ラスボスの子に転生したのでNO.1ヒーローを曇らせたいと思う 作:タメガイ連盟員
誤字報告ありがとうございます。
他のヒロアカ二次作品の「読者層が似ている作品」に本作が出てくるようになってきて若干にやついてます。
若葉萌ゆる季節。
受験も無事突破し、堀須磨大附属中学の門をくぐることとなった。中学生やるのは二度目だけど、今回は私立だ。しかもグレードが高い。お金持ち学校というやつだ。だからといって上流階級の人間しか入れないというわけではない。幅広い人材育成を謳っている堀須磨大は幼小中高大と揃っており、途中からの入学も当然認められているし、教育内容にも選択コースによる違いはあっても格差はない。制服もオーソドックスなセーラー服で、夏服が白で、冬服が黒だ。制服のデザインを売りにしている私立校もあるそうだが、こういう奇をてらわない方が良家の子女が通う学校らしい気がする。
学校に来てはいるが今日はまだ入学式ではない。入学試験トップ合格したことによって入学式で新入生代表として壇上に上がらなければならない。その打ち合わせと、特待生待遇に関する説明を受けることになっている。普通なら保護者、私のような孤児(ということになっている)の場合未成年後見人が同行するところだが、多忙のために来ていない。一応後見人の名前を記すとシガラキである。うん。いいのそれ。パパの本名知ってる人なんて初代ぐらいしかいなさそうだから別にいいのか。私も下の名前は知らないし。
んー。よし、今のうちに私、『志村常夜』の設定を振り返っておこう。
まず経歴。小学校入学前に両親・祖父母が他界、また生家も火事で焼失、その後は児童養護施設で過ごす。市立蛇腔北小学校卒。両親の友人であったシガラキ氏が未成年後見人となっている。養子縁組の話はあったものの全て断っている。現在は堀須磨大附属中学校進学にあたり養護施設を出て近隣のアパートで一人暮らし。
役所の方はシステムの不備が原因で私に関わるデータが消えてしまったことにするらしい。上記の通り登録しなおしたのが私の公的記録になる。小学校も養護施設にも実際には行ってもいないし過ごしてもいない。しかし火災で何もかも燃えましたってのは流石に乱暴じゃないだろうか。そりゃ最初から何もないんだから、嘘でも全部なくなったことにできる火災に遭ったとするのが手っ取り早いのはわかるけど。
全て燃えたと言っても、実は遺品があったりする。対オールマイト騙し用に半分焦げた志村菜奈の写真があったりする。当然、私が作ったものだ。遺品とはなんだったのか。『創造』でやってみたんだけど難しいんだわこれが。きちんと物の構造を理解していないといけないから使いこなすには結構な訓練が必要なのもわかる。『念写』したものを細工してもよかったかも。
しっかしまあ、普通に考えたらなかなかハードな生い立ちだ。トラウマになってもおかしくないところだが、私は別に経験していないのでなんともない。傍目にはつらい生い立ちを感じさせない、みたいな感じに見えることだろう。性格は明るめ路線で行くつもりだからより際立つはずだ。志村ママだってつらいとき、苦しいときに笑える奴が強いんだって言ってたしね。
志村ママっぽさを出していきたいんだけど、聡明で笑顔の絶えない女性だったとか、オールマイトの言葉や行動には彼女の影響がかなり見られるし、なんかオールマイトのフォロワーみたいな感じになりそうな悪寒がする。表向き孫だから、そういうヒーローだった祖母に憧れてる、の方がいいのかな。架空の父親の造形がお兄ちゃんだからヒーローってものに微妙な感覚を持たせてみたり? うーん、遺品が祖母の写真だけだから、そこでヒーローへの憧れを募らせていった、ってことでもいいかも。基本設定を忘れさえしなければあとは高度の柔軟性を維持しつつ臨機応変に対応すればいい。はずだ。信じろ、私の演技力を。最悪個性でカバーすればいい。
ところでシガラキ氏なんだけど、眠木さんによると実体のある存在らしい。当然パパのシンパ、というか部下だ。つまりギガントマキアの同僚だ。いや、明快な組織を持っていた感じじゃないから同僚って表現はおかしいのか? 『憑依』という個性の持ち主で、するんじゃなくてされる個性だそうだ。他人に自分の体明け渡すとか、誰かに利用される以外に使い道なさ過ぎるな。パパに忠誠誓ってるから不都合ないし、パパも彼に憑依すれば世を忍ぶ仮の姿として使えるんだから便利だ。Win-Winな関係築いちゃってるなぁ。非戦闘員だし、パパとの繋がりもわからないようにしてただろうから、うまいことオールマイトの目も掻い潜ったのだろう。
個性は『念動力』で登録。
