キノコのほうしを目指して   作:野傘

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注意!
当作品には独自展開、独自解釈、設定捏造、キャラ崩壊が多分に含まれています。
上記の要素が苦手な方はご注意ください。

























蝙蝠安んぞ飛燕の志を知らんや


幕間:暮雲春樹 後編

 館内に鳴り響く大音量。それは非常事態の発生を告げるベルの音。同時に隔壁が作動し、階下へと続く階段が封鎖される。

 照明が落ち、一挙に暗くなる館内。赤い非常灯の輝きだけが周囲を照らしていた。

 

「な、なんだ!? 一体何が起こっている!?」

「(! やっぱり……!)クスノキさん、落ち着いて! あたしから離れないようにして部屋の隅に!」

 

 突然の警報に狼狽えるクスノキ。そんな彼を落ち付かせ、部屋の隅――()()()()()()()へと移動させる。

 

(……何か、仕掛けてくるのは想定していたけど)

 

 彼女が展示会で感じた微かな違和感。ハギ老人の愚痴を聞いている際に、展示会場をふと横目で見てようやっとその正体に気が付いた。彼女が展示会に入ってから出るまで、見物客が全く変わっていなかったのだ。

 これはおかしいと思った彼女は念のためハギ老人に同行し――そして案の定であった。

 

 とはいえハギ老人と分断されたのは想定外だった。これでクスノキを守れるのは現状、ハルカただ一人。

 

(多分、したっぱくらいなら何とかなる……。けど、幹部(ウシオ)クラスに来られたら)

 

 恐らく守り切れないだろう。

 ハルカは自身の実力を客観し、そう判断する。彼女の今の実力はジムバッジを二つ入手した程度。並みのトレーナーを上回ってはいるが、本物の実力者を相手にすれば力不足もいいところだ。

 

(それでも――)

 

 やるしかない。

 

(今ここにいるのはあたしだけ、"デボンのにもつ"を……クスノキさんを守れるのはあたしだけなんだ)

 

 それに、

 

(ハギさんから言われたんだ、「()()を頼む」って)

 

 ならば彼女の果たすべき役割とは、即ち。

 

(だったらあたしの役目は、ハギさんが戻って来るまで何としても耐えること――!)

 

 手持ちたちの入ったボールを見つめ、握る。

 カタカタ、と微かに揺れるボールに、ハルカは手持ちたちが彼女と同じ気持ちであることを感じ取る。

 

(うん――!)

 

 顔を上げ、油断なく館内を見据えるハルカ。その表情に既に不安の色はなかった。

 

 

―――

 

 

――ゴッ!!

 

 

 非常ベルを掻き消すように階下から響く激しい戦闘音。どうやらハギ老人とアクア団とのバトルが始まったらしい。

 

 と、同時にガコン、と天井の一部が外れ、中から人影が飛び降りて来た。

 

「!」

「うわっ! な、何だ君たちは!?」

 

 表れたのは二人の男性。青と白の縞々模様のシャツに、「A(アンノーン文字)」を象った髑髏模様のバンダナを身に纏う海賊のようなその姿――紛れもなくアクア団のしたっぱたちであった。

 

「へっへっへ、"なんだかんだと聞かれたら"」

「"答えてあげるが世の情け"、ってな! ――俺たちはアクア団! 自然を汚しまくる今の社会をぶち壊し、ポケモンたちが安心してくらせる世界を築こうとしている組織さ!」

 

 クスノキからの問いに堂々と名乗りを上げて答えるしたっぱたち。何やら御大層な大儀を掲げての口上だったが、その態度はどうみても場末のチンピラのソレであった。

 

「おうおう、おっさん。テメェの持ってるそのパーツ、うちのリーダーが欲しがっててな!」

「怪我したくなきゃ大人しくよこしな!」

 

 チンピラらしく流れるように恫喝を行うしたっぱ。口調こそ路地裏で行われるカツアゲ染みているが、対象が財布などではない機密パーツのあたり、彼らがチンピラではない本物のテロリストであることを伺わせる。

 

「な、何をバカなことを! これは超深度探索用の特注パーツだぞ! 君たちのようなよく分からない連中に渡せるわけがないだろう!」

「へっ! そうかよ、だったら仕方ねえ。無理やり奪うまでよ! ――行けっ、グラエナ!」

「ゴルバット! テメェもだ!」

 

――バウ!

――キー!

 

 したっぱたちからの要求を、そんなもの呑める訳ないと突っぱねるクスノキ。と言っても彼らが「はいそうですか」と素直に引き下がる筈もなく。当然のように力尽くで奪おうとポケモンを繰り出してきた。

 ボールより飛び出し、クスノキを威圧するように鳴き声を上げるグラエナとゴルバット。その姿にクスノキは思わず「ヒィ」と悲鳴を漏らす。

 と、そこでクスノキとポケモンたちの間に割り込む者がいた――ハルカである。彼女はモンスターボールを両手に構え、クスノキを守るように立ち塞がる。その瞳には強い決意の光が宿っていた。

 

「クスノキさん、下がって。ここはあたしがやります」

「ああん、何だテメエ? ……ああ、元・四天王のジジイと一緒にいたガキか」

「とっととそこを退きな嬢ちゃん。じゃねーと怪我するぜ」

「――退かない。クスノキさんの()()がどれだけ大切なものなのかは分からないけど……でも、あなたたちみたいな人に渡しちゃいけないものだってことくらいは分かるから」

 

 だから退かない、とハルカは告げた。

 生来の気質か、はたまた父親(センリ)の教育の賜物か、とにかくハルカはこうした他者を理不尽に傷つけようとする輩がどうしても許せなかった。

 故に、今目の前でクスノキを傷つけようとするならば、彼女は躊躇なくその前に立ち塞がる。それはハギ老人にこの場を頼まれたということもあるが、何よりこんな奴ら(アクア団)を好き勝手させてはならないという、彼女の心の声に従ったものだった。

 

「チッ! いっちょ前に正義の味方気取りやがって、クソ生意気なガキだ。仕方がねえ……あんまり気は進まねえが、ちっと痛い目にあって貰おうか! ――やれ! グラエナ!」

「へっへっへ、世間知らずのお子様に大人の怖さってヤツを教えてやるよ! ――ゴルバット! やっちまいな!」

 

――バウ! バウウオオ!

――キーッキッキ!

 

 トレーナーの指示を受け、各々キバをギラつかせながらハルカへと迫る二匹。トレーナーならぬ只人であれば恐怖に慄き、逃げ出してもおかしくない圧力を前にして、しかし彼女はあくまで冷静。両手に二つのボールを構え、己が信頼する相棒(てもち)たちを繰り出した。

 

「チャモちゃん! スバちゃん!」

 

 光に包まれ飛び出したのは、若き軍鶏(ワカシャモ)勇敢なる子燕(スバメ)。彼らもまたトレーナー(ハルカ)と同様に一切の怯みなく、己が翼を羽ばたかせ、あるいは豪脚を踏み込んで迫り来る敵に立ち向かう。

 

 さあ、ポケモンバトルの始まりだ。

 

 

―――

 

 

 先陣を切ったのはハルカが率いる軍勢(パーティ)の誇り高き一番矢、黒白の翼を羽ばたかせる勇敢なる子燕(スバメ)。彼の相手は己と同じ、空を領域とする吸血蝙蝠(ゴルバット)である。

 ゴルバットも自身に向かって来るスバメを己が相手(獲物)と見定めたのか、空中にて方向転換。スバメ目掛け大口を開き音もなく飛翔する。  

 瞬く間に接近し、互いに出方を伺うように旋回する両者。見ればその体躯の違いは一目瞭然であった。片やハルカの手持ちであるスバメ、その大きさはおよそ0.3mほど――これはスバメとしては標準的な体躯――である。片や相対せしゴルバット、その大きさ何と1.8m。標準*1を上回る大柄な個体であった。両者の大きさの差は単純計算で6倍。150㎝の人間ならば9mの巨人と相対しているようなものである。

 しかしそれ程の体躯差を持つ敵と相対しながら、スバメの心中に恐怖など欠片もない。なぜならこのスバメという種族、体躯矮小なれどその気性、勇猛にして果敢。エアームドのような大型の鳥ポケモンと互角に渡り合う姿が確認されたこともある程である。

 

 それだけではない。

 

――己がかつて対峙したイシツブテ。アレの"がんじょう"さと比べれば、目の前の敵の何と柔そうなことか。

――己がかつて対峙したサメハダー。アレの強靭さ比べれば、目の前の敵の何と貧弱なことか。

 

 彼の内に刻まれた、かつて対峙した大敵たちとの戦いの経験(きおく)。それが目の前の敵を恐るるに足りぬと告げている。ならばこそ、どうして恐れ戦く必要があろう。相手はたかが少々体が大きいだけのゴルバット。彼の大敵たちとは比較にすらならぬ。

 

――さあ、かかってこいトリモドキ。己が自慢の翼打にて叩き落としてくれる。

 

 一たび間合いに入ったならば、直ぐにでも翼打の一撃を叩き込んでやろう、とスバメは己が翼に力を込めた。

 

 

 初めに仕掛けたのはゴルバットの方だった。

 旋回していたゴルバットは突如として加速し、距離を取ればくるりと宙返りを一つ、スバメと向かい合うようにして静止飛行(ホバリング)を始める。

 

 唐突に距離を取ったゴルバットに警戒するスバメ。何か仕掛けてくるつもりか、とその動きを注視する。

 果たして彼の予想は正しかった。静止飛行(ホバリング)するゴルバット、忙しなく羽ばたくその翼より"ひこう"エネルギーが放出される。体外へと放たれたエネルギーは与えられた指向性のもと渦巻く空気の流れを生み出し、翼の周囲に(くう)を切り裂く不可視の刃を発生させた。

 

――裂空刃(エアカッター)

 

 瞬間、解放された無数の刃がスバメへと襲い掛かった。

 三次元上に弾幕の如くばら撒かれた風の刃はその不可視の性質も相まって躱すことは至難。並みのポケモンであれば避け切れずに切り刻まれるのがオチだろう――そう、並みのポケモンならば。

 

――片腹痛し。風読みたる(スバメ)を相手に風の刃か。

 

 迫り来る不可視の刃に対しスバメが行ったことは飛翔する翼の角度を僅かに変えることだけ――ただそれだけで不可避の筈の風の刃が彼の横をすり抜けた。

 

――!?

