ。まあ、それも今のうちだ。バスが停車した場所は何もない展望台のような場所。そしてそこで待っていたのはプロヒーロー、ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツの内の2人、マンダレイとピクシーボブだ。出久くんの解説によると山岳救助を得意とする4人チームのヒーローでキャリアは12年になるベテランだとか。えーと、確か全員31歳ってことだから高校のヒーロー科卒業の1年後にチーム発足って感じか。ヒーローとしてのキャリアはサイドキックから始めることが多いそうだから、仕事中に知り合ったか、高校が同じだったかなんだろう。同じ高校出身者同士で事務所を立ち上げるってよくあるそうだし。

 

 さて、この辺一帯はプッシーキャッツの所有地らしい。金持ちだなヒーロー。まあ、こういう山地って持ち主が手放そうにも国は買ってくれないし、税金がかかるわで二束三文で外国企業に売却するなんてことが前世でもニュースになってたぐらいだから、比較的安く手に入れたんだろう。合宿で使う宿泊施設はあの山の麓、と指差すマンダレイ。遠いな。

 

「これは……もしかして」

 

「常夜さんが言っていたよりも大変なことになりそうですわね」

 

「だね。みんなー、持ち物の準備はおーけー?」

 

「いやいや……」

 

「嘘だろ、あそこまで徒歩かよ!?」

 

「あら、思ったより準備がいいのね? 今は9時半だから、早ければぁ……12時前後かしらん」

 

「じゃあ、きばっていこー」

 

 言いながら柵を越えて崖下を目指して斜面を滑り降りる。百や轟くん、出久くんや飯田くんも後に続く。

 

「うぉい!? 本気かお前らぁ!」

 

「くそ、どうする、バスに戻るか!?」

 

 降りるか否か迷っているみんなの声が頭上から聞こえてくる。バスには戻れないんだよなぁ。

 

「12時半までに辿り着けなかったキティはお昼抜きね」

 

「悪いね諸君。合宿はもう始まっている」

 

 相澤先生の声と共に大量の土砂が頭上から迫ってくる。当然上に残っていたみんなを巻き込んで、だ。無茶するなぁ。このままだと先行組も巻き込まれてしまうので、各々の手段で斜面から距離を取って、木々を避けながら着地する。

 

「早々、派手なことで」

 

「制服ではなく、最初から体操服を着てくるべきでしたわね」

 

 土埃を払いながら、他の皆が土砂ごと落ちてくるのを待つ。これでよく怪我しないなー。んっ、土砂がふわっとしてるからこれがクッションになってるのかも。そういう調整もできるだろうからね、ピクシーボブ。崖上からマンダレイの声が響いてくる。私有地につき個性使用自由、これから3時間、通称魔獣の森を抜けて自力で施設まで来い、とのこと。

 

「魔獣の森……!?」

 

 ゲームチックな名前だなぁ、などと思っていると目の前に土塊と樹木によって体が構成されている、いかにもゲームのモンスターと言う風情のモノが出現する。なるほど、魔獣である。これにいち早く反応したのが口田くんだ。彼の個性『生き物ボイス』は動物と意思疎通をして命令するものだ。言葉を使って対象に命令をする、と言う性質は心操くんの『洗脳』に近い感じだ。こちらは人間には効果がないみたいだけど。それはともかく、あれを見て動物だと思うってどうなの、口田くん。それともわたしの知らないところでクリーチャー染みた動物が棲息してるの? 