超常社会以前の、前世の平成時代なら最もポピュラーな超能力の1つだった。あとはテレパスやテレポート、パイロキネシス、未来予知、などがそうだった。どれも個性としてもっている人がいるね。テレポートはちょっと変化球気味だけど。緑谷母の物を引き寄せる、ってのも念動力の一種と言える。この個性社会でもよくあるタイプなんじゃないだろうか。使用制限あるからどれが多いのかわからないんだけど。
先々この個性で雄英の入学試験に挑まなければならないので、これに関しては前から訓練している。パワーはかなりあるんだけど、精密性は低い。奇妙な冒険風にすると
パワー:A スピード:C レンジ:50m(見える範囲) 持続力:B 精密動作:D 成長性:C
といった感じか。パワーだけなら結構あるんだこれが。たぶんギガントマキア持ち上げられるぞ私。さしものギガントマキアも宙に浮いたらなにもできまい。オールマイトなんかは拳による風圧攻撃ができるからたぶん意味ない。バリバリ近接パワータイプのくせに遠距離対応できるとかどうなってんだ。しかしギガントマキアの個性、さすがの私もあれを全部同時発動させることはできない。2つ3つがせいぜいだろう。彼がいかに個性の器として優れているかわかる。
パワーだけあってもしょうがないので精密動作性を上げる訓練をすることになっている。これなら室内でできるしね。テクニックを鍛えればできることも増える。スピードはまあ、後々の個性伸ばしの課題用に残しておこう。なにしろ相手はあのイレイザーヘッド、弱点の1つぐらいないと怪しまれそうだ。他の個性も使用するつもりだから、常に最大出力というわけにはいかないが、学生ならそれでも十分なはずだ。
現在私の身長は130cmもない。だいたい10歳ぐらい相当だろうか? ドクターが私を何歳想定で成長させたのかわからないし、ついでに巻き戻しのやり過ぎでさらに幼くなっている。当然中学生としてもかなり小柄だろう。体重は意外とある方だ。肉体強化措置のおかげでムキムキなのだ。ついでに筋力が落ちないように個性で刺激を与え続けてもいる。脱いだらすごいぞ。制服はオーダーメイド(さすがお金持ち校だ)で、成長することを見越していくらか余裕のある作りになっているが、将来新しく作り直すことになるかもしれない。パパの身長ははっきりとはわからないが、結構長身だったと思うし、志村ママなんかあの骨太っぷりを考えると背丈も結構なもののはずだ。これから成長期に入ることを考えると、私もそれなりに背が高くなっていくんじゃないだろうか。まあ、お金はシガラキ氏を通じてパパが出すんだから遠慮なくたかっておこう。
外見は前にも言ったが志村ママ似である。彼女を幼くした感じ、と言って良いのかどうか。目力あるし、口の右下あたりにほくろもある。髪型も揃えようかと思ったけど、長いと鬱陶しいし、洗うのも大変だったので肩口で揃える程度にしている。個性使えば髪質の維持とか余裕なんだけど、髪が長いことにはなんとなく抵抗を感じてしまう。女物の服や下着は平気なのにどこに線引きが存在しているのか、自分のことなのによくわからない。
この辺の設定をガバらないように『自己暗示』を使っているぐらいだ。弱めにしているから本来の『死柄木常夜』を見失ったりはしない。
さて。
中学の、この学校の場合は中等部というべきか? その敷地内を事務所に向かって歩く。一部の部活動は動いているのか時折かけ声が聞こえてくる。オリンピックのような競技会はオワコンになってしまっているが、スポーツ文化が絶えたわけではない。雄英高校にも剣道部が存在する描写があったはずだ。ヒーロー科はかなり忙しいから部活動をやっている暇はないしやっているシーンもないから、それ以外の生徒向けなのだろう。それに個性の使用が規制されているわけだから、ガス抜きの意味もあるはずだ。武道なんかは精神修養としての意味がかつてより強くなっているかもしれない。ヴィラン犯罪相手に護身術がどれほど役に立つかわからないしね。うーん、個人での防犯ってどうしてるんだろう。防犯ブザーにヒーロー事務所への通報機能がついてたり? 流石の私も不意打ちには弱いからなぁ、今度調べてみよう。もしくは不意打ち対策の個性を常駐させるとか。ううむ、出力メモリのコストがどんどん増えていくぞ。これはちょっと困りものだ。
事務所で来意を告げると、隣の応接室へ案内される。事務局長さんが中で対応してくれるそうだ。ノックをして、返事があるのを待ってから入室する。
「失礼します」
新入生代表は私だけではなかった。応接室の扉側のソファに座っている背の高い黒髪の少女。
八百万百。
そう、原作の雄英高校ヒーロー科1-Aの生徒だ。
