ラスボスの子に転生したのでNO.1ヒーローを曇らせたいと思う 作:タメガイ連盟員
誤字報告ありがとうございます。
「そいつらを殺れば社会はより良くなるのか?」
レディ・ナガンの虚ろな声が暗い一室に響く。光源は窓の外から漏れるネオンのみ。この部屋の光景は彼女の心象を表しているかのようであった。
あっぶねええええええええ!! よりによって今夜かよ! ちょっとモノローグ風味入れてる場合じゃねえ。
パソコンのセットアップを終えて、さっそくレディ・ナガンの事務所調べて、そこから自宅の場所がわかったのでさっそく忍び込んでみたら、「偽りだ……」なんて呟いてるんだもん。で、直後に公安からの呼び出しがあっておでかけよ。
で、今私は『透明化』『気配遮断』『消音』を使ってナガンと委員長の秘密の逢瀬にお邪魔しているわけだ。外出しちゃダメって言われているけど今は緊急事態だ。許されよ。
「綺麗なものだけ見せ続けるのは洗脳と同じじゃないか?」
私もそう思います。とは言え、大人になるにつれ汚いところも見えてくるもんだけどね。ヴィランはともかくヒーローが急に行方不明になるなんてことが起きてたら、ちょっとは変だって思うでしょ? 一般人なら深入りしないだろうけど、勘の良いジャーナリストなんかは踏み込んでくるはずだ。そういう人も消してたのかもね。うわぁ、独裁国家かよ。
「維持して、その先に……何がある」
正直どっかで破綻すると思うよ。その前に表側が崩壊しちゃうわけだけど。というかこの委員長、これまでも前任者消してるよね。ヒーロー社会の維持なんて大義名分持ってるもんだから不必要に思い切りがよくなってやがる。
「あんたは強いね」
「『時間停止』」
これまで使用していた個性を解除、ナガンが右腕からライフルを出したところで行動を阻止する。うわっ、予想はしてたけど消費でかいなこの個性! 急がないと。ナガンの右腕を下に向けて、委員長から拳銃を奪う。次に委員長の頭に手を……届かない! 背高いなこの人。私が小さすぎるのかもしれない。しょうがない、『時間停止』を解除、『浮遊』発動。
「なに?」
まあ驚くよね、いきなり謎の少女が現れて委員長にアイアンクローしようとしてるんだもん。
「『洗脳』+『魅了』+『催眠』」
洗脳欲張りセットを食らえ。心躁くんのとは違いこっちは相手に触れるだけでOKだ。ついでに『催眠』で眠らせて行動不能にしつつ『魅了』によって洗脳の効果をブースト。これでしばらく『魅了』を使い続けていれば委員長は私にとって都合の良い委員長くんに生まれ変わるんだけど、まずはナガンとお話しないとね。
とりあえず眠らせた委員長は頭をぶつけたりしないように床に横たえる。
「複数個性だと……オール・フォー・ワン!?」
おおっと、さすがに知ってるよね、ナガンなら。対峙したことあるって言ってたし。この姿を見た上でそう判断するのは、姿も自在って考えられてるってことかな。でもその物騒なライフルをこっちに向けないで欲しい。はい、『個性抹消・名前』。
「まずは落ち着いてください、『筒美火伊那』さん」
『個性抹消・名前』は『個性抹消』の改造版だ。イレイザーヘッドの『個性抹消』は相手を見ることで個性を無効化するが、こっちは相手の本名を呼ぶ→相手が認識することで発動、という形になっている。私が解除しない限り継続する。
ナガンのライフルが右腕に格納されていく。この人の場合こうなるのか。なんでわざわざ改造版の個性なんて用意したかと言うと、見るだけだと瞬きした隙に頭をズドンとやられかねないからだ。いや、実際に可能かどうかはわからない。わからないができないという根拠もない。なので持続性の高いものにする必要があったのだ。
「くっ……!」
うおっ、速攻で組み伏せられて右腕極められた!? 早すぎ! さすがプロだ、接近戦もお手の物ってわけだ。
「なんだお前は!? どうやってここに」
「ですから落ち着いて頂けませんか、麗しきレディ・ナガン?」
『軟体』でナガンの拘束から抜け出す。が、抜けた瞬間今度は蹴りが飛んでくる。『軟体』は打撃による衝撃を吸収できる効果も持たせてあるのでこれも無効。蹴られた部分がぐんにょり曲がって気持ち悪いことになっているが気にしてはいけない。