 

 時に鋭く、時に緩く、変幻自在に軌道を変えて、曲芸飛行さながらにスバメは風刃の弾幕の僅かな隙間を掻い潜る。ひゅるりひゅるりと飛ぶ様は、まるで優雅に舞を舞うが如く。果たして刃の幕を抜けたその時、彼の小さな黒白の体には一筋の傷すらも無かった。

 己が必殺の風の刃を無傷で突破され驚愕するゴルバット、ならばと再び裂空刃(エアカッター)を放つ。しかし結果は先の焼き直し。否、むしろ風の刃に乗ってさらに飛翔速度を上げる始末であった。

 

 なぜスバメにこのようなことが行えたのか。それは彼の一族(スバメ)が心得る風読みの技にあった。彼の所属するスバメという種族は季節によって"渡り"をする習性がある*2。遥か数千km彼方の南方の地を目指して行われる"渡り"、その間のスバメたちの移動距離は一日に三百kmとも言われている。勿論、それだけの距離を己が力だけで飛翔することなど不可能だ。ではスバメたちはどのようにしてこれだけの長距離を飛翔しているのだろうか。

 答えは簡単……()()()()のだ。海洋上に発生する上昇気流を捉えることで飛翔高度を稼ぎ、滑翔することによってスバメはこれほどの飛翔を可能としているのである。だがそれは同時に常に上昇気流を掴み続けなければ海洋上に真っ逆さまということでもある。だからこそ彼らは気流の流れを読み解き、風を乗りこなす術を身に着けた。

 それこそが風読みの技。大気を流れる自然・属性(タイプ)エネルギーの流れを瞬時に察し、最も効率的な飛翔方法を選び出す種族技能。時に大嵐の只中すらも飛翔するスバメにとって、裂空刃(エアカッター)の弾幕なぞ目隠ししても通り抜けられる程度のそよ風に過ぎない。

 

 風の刃を悉く躱し、逆に加速すらしてみせたスバメはみるみる内にゴルバットとの距離を詰めていく。

 一方のゴルバットも最早裂空刃(エアカッター)では仕留めきれぬと悟ったか、大口を開け自慢のキバを妖しく光らせながらスバメ目掛けて飛翔する。

 瞬く間に目と鼻の先にまで接近する両者。次の瞬間、飛翔する両者の影が交差し――

 

――"飛燕返し(つばめがえし)"

 

 衝撃。ゴルバットの巨大な口腔へ渾身の"飛燕返し(つばめがえし)"が叩き込まれる。片翼に感じ取る手ごたえに、スバメはゴルバットを仕留めたと確信し――

 

――!?

 

 打ち付けた翼に痛みが走る。

 見ればゴルバットは苦し気な表情を浮かべつつも健在。さらに打ち付けた片翼にはゴルバットのキバが突き刺さり、巨大な口でガッシリと抑えこまれていた。

 このままではマズいと直感し、ゴルバットを振り払わんと藻搔くスバメ。だがゴルバットは噛みつく力をますます強め、彼の脱出を許さない。

 

――"きゅうけつ"

 

 そして発動するドレイン(吸収)わざ。傷口から生体エネルギーが吸い上げられ、スバメの肉体から力が抜けていく。

 

 なるほど、確かにスバメの"飛燕返し(つばめがえし)"はゴルバットの口腔を穿ち、その身に痛打を与えることに成功した。

 だが、与えられたのはあくまで痛打。大幅に体力(HP)を削りこそしたがひんし状態に至らしめる(戦闘不能にする)ことは叶わず……そのままゴルバットの反撃を許してしまったのだ。

 その原因は……抗い難き地力の差。未進化ポケモンと進化を果たしたポケモンの間に聳え立つ、どうしようもない能力値(ステータス)の壁と、それが齎す理不尽なまでの力業であった。

 

――ッ!

 

 力が抜けつつある体を根性で動かし、何とか脱出を試みながらスバメは内心で歯噛みしていた。

 

――何たる無様、過去の大敵に劣ると思って油断したか。

 

 ハルカ率いる軍勢(パーティ)の一番矢として、ツツジ(カナズミジムリーダー)ウシオ(アクア団幹部)トウキ(ムロジムリーダー)といった強敵と交戦し続けてきたスバメ。数多の強敵に立ち向かったことにより彼の身心は鍛えられ、野生に在りし時より飛躍的な成長を遂げていたが、されど彼は未だ一介の子燕(スバメ)に過ぎず。進化を果たしたポケモンを相手とするには地力が不足していた。

 

 届かない。

 今の己では後一歩、(ゴルバット)に届かない。

 

 吸われ続けた体力はとうとう危険値下回る。

 "ひんし"までの猶予はなく、最早脱出のために藻搔くことも儘ならない。

 

 力が抜ける。

 心が折れる。

 彼の内を諦念が支配する。

 

――すまない、我が主(ハルカ)よ。(スバメ)はもうここまでだ。

 

 そして彼は暗闇へと意識を落とし――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――諦めるのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なぜだろう、ここに居ない筈の(キノココ)の声が聞こえた。

 

 ああそういえば、己のことを初めて"誇り高き一番矢"と呼んだのは(キノココ)だったか。

 思い出される不思議な仲間、練色傘のキノコポケモン。(ハルカ)の手持ちでもなく、共にした期間も短かったが、それでも(ハルカ)のために共に戦った仲だ。

 最後は己の夢のために(ハルカ)のもとを離れたが……。しかし(ハルカ)は言っていた、再び見えるその時には(キノココ)はきっともっと強くなっている、と。

 (ハルカ)がそう言うのだ。(キノココ)はきっと己を鍛え、見違えるほど強くなって帰ってくるのだろう。

 

 ――ならば己はどうか。

 今の己は(キノココ)に自らが(ハルカ)の"誇り高き一番矢"であると名乗れるのか。

 旅路の果て、強くなった(キノココ)と胸を張って再会できるのか。

 

 スバメの心に炎が灯る。

 

 否、断じて否!

 このような体たらくで我が友(キノココ)に顔向けできる筈もない!

 

 スバメの体に力が戻る。

 

 この程度の苦境が何だ。(キノココ)の歩む旅路は過酷にして孤独。頼る者も無くたった一人で己を鍛えているのだ。

 己には頼れる(ハルカ)もいる、信頼できる仲間(手持ち)たちもいる……奴と比べて何と恵まれていることか。

 

 ならばこの程度のこと、はね返してみせねば話にもならん!

 

 腑抜けた身心に喝を入れ、スバメはその意識を取り戻した。

 彼は己が力を振り絞り、翼が傷つくのも厭わずに全力でゴルバットを振り払いに掛かる。

 既に"ひんし"となったと思っていたゴルバットはスバメが再び抵抗を始めたことに驚くも、すぐさま地力の差で以って抑え込む。

 

 そう未進化ポケモンと進化済ポケモンの地力の差。両者の間には依然、その巨大な壁が立ちふさがっている。これを超えない限りスバメには勝ち目がない。

 

――己は勝つ! (ゴルバット)に勝つ! 勝たねばならんのだ!

 

 状況は圧倒的な不利、されど勝利への渇望は轟々と燃え盛る。

 

 ポケモンとは生来、闘争の中で成長するもの。数多の戦いを経て、研鑽を積み、己が存在をより相応しい形へと昇華させる――それこそが本能。

 

 スバメが腹の底に力を込める。

 

 彼の肉体にはち切れんばかりのエネルギーが漲る。

 それは己の肉体が本能に従って蓄え続けた余剰の生体エネルギー。自らの存在を更なる高みへ押し上げるための「燃料」だ。

 既に「燃料」は必要なだけ満たされており、くべられるのを待つばかり。

 

――さあ、力を寄越せ! 目の前の敵を、討ち倒す……力を――!!

 

 そして、今――まさに「火種(勝利への渇望)」が「燃料(エネルギー)」へと投げ入れられた。 

 

 

 

 

――キュワローーーーーーーーーウッ!!!!