 

 しかし、魔獣の正体はピクシーボブの個性によって作られた、魔獣と言うよりはゴーレムと言うべきものだ。効果があるはずもない。個性が効かなかったことに驚いている口田くんを尻目に衝撃波を魔獣に放つ。

 

 土を撒き散らして魔獣が砕け散る。ふむ、あれぐらいならワンパンでいけるね。ワンテンポ遅れて動いた男子陣が土埃を浴びている。悪いね、動くタイミングが同じならわたしの方が早いからね。おい、こっちを睨むな爆豪。

 

「なるほど、こうやってこっちの行動を妨害してくるわけか……百、ちょっと。皆さん、ちょっと待っててください」

 

 百を手招きして2人で相談だ。このまま無闇に施設を目指しても無駄に体力を消耗する上に時間もかかってしまう。数分で終えて、みんなの注目を集めるために大きく手をたたく。

 

「では皆様、これからクラス委員から行動方針を発表します!」

 

 1:クラスを前衛、中衛、後衛に分ける

 

 2:1時間毎に10分の小休止、前衛の交代を行い、3時間で30分の大休止を行う(つまりお昼休憩)

 

 3:これは演習であり、統率のとれた行動が求められる

 

 まず施設までの到達時間とされる3時間、これは一旦脇に置く。なぜならこの数値は山岳行動を得意とするマンダレイやピクシーボブならば、という話だからだ。こっちは森林地帯に慣れていないし、土地勘もない、しかも3時間と言う数値も具体的にどういった行動での3時間なのかも謎だから、実際にどれぐらいの時間がかかるか不明だ。ここから施設までの距離がわかればある程度予想が立てられるんだけど、そんなことができる個性持ちもいないし。

 

 なので体力の消費は抑えるのが得策と言うわけだ。原作では夕方近くまでかかってたし。

 

 これを演習と考えているのは、これを計画したのが相澤先生だからと言うのがひとつ。それからクラス全員が同じ目標に向かって行動することが稀なのがひとつ。山岳救助の場面では長距離移動から救助活動、さらにそこから長距離移動、と言う状況は珍しくない。この救助活動の部分を再現するために到着してから何かを課される可能性もある。うーん、考えすぎかな?

 

 で、前衛は3人1チーム。基本、魔獣をすぐに排除できることが条件。ぶっちゃけその気になれば誰でも魔獣は排除できるんだけど、時間がかかってしまうので攻撃力のある人達にしておく。

 

 中衛は前衛と後衛のサポート。と言う名の荷物持ちだ。みんな飲み物持ってるから全員分を合わせればそれなりに重量になる。前衛の体力の消耗を抑える意味でも中衛は必要。

 

 後衛は後ろから魔獣が来た場合の対処を担当。これは探知を得意とする障子くんとわたしだ。交代なしだけど、後ろからの攻撃頻度は低いはずだ。

 

 それにしてもピクシーボブの『土流』、なかなか強力な個性だ。単体で強力なタイプじゃなくて、鍛錬によって強くなったタイプだろう。土石流の規模、土でできた魔獣を操作する遠隔操作能力、ベテランヒーローってのはやはり侮れない。土に触れていることが必須だろうけど、土が存在する環境なら非常に強力と言って良いだろう。あー、セメントス先生と似たような個性だな、こうして考えてみると。

 

 ちなみに個別に役割を振っている人がいる。まず口田くん。動物を使ってルートを先行して調べてもらう。鳥を使えば俯瞰視点で調べられるし、現在位置の確認も容易だ。必然的に負担が大きくなるから彼も前衛と同じく手ぶらだ。

 

 次にお茶子ちゃん。前述の通り、飲料水の重量がかなりある。クラスの半分以上が手ぶらになるため、飲料水を持ち運ぶのは必然的に中衛グループとなる。この負担を軽減するためにお茶子ちゃんに荷物の一部を無重力化してもらう。お茶子ちゃんにも限界があるから全部ではない。

 

 そして、百もだ。こういう状況では何でも作れる百の個性の重要性は言わずもがなだ。

 

 うーん、負担を分散したいんだけど、うまく行くかなこれ。森林地帯を長時間移動する、って状況だと有用な個性とそうでない個性が分かれてしまう。全員の個性を把握しているから短い相談だけでもある程度はいけるにしても、もうちょっと話し合って計画を煮詰めたいんだけど、そうするとピクシーボブが急かしてくるだろうし。こういう行動自体初めてのことだから、臨機応変にやるしかないか。

 

「では皆様、参りましょう!」

 

 

 

 