個性を消され、組技も打撃も効かないとわかると、ナガンは部屋を飛び出そうとする。状況だけ見れば謎の少女に委員長が攻撃されているわけだから、助けを呼ぶなりするのは適切な行動だ。もちろんそんなことはさせない。
「『密室』+『消音』」
これは閉め切られた部屋を文字通り密室にしてしまう効果がある。つまり内外の別なく出入りができなくなる。これに『消音』を組み合わせることで音が外から聞こえなくなる防音密室が完成する。彼女の体の自由を奪ってもいいんだけど、できるだけ友好的に話を進めたいのでそれは避けたい。行動の自由はだいぶ制限しちゃってるけど。
ドアノブに手をかけるもビクともしないことに気づいたナガンがこちらを睨んでくる。
あ、そうか、名乗ってなかったな。いけないいけない。挨拶は社会人の基本。
「お初にお目にかかります、レディ・ナガン。私は死柄木常夜。本日はヒーロー公安委員会委員長殺害の阻止と、あなたへ協力を求めに参りました」
「協力……?」
「あなたの言うところの偽りを壊すために……と、いきなりこんな話をしても困りますよね? ええ、どうやら私も慌てているようです。こうなることはわかっていたのですが、まさか今日だとは思っていなかったので準備もなにもなしにお邪魔することになってしまいました。本当に困るんですよ精神的に疲弊しているのはわかるんですが衝動的な行動というのは突発的なものですのでその結果がプラスに転じることは少ないんです今回あなたが委員長を殺害しても公安は事実を隠蔽します一度築き上げたものは例えハリボテであっても維持し続けなければならないというのは公安委員会もまた官僚組織であるという証左かもしれません組織とはまずそれ自体の維持を目的とするわけですからこれまでにあなたに課せられた仕事もまたそうしたものが含まれていたと考えられますし一部には個人的な要望による仕事が含まれていた可能性すらありますいけませんそれは組織の私物化です公私混同は組織腐敗の最たるものですそれが起きているという根拠はありませんがもしあったのだとしたらもはや対症療法では意味がありません政治的な外科手術が必要ですそのためには物的な証拠や証人の存在が不可欠ですつまりあなたにヒーロー社会の腐敗摘出手術の執刀医その一人になって頂きたいのです」
「本当になんなんだお前」
さすがに呆れられてしまった。でも顔つきはだいぶ和らいだかな?
いや、あのね、パパとドクター以外で初めて会う原作キャラだよ? しかもレディ・ナガンだよ? 緊張するなって方が無理ってもんでしょ。本当はしばらく普段の生活や仕事の様子見てから話を持ちかけるつもりだったんだけど、今夜だとは思わなかったんだよ本当に!
というか、最初の一人からこの調子だと壊理ちゃんの方も見つけ次第個性破壊しないとまずいかもしれない。ナガンの方は撃っちゃった直後ぐらいまでならなんとかできると思うけど、壊理ちゃんは取り返しがつかない。ナガンは制御できるけど壊理ちゃんはできない。この差は大きい。
「名乗った通りですが」
「ヒーロー社会の外科手術だと?」
すごい、私すっごい早口だった自信あるけどちゃんと聞き取って理解してる。
「ヒーローによる不正行為の数々、それを隠蔽する公的機関。腐敗は明らかでしょう。切除しなければいずれ手足まで腐り落ちてしまいます。当然中身が腐っていては外からの衝撃にも耐えられない」
ナガンが考え込んでいるのか黙り込む。だけど視線はこちらから外さない。お話聞いてくれると思うんだよね。彼女、委員長殺そうとしちゃってるからあとがないし、私を排除しなければ部屋から出られなくなってるし、さっきので攻撃も効かないときている。つまり私につくしかないわけだ。
「……話を聞こう。だがその前に個性を全て解除しろ」
「わかりました」
『軟体』『密室』『消音』『個性抹消・名前』を解除。ナガンはライフルの展開とドアが開くことを確認する。
「ここで話は続けられない。私の事務所に移動する……が、委員長はどうなっている」
「眠っていますが、私の言うことならなんでも聞いてくれるようにできます。もちろん、あなたの辞職願いだって受理してくれます。とりあえず、私たちがここから離れたら起きるようにしておきます。あなたとのことは覚えていません」