私はこれから3年間、彼女と共に過ごすことになる。
「志村さん?」
「え? ああ、すみません。志村です、よろしくお願いします」
挨拶は大事。座るように促されたので八百万さんに会釈をしつつ隣に着席。それからちらりとだけ彼女を盗み見る。
え、あの、その、えっ。ちょっと、あの、八百万さん、かわいすぎない? これちょっと予想外だわ。
ほらさ、ヒロアカって女の子可愛いじゃんすごく。まあ、堀越先生はケモナーって専らの噂だから、ミルコとか、出久くんが助けてた一般人女性とかすごいけどさ、それ以外の人もかわいいじゃん? いや、ほら、うん、ナガンと先に会ってるからヒロアカ美人と会っても大丈夫だと思ってたんだよ。あ、そうか、ナガンは精神疲労マックスだったりだれてたりしたから美人度が低下してたんだ。ヒーローコスチュームでばっちり固めてるときだったらまた違った感想になってたかもしれない。じっくり見られないのが残念すぎる。
っと、いけないいけない。ちゃんと話を聞かないと。考え込んでしまうのが私の悪い癖だ。
事務局長を介してそれぞれ紹介が行われ、軽くご挨拶。うーむ、なにしても絵になる子だ。
なぜ新入生代表が私と八百万さんの二人なのかというと、彼女は付属小学校の最優秀成績者で、内部進学試験でも当然トップだったからだそうな。事務局長さんは当然口に出さないけど八百万家がこの大学の出資者であることは無関係ではあるまい。八百万さんはこういうのどう思っているんだろうか。ここにいるってことは、自分がそういう家の人間だってことはもう飲み込んでいるのかな。さっき見た感じだと、事務的な無表情って感じで納得はしてないけど理解はしていると言ったところか。
入学式の流れの確認や新入生答辞の原稿読み合わせなどを終わらせると、八百万さんはここでお別れとなる。残念だけど、明日以降会える機会はある。私は特待生に関する説明や手続きのための書類だのがあるため、局長さんとお話続行である。うーん、やっぱり保護者がいた方が良かったかも。確認してもらわないといけない書類が結構ある。シガラキ氏ってどうやって連絡とればいいんだ。眠木さんに聞くしかないか。書類関係は本当に面倒くさい。平成よりデジタル化は進んでいるだろうにまったく。
面倒なお話を終え、私も帰宅しようとしたのだが。
「志村さん」
なんと八百万さんが出待ちしているではないか。
「えっと、八百万さん? どうしたんですか、先に帰ったものだと思ってましたが」
「はい。こうしてお互い新入生代表に選ばれたのも何かの縁、お話をしたいと思いまして」
考えるまでもなかったよ、彼女全力で陽の存在だったわ。彼女とお近づきになっておきたいので誘いを断りはしないが。
校内のカフェテリアで話すことになった。校内カフェテリアとか私立は違うなぁ。前世の中学なんて自販機すらなかったぞ。しがない公立学校だから仕方なかったけど。
「改めまして、八百万百と申します」
「志村常夜です。こちらこそよろしくお願いします」
挨拶を済ませ、それぞれ注文したものに口をつける。私はココア、八百万さんはミルクティーだ。ほう、姿勢もいいし、所作も綺麗だ。こういうのマナー教育が行き届いているからこそなんだろうな。私なんて女の子の真似してるだけだもんね。
にしても八百万さん、原作だと高校生離れした体型と容姿だけど、この頃だと既にモデルみたいなのにまだ可愛いと美しいの中間ぐらいというか、愛らしいというか、雰囲気もふわっとしてるし。原作では味わえないねこの感じは。
「八百万さんは初等部からの進学ですよね、このまま高等部、大学と進む予定なんですか?」
いきなり進路の話をするのはちょっとどうかな、と思うのだが、この時点で知っていることになっている情報が少ないのだ。
「いえ、雄英高校ヒーロー科を志望しています」
「雄英って、あの雄英ですよね。それもヒーロー科?」
雄英体育祭がオリンピックの代わりとか言われている世の中だ。雄英高校を知らないのは俗世から離れている仙人のような人ぐらいだろう。
「はい。幼い頃からヒーローになりたいと思っていましたの」
そんな前からかぁ。推薦で入学するぐらいだから気合い入ってるよね。個性訓練も私有地内ならやりやすいだろうし、環境整ってるだろうし。まあ、本人の努力と才能があってのものだけど。
「ヒーロー志望の人って多いですけど、実際になれるのはかなり限られますし……そりゃ雄英のヒーロー科ならヒーロー免許試験突破率高いんでしょうけど、入ること自体かなり大変ですよね」
倍率300倍ってすごいよね。併願ありだからそれだけ受ける人が増えてるんだろうけど。前世だと高校受験の倍率って10倍のところもなかったような……?