 

 

 

 

 瞬間、スバメが光に包まれる。

 それはポケモンという種が秘める神秘の発露――美しき「進化」の煌き。

 解放された爆発的なエネルギーは体内の隅々にまで行き渡り、肉体を恐ろしい速度で作り替えていく。

 より大きく、より強靭に――より戦闘に相応しいものへと。

 

 そして肉体を包む光が晴れた時、そこに子燕(スバメ)の姿は無く。

 代わってあったのは――猛々しき一羽の大燕。スバメの倍はあろう体躯に、艶めく黒白の翼。二本の尾羽は天を向いてピンと逆立ち、爪はさながら猛禽の如く。額から胸にかけてはその勇猛なる性質を示すかのように鮮やかな紅い羽毛に覆われ、(ゴルバット)を見つめる眼光はまさしく矢の如き鋭さであった。

 その名、"ツバメポケモン"オオスバメ。数多の戦闘経験を経て至った、スバメの新たなる姿(進化形)である。

 

 戦闘の中、新たなる姿へ至ったスバメ……いやさ、オオスバメ。彼は翼を打ち振るい、ゴルバットの拘束から逃れようとする。果たして進化を経てより強靭なものへと変化した肉体は、動揺し弛んだゴルバットの拘束をあっさりと振りほどき、彼を再び自由の身とした。

 拘束より逃れ、再び周囲を旋回しながらオオスバメは思考する。

 

――なるほどこれが「進化」する、ということか。

 

 体内に漲る進化前(スバメ)とは比べ物にならない力、彼は驚くと同時に納得する。

 

――これほどまでの力の差。確かに以前の己(スバメ)では(ゴルバット)に勝てぬのも道理。

 

 いざ進化を果たし、以前の己との圧倒的なまでの性能差を実感したことで、今更ながら(ゴルバット)との間にあった壁の大きさを痛感するオオスバメ。だが今、彼らの間に厳然とそそり立っていた筈の壁は――もうない。

 ならばこれより先は対等の戦い。共に進化を果たしたポケモン同士の純粋なる実力勝負である。

 

 オオスバメは翼を一打ち。再びゴルバットへ向け進路を変え、凄まじい速度で飛翔する。進化を経てより強靭となった翼が生み出す推進力は、瞬く間にオオスバメを最高速度へと至らせる。

 一方の相対するゴルバット。こちらへ向かってくるオオスバメを迎撃せんと大口を開け、キバを光らせ飛翔する。奇しくもその()()()()()()()()()()。違う点があるとすれば、片方が進化を果たしたことと――選択した"わざ"。

 

 飛翔する両者が瞬く間に距離を詰め……交差する。

 オオスバメより繰り出される翼打の一撃。それをゴルバットは先と同様、打ち込まれた翼へ自慢のキバを突き立てようとして――

 

――ガキンッ!!

 

 瞬間、途轍もなく固い()()に阻まれる。それは……()()()()()()()()()オオスバメの翼。

 そうオオスバメが先と同じ構図を作りだしたのは、全てこの状況を狙ってのこと。

 先の一戦で、オオスバメは相対する(ゴルバット)の技量がそれほど高くないのを見抜いていた。大方、技量を積まない内に進化を果たし、進化済ポケモンの地力の高さによるごり押しで戦って来たのだろう、と。ならばこちらが再び同じ動きで攻撃をすれば、全く同じ方法で迎撃するだろう、とも。

 果たして彼の考えは的中した。先と同じ構図で向かって来たオオスバメをゴルバットは全く同じ方法で迎撃しようとしたのだ。結果、ゴルバットはオオスバメの策に見事に引っかかった。

 

 衝突(インパクト)の瞬間、オオスバメは自らの翼にエネルギーを流し込み、とある"わざ"を発動させた。その"わざ"の名は"鋼翼一打(はがねのつばさ)"、硬い翼を相手に叩きつけて攻撃する"はがね"タイプの"わざ"である。

 そしてこの"鋼翼一打(はがねのつばさ)"、発動の際に纏う"はがね"の属性(タイプ)エネルギーにより、瞬間的ながら()()()()()()()()()を得るという特性がある。

 そんなものに思いきりキバを打ち付けたのだ。ただでさえ脆いキバが、鋼鉄に打ち付けられて無事で済む筈がなく。衝撃に耐えきれず、半ばからへし折れた。

 それだけではない。突如としてゴルバットの羽ばたきが止まった。どうやら衝撃で脳震盪を起こしたらしい。まさに千載一遇のチャンスであった。

 重力に引かれ、地上へと落下しようとするゴルバットから瞬時に離れたオオスバメ。彼はそのまま翼を折りたたんで急加速、自身の身も顧みぬ全力の突撃を敢行する。

 

――"勇気の飛翔(ブレイブバード)"

 

 果たして自傷覚悟で繰り出された"勇気の飛翔(ブレイブバード)"は見事ゴルバットを捉え、勢いのまま床に巨大なヒビを入れながら激突する。重力による加速も相まって、恐ろしい速度で叩きつけられゴルバット。当然の如く耐えられる筈もなく完全に意識を喪失した(ひんし状態となった)

 一方のオオスバメは自傷ダメージを負いつつも健在。翼を力強く羽ばたかせて飛翔し、勝者は己であると言わんばかりに鋭い鳴き声を上げる。

 

――ああ、(キノココ)よ見ているか? 己は一足先に高みへと至った(進化を果たした)ぞ! これで胸張ってお前に言える、己こそ誇り高き(ハルカ)が"一番矢"なり! と。

 

 ハルカvsアクア団二番勝負。

 一番、勝者――オオスバメ。

 

 

―――

 

 

――そうか、アレが勝ったか。

 

 姿を変えた朋友が勝利の雄たけびを上げる様を横目にワカシャモは思う。

 

――ならば、私も負けられんな。

 

 瞬間、襲い掛かる顎の一撃。ワカシャモの注意が削がれたと見て繰り出されたソレを彼は華麗な足さばきで回避する。そのまま流れるような動きでの蹴撃、攻撃した相手(グラエナ)に反撃をお見舞いする。

 蹴爪が胴体に食い込みその体を跳ね飛ばすものの、グラエナは空中にてひらりと宙返り、軽やかに着地すると再び戦闘の構えを取る。どうやらダメージを最小限に抑えたようで、その動きに一切乱れは無かった。

 

 先ほどからこれだ。

 ワカシャモは攻撃のたびに着実にグラエナへ反撃を叩き込んでいた。にもかかわらず、どうにも手応えが薄いのだ。それはグラエナがワカシャモからの攻撃に的確に対処し、ダメージを最小限に抑えていることもあるが、同時にワカシャモ自身、自らの攻撃が普段より弱くなっていると感じていた。

 "いつもより己の攻撃が弱い"、ワカシャモはその要因に心当たりがあった。それはバトル開始直後、グラエナより放たれた"いかく"の咆哮。体を芯から震わせるソレにワカシャモは僅かなりとも恐怖を抱いてしまった。無論、それ以降は持ち前の冷静さでもって心を鎮め、平静となってグラエナと対峙したのだが……。どうやら先に抱いた恐怖が肉体にこびり付き、攻撃の直前僅かに体を竦ませることでその威力を落としていたらしい。

 

 ならば行うべきは恐怖を払拭すること。"いかく"がポケモンの本能に訴えかけるならば、己も本能を鼓舞し対抗するのだ。

 

 構えを変える。

 手爪を眼前に交差させ、蹴爪を床に食い込ませ、腰を深く落とし力を溜める。表面上の動きは静か……されど内には生体エネルギーが激しく循環し、漏れ出た闘気が鶏冠を揺らしていた。

 構えを変え、体から闘気を立ち昇らせるワカシャモに、グラエナはこのまま座して見ていたのではマズいと判断したのか、それとも何かしら行動を起こされる前に決着をつけようとしたのか……ともかくとして彼はワカシャモへと攻撃を仕掛ける。

 牙を輝かせ疾駆するグラエナ、その牙が不動のワカシャモを捕える……瞬間、

 

――喔ッ!!

 

 咆号。

 大気を震わせる怒声、それは敵を威し自らを鼓舞する「鬨の声(ウォークライ)」。発せられる大音量を正面から浴び、グラエナは思わずしてたたらを踏んでしまった。

 怯んだグラエナをそのままにワカシャモはその身を躍動させ、炎の如く舞い踊る。

 

――"剣乱舞踏(つるぎのまい)"

 

 手爪を振りかざし、蹴爪を振り上げ、闘志を高める――戦いの舞踏。

 仕舞まで終えたワカシャモの、その様正しく気炎万丈。"いかく"の効果を振り払い、目の前の敵を討ち果たさんと気勢を上げる。

 

 蹴爪を高々と振り上げ、震脚。

 叩きつけた衝撃で蹴爪を床面に食い込ませ、回転。振り下ろした勢いを前方への推進力へと変える。

 繰り出されるは豪脚の一撃。遠心力を載せた恐ろしい威力の蹴りが、怯んだグラエナの無防備な胴体へと叩き込まれた。

 

――ズドン!!

 

 身体の真芯、生体エネルギーの集まる「当て所(きゅうしょ)」を捉えた一撃は、グラエナの体力(HP)を一瞬で削り取り……果たして吹き飛ばされたグラエナが再び立ち上がることはなかった。

 

 ハルカvsアクア団二番勝負。

 二番、勝者――ワカシャモ。

 

 

―――

 

 

「ゴルバット!?」

「グラエナ!?」

 

 ひんし状態となった自分たちのポケモンを見て悲鳴を上げるしたっぱたち。倒れた手持ちを大慌てでボールに回収しつつ、目の前の少女が想像以上の強敵であったことに慄く。

 

「嘘だろ……年末恒例団員対抗勝ち抜きトーナメント27位だった俺が負けた!?」

「おい待て! お前さっき女子団員に「俺結構やるんだぜ」って散々言っといて27位かよ!? そんなに強くもねえじゃねーか!」

「うるせえ! 48位のお前に言われたかねえわ! それにあの子俺のこと「わーすごいですねー」って褒めてくれたんだぞ!」

「あの子の順位16位だぞ!」

「マジかよ赤っ恥じゃねえか!」

 

 仲間割れでもしたのか、したっぱたちはお互いギャーギャーと喚き散らす。が、ハルカの手持ちたち(ワカシャモとオオスバメ)が爪を光らせながらにじり寄るとそれも止んだ。

 