「いったいいくつ個性を持っている……お前、オール・フォー・ワンとどういう関係だ」
「オール・フォー・ワンとは関係がありますが、この件は無関係です」
まあ、これだけ個性モリモリでパパと関係ありませんなんて言ったところで納得してくれないだろうから適度にぼかす。これだけでも察してくれるだろう。
ナガンは渋い顔をしながら顎でついてくるように示す。『透明化』+『気配遮断』+『消音』で完全に姿を消す。『浮遊』も足せば足跡も残らないんだけど、残念ながらできなかった。公安委員会には夜だというのにちらほら人がいる。ナガンは人とすれ違う度適当に挨拶するが、私は誰からも見えないのでうまく避けないといけない。うーん、ルミリオンみたいに『透過』を使えばそれも避けられるけど、足と床の接触部分だけ使わないって難しすぎるんだよね。いや、本当にすごいよ通形ミリオ。来年度、雄英受験だろうから頑張ってね。というか、受験の時点で個性使いこなせてなかったのによく合格したなあの人。
駐車場の、原作でオールマイト(トゥルーフォーム)が乗ってたようなゴツい車に乗り込む。防犯カメラがあるので『透明化』だけ維持して『透過』を使ってだ。制御が難しいので後部座席に倒れ込むようになってしまったが。
「走行中の車内は盗聴されにくいと聞きますが、どうなのでしょうか」
発車してしばらく経ってから話しかける。
「“掃除”なら定期的にやってる」
されてるんだ。でもナガン本人が電子機器の捜索に向いているか、というちょっと微妙だな。公安の人がやってたんじゃない? ちょっと探ってみるか……うん、あるわ。まあ、公安みたいな組織は身内にスパイがいないか警戒するのが普通だけど、委員長の子飼いみたいなナガンにもやってるとか。この調子だと自宅と事務所にもあるよね。
運転席のシートを軽く叩いてからテレパスで話しかける。
『車内に盗聴器がありました。双方向性にしてあるのでそちらからもこちらに通話できます』
『やはりか。壊すのは待て。時期をみる』
『事務所にも仕掛けてあると思いますが』
『向こうで話をするときはお前がなんとかしろ。できるだろ』
もちろんそのつもりだ。盗聴器をしかけたのは委員長の息がかかってる人だと思うけど、その人たちが委員長にだけ従っているわけでもないだろうから、警戒を怠るわけにはいかない。公安内部にも派閥があるだろうし、誰が敵で誰か味方かわかったもんじゃない。
あーやだやだ。
ヒーローとヴィランみたいに世の中綺麗に白黒色分けできるわけじゃない。そしてレディ・ナガンのような存在がいる以上、ヒーローだって白とは言えないのだ。恐るべきことに、真っ黒なはずのパパのおかげで救われた人だっている。パパにとっては支配を広げる手段でしかないにしてもだ。結局のところ、あるのはグラデーションの強弱だけ。ナガンは黒を白とするための仕事をずっと続けてたんだから、心を病みもする。
ナガンの事務所に到着すると、乗ったときと同じ要領で降りる。彼女の事務所は雑居ビルの最上階にある。自宅に比べるとずいぶんささやかなものだが、個人でやっているからそれでいいらしい。後ろ暗い仕事もしているから他に人を使うのが難しいのだろう。事務所に入る前に盗聴器などの位置を確認。カメラもあるから姿は消したままの方がよさそうだ。
事務所に入るとナガンが応接用のソファを指して奥の部屋に消える。ここで待ってろということなので大人しく従う。『消音』をソファの周りに展開、カメラの方はうーん、壊すのはダメだから一時的に故障させておこう。無事故障させたのでようやく『透明化』を解除できる。常時使うにはちょっと重いんだよねこれ。コスチュームからラフな普段着に着替えたナガンが私の対面に座る。時間をかけてもしかたないのでさっそく話を始める。
「オールマイトが遠からず引退します」
「活動数が大幅に減っているとは思っていたが……なぜそこじゃない」
「オールマイトの次に立つのは誰でしょうか。ええ、彼には傷があります」
「個性婚か? だが……」
個性婚は忌避される行為ではあるが、現代でも政略結婚はあるだろうし、金銭の代わりになんてことだって皆無だとは思えない。つまり致命的とまではいかないはずだ。
「彼の長男がヴィランになっています。殺人の容疑になるでしょう」