 時刻は15時半。無事宿泊施設に到着。そこには当然数時間前にはこちらに来ていたであろう相澤先生とマンダレイ、ピクシーボブが待っていた。ピクシーボブに関してはここで待っていたのではなく、ずっとついてきていたのだけど。なぜかと言えば彼女の個性は土に直接触れている必要があるし、効果範囲にも限界があるからだ。わたし達に怪我をさせるのも避けたいだろうから目に入る距離を保っていた。わたしはどこにいるか把握してたけど。で、ここに着く1時間ぐらい前から魔獣が出てこなくなったので、そのときには先に宿泊施設へ向かっていたのだろう。

 

 案の定、目標時間の3時間は彼女らならば、と言うことだった。知ってた。プロヒーローと学生の差と言えばそれまでだけど。概ね想定通りの時間に着けたし、体力もまあまあ維持できたから悪くない結果だ。でももうちょっと短縮できたかも。

 

 ちなみに滉汰くんはいない。当たり前だ、両親が健在なのにマンダレイに預けられるわけがない。今頃は年相応な生意気少年をやっていることだろう。

 

「先生、これからの予定は?」

 

「18時から食堂にて夕食。その後20時に入浴で就寝。本格的なスタートは明日からだ。さぁ、早くバスから荷物を降ろせ」

 

「あれ、今日はもう実質何もなしですか?」

 

「そうだが。補習も明日からな」 

 

「いえ、こ──」

 

 講評でもあるのかと思って、と言おうとした瞬間、後ろから誰かに口を押さえられた。

 

「さー、チャッチャと荷物片付けようねー」

 

 下手人は三奈ちゃん。なにすんの。

 

「ちょっと! 散々歩き続けて疲れてるんだから座学が始まりそうなこと言わにゃ!?」

 

 押さえてる手の平をちろっと舐めてやる。驚いて手を離す三奈ちゃん。むぅ、なんか変な味がする。

 

「でも今回の行動についての評価とか、最適な方法とか聞いておいた方が良くないですか?」

 

「気になるけど今じゃなくてもいいじゃん! て言うか舐めないで! びっくりした!」

 

「うん。ちょっとピリッとした」

 

「感想言うな!?」

 

「おい、早く荷物を受け取れ」

 

「はーい」

 

 荷物を部屋まで運んでざっと整理しても夕食まで時間がある。みんな疲れているから横になってたりしている。

 

「百、ロビーでここまでの行程の検討をしよう」

 

「検討って……よくやる」

 

「あら、こうした活動は大事ですよ?」

 

「あー、事件報道から対応をシミュレーションするとかやってたね、あんたら」

 

「なにそれ」

 

「意識高いー」

 

「参加しろとは言わないけどさ、見るだけでも良いから」

 

 梅雨ちゃんが小さく挙手。

 

「私も参加していいかしら?」

 

「もちろん大歓迎」

 

「んー……じゃあ行くか、ウチらも」

 

 のっそりと起き上がった響香ちゃんがポンッと三奈ちゃんの肩を叩く。

 

「え、私も?」

 

「見といて損はないでしょ」

 

「えーっと、結局全員参加ってことでいいかな、お茶子ちゃん、透ちゃん」

 

「え!? えーと、うん」

 

 そう言うことになった。ロビーに移動して周辺地図を拝借。こう言う宿泊施設ならだいたいあるから助かる。上からあれこれ書き込みたいから百に透明なシートを作って貰って地図に載せる。

 

「今回は移動距離が不明な状況での集団活動、ってことで最初に計画を立てたけど、相談時間が少なかったから不満が残ると言うか」

 

「そう? そんなに悪くなかったと思うけど」

 

「もう少し個々の負担の分散をうまくやりたかったんですよ。途中の休憩でも相談はできたんですけど、大枠では変わらなかったですし」

 

「そっか。どうしても役割分担が固定しちゃうもんね」

 

「私なんかずっと荷物持ちだった」

 

「葉隠は見つからず目的地に、だったら活躍できるのにね」

 

「でも森の中で全裸になるのは危なくないかな」

 