「うおっ! ……ど、どうすんだよおい! このままパーツを奪えねえとヤべえぞ!?」

「知るか! クソっ! 丸腰のおっさんからパーツ一つ奪うだけの筈が、まさかこんなガキに邪魔されるなんて!」

「……うわっ! しかも作戦開始から時間が経ち過ぎちまってる! このままじゃリーダーにどやされるぞ!」

「おい、マジかよ! 畜生「ぐりぐり」だけはゴメンだああ~~!」

 

 任務の失敗を悟ったのか、何やら焦り始めた様子のしたっぱ。

 

「あなたたち! 何を言ってるのか分からないけど、抵抗はやめて大人しく――!」

 

 ハルカはそんなしたっぱたちに無駄な抵抗をやめて大人しくお縄につくよう呼び掛け――

 

 

 

「おい」

 

 

 

 声が聞こえた。低い、男の声が。

 

「――ッ!?」

「「ヒエッ……!」」

 

 その声を耳にした瞬間、弾かれたように顔を上げるハルカ。横でしたっぱたちが何やら悲鳴を上げていたようであったが、既に彼女にそんなものを気にしている余裕はなかった。それは彼女の手持ちたちも同様に、各々が最大級の警戒をしつつ声が聞こえてきた方向を注視する。

 

「テメエら……パーツ一つ奪うのにいつまで時間かかってんだ?」

 

 電気の落ちた薄暗い館内、したっぱたちが空けた天井の穴から新たに人影が降りてくる。薄暗い中で顔はよく見えないが、先ほど聞こえて来た声と体格から恐らく男性だろう。

 

「リ、リリリリリリーダー!?」

「こ、これには深い理由(ワケ)がありやして……!」

 

 ――その言葉を聞いた瞬間、ハルカは一瞬耳を疑った。

 

(――「リーダー」!? うそ……まさか!!)

 

 そう、したっぱたちの発した「リーダー」という言葉。これが正しいとするならば即ち――目の前の人影がアクア団を率いる首領に他ならないのだから。

 

 人影が、ハルカたちに向かって一歩踏み出す。非常灯の輝きに照らされ露わになったその姿は……正しく海賊の頭目といった出で立ちの男。

 日に焼けた褐色の肌に、鍛え抜かれた鋼のような体。頭には団の象徴(シンボル)が刻まれた青いバンダナを身に着け、蒼いボディスーツにも似た衣装に身を包む。伸ばされた髭は相手を威圧するかのように厳つく、彫の深い顔立ちがまるで傷のように目の周りに影を作りだしていた。一際目を惹くのは首から下げられたアクセサリーだろう。錨を模して造られたソレには丁度アンカーリングに当たる部分に、揺らめく炎のような紋様を持つ虹色の宝石らしきものが嵌め込まれていた。

 頭目らしく威風堂々とした足取りでこちらに歩み寄ってくる(アクア団リーダー)。彼は先のバトルで荒れた館内を一目みて、呆れたように声を出す。

 

理由(ワケ)……理由(ワケ)ねえ。……ま、大方、そこなガキンチョにバトルでこっぴどく負けた……ってところか」

 

 どうやら彼にはしたっぱたちの言い訳などお見通しだったらしい。縮こまるしたっぱたちから視線を外し、代わりにハルカの方へやる。

 

(――ッ!)

 

 (アクア団リーダー)の、まるで突き刺さるような強烈な視線。襲い掛かる圧倒的な重圧感(プレッシャー)を前にして、しかしハルカは屈することなく。むしろ、負けるものかと言わんばかりに睨み返す。

 まるで火花が散るかのような両者の睨み合い。(アクア団リーダー)は自身と対峙して一歩も引かない少女(ハルカ)の胆力に思わず「……ほう!」と感嘆する。

 

(中々イイ目をしていやがる。ただのオコサマトレーナーじゃねえって訳か)

 

 年の頃は十を過ぎたくらいか。その年で厳つい大人と張り合おうとするとは中々どうして胆が据わっている。見れば手持ちたちも相当に鍛えられているようだ。どうやら若いながらもその実力は一端のものらしい。

 

「――なるほどな、見れば分かるぜ。テメエの手持ち……相当鍛えられている。コイツら(したっぱ)がボロ負けしたってのも納得だ」

 

 「こりゃしたっぱ共、教育のしなおしだな」と思いつつ、(アクア団リーダー)は自らの部下たちを打倒した少女(ハルカ)へ混じり気なしに称賛を送る。

 

「俺の名はアオギリ。そこの野郎ども(アクア団)チームで頭張ってるモン(リーダー)だ。……その年でそんだけ手持ちを鍛えられる奴なんてそうはいねえ。誇っていいぜ、ガキンチョ。俺から見てもテメエは間違いなく実力者だ」

 

 敵からの突然の称賛にやや困惑するハルカ。だが、送られる称賛に悪意は微塵も感じない。アクア団リーダー(アオギリ)は純粋にハルカの実力を認めていているようだった。しかし、

 

「けどな」

 

 と、彼は言葉を続ける。

 

「――俺の方が(つえ)え」

 

 瞬間、膨れ上がる重圧感(プレッシャー)。ビリビリと肌で感じとったソレにハルカは思わず息を呑む。

 

「なあ、ガキンチョ。テメエなら分かるだろ? 俺とテメエの実力差って奴がよ」

 

 アオギリの言葉に無言を貫きつつも、ハルカは内心では認めざるを得なかった。間違いなく目の前の男(アオギリ)の実力は今の自分を上回っている。もしバトルを仕掛けられたら十中八九敗北するだろう。トレーナーとしての経験は浅くとも、彼女の類いまれな戦闘感覚(バトルセンス)がそれを事実だと告げていた。

 

「だからよう、そこを退け。俺の目的はそこのおっさんが持ってるパーツだ。それさえいただけりゃあ、手荒な真似はしねえ」

 

 だとしても……

 

「チャモちゃん! スバちゃん!」

 

 鋭い声で手持ちを呼び戻し、自らの前で臨戦態勢を取らせる……さながら背後のクスノキ(パーツ)を守るかのように。彼女が取った行動、それが意図することは明白だった。

 

「――確かに」

 

 相対する大敵(アオギリ)を見据え、ハルカは静かに言葉を紡ぐ。

 

「確かに、バトルの実力はアナタの方が強い。戦ったら多分……ううん、確実にあたしたちが負ける」

 

 目の前の敵が己よりも強い……そんなことは重々承知。

 

「でも……それが戦わない理由にはならない」

 

 逆境上等。追い詰められたその時こそ、英雄(しゅじんこう)の輝きは最も強くなる。

 

「あたしはハギさんに()()を頼まれた。だったら、あたしの役割はハギさんが来るまでここでパーツを守ること……それに」

 

 声に力を、瞳には闘志を。炎の如く煌めく精神は悪党などに屈したりはしない。

 

あなた達(アクア団)みたいな人の言うことなんて……絶対に! 聞かないんだからッ!!」

 

 最後はまるで叫ぶかのように、ハルカはアクア団リーダー(アオギリ)へ「否」を突き付けた。

 

 

「……吠えたな、ガキンチョ」

 

 少女が突き付けた「否」の回答。叩きつけられる猛々しき闘志。

 

「――だが、その意気やよし」

 

 それは正しく己に対する挑戦(バトル)の意思に他ならない。

 

「いいぜ、ガキンチョ。気に入った、()ろうや……ポケモンバトル」

 

 目と目が合ったらポケモンバトル。それこそがトレーナーの倣い。

 

「一匹だ。俺は一匹でテメエを倒す。もしテメエがコイツを倒せたんならその時は……この場から引いてやるよ」

 

 腰元よりボールを取り、構える。

 

「もっとも――出来るモンならなァ!!」

 

 両者、己が信ずる手持ち(武器)繰り出した(開帳した)ならば、

 

「行くぜッ!! ベトベトン!!」

 

 いざ尋常に、勝負(バトル)――開始(スタート)

 

 

―――

 

 

 アオギリの放ったボール。そこより光に包まれて飛び出したのは"ヘドロポケモン"ベトベトン。ヘドロで出来た流体の体を蠢かせ、()()()()()()()腕を振り上げて戦闘態勢を取る。

 

(ベトベトン!? でも、姿が……?)

 

 ベトベトンというポケモンは毒タイプの代表とも言えるポケモンだ。ホウエンのみならず、カントー、シンオウ、イッシュと比較的多くの地方に生息が確認されており、彼女もその姿を見知っていた。

 だが目の前のポケモンはシルエットこそ似通っているものの、彼女の知るベトベトンとは大幅に異なった姿をしている。

 油膜めいた七色のサイケデリックな体色に、白い結晶を体から生やすその姿。口や手から結晶が伸びる様はまるで牙や爪のようにも見えた。だが、何よりも違和感があるのはその()()()

 通常、ベトベトンというポケモンは常に強烈な悪臭を放っている。人に懐いた個体であれば多少は緩和されるらしいものの、それでも完全には無くなることはない。だが現在、彼女はベトベトンの目の前に居るにも関わらずそうした悪臭の類いが一切()()。それは毒素をまき散らすベトベトンの生態から考えれば明らかに異常。目の前の()()は彼女の常識からかけ離れたあまりにも異質なベトベトンであった。

 

「驚いてる顔だな。まあ、仕方がねえ。ホウエン(こっち)じゃコイツはあまり知られてねえからよ」

 

 見知ったポケモンの見知らぬ姿に驚愕の表情を浮かべるハルカ。ハンディのつもりか、はたまた手持ちに対する自信か、そんな彼女へアオギリは己が手持ち(ベトベトン)の正体を明かす。

 