さすがのナガンもこれには思わず額に手を当ててしまう。
「爆弾どころじゃないな、そいつは」
「平和の象徴、その時代は長くなりすぎました。象徴の不在、次なる柱の傷が暴かれたとき、ヒーロー社会は大きく傾く。そのときまであなたにはヒーローの肩書きを維持して頂きたいのです」
ソファの背もたれに上体を預け、ナガンは天井を仰ぎ見る。しばしの沈黙。
「休業なら構わないな」
「はい。委員長さんに伝えれば通るはずです。うーん、でも委員長さんと不正ヒーロー二人をそのまま放っておくのもよくないですよね」
ナガンはなにも言わない。休業するのだからなにもするつもりはないと言外に語っている。まあ、最初から私がやるつもりだったからいい。委員長さんはそうだな、適当な病気になってもらって、職務遂行に問題がありとして委員長職を辞任、病気療養のため休職してもらおう。私が洗脳しているとはいえ、放置してたらまた濡れ仕事しだすかもしれないし。後任の人がどうなるかはわからないからそっちは様子見。ヒーローの方は居場所がわかれば即だ。とりあえず、今日はもう遅いから明日からだ。
「今日のところはこれで失礼します、レディ……休業するのですから、本名で呼んだ方がよろしいですか?」
「好きにしろ」
「では筒美さん、おやすみなさい」
さて、一夜明けてさっそく抹殺対象になっているヒーローに直接“おはなし”したんだけど。やばい。地方の司法がやばい。委員長が話していた、一般人を唆して犯罪者にしたてあげて報酬を得ていた、っていうの、この時点で警察関係者がグルだなって察せられるけどさ。数日かけて調べたら、まあ、出るわ出るわ芋づる式。警察は言うに及ばず、弁護士、検察官、裁判官、ヒーロー公安、地方議員、メディア関係者、さらに指定ヴィラン団体と大スキャンダルまったなし。おい、身内にもいたぞ、どうするんだ委員長。氷山の一角削って見なかったことにしたくもなる。
このヒーローも最初は魔がさしてって感じだったんだろうけど、いつの間にかヴィラン団体に関与しちゃって退くに退けなくなってしまったようだ。うーん、ヒーロー飽和社会の弊害、食えないヒーロー問題の根は深い。一応公務員だっていうのに給与は歩合制だ。副業が認められていると言ってもそれで収入を補える者は限られる。ヒーローの数が増えれば手にできるパイは小さくなる。オールマイトの活躍で犯罪が抑止されることでさらに小さくなる。結果食うに困って犯罪行為に手を染めてしまう。警察や軍隊同様、ヒーローも暇な方が世の中平和と言えるのだが、前者は給与が保証されているが、後者はそうでないのだから困ったものである。制度自体が個性の法規制から来ている以上、無理が出てしまうのだ。この辺の法整備の問題は……私が考えることじゃないな!
最初はどうせ消すんだからドクターにでもプレゼントすればいいかって思ってたけど、さすがに可哀想になってきた。ここはきっちり罪を償って頂こう。そのために彼らを告発しないといけないんだけど、私は公的には存在しない無力な少女だし、匿名では司法・メディアのタッグで潰されかねない。フリーのジャーナリストがいいんだろうけど、当然伝手などあるわけもない。うーん、ナガンにならあるかなぁ、ちょっと聞いてみよう。
「は? ジャーナリストの伝手? なくはないが……なんだ、始末するって言ってた連中は告発するのか」
そんなわけでナガンの自宅であるタワーマンションの一室にお邪魔する。そこではレディ・ナガンがスウェット姿でビーズクッションに身を沈め、テレビゲームを嗜んでおられるのであった。
だれナガンである。
……んん?? すごいぞこれ、イメージ破壊されすぎだろ。ああ、麗しきレディ・ナガンは一体どこに? だらけきったアラサー美女ってすごいなぁ。
「失礼なやつだな」
心を読まないで欲しい。それはともかく。
「それによって社会がどう反応するか見たいと思いまして」
「蜥蜴の尻尾切りで終わるのか、それとも外科手術になるのか、見世物としてはどんなものだかね」
「休業中の暇つぶしにはいいのではありませんか?」
「ふんっ。まあいいさ、何人か覚えがある。そいつらに渡せばいいんだな」
「はい。お願いします。ただ……」
「名前は出さない。言われなくてもそれぐらいは心得ている」
