ラスボスの子に転生したのでNO.1ヒーローを曇らせたいと思う 作:タメガイ連盟員
誤字報告ありがとうございます。
出久、焦凍、鋭児郎、天哉、百の5人は、百が脳無に仕掛けた発信器の反応を元に横浜市神野区のとある倉庫近くまで来ていた。途中酔っ払いに絡まれたりもしたが、いまのところ、自分達が雄英の生徒であることはバレていないようだし、ヴィラン連合にも見つからずにいる。倉庫の中を覗くと、そこには何体もの脳無が容器に保管されていて、その光景は言葉を失うほどだ。しかし、肝心の勝己と常夜の姿はない。と言うことは、彼らはオールマイトらが向かっている方に捕らえられている可能性が高い。そうこうしている間にベストジーニストを始めとするヒーロー達が倉庫内に突入、制圧を開始する。こうなるとヒーローによるヴィラン連合殲滅作戦は順調に進んでおり、出久達が行動する必要はほぼないと考えていい。ならば、ここから速やかに離れるべきだ。それが可能ならば、だが。
オールフォーワンがその姿を現したのだ。オールマイトもヴィラン連合の背後にかの魔王の存在があることは察していたが、自身が与えた負傷の程度からも直接出てくることは想定していなかっただろう。狡猾で用心深い、己の安全が保証されない限り姿を現さない。ジーニストらヒーローはそう聞いていた。それが、どうだ。それが戦線に加わったならば、事態は一変する。倉庫の制圧に当たっていたヒーロー達が蹴散らされた。ベストジーニストの咄嗟の行動で致命傷は避けられたものの、当のジーニストは重傷だ。魔王はそんなジーニストを称賛する。全員消し飛ばしたつもりだったが、うまく被害を軽減できた。実務経験と練習量の成せることだ、と。しかし、個性を奪うつもりはない、弔に合わない個性だから。
それに、出久たちはすぐに逃げるべきだと理解する。だがその重圧に当てられた彼らは恐怖で体が動かない。
出久の頭の中でアラームが鳴り響く。比喩ではなく、本当に鳴っているのだ。他の4人には当然聞こえていない。
「このような状況で発現するとは。いや、だからこそか』
何者かが出久に語りかけてきた。それも内側から。
『突然すまない、私は四ノ森避影。『ワンフォーオール』四代目継承者だ。疑問に思うことは多々あるだろうが、今は堪えてくれ。九代目、今君の頭で鳴っている警報は私の個性『危機感知』によるものだ。その名の通り、危機に対して警鐘を鳴らす』
出久の脳裏に顔に大きなヒビのようなものがあるロングヘアーの男性の姿が浮かび上がる。
「九代目、そちらの現状はこちらも把握している。今の君が奴と接触するのはあまりにも危険だ。奴の相手は八木君に任せ、仲間と共に速やかにこの場を離れるんだ』
もちろん、口で言うのは容易いが行動に移すのは難しい。四ノ森もそれは理解しているが、意識だけの存在である彼に介入する術はなく、出久にアドバイスをする以外にできることはない。とにかく『危機感知』の効果範囲外に出られれば安全なはずである。実際、四ノ森がオールフォーワンの目から逃れ続けられたのはこの個性によるところが大きい。もっとも、接敵状態では安全確認にしか使えないのだが。
オールフォーワンの『転移』によってヴィラン連合と勝己がその場に現れる。そして、常夜の姿も。
「お待たせいたしました、お父様、お兄様」
その常夜の、口から出た言葉は、出久達にとって信じがたいものだった。そして、彼女がオールフォーワンの娘であり、前からヴィラン側の人間であったこと。なら、知られていないはずの合宿所が襲われたのは。まさか、まさか、彼女が内通していた?
信じられない、いや信じたくない。それぞれ思いの形は違えど、出久達にとって常夜は信頼できる仲間なのだ。しかし、それは目の前で覆されようとしている。
「やはり来るか」
「全てを返してもらうぞ!」
常夜を追うようにオールマイトが現れ、平和の象徴と悪の魔王、2度目の直接対決が始まった。
「また僕を殺すかオールマイト」
2人が対峙している間に勝己が常夜によって上空に飛ばされ、それをホークスがキャッチ、そのまま飛び去っていき、ヴィラン連合もオール・フォー・ワンによって強制的に発動された『ワープゲート』を通り去って行った。この場に残っているのは象徴、魔王、そして常夜の3人だけ。つまり出久達にとっては常夜を助け出せればいい、そのはずだったが現状、常夜が敵なのか味方なのかわからなくなっている。
「オールマイト、助けて」
ああ、だが、しかし、確かに常夜は救けを求めている。なら、どうする。戦闘行為はできない、それどころか、このままここにいてはオールマイトの足手まといになる。四代目の言う通り、すぐにでもここを離れるべきだ。しかし、どうやって?