「――『リージョンフォーム(地域変種)』つってな。"原種"とは異なる環境に適応し、その形質を変化させた言わば"亜種"って奴よ」

 

 『リージョンフォーム(地域変種)』。それは特定地域で確認される、従来知られていたポケモンと同種とされながらも見た目・形質などを異にする個体群の名称。一般によく知られた形質のポケモンーー"原種"――とは異なる環境・風土に適応し、その形質も大幅に異なっている場合が多い。

 例えばニャースなどが良く知られた例であろうか。一般的によく知られた"原種"のニャースは"ノーマル"タイプであるが、アローラで確認される個体は"あく"、ガラルで確認される個体は"はがね"のタイプをそれぞれ有しており、姿形や生態も原種とは異なるものとなっている。

 そして『リージョンフォーム(地域変種)』の個体は原種との区別のため、発見された地方名を冠して"○○の姿"と呼称されるのが通例。ならばアクア団リーダーのベトベトンは、

 

コイツ(ベトベトン)はアローラ地方で生息が確認された個体。言うなれば……"アローラの姿"ってところか」

 

 ベトベトン・"アローラの姿"。かつて深刻なゴミ問題に直面したアローラ地方に導入され、僅か数十年の内にその形質を変化させたポケモンだ。現在でもアローラ地方で発生する大量のゴミを食べることで処理し、自然環境と消費文明の共存を成立させる立役者である。

 だがしかし、彼らの主食であるゴミは原種の主な食糧であった工業廃液と比べて含まれる毒素が少ない。故に彼らは貴重な毒素(エネルギー源)を体外に放出しないよう新たな能力を獲得した。

 

「"アローラの姿"のベトベトンは毒素を体内に溜め込み、凝縮する性質を持っている。ほれ、その証拠にコイツは全然臭わねえだろ?」

 

 それこそが毒素の凝縮。体外へと毒素を漏らさぬよう凝縮し、体内で化学反応を起こすことでエネルギーとする能力。

 

「コイツの体から生える結晶はそうやって凝縮された毒素が結晶化したモンだ。人間じゃあかすっただけでも致命傷、ポケモンでもただじゃ済まねえ。精々、頑張って避けるこったな――行け」

 

 アオギリからの命を受け、ベトベトンが動き出す。

 ゴボゴボと流体の体を蠢かせるベトベトン。次の瞬間、彼の体からハルカ目掛け無数のヘドロ塊が射出される。

 

――吐泥爆弾(ヘドロばくだん)

 

 飛来する毒の塊、内包された毒素からハルカに直撃すれば命に関わるだろう。だが、己が(トレーナー)の危機を手持ちたちが見逃す筈もない。

 まず動き出したのはオオスバメ。彼は大きな翼を力強く羽ばたかせ、突風を起こしてヘドロ塊を押し返さんとする。次に動いたのはワカシャモ。彼は大きく口を開き、燃え盛る火を吐き出した。吐き出された火はオオスバメの突風に煽がれて見る見る内に大きくなり、やがて視界一面を覆う炎の壁となる。そうして突風で勢いを殺された吐泥爆弾(ヘドロばくだん)は次々と炎の壁に取り込まれ、水分を失い灰となって燃え落ちた。

 連携によりベトベトンの攻撃を凌いだ二匹。しかし攻撃はこれで終わりではない。いや、むしろここからが本番。ベトベトンというポケモンの能力値(ステータス)傾向は「こうげき」に優れた物理アタッカーだ。即ち彼の本領とは近接戦闘においてこそ。先の吐泥爆弾(ヘドロばくだん)など牽制に過ぎない。

 炎の壁に影が映る。二匹がそれを認識した瞬間、壁から伸びるサイケデリックな腕。ベトベトンが炎の壁を正面から突破してきたのだ。高い練度(レベル)と「とくぼう」にまかせた真正面からの接近、二匹は完全に不意を突かれた形となった。

 突然、目の前に現れたベトベトンに慌てて距離を取ろうとする二匹。しかし滞空していたオオスバメはともかく、正面で火を吹いていたワカシャモに咄嗟の行動は不可能であった。

 太いヘドロの触腕が逃げ遅れたワカシャモを捕える。ベトベトンはそのまま流体の体で以ってワカシャモの全身を包み込み、ギチリギチリと締め上げた。万力のような力で締め付けられ、ワカシャモは思わず苦痛の声を漏らす。さらに追撃と言わんばかりに、結晶牙でもってワカシャモを噛み砕かんと大口を空けるベトベトン。

 

「――チャモちゃん!? スバちゃん! チャモちゃんを!」

 

 苦しむワカシャモの姿に、すぐさまオオスバメへ救出を指示するハルカ。その指示が届くや否やオオスバメは翼を一打ち、朋友を救わんがため飛翔する。"ひこう"タイプの圧倒的加速力で接近したオオスバメは速度を維持したままベトベトンへと突撃、横っ面を思いきり叩きつけその体を弾き飛ばした。

 弾き飛ばされた衝撃でベトベトンの拘束が一瞬緩む。その隙を見逃さず、オオスバメはすぐさまワカシャモの体を掴んでその場から離脱しようとした。だが、その時すでにオオスバメへ()()()()()()が迫っていた。

 

――紫毒貫手(どくづき)

 

 瞬間、"どく"エネルギーを纏った「突き」がオオスバメに突き刺さる。高い「こうげき」の能力値(ステータス)から放たれるタイプ一致の物理技。先のゴルバットとの戦いでダメージを負っていたオオスバメに耐えられる筈がなく、彼を瞬きの内に"ひんし"へと至らしめた。

 

「スバちゃん!?」

 

 意識を失い地に伏せるオオスバメ。そして救出に失敗したことにより、ワカシャモもまた同じ運命を辿る。

 ベトベトンが腕を振り下ろし、叩きつけるようにしてワカシャモを解放する。解放され力無く床に転がるワカシャモ。彼は全身を毒に侵され動けないでいた。そんな彼にも容赦なくベトベトンはトドメの一撃を繰り出す。

 

――衝毒液(ベノムショック)

 

 ワカシャモに浴びせられる特殊な毒液。高密度の"どく"エネルギーが込められたそれは彼の体内の毒素と反応し、爆発的な勢いでその体を侵し尽くす。果たして数瞬も経たぬ内にワカシャモはその意識を闇に閉ざした。

 

「チャモちゃん!?」

 

 戦闘不能(ひんし状態)となった二匹をボールに戻しながら、ハルカは内心歯噛みする。主力である二匹が倒された。残っている手持ちは加わってから日が浅く、練度も及ばない新入りだけ。戦局は圧倒的に不利であった。

 

(それでも……!)

 

 勝算は微かだが、ある。彼が偶然にも覚えていた()()()を成功させられれば……!

 

「おいおいどうした? 出さねえのかよ、三匹目。テメエの手持ちが三匹いるってことはウシオの報告で知ってんだ。……ま、出さねえってんなら仕方ねえ。こっちは予定通り、とっととブツを回収させてもらうぜ」

 

 アオギリが合図を送れば、ベトベトンはハルカの背後――縮こまるクスノキ目掛けて勢いよく腕を伸ばす。

 迫る猛毒の触腕。しかしそれはクスノキに到達することなく、直前でなにかに阻まれた。

 

「ほう」

 

 ベトベトンの腕を防いだもの……それは突如として現れた岩の壁。まるでクスノキを取り囲むかのように岩塊が飛来し、ベトベトンの触腕を阻んだのだ。

 そして岩塊が飛来したのはクスノキの周りだけではなかった。ベトベトンの頭上にもまた現れる巨大な岩塊。鈍重なベトベトンは高速で飛来したそれを避けられず、成す術もなく押し潰された。

 

「なるほど、"がんせきふうじ"か」

 

 クスノキの周りに作り出された岩の壁。アオギリは瞬時に、これが"がんせきふうじ"を応用したものであることに気が付いた。"がんせきふうじ"は相手の進路を岩で塞ぎ、その速度(すばやさ)を落とさせる効果を持つ。その効果を応用し、クスノキの進路全てを塞ぐことで彼を守る即席の壁としたのだ。

 勿論、何もないところから突如として岩塊が出現することなどありえない。必ず"わざ"を使用した何者かがいる。そしてその"何者か"はすぐに見つかった。

 岩壁のすぐ手前、伸びていた触腕を弾き飛ばしながらこちらを睨みつける一匹のポケモン。小柄ながらも鋼の鎧に身を包み、四本の足で地を踏みしめる堅忍不抜(けんにんふばつ)のヨロイ武者。

 "てつヨロイ"ポケモン・ココドラ。ハルカの軍勢(パーティ)へ加わった新たな戦士(手持ち)である。

 

「ドラちゃん!」

 

 (あるじ)の指示に応え、ココドラが走り出す。進む先は()()()()()()()ベトベトンの元。

 そう、彼女らは確信していた。あの程度の攻撃であのベトベトンが倒される筈がない。敵は未だ健在である、と。

 

「ハッハア!! 来たかよ三匹目え!! オラ、ベトベトン! いつまで寝てやがる! まだ勝負(バトル)は終わっちゃいねえぞ!」

 

 果たして彼女らの確信は正しかった。大岩の下、極彩色の流体が蠢き自らを押しつぶす岩塊を持ち上げる。現れたベトベトンは未だ健在。流動の体が衝撃を殺し"がんせきふうじ"をほとんど無効化していた。

 だが、そんなことはハルカたちも承知済。元よりこの程度の攻撃で倒せるなどとは思っていない。"がんせきふうじ"はあくまで伸びる触腕を防ぎ、ココドラが接近する時間を稼ぐためのもの。つまりここからが本番だ。

 ベトベトンが持ち上げた大岩を接近するココドラ目掛けて"なげつける"。飛来する岩塊に対し、しかしココドラは避けるそぶりを見せず、逆に頭から勢いよく突っ込んでいく。迫り来る岩とココドラが正面から激突し――岩塊が砕け散った。

 考えても見れば当然のこと。固いもの同士が勢いよくぶつかればより固いものの方が勝つ。そして"はがね"は"いわ"よりも硬い、これはこの世界における不変の真理(タイプ相性)だ。即ち"はがね"タイプのココドラが"いわ"の塊を砕いたのは必然の結果。彼の身を包む黒鉄の鎧、砕けるものなどそうはいない。

 

――次はこっちの手番(ターン)だ!

 

 ベトベトンの攻撃を凌いだならば次はココドラの手番(ターン)である。彼は後肢を踏ん張り、前肢を思いきり床に叩きつける。インパクトの瞬間、彼の前肢から放たれる"じめん"エネルギー。それはエネルギーを纏う振動波となって床を伝い、ベトベトンへと到達する。

 

――地鳴(じならし)

 

 込められた"じめん"エネルギー(効果はバツグンの一撃)がベトベトンの体力(HP)を削り、揺さぶられた衝撃で体勢が崩れる。……が、攻勢はそこまでであった。

 なるほど、確かに弱点タイプによる一撃はベトベトンに少なくないダメージを与えることに成功した。体勢を崩されたベトベトンは――元々素早い訳でもないが――以前ほど機敏には動けないだろう。だが、それだけだ。所詮は格下の属性(タイプ)不一致"わざ"。ココドラとベトベトン、両者の練度(レベル)差を考えればいかに弱点タイプの"わざ"といえどひんしに至らしめるには力不足であった。

 

 そして――手番(ターン)が移った。

 

 "わざ"を繰り出し硬直したココドラへ、勢いよくベトベトンの腕が伸びる。拳に纏うのは混じり気無しの"かくとう"エネルギー。直撃すればココドラを確実に"ひんし"へと至らしめる破壊力を持った一撃が彼に迫る。

 ……残念ながら攻撃を繰り出した直後のココドラに、この一撃を避けることは叶わず。

 

――奮闘拳(グロウパンチ)

 

 彼の体に"かくとう"の一撃(四倍弱点)が叩き込まれた。

 

 

―――

 

 

「ハッ! 残念だったなガキンチョ。この勝負(バトル)――俺の勝ちだ!」

 

 ベトベトンの奮闘拳(グロウパンチ)がココドラに直撃(ダイレクトヒット)するのを見て、アオギリは己の勝利を確信した。

 なるほど確かにハルカのポケモンたちはよく鍛えられているだけあって、格上(ベトベトン)相手に一歩も退かず立ち回ってみせた。どうやら彼女を一端の実力者と見たアオギリの眼は確かだったらしい。

 だが、残念ながら所詮は一端止まり。将来ならまだしも、現在の未熟(低レベル)な手持ちたちでは遥か格上のアオギリには敵わない。故にこの結果は順当なもの。強者が弱者を実力差で下した、ただそれだけの話。

 

「見る限り幾つかジムを突破して自信があったみてえだが……所詮はまだまだ青臭えオコサマトレーナー。大人相手にゃ通用しねえってこった。ま、俺のベトベトンをそれなりに手こずらせたんだ。そこだけは褒めてや……?」

 

 なのになぜ、

 

「おい、ガキンチョ」

 

 彼女は、

 

「テメエ、()()()()()()()()?」

 

 笑っているのだろう。

 

 奮闘拳(グロウパンチ)がココドラに叩き込まれた時点でハルカは敗北した筈。しかし、彼女の顔に浮かんでいるのは諦念でも、絶望でもない――己の勝利を確信したかのような自信に満ちた笑み。

 

「何を勘違いしているの?」

 

 猛る闘志でギラギラと瞳を輝かせ、彼女は目の前の対戦相手(アオギリ)に告げる。

 

「まだ、勝負は――決着()いてないから」

 

 その言葉にアオギリは慌ててバトルフィールドに視線を戻す。

 そこにあったのは()()()()()()()()ベトベトンとココドラの姿。

 

(何だってんだ、確かにアイツ(ベトベトン)はココドラを"ひんし"に――!?)

 

 そう、確かにベトベトンの一撃はココドラを戦闘不能("ひんし"状態)に至らしめた筈。なのになぜ、()()()()()()()()()()()()()

 刹那、アオギリのトレーナーとしての経験がその答えを導き出した。

 

「"がんじょう"か……!」

 

 特性・"がんじょう"。"ひんし"に至る攻撃であろうとも、ギリギリで持ち堪えることができるココドラの特性だ。

 

「……だったらもう一発叩き込めば!」

 

 だが持ち堪えられたのは本当にギリギリ、もう一発でも喰らえばあっという間に戦闘不能("ひんし"状態)だ。故に、動けるのはほんの一手分。

 

 そう――それだけあれば十分だ。

 

「ドラちゃん!」

 

 アオギリが追撃を指示するより早く、ハルカの指示が飛ぶ。

 同時にココドラの周囲に浮かぶ、()()()()()()()()()()

 

――"鋼片(メタル)"

 

 これなるは(ココドラ)の切り札。本来であれば練度(レベル)が足りず、使えない筈の()()

 

――"炸裂(バースト)"!!!!

 

 "鋼片炸裂(メタルバースト)"である。

 ベトベトンから受けた一撃……そのエネルギーを吸収/増幅/反射して、炸裂した鋼片がベトベトンの体に突き刺さる。未だ扱える練度(レベル)に達していない関係上、発動した"わざ"は不完全なものであったが……それでもベトベトンを屠るには十分であった。

 果たして、己が叩き込んだダメージをそのまま打ち返されたベトベトン。そのまま地面へと倒れ伏し――起き上がることは無かった。

 

「この勝負(バトル)……あたしたちの、勝ちよ!」

「――――」

 

 己が信頼する手持ち(ベトベトン)が倒れ伏す様を見ながら、アオギリは絶句する。

 ありえない。手持ちの練度(レベル)差は圧倒的であった筈。それに相性が極端に悪かった訳でもない。自分が負ける要素など何処にもなかった。

 

「…………フハ」

 

 ありえない、ありえない、ありえない。

 

「ハハ……ハハハハハ……!」

 

 ありえない――故に、

 

「ダッハッハッハッハッハッハッハッハッハ――――!!」

 

 面白い。

 

 狂笑、哄笑、呵呵大笑。湧き上がる感情のまま、アオギリは腹の底から笑い声を上げる。突然笑いだしたアオギリに、ハルカはギョッとした視線を向けるが当の本人はどこ吹く風。

 

 面白い、面白い、これほど愉快痛快な出来事など久方ぶりだ。

 

 彼の心に渦巻くのは、強者と対峙した興奮と仲間が敗北した悔しさと……ほんの()()()()()()()

 目の前の少女(えいゆう)己という大敵(アクア団リーダー)に、力と技と根性で競り勝ってみせたのだ。ああ、その姿はまるで()に挑んだ嘗ての己のようで――。

 

「――気に入ったぜ、ガキンチョ。テメエの名はなんだ?」

 

 ならば、その名を聞かねばならない。大敵(おのれ)を打ち破ってみせた、若き強者の名を――!

 

「……ハルカ」

 

 そう問われたハルカは意外なほどアッサリと己が名を明かす。テロリストの親玉に自分の名を教えるなど、どうかしているとしか思えなかったが、なぜだろうか……目の前のこの男に対しては名乗ってもよいように感じた。

 それは実力者に対する純粋な敬意か、それとも一人のポケモントレーナーとしてのシンパシーか。ハルカは、少なくとも目の前の男(アオギリ)がポケモンに対して真摯に向き合っている、と――それだけは確信が持てた。

 

「……『ハルカ』、か。確かに覚えたぜ……テメエの名前」

 

 強敵(ハルカ)の名をしっかと心に刻み、アオギリは宣言する。

 

「次の勝負(バトル)の時、俺はテメエを全力でぶっ潰す。それまでにテメエは精々強くなっておけ――少なくとも俺と勝負できるくらいにはな」

 

 それはアオギリからの宣戦布告であり、同時に彼なりの激励。

 

「――当然」

 

 そんな彼からの言葉に、ハルカは拳を突き出すことで応える。

 

「次も勝つのは――あたしたちだから!」

 

 絶対に負けない、勝つのは自分たちの方だ。

 そう宣言する彼女の瞳には、ギラギラと輝く闘志が宿っていた。

 

 

―――

 

 

「ま、今回の勝負(バトル)はテメエの勝ちだ。約束通りここは退いてやるよ。……それに、今回はどっちにしろ時間切れみてえだしな」

 

 "ひんし"状態のベトベトンをボールに戻し、階下へ続く階段を見ながらそう呟くアオギリ。つられてハルカも同様に視線を階段へと移す。

 視線の先には隔壁で封鎖された階段。次の瞬間、轟音と共に隔壁がはじけ飛んだ。

 

「スマンのハルカちゃん。待たせた」

 

 吹き飛んだ扉の向こう、のっそりと現れるルンパッパ。体中傷だらけの状態ながらその威容は未だ健在。

 彼の隣に立つのはハギ老人、百戦錬磨の眼光で以ってアクア団リーダー(アオギリ)を見据える。

 

「ようこそ元・四天王、『海嘯』のハギ。その分だとイズミはやられちまったか」

「『イズミ』……あのグラエナの嬢ちゃんか。おお、中々に引き際を心得ておったよ。三体ほど倒したところで逃げられてしもうたわい。ありゃいい腕しとるの」

「ハッ! あんた程の実力者に褒められるとはうれしいねえ。優秀な部下を持って俺も鼻が高いぜ」

「ほうほうそりゃ良かったの。――では、貴様自身の実力も試してやろうか?」

 

 ハギ老人から膨れ上がる闘気。手持ちたるルンパッパがゆらりと構えを取る。

 

「そりゃ光栄だ。だが、今回は遠慮しておこう。今日のところはこのまま引き上げるつもりなんでな」

 

 しかし対峙するアオギリはどこ吹く風。飄々とした様子で今回はこのまま撤退するという。

 

「――逃がすとでも?」

「おおう、怖え怖え。思わず(ブル)っちまいそうだ……だがよ、アンタもそう余裕はねえ筈だぜ」

 

 逃がすまいと一歩踏み出したハギ老人に、アオギリは指摘する。

 

「見たところテメエの手持ち、イズミに随分と削られたんだろ。んで、そんな姿にも関わらず頑なに別の手持ちと交換しようとしねえ。じゃあ、考えられるのはテメエの持ってる手持ちがソイツら(ルンパッパとキャモメ)しかいねえってことだ」

 

 さらにアオギリは、テメエが俺たち相手にブラフなんぞやる意味ねえしな、と付け加える。

 

「そこのガキンチョに一匹やられちまったが、俺の手持ちはまだまだ残ってる。さて、テメエの手負いの手持ちで残った俺のポケモンを全て倒せるのかねえ?」

「………………」

 

 アオギリの言葉に無言を貫くハギ老人。

 残念ながら彼の指摘は当たっていた。臨戦態勢こそ取らせてはいるもののハギ老人の手持ちは手負いの状態。戦闘(バトル)自体は可能であるが、恐らく相当な実力者であろう目の前の男の手持ちを、全て倒せるかと問われれば難しいと言わざるを得なかった。

 

「こっちはガキンチョの顔を立ててこのまま引き下がるってんだ。ここはお互い矛おさめようや」

「…………フンッ」

 

 今回はここで引き下がるから余計なことをせず見逃せ、そう語るアオギリに対しハギ老人はしぶしぶといった具合に鼻を鳴らす。

 

「――いいじゃろう。仏の顔も三度という、先のカナシダトンネルの一件も含め今回までは見逃してやる」

 

 手持ちのコンディション。守らねばならぬ者(ハルカやクスノキ)たち。目の前の男の凡その実力。それら諸要素を全て勘定して、ハギ老人は彼らを見逃すことを決断した。

 

「しかし」

 

 と、彼は続けて、

 

()()()()()()。――次に儂の前に姿を見せたが最後、儂は持てる全力で以って貴様らを叩き潰す」

 

 ――故、覚悟しておけ

 

 そう、言い放った。

 

「――――ああ、胆に銘じとくよ」

 

 そう答えるアオギリの顔に浮かんでいたのは、どこまでも不敵な笑みであった。

 

「うし。テメエら、帰るぞ」

「「へ、へい!」」

 

 したっぱたちに撤退すると声を掛けると、アオギリはボールから新たにポケモンを繰り出した。

 ボールから飛び出たのは紫色の体色に、四枚の羽を備えたポケモン。"こうもり"ポケモン・クロバット。

 アオギリは己が傍らで滞空するクロバットへ"わざ"の指示を出す。

 

「クロバット、"くろいきり"だ」

 

 瞬間、クロバットの体から噴き出る真っ黒な霧。霧は見る見る内に館内へ広がり、アオギリたちの姿を覆い隠した。

 

「――ああ、そうだ。ガキンチョ、テメエにはコレを渡しとく」

 

 視界を覆う霧の中、ふと気が付いたようにアオギリから何かがハルカへ投げ渡される。

 警戒しつつもその飛んできた何かをキャッチしたハルカ。見ればそれは小さな巾着袋であった。はてこれは一体何なのかと疑問に思うハルカへ、アオギリから解説が飛んだ。

 

「そいつは『毒除丸(どくじょがん)』。どんな毒だろうがたちどころに下す秘伝の薬だ。俺のベトベトンの毒だって、それなら完全に治せる」

 

 投げ渡してきたのはどうやら解毒剤。ベトベトンの毒に侵された手持ちたちに使えとのことだった。

 なにやら怪しい気もするが、しかしアオギリが態々毒を盛るような理由もない。それに少なくとも彼はポケモンのことに対しては真摯だ。ならば信頼に足るだろう。

 そう判断したハルカは手渡された『毒除丸(どくじょがん)』をバッグに仕舞った。

 

 そうこうする内、徐々に霧が晴れて来る。

 やがて完全に視界が戻ったそこに、既にアオギリたちの姿は無かった。

 

 

―――

 

 

 アクア団の連中が立ち去ったのを確認した後、儂はクスノキ館長を造船所に送り届けたその足でポケモンセンターに向かった。手持ちの回復のためもあるが、先にセンターへ向かったハルカちゃんに話も聞きたかったからの。

 センターに辿りつき、負傷したルンパッパを預けた儂は、同じく治療が終わるのを待っていたハルカちゃんの元へと赴いた。そこで儂がいない間に二階で何が起こったのかを聞き出したのじゃ。

 彼女が言うには儂と分断された後、パーツを狙ったアクア団が侵入してきたらしい。やはり奴らの狙いは儂とパーツを引きはがすことじゃったか。儂を足止めして無防備になったところでパーツを奪うつもりであったが、しかしそうは問屋が卸さなかった。腕の立つトレーナーであるハルカちゃんが居ったからの。彼女は襲い来るアクア団を退け、見事に儂が来るまでパーツを守り抜いたのじゃ。

 とはいえ、まさかリーダーが直々に襲い掛かって来ていたとは思わなんだ。儂の足止めを行っていた嬢ちゃんが幹部級と考えれば、リーダーの実力はそれを上回っている筈。ハルカちゃんも良く勝てたものじゃのう。

 ハルカちゃん自身は「向こうがこちらを格下と侮っていたから勝てた」と謙遜するが、勝てたのは間違いなくハルカちゃんの実力もあってのことじゃ。並みのトレーナーでは――例えハンディがあろうとも――練度(レベル)で遥かに上回る相手に勝つことは出来まい。

 しかし、心配なこともある。今回の一件でこの子(ハルカちゃん)はアクア団に目を付けられた。少なくともこれ以降、連中が子供相手だからと侮ることはあるまい。必ず全力で以って排除してこようとする筈じゃ。

 

 ……正直、ハルカちゃんの身の安全だけを考れば即刻ジム巡りを中断させ、家に帰すのが無難じゃろう。ジム巡りは命に賭してまで行うようなものではない、アクア団の危険が去り安全になった後に行っても良い筈じゃ。儂もそう勧めたのじゃが……。

 

「ジム巡りを辞めるつもりはありません」

 

 そうキッパリと断られてしまった。ハルカちゃんは誰がなんと言おうとジム巡りを辞めるつもりはないらしい。一応、何故かと問うてみたら――

 

「約束したんです――友達と」

 

 聞けば彼女はジム巡りの果てに、友との再会を約束したという。だからジム巡りを辞めない、自分たちはこんなところで立ち止まる訳にはいかない、と。そう語る彼女の目には強い決意の色が見えた。

 こういった目をしとる者には何を言っても無駄じゃろうて。それなりの年月を生きとるが、こうした手合いが言葉なんぞで止まる訳がないことは良く知っておる。他ならぬ儂自身がその類いじゃからな。

 それに儂が何を言おうとも、ハルカちゃんは既にポケモンを手にした一人のトレーナー。こうしてポケモンを所持し共に旅をしている以上、その進退を決めるのはハルカちゃん自身じゃ。彼女がジム巡りの旅を続けることを選ぶというなら、それに儂が口を出す権利はあるまいよ。

 とはいえ、ハルカちゃんが旅を始めたばかりのトレーナーで、その実力はまだまだ本物の実力者には及ばないこともまた事実。旅を続ける以上、降りかかる火の粉は己自身の力で振り払わねばならん。故に彼女は今よりも更に強くなる必要がある。

 ハルカちゃんの才能を考えれば、恐らく放っておいてもいずれは実力をつける筈じゃ。しかし、ただ闇雲に修行するだけでは時間がかかる。ならば儂は先達として、彼女の()()()()()()をというものを見せてやるのが務めじゃろうて。

 そう思い立った儂はハルカちゃんに()()()()を提案したのじゃ。儂の提案を聞いたハルカちゃんは不思議そうな顔をしておったがこれを了承してくれた。

 これでよし。彼女ならばきっと()()から良き学びを得てくれるじゃろうて。

 

 

 しかし、ハルカちゃんから聞いたアクア団リーダーの名前……。確か「アオギリ」と言ったか。

 うーむその名前、何処かで聞いた覚えがあるような……?

 

 

―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アクア団アジト・アオギリの私室兼執務室。

 部屋の中、一人機嫌よく酒を呷るアオギリの耳に扉を叩く音が届く。

 

――コンコン

 

「おーう、誰だあ?」

 

――イズミです。アオギリ様、作戦結果の報告に参りました。

 

「何だ、イズミか。分かった、入れ入れ」

 

 訪ねてきたのが幹部のイズミであることを知ると、部屋に入るよう促すアオギリ。

 失礼します、の言葉と共に扉を開けイズミが部屋に入ってくる。小脇には報告書であろう紙束を抱えていた。

 

「――あら、一人でお楽しみになられていたようですね。出直しましょうか?」

「いや構わねえ、このまま聞こう。……お前も一杯どうだ?」

「……いえ、遠慮しておきますわ。一応職務中ですので」

「なあに、此処にはしたっぱ共はいねえんだ。構いやしねえよ。――それにその口調も、だ。んな畏まった口調なんて気色悪くてしかたねえ」

「………………………………ハア……そうさせて貰うよ」

 

 といって口調を幹部としての慇懃なものから、幼馴染としての砕けたものへと変えるイズミ。彼女はツカツカと歩み寄るとアオギリが差出したグラス……ではなく、その近くに置いてあった酒瓶の方を奪い取った。

 

「……ング……ング……」

「――ア゛ッ!? イズミテメエ、何しやがる!?」

 

 奪い取った酒瓶に口をつけ、中身をグビグビと飲み干していくイズミ。酒を奪われたアオギリが不満の声を上げるが、彼女が耳を貸すことはなく。

 

「プハァ! ……「何しやがる」だって? そりゃこっちの台詞だよ、このスットコドッコイ!!」

 

 飲み干した酒瓶をドンと置き、激しい剣幕でまくし立てる。

 

「アタシが必死こいて四天王(バケモン)の足止めしたってのに! アンタって奴は"一匹負けたら撤退する"なんて思いつきの口約束を律儀に守ったりしてさ! おかげでパーツは奪えず終い! 掛けた金も手間も全部パー! 文句の一つも言わなけりゃやってられないっての!!」

 

 人と手間と金を掛けて準備した作戦をその場の思いつきで不意にされ怒り心頭のイズミに、アオギリはバツが悪そうな顔で頬を掻く。

 

「あー……悪かったって……。俺も久々にイキのいいトレーナーと()ったんでな、ちと塩を送りたくなっちまって……。まあ、過ぎたことは仕方ねえ、計画についてはキッチリ帳尻を合わすからよ。今回のことは水に流してくれや」

 

 ()()()団だけに。

 

「下らないこと言ってんじゃないよ! 昔からアンタって奴はいつもそうだ! 大体――!」

 

 どうやら冗談は通じなかったようだ。この分だとお説教はしばらく続くだろう。

 アオギリが思いつきでやらかし、巻き込まれたイズミが終わった後にお説教。幼馴染である二人の「いつも」の光景。

 ガミガミと叱りつけるイズミを宥めながら、アオギリは早く彼女の気が静まってくれるよう祈るばかりであった。

 

 かれこれ数十分後。

 言いたいこと一通りぶちまけたのか、彼女のお説教も少しクールダウンしていた。

 

「――という訳だよ。分かったかい?」

「ああ、分かった分かった。今度から気を付ける。これでいいだろ?」

「ハア……アンタって奴は本当に……。まあ、いいさ。そんなところも含めてアンタはアタシらのリーダーなんだ。上司の無茶振りを認めてやるのも部下の度量さね」

「ありがとよ、イズミ。俺はお前のそういうところが好きだぜ」

「はいはい。……それで、次はどうするつもりだい?」

 

 取り敢えずは怒りの矛先を収めたイズミ。これからの動きをアオギリに問う。

 

「まず、機密パーツについては()()()の奴に任せる。元々パーツは潜水艇とセットでなけりゃあ意味がねえからな、パーツが取り付けられた後に潜水艇ごと頂いちまうのよ。そのための準備を奴には進めさせている、整い次第俺たちも動く予定だ」

「そう。それで、その間にアタシらはどうすんだい?」

 

 シズクが準備を進める間、アクア団本隊(自分たち)はどうするのか。

 そんなイズミからの問いにアオギリは待ってましたばかりに笑みを浮かべ、持っていた携帯端末を操作する。

 

「――()()()の奴からおもしれえ情報が入った」

()()()……? 確か、マグマ団に潜入させてる内の間諜(スパイ)だっけ。向こうさん(マグマ団)に何か動きでもあったのかい?」

「ああ。どうやら連中、超古代ポケモンの制御装置である宝珠(たま)を人工的に作りだそうとしているらしい」

 

 それはマグマ団に潜ませた間諜からの情報。

 

「超古代ポケモンの制御装置……」

「オウとも、中々に興味をそそられる話じゃねえか。――だからよ、俺たちも作っちまおうと思ってな」

 

 そういうとアオギリはさらに携帯端末を操作し、別に情報を表示させる。

 

「自然エネルギーが満ちる『地脈世界』、宝珠の核たる『赤い貴石』……そして()()()だ」

 

 表示されたのは「りゅうせいの滝」近くで発見されたとある隕石の情報。

 現在発掘プロジェクトが進行中のソレは一定の条件下でその種類を変化させる性質があるのだという。

 ある時はキーストーンに、ある時はメガストーンに……ならば、

 

「そんな性質の隕石に高濃度の自然エネルギーをぶち当てれば……どうなるんだろうなあ?」

 

 変化するだろう。当てられたエネルギーを吸収して、より相応しい形に。

 

「ま、そういう訳だ。荒事はちっと横において、俺たちはガクジュツ的なことをやってみようぜ」

 

 上機嫌な様子で次なる目標(ターゲット)を語るアオギリ。その瞳にはどこか狂気的な光が宿っていた。

 

 

 悪意の波は止まらない。

 例え一度引いたとて、それは次なる寄せ波の前兆に過ぎず。

 

 滄海(アクア)の獣は密やかに、深淵にて胎動を続ける。

 世界を始まりに還す――その時まで。

 

 

 

*1
ゴルバットの平均的な大きさはおよそ1.6mほど

*2
自然界に生息する野生個体の話。トレーナーに捕獲された個体や人間に育てられた個体においてはその限りではない




お待たせいたしました。これにてアクア団襲撃編は終了となります。
パーツは何とか守り抜きましたが、代わりにハルカがアクア団からロックオンされました。これで次会う時は一切情け容赦なく、本気かつ全力でバトルを挑まれるでしょう。やったね(よくない)。

巷では「LEGENDSアルセウス」のDLCに、まさかの第9世代発表と盛り上がりを見せておりますポケモン界隈。

新作『ポケットモンスター スカーレット/バイオレット』
作者は水御三家を選ぶつもりですが、皆さまはどの子を選びますか?

さて、次回は主人公のキノココのお話。
果たして地上に戻った彼の次なる旅路に、一体何が待ち受けているのでしょうか。
どうか気長にお待ちください。


以下、設定語り。興味の無い方は読み飛ばしていただいて構いません。

・ハルカ
 遥か格上のアオギリ相手に、ハンディありとはいえ勝ちをもぎ取ることに成功。なお代わりに彼からロックオンされた模様……。これも主人公の宿命か。次に戦う時は彼女の手持ちも相応に育ってる筈。頑張れハルカちゃん。

・オオスバメ
 ハルカパーティの誇り高き一番矢。戦いの最中に進化を果たす。
 危機(ピンチ)からの逆転は英雄譚の王道、彼もまた主人公パーティの一員なのだ。

・ココドラ
 ハルカパーティの新入りポケモン。キノココと入れ替わるように加入した。
 適正レベルに至ってないにも関わらず『鋼片炸裂(メタルバースト)』が使える何気にすごい個体。
 因みにパーティに採用した理由は完全に作者の趣味である。

・ハギ老人
 引退した元船乗りにして、元ポケモンリーグ四天王の老人。
 ハルカに「目指すべき頂」を見せるべく「あること」を提案した。
 なにやらアオギリという名前に聞き覚えがあるらしい。

・アオギリ
 アクア団を率いるリーダーにして、みんなのアニキ。
 自慢のベトベトンを倒して見せたハルカを強敵認定。次会ったら全力でぶちのめすと宣言した。
 その人情味溢れる性格と自己犠牲精神、ポケモンに対する真摯な態度で多くの人を魅了する、ある種のカリスマの持ち主。人間・ポケモン問わず多くの部下から慕われており、また彼自身も部下たちのことは大切に思っている。
 その最終目標は超古代ポケモンの力を使って人類文明を浄化し、ポケモンたちの理想郷を築くというもの。そのためならば自分を含めてアクア団がどうなろうと構わないとすら考えている。
 彼がなぜそこまで過激な思想を抱くにいたったのか……それはどうやら彼が幼い頃に出会った『とあるポケモン』が関係しているらしい。

・イズミ
 金と手間をかけた作戦を思い付きでパーにされ激おこ。
 アオギリを説教する様は完全にダメ亭主を叱る嫁のそれであった――説教の後に何だかんだ許してしまうのも含めて。

・ベトベトン(アローラの姿)
 アオギリの手持ちポケモン。原作と異なるリージョンフォームのベトベトン。
 元々はアクア団の前身となったとある環境保護団体に、「ポケモンを用いた産業廃棄物処理事業」のサンプルとして連れてこられた個体。在来種への遺伝子汚染が懸念され計画が中止となった後、行き場のなかった彼をアオギリが引き取った。現在ではアオギリパーティの一員兼、アジトのゴミ処理係として活躍(?)中。
 意外と人懐っこい性格のため、団員たちから密かな人気を集めている。

毒除丸(どくじょがん)
「泣く子はもちろん 暴れるポケモンも すっきり 体毒くだし その名も毒除丸(どくじょがん)」。
 どんな毒だろうが忽ち下す強力な解毒薬(※強力すぎるため人間は使用不可)。その効能は分解不能とされるアローラベトベトンの結晶毒すら解毒してみせるほど。アオギリの家系に伝わる秘伝の薬らしい。
 なお、これと同様のものがかつて『ヒスイ』と呼ばれた大地でも使用されていたのだとか。
 何でアオギリがこんなものを持っているのかは「LEGENDSアルセウス」のシンジュ集落に行けば大体分かる。だからみんな「LEGENDSアルセウス」、やろう(迫真)。
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