運命は先天的にお兄ちゃん子 ―歴代最少の契約者たち 転生先にて恩送り 作:yyuuss
皆さんこんばんは、精霊族のカノンです。先程、部屋での会話時に「マヤカと気が合うんじゃないか」と兄ちゃんに言われました。私としてはライバルと気が合っても……とは思うのですが、自分の行動によって兄ちゃんが嘘を付いたということにはされたくないので、マヤカとは程よく付き合うことにします。でも、今まで同年代の女子の友達がいなかったので内心ちょっと楽しみだったりもするんですよ。それよりもご飯ご飯~。あのような豪華な料理の数々を見るにレイラさんは料理も得意なようです。いい勝負になるぐらいには私も料理には自信がありますよ。……ああ、そうだった……。まず食べる前に私が精霊だってことを明かす予定なんでした。ああ、早く食べたいのになぁ。
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正式にバチバチと火を散らそうかというほどのライバルとなったカノンとマヤカ、そしてその正式な被害者となったクルウドの3人は部屋を出てリビングに向かう。リビングには既に料理の支度をほとんど終えた母さんと仕事着からゆったりとした服へと着替えを済ましていた父さんが隣同士の椅子にもたれて談笑していた。
「用事は終わったか。じゃあカノンの歓迎パーティーにしよう。3人とも座りなさい。カノン、これは全てレイラさんの手料理なんだぞ」
カノンやマヤカだけではなく父さんであるシーハまでもがレイラの料理を称賛する。クルウドは皆がそこまで言うのならどんなものだろうかとキッチンを覗くと、そこには複数の大皿にそれぞれ違う料理が盛られていた。クルウドは思わずレイラの料理スキルに感嘆する。
「これ全部母さんが作ったのかよ。よくