負け犬達の夜   作:風呂

10 / 11
そういえばこのネタやって無いなと思いまして、久し振りの更新でござい。
今回は短いよ。


負け犬達の衣

 勝負服。

 それを身に纏うということはウマ娘にとって、ひとつの大きな目標だ。

 勝負服を着るということはGⅠクラス、最高峰のレースに出るということだ。

 そして今、トレセン学園の某所にあるベンチに座る私の手には、とある用紙がある。

 題して、「トゥインクルシリーズGⅠ出走ウマ娘、勝負服申請書」である。

 読んで字の如く、新しく勝負服を作るための申請書類である。

 デビュー戦しか勝利していない私ではあるが、それでもなんとか栄えあるGⅠレースに出れるようになった。

 それに伴い、入学当初はただの憧れでしかなかった勝負服を作ってもらうことになったのだけれど。

「デザイン、デザインかぁ」

 全く勝負服のイメージが浮かばない。

 その書類には勝負服に関する様々な規則や注意事項が書かれており、更に必要事項の記入欄。そしてどんな勝負服にしたいかの要望欄が設けられている。

 その要望欄は大きくスペースが取られており、文章はもとよりイラストを描いても良いようにされていた。

 しかし、肝心のデザイン要望欄のみが埋まらない。

 実を言えば、私はファッションセンスというものが欠けていた。

 いや、無難にこう、普通の服をウマクロとか馬印良品とかで選ぶのはできるんだ。

 でもいざオシャレとなるとさっぱり分からない。

 ましてや勝負服のデザインなんて。

 一応、提出期限まではまだ時間はあるにはあるが……。

「うーん、どうするかなー」

 サンプルやこれまでのGⅠ出走者の勝負服を参考に作ってほしいとい要望も勿論出せる。なんなら全部お任せも可能といえば可能だ。

 でもやはり世界で一着しかない自分の為だけの一張羅だ。できれば、というか絶対に納得のできる最高の一着にしたい。

 したいけどやはり、センスが……、とっかかりが……。

「ああもう! ――よし、誰かに聞こう!」

 半分意地になってトレーナー抜きでトゥインクルシリーズを走ってはいるが、別に誰の手も借りたくないという訳ではない。なのでこういった自分ではどうしようもないときは、人に頼ったりするのだ。

 だけど問題は誰に頼るかだ。

 トレーナー。論外、許さん。

 彼が育てている同期のウマ娘。思うところがない訳ではないが彼女自身にはなんの悪感情はないので、まあ……うん、保留。

 家族。普通の人たちだし残念ながらこういったことに関しては期待値は低い。それに勝負服でサプライズしたいというのもあるので却下。

 トレセン学園の友人たち。それなりの数が思い浮かぶが、聞いても意見がまとまらない気がするし、勝負服を着れない子もいるので相談できる訳が無い。NO。

 じゃあここはやはり、地元の親友に頼るべき……!

 という訳で早速電話してみた。

 理由を話すと、

『――頼ってくれて嬉しいけど、ちょっと責任重大じゃない?』

「そんなことないって。気楽に気楽に」

『まあいいけど。とはいえ、そんな難しい話でもないんじゃない?』

「ん?」

 どういう事?

『いきなり全体像で考えるから駄目なのよ。一つずつ好きな要素や欲しい要素を上げていくの。日々のトレーニングだってそうでしょ? 足りない部分を克服したり伸ばしたいことの為に鍛えるんでしょ? 同じことよ』

「なるほど」

 その例えなら、少しは理解できるか。

『私も一緒に考えてあげるから』

 そうして二人で話し合い、まとめた内容がこちら。

 メインカラーは黒。私の黒鹿毛の髪色に合わせたものだ。

 各所の刺繍などの差し色には明るめの赤色を。親友の好きな色だ。二人で考えたからという理由で入れた。

 上はノースリーブ、下はスキニーパンツのスポーティーな感じに。ウマ娘と勝負服の不思議パワーによりどう考えても走り辛い格好でも十全に走れるが、どうにも自分で着るには違和感があるのでシンプルなデザインにした。

 シューズも服に合わせたデザイン。あとはリストバンドと右耳に星を象った髪飾り。

「……意外と、なんとかなるもんだねぇ」

 要望欄に纏めたものを書き出しつつ、思わずそんな言葉が漏れた。

『そんな難しいものでもないでしょ? 普段のあなたなら私に相談する前にこれくらいどうにかしそうだけど』

「――――――」

『初の大舞台に向けて緊張してる?』

「まあ、ね。浮足立ってるのは否定できないかも」

 見上げれば、いつの間にか空が夕焼けに染まっていた。

 そんなことにも気付いていなかったか。

 いや、これは。

「楽しいんだよ。色々あったしこれからもあるんだろうけど、さ」

 時間を気にしない程には。

『ふーん、そうなんだ。なんだか妬けるなあ』

「ふふ、なによそれ」

『楽しそうでなによりってこと』

「褒めてるのそれ?」

 褒めてるらしい。まあいいけど。

 兎も角。

 無事に申請も通り、最終調整などもしてもらいつつ完成。

 

 

 そして勝負服を着る舞台、皐月賞に私は立つ。

 耳飾りに軽く触れつつ私は想う。

 負け犬がどこまでやれるか、見せてやろうじゃないか。




なお結果。
更に言うと、耳飾りの星は一話のように学園を去るウマ娘を直接見送った数。時々追加される。
更に更に言うと、結構前に負け犬ちゃんの名前にアンダードックとか思いついたけど、いくらなんでも酷すぎるのでボツにした。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。