「それゆえ質の高い教育を受けられますし、どのようなことでもトップを目指さなくてはなりません」
わかっちゃいたけど意識高いなぁ。私なんてオールマイトを曇らせるためだぞ? 最低すぎないか、すごい今更だけど。ううっ、八百万さんがまぶしい。私にも良心はあるんだ。
「志村さんはなぜこの学校へ?」
「あー……今日会った人に話すようなことではないんですが、その、両親が早くに亡くなってまして。支援してくれる人はいるんですが、なるべく負担をかけたくないじゃないですか、それで特待生制度のあるこの学校を薦められまして」
八百万さんが沈痛な面持ちになる。まあ、孤児なんて人間早々いるもんじゃないし、それが目の前にいるなんて思いもしないだろう。聡明な彼女のことだ、私のこれまでの人生を想像してしまっているに違いない。実際には1年もないんだけど、真実を告げたところで信じはすまい。
「ともかく無事特待生になれてよかったです。ここって偏差値高いんで、結構ヒヤヒヤしてました。ああでも、来年度以降も特待生でいるには成績上位を維持しないといけないんで八百万さんみたいに好成績の方がいるので大変かもしれません」
むむむ、なんか無理して明るく振る舞っているように見えてるんだろうか。外面いいからなぁ、私。八百万さんの表情見てにやけるの我慢してるぐらいだし。素直な子だから、表情も出やすいよね。
「志村さん、その……」
「あ、すみません、変な感じにしちゃって……えーと、そうそう、私もヒーロー科への進学は考えているんです。祖母がヒーローだったので、それに憧れてて」
「お婆様が?」
「はい。ただ……あっ」
いかにも「しまった」という表情を作る。これだけでも八百万さんには祖母がどのような顛末をたどったか察したはずだ。
「続けて、ください」
彼女もいつまでも子供ではない、ということか。人の死を理解できる歳だし、ヒーローの殉職という報だって目にしたことがあるはずだ。ヒーローの殉職はそれほど大きく取り上げられないにしても、というかオールマイトが紙面を占領してるのというのもあるんだけど。これヒーロー公安の方針だよね、絶対。まあ、前世でも著名人の訃報がトップになるってよっぽどの人じゃないとならなかった気がするから、トップヒーローなら1面記事になるんじゃないだろうか。それはともかく、自分が志す道がいかに危険なものか、ただ憧れるだけではすまない場所だと気づいているはずだ。
「祖母は、仲間を逃がすために巨悪に立ち向かったと聞いています」
ここは嘘ではない。実際志村菜奈はオールマイトやグラントリノを逃がすためにパパに挑み敗死している。その後オールマイトは雄英高校を卒業し、合衆国へ武者修行に旅立っている。にしてもパパ、当時の雄英とか公的機関に対する攻撃は行ってないのね。うーん、わざわざ有望な個性持ちが集まってるヒーロー科なら個性取り放題だろうに。あれか、魔王ムーブの一環で「魔王は本拠地で待ち構えているものだから」みたいに考えてたとか。あり得る。だってパパだし。
空気が重い。4月の暖かな日差しを無視するかのように、このカフェテリアの一角だけが陰鬱に沈んでいる。やっぱり初対面に限らず人にする話じゃないな。とはいえ、私自身の話をしようとすると避けて通れないことでもある。それ以外だとずっと勉強に打ち込んでましたになっちゃうし。実態がないってつらい。作り話をしても後々のガバに繋がりかねないからできるだけしたくないし。
「もう40年近く前のことです。そのときの仲間の人たちがその後どうなったかはわかりません。ですが、祖母の意思が潰えたとは思えません。どこかで、必ず誰かが受け継いでいるはずです」
良い感じに話を締める。八百万さんは目を閉じ、胸に手を当てて何か感じ入っている様子だ。なんか悪いな、事実ではあるんだけど全てを語っているわけじゃないし、私自身は血を継いでるけど意思は継いでないし、しかも挫く側だ。
