受領場所:ヴェネツィアの商業ギルド
配達先:ヴェネツィアの酒場
配達物:大理石像1個
大理石像はアテネかピサという近場で販売していて、初級者でも買ってこられるため、クエストの難易度は☆4と易しめです。そのうえ、プレイヤーの設立したギルドが開く商店で大理石像が販売されていて、街から一歩も出ずに完遂できることもあるので、何度もクリアしたのですが……。
ヴェネツィアの酒場に大理石像を届けた際、ヴェネツィアの酒場娘であるエレオノーラが言う台詞が、
「なぁに、これ? あ~、あの手紙のか~。なっさけないなー、自分で持ってこないなんてさー。あ、こっちの話、こっちの話。届けてくれてありがとう」
なのです。さて、エレオノーラはなぜこんな台詞をのたまう羽目になったのでしょうか?
その詳細はゲーム内では語られていませんので、きっとこのようなことがあったのだろうと想像して書いてみました。よろしければご笑覧あれ。
新大陸や東アジアへの航路が開拓され、各地の主要な港にはギルドの支部が建てられて何年か経ち。
「いついつまでにどこそこの港にあれを届けて欲しい」というクエスト形式で、各港の商業ギルドに依頼が出されるようになった頃。
ヴェネツィアの酒場に大理石像を届けてくれた冒険商人さんに、わたしは開口一番、こんな台詞をのたまう羽目になったのでした。酒場娘としてはちょっとよそいきとは言いがたいこんな台詞に、食いつかない冒険商人さんってめずらしいよね? というわけで、お客もはけて仕込みも終わり、ちょっぴり手の空いたわたしは、お酒と食事を注文して腰を落ち着けた冒険商人さんに、こんな話を語ったのでした。
「以前ね、なっさけない手紙が届いたのよ。そうねぇ……あれはいつ頃のことだったかしら。」
ヴェネツィアに、とある国の航海者たちが訪れた際のお話でございます。
「あたい? ジャカルタからサンゴ運んできたんよ」
「そうか、俺はリマからかぼちゃを、だ。」
「わたしはインドからインド葵を。」
「・・・」
「キャムは?」
「ま、まぁいいじゃないか何だって。それよりこんな遠くで幼馴染4人が集まったんだからさ、今日はぱぁっと」
「「「で、キャムは?」」」
「…グ…に…リを…」
「ん~?キャァ~ムゥ~?聞こえないよぉ?」
「……ラグーザ*1にパセリを届けてたんだよっ!」
「ふぅん…ってキャム、あんた、いまだにフリュート*2に乗ってんのぉ?」
「悪いかっ!?」
「あたいたちが商用ガレオン*3買おうかってときにねぇ。キャムは昔っからへたれでぐずだったもんねぇ? あのときだって…」
「サンディー、およしなさいな。キャムにもきっと事情があったんだろうし」
「サンディー、もう十分飲んだろ? 寝にいこう、な。あ、キャム、代金は俺ら3人で払っておくから」
3人が酒場を出て行ってから、かれこれ2時間は経ったでしょうか。いまだに飲んだくれている男がひとり。
「ふんっ、好きでフリュートに乗ってんじゃねぇや。
海賊退治をしたら大量の船員に飯は食わせてやらんといかんし、資材も弾薬も必要だし、嵐で難破するし、海賊に拿捕されるなんてしょっちゅうだったし。
冒険をしたら道に迷うし、山賊に負けたら船員連中は薄情にも逃げ出しちまうし……
書庫で本を読むにも高い金が掛かるし、何か見つけて報告しても、パトロンはあまり金をくれやしない。
資金も底を尽きそうになって、なけなしの金をはたいて、ギルドに依頼を出したんだよっ。
『冒険で、どうすれば金回りがよくなるか教えてください』ってな。
そこでいろいろ教わったから、ようやくここまで持ち直したってのに……何が『キャムは昔っからへたれでぐずだった』だっ」
飛んでいく酒ビン。……がんっ、バキッ、ガッチャン……。
「………バキッ……?」
そちらに目をやると、割れた酒ビン、そこらじゅうに飛び散った酒と一緒に、砕けた大理石と、片腕がなくなった大理石像が。
「や、やっちゃったぁ……」
翌日。
「ノーラおねえちゃん、お手紙です~」
「あら? テオ君じゃない。誰から?」
「初めて会ったおじちゃんからだよ。今朝、港が開くか開かないかって早い時刻に出航するからって、商人ギルドとノーラおねえちゃんに、お使いを頼まれたの。」
「何かしら?」
ヴェネツィアの酒場娘さま
ごめんなさい。酒場の大理石像を壊したのは私です。
壁に投げつけた酒ビンが、跳ね返って片腕を破壊したようで…
新しい大理石像は商人ギルドの依頼で届けさせます。
本当にごめんなさい。
貧乏冒険者 C.G
この掌編は、以前、ブログ「銀縞猫の大航海日記」に投稿した話の改稿です。