 森の中じゃなくても危ないと思うけどね。

 

「ふっふーん、心配ご無用! 実は2学期には新しいコスチュームが完成するのだー」

 

 と胸を反らして自慢げに語る透ちゃん。

 

 早い話が通形先輩のコスチュームを参考に透ちゃんの髪の毛を使った新しいコスチュームを製作会社に発注している。通形先輩と違って透ちゃんは髪の毛も透明化しているから製作会社の方は大変だろうな。完成時期もわたしや緑谷くんのコスチュームは2週間がそこらで納品されてたのに2学期、発注時期を考えると1ヶ月以上かかっていることになるわけだし。でもこれで透ちゃんの全裸を気にしなくてよくなるし。全裸から透明スーツになるだけだから見た目は変わらないんだけど。

 

 それはさておき。

 

「──じゃあさ、早く動ける人だけ先に行かせるってのは?」

 

「それだと先行する人の負担が大きくなるんじゃ」

 

「でもそれ以外の人は体力維持できるじゃない」

 

 議論が続いている。百は司会進行、わたしもなるべくみんなが出す意見を否定しないようにする。実のところ、百と検討するためじゃなくてみんなにもこういうことに触れて貰うのが目的。

 

 わたしと百は暇を見つけてはやってるけど、他のみんなは普段の授業に追い立てられてるから参加しにくいからね。最近はハードな授業に慣れてきたところだから今が丁度良いタイミングってことでもある。こういう思考訓練って実戦ができない代わりとしては結構良いと思っている。うん、学生が実戦を経験しているのっておかしいからね、何度も言ってると思うけど。それで対処できてるんだからA組のみんなの能力がそれだけ高いってことだ。雄英や士傑じゃなかったら大惨事だったことだろう。

 

「噂のA組、なかなか活きがいいじゃない」

 

「ピクシーボブさん」

 

「熱中するのは良いけど、そろそろ夕食の時間よん」

 

 言われて時間を確認すると、17時45分。

 

「少々半端ですが、これでお開きとしましょう」

 

「じゃあみんな、ありがとうございました」

 

 わたしに続いてみんなが唱和する。それから使ったものを片付けていく。

 

「あなた、なかなか良いよ。反応の早さは経験値によるものかしら? 男だったらツバつけとくところよ」

 

 ピクシーボブがわたしを指差しながらそう言う。ああ、そういえばこの人、適齢期的なアレで焦ってるんだっけね。求婚基準でヒーローとして有望とかがあるんだろうか? 

 

「えーっと、それは将来的なプッシーキャッツへの勧誘と言うことでしょうか?」

 

「うーん、そういう解釈もできるけど、そういう意味じゃないのよ。意外とおこちゃまなのかしらん」

 

 いや、わかってるけど、ここはわけがわからない、という顔をして首を傾げておく。

 

「なんなのあの人」

 

「どうする、爆豪でも紹介しとく?」

 

「そこは飯田か轟じゃない」

 

「何の話?」

 

「常夜ちゃんは気にしなくていいよ」

 

「はぁ」

 

 そんなわけで食事の次は入浴になるわけだけど。

 

 森の中を動き回っていたんだけど食事より入浴を先にした方がいいんじゃないかと思うんだけどね。当然と言うべきか、洗濯乾燥機が備えられているので汚れ物がどれだけ出ても安心だ。

 

 うん、本題はそこではない。

 

 入浴時間は限られているから全員が同じ時間に入るのはまあいい。男女で時間が分かれていないのは、いつも使ってる合宿所は覗きができないような構造だったのだろう。まあ、アレ対策は考えてあるからいいとして。

 

 女子と入浴するのは未だに慣れないな。百とは何度も入ってるけど慣れるかは別の話だし、他のみんなとは今日が初めてだし。着替えは何度もあるけど、全部脱ぐことってないし。まあ、そこはいい、ほんの数十分間のことだし。

 