「お父様もお母様も、私がヒーローを目指すことを止めはしませんでした。しかし、ヒーローがどんなものかはよく考えるように、と何度も言い聞かされました。自分でも本で調べましたわ、それでわかっていた気になっていて、でも見たくないものをずっと避けていたのだと、志村さんのお話で痛感いたしました」
人が死ぬ話なんてできれば避けたいことで、それを理解できていることと接していたいかは別の問題だ。しかしヒーローを目指す上で、華々しいところばかり見ていてはいられない。不快な事柄は無視してはいけない。私は中身が元々成人だからともかく、ついこの間まで小学生だった彼女にそれを求めるのはいささか酷だとは思う。いや、祖母の最期を聞こうとしたのだからその覚悟はありと見るべきか。
「ですが、一度抱いた憧れを消すことはできません」
閉じていた目を見開き、まっすぐに私を見つめる。意思は変わらないどころか、より強固になったらしい。本当に意識が高い人って強いね。
ああ、でも、困ったなぁ。そんな風に見つめられたりしたら。たまらないな。
「すごいですね、八百万さんは」
「いえ、まだまだ未熟の身、日々精進ですわ」
「そういうところがすごいんですって。あ、そうだ、ヒーロー目指してるなら、どんな個性なんですか?」
「はい、私の個性は『創造』と言いまして────」
「ただいま」
八百万さんとすっかり話し込んでしまった。でもこれでだいぶ仲良くなれただろうからオーライだ。『魅了』を使って私抜きでは生きられないようにしちゃおうかと思ってたけど必要ないかな?
鏡の前に立つと、そこに映し出された少女の口角が三日月のように吊り上がっている。
あー、ずっと我慢してたもんなぁ、あーんな綺麗な子が悲しんだり絶望したりするところを想像するな、なんて無理な注文だ。
彼女と話していて、思い出したことがある。
前世の自分について、私はほとんど覚えていない。私が見聞きしたもの、小説に漫画やアニメ、ゲームのことは覚えていても自分がどういう人間だったかわからないのだ。せいぜい男だっただろう、という程度だ。
私は子供の頃、金平糖が好きだった。食べるときは必ず木槌で砕いて食べていた。大人になってから思えば、色つきの砂糖にしてしまっているだけでいったい何を考えていたのかと苦笑してしまう。だけど。
私は色とりどりの金平糖が砕けるときがなにより綺麗だと思っていた。
今の私には、人の心がその金平糖のように見えているのかもしれない。もしくは宝石だろうか? どっちも似たような姿をしているから。
例えば、オールマイトの心はきっと鋼のように硬いだろう。どうやって砕けば良いか見当もつかない。でもだからこそ砕けたときはそこから光が溢れてくるに違いない。
エンデヴァーの心は強さへの執着の炎で歪んでいるかもしれない。でもそれだって彼の40年以上に渡る人生の結晶。だったらそれがひび割れたとき、その断面はきっと綺麗なんじゃないか?
ホークスはひらひらしてて砕きにくそうだけど、できたらとっても綺麗なはずだ。弱みを見せたことがないから大変だと思うけど、だからこそ期待できる。
イレイザーヘッド、ベストジーニスト、エッジショットらをはじめとするヒーロー達!
私は彼らをよく知らない。けれど知っていけば、理解を深めれば砕くことができる! 鮮やかな色彩を見られるに違いない!
そして。
あの少女の心が砕けるときは、きっと綺麗なんだと思う。
だから。
あなたのことが知りたい。私のことを知って欲しい。
あなたの心はまだ原石だ。
3年。3年だ。それだけかけてあなたの心をカッティングしよう。
きっときっと、素敵な宝石になっているだろう。
そうしたら。
そのときが来たら。
待ち遠しいなぁ。
それに原石は彼女だけじゃない。1-A組のみんなもいる。
宝石もたくさんある。
今初めて思う。
この世界に産まれてきてよかった。
前世にいた頃は気づくことができなかった私の願望を初めて自覚したのだ。
喜びを、歓喜を叫びたい!
パパ、産んでくれてありがとう!
でも怖いから消えて欲しい。
というわけで、ぎ同級生は八百万百さんになりました。
やべえ奴の性癖を目覚めさせてしまった彼女の明日はどっちだ。