「ところで、これなにやってるんですか」
「FPS」
「うわっ、エイムすごっ」
レディ・ナガンの事務所公式HPにヒーロー業をしばらくの間休業、事務所も一時閉鎖するとの告知が掲載された。これによれば、心身の疲労が蓄積しミスを誘発しかねない状態にあるとしている。復帰時期については明言されず、メディアからの取材にも応じない姿勢であるため、具体的になにがあったかは不明なままであった。なお、彼女が担当していた地域には既に十分なヒーローがいるため、治安上の問題が起きる可能性は低いとされている。
その一週間後、ヒーロー公安委員会委員長がステージ3の癌であることから委員長職を辞任し、治療に専念するため休職する旨を公表した。後任として現副委員長が新たに就任する予定。
同週、「ヒーロー社会の闇!」と題された記事が週刊文秋誌上に掲載される。記事によれば某市で活動しているヒーロー2名は一般人を唆し犯罪者に仕立て上げ、それを狩ることで報酬を得ていたというのだ。犯罪者の受け取りをする警察、ヒーローへの報酬を審査する専門機関もこれに関与している疑いがあるとしている。この記事はヒーロー公安、特に委員長に近いものにとっては予想外のものであった。普段なら委員長が既に対処しているところなのだが、その委員長がつい先日突然辞職してしまい、新委員長への引き継ぎなどで忙殺され彼が行っていた裏向きの仕事を把握しきれていなかったのだ。
紛うことなき失態であった。しかし何もしないわけではない。即座に当該ヒーローへの事情聴取を行い事実確認を行った。このヒーローは両名とも事実関係を認め、また記事通り警察にも関与している者がいることを明かした。事が明るみに出ている以上、闇に葬ることはできない。こうなっては法令通りの処分を行うしかない。結果、ヒーローは地元警察に逮捕、またこの事件に関与していた者数名も同様に逮捕された。
この一件により、「他のヒーローにも不正があるのではないか?」との疑惑が世間では湧き上がった。この流れに飛びついたのがマスコミであった。彼らは常に飢えている獣のようなものだ、トップヒーローたちから地元密着型のヒーローまで鵜の目鷹の目で調査を始めたのであった。もっとも彼らが期待するような不正は発見されず、いくつかのヒーロー事務所で収支報告書の計算間違いや記載漏れが見つかっただけであった。
しかしその小さな人的ミスが起きていた事務所が問題であった。そう、誰あろうNO.1ヒーロー・オールマイトである。仕方のないことかもしれない。彼のサイドキックであり、事務を司っていたサー・ナイトアイとのコンビ解消、また世間には公表されていないが巨悪との決戦により重傷を負っていたため、諸々の事務処理が滞ってしまっていたのだ。だからと言ってそんな言い訳をするつもりはない、とオールマイトは即座に記者会見を開き謝罪を行った。さすがはNO.1と言うべきか、この謝罪会見によってこの一連の騒動はあっさりと収束に向かっていったのであった。
「んー、尻切れー、おのれオールマイト-」
自室でネットニュースを見ながらやる気なく呪いを吐く。
結局のところ、逮捕に至ったのは末端の数名のみ。他のヒーローへのあら探しが事件の背後にいた者の良い隠れ蓑になってしまった。そしてトドメのオールマイトの謝罪だ。こういうところ変にうまいんだよなぁ、あの人。蜥蜴の尻尾をよしよししよってからに。
まあいい。元々波及効果は大したものじゃないと思っていた。というか、ナガンと繋がりを持つついでなのだから気にするようなものではない。
それよりも中学入学に向けての準備の方が問題だ。実は季節は秋で冬が近づいてきている頃なのだが、入ろうとしている学校には入学試験があるのだ。そう、私立中学校ってやつ。学力面での不安は当然ない。うまくすれば特待生待遇もいけるはずだ。一応孤児ってことになっているからね。
あれこれやってる間に戸籍とかの用意は終わっていて、ようやく私も法的にも実体のある存在になれたわけだ。しかもご丁寧に志村菜奈に行き着くようになっている。
これを終えて、春になればあの子とようやくご対面というわけだ。
わくわくするね。
次回から中学校編に入る予定です。
同級生アンケート、たくさんの回答ありがとうございました。