 温泉と言えば、タオルを体に巻かない、正確にはタオルを湯につけないと言うのがマナーとされている。なのでここでもそうするべきなのだけど、わたしはそれを破らなくてはならない。わたしの体は散々言ってるけど、内部的にもボロボロだけど外部的にもボロボロなのだ。主にUSJのときの脳無のせいで。胸の手術痕をはじめ、あちこちに傷痕がある。わたしとしては見せびらかしたいんだけど、志村常夜ちゃんはそう言う配慮ができる子なので仕方がない。

 

 内風呂で体を洗ってから露天風呂へ。

 

「温泉なんてサイコーだわ」

 

「気持ちいいねぇ」

 

 いや、ホント、温泉って素晴らしいね! 人類が生み出した文化の極みだね。自然発生だけど。

 

 ちなみにわたしはお風呂に入るときは湯船にぬるめのお湯を張ってゆっくり入る派である。でも、入浴時間が決まってるからゆっくりつかってられないのが残念。今回のあれこれが片付いたらどっかでゆっくりしたいものである。

 

 で、だ。

 

「峰田くん、やめたまえ!」

 

 壁の向こう側から響く飯田くんの声。はい、奴が動き出しましたね。しょうもない。

 

「壁とは乗り越えるためにある! プルスウルトラ!!」

 

「はぁ……」

 

 どう考えてもここで使う言葉じゃないだろ……はい、“掴む(グラップ)”。

 

「な、なんだ!? おいらのモギモギが、壁から引き剥がされる……!?」

 

 どれだけ粘着力が強かろうがこっちのパワーの方が上だからね。

 

「常夜、見えてないのによく場所がわかるね」

 

「あれだけ騒いでたら流石に……ちょっと男子、ちゃんと止めてください!」

 

 面目ない! と飯田くんの声が返ってきた。あっちでは淫獣が宙づりになっているところだけど。

 

「さて、峰田実くん。今すぐ引き返すなら未遂ですし、目をつぶりましょう。しかし、引かないのなら、覚悟してもらいま」

 

「断る!!」

 

「す」

 

 いや、そんな力強く言わなくても。そんなに女湯が見たいのかこいつ。百がいなければスルーしても良かったんだけど、そうはいかない。

 

「そうですか。バン」

 

 指鉄砲を作って、峰田の下腹部あたりに衝撃波を放つ。

 

「ほんぎゃあああああああああああ!!?!??」

 

 なんとかを切り裂くような悲鳴。ついでに気絶したようだ。わたしもかつては男だったわけだから、いくら急所攻撃が得意とは言え、そこは狙ってこなかった。だけど、今回は制裁としての意味もあるので遠慮なくやらせてもらった。向こうにいる男子陣も下腹部が縮まる思いがしたことだろう。

 

「はぁ、無駄な労力使った」

 

「ははは、お疲れ」

 

「ホントしょうもないなアイツは」

 

「おかげで温泉を楽しむ時間が減ってしまいました」

 

「温泉は逃げないし、明日以降もあるんだし」

 

「楽しめる余裕があればいいですけどね」

 

「言わないでよ、そういうこと」

 

 襲撃は明後日だから、マジで明日の夜が温泉を楽しむ最後になるな。ままならないね。

 

 わたしも黒霧にここの座標を教えないといけないし、みんなが寝静まっても起きていないとね。

 

 それに、内通者がいるなら動くのは今夜のはずだ。まあ、わたしがいるからいなくても支障はないんだけど。でも、パパのことだからなぁ、内通者がいた方が楽しめそうだ、って理由だけで送り込んでいてもおかしくない。

 

 さーて、だれかなー?




プッシーキャッツと言えば、虎ですね。性転換していると言う意味で。
常夜は転生したことでTSしてるんで大した苦労はしてないんですが、虎みたく医学的に性転換するのって大変らしいですね。なにしろない器官を作らないといけないわけですから。
常夜ちゃんは「この時代でもタイでやるんか(性転換手術を)」って思ってます。

ちなみに常夜ちゃんもその気になれば男になれますが「男は30年以上やってたから当分いいや」だそうです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。