そうして悩んでいる間にもオールマイトと魔王の戦いは激化し続けている。一進一退、出久達にしてみれば、オールマイトと互角に戦える存在がいるなど考えもしなかった。スーパーヴィラン、悪の魔王、そんな呼び名に留まらない脅威。どうすれば、どうすればいい? そこに鳥の羽が着いた携帯電話が着信音を鳴らしながら下りてきた。天哉がそれを受け、耳を当てる。
『君達、雄英の生徒でしょ。援護するからすぐに逃げて』
「は、はい! しかし、志村くんがまだ……!」
『そっちはこっちに任せて! それに爆豪くんも無事だよ』
ホークスが撤退路を指示し、それに従って出久達はそこから離脱に成功した。
「どうやら、お客さんは帰っちゃったみたいですね、残念。このまま悪夢の目撃者になって欲しかったのに、まっ、しょうがないかぁ」
常夜が肩を竦めながら呟く。
「あの少年か。かわいそうに……資格もないのに力を与えられたばっかりに」
「緑谷少年……!」
「体育祭で見たときに気づいていたとも、次の譲渡先は彼だろう? ならば、今の君に『ワン・フォー・オール』は残っていない、残り滓だけだ。それに……うん? ああ、僕の口から伝えてもいいのだが、まあそれもいいだろう」
「何を言っている……」
「すぐにわかりますよ、オールマイト。ここで死ななければ、ですけど」
そこから状況はさらに加速する。応急処置だけで復帰したエッジショットやグラントリノが戦闘に加わる。しかし、彼らの参戦は常夜によって妨害され、オールマイトとオール・フォー・ワンの一対一、と言う状況に変化はない。状況で言えばオールマイトの方が不利だ、何しろ魔王は多数の個性を保有し、その中から攻撃に適したものを組み合わせ、遠距離から大規模な破壊をもたらす攻撃を繰り出し、周辺の被害を防ぐためにオールマイトはそれを全力で迎撃しなければならない。活動限界のあるオールマイトは決着を急がなくてはならない。このままではジリ貧になってしまうことは明らかだった。
「私はお前が! 許せない!!」
ようやく魔王の懐に辿り着いたオールマイトが拳を振りかぶる。いつものように技名を言わないものの、渾身の一撃であることは間違いない。
「常夜」
「かしこまりました」
オールマイトの拳と、その拳が向かうはずだった魔王の間に、常夜の体が滑り込む。オールマイトが拳を止めるには遅すぎた。
「あっ……!?」
皮膚が破け、肉が裂け、骨が砕け、内臓が潰れ、命の火が消える感触が、確かにあった。
もう意識のない常夜の体を魔王が受け止める。
「僕も君が許せないぜ、オールマイト。君は僕が築き上げてきたものを、僕の仲間をその拳で潰してきた。そして今! 娘まで奪われたのだから!」
オールマイトは息絶えた常夜を見つめている。そして。
「オール・フォー・ワン」
「くっくっくっ」
「オール・フォー・ワン!」
「はっ、はっはっはっ」
「オオオオルフォオオオオワアアン!!」
「はーはっはっはっはっ!」
オールマイトの叫びとオール・フォー・ワンの哄笑が響く中、最後の激突が。
多くは語るまい。
「次は、君だ」
こうして、平和の象徴と悪の魔王は表舞台から姿を消した。
神野区から離脱した出久達は電車内にいた。天哉と鋭児郎は家が関東にあるため、別方向の電車で帰宅の途についている。ここにいるのは出久、百、焦凍の3人。その表情はいずれも虚無感が漂っている。何もできなかった。救けたいと言う想いは確かにあった。しかし、想いだけではどうにもならないのだと、思い知らされた。
ふと、出久は足下に何かが当たっているのに気がついた。そこに目をやると、スマホが落ちている。隣を見ると、百が落としたらしく、そのときの姿勢のまま硬直している。
「八百万さん、スマホ落としたよ……八百万さん?」
そう声をかけるも反応がない。いったいどうしたのだろうか。
「緑谷……!」
反対側の席から焦凍が押し殺した声と共にスマホの画面を出久に見せる。そこには。
「……!」
『拉致された雄英生、死亡』
そんな見出しがうつっていた。
今日未明、神奈川県横浜市の神野区において、ヴィラン連合を名乗るグループの殲滅作戦が実行された。この作戦にはオールマイトを始め多くのトップヒーローが参加、成功は確実と思われたが、ヴィラン連合の黒幕と思われるスーパーヴィランによって神野区を中心に多くの建築物に被害が生じた。被害規模は現在調査中。多数の負傷者が近隣の病院に搬送され、ヴィラン連合に拉致されていた雄英高校1年の志村常夜さんの死亡が搬送先の病院で確認された。
こうして、少年達の善意の行動は、悪意によって、踏みにじられた。
「フフフフフ」
笑う、嗤う。魔王の娘がわらう。魔王が倒れても、悪意は終わらない、終わらない。
主人公が死んだ! この人でなし!(死んでない)
投稿を始めてから5年も経ってしまってますが、もうしばらくお付き合い頂ければ幸いです。
本編と関係ない雑談。常夜がまどマギに転生してたらノリノリでQBに協力しそう。
「宇宙のために働くのは、この宇宙に住まう者として当然だよね」とか言って(自分は魔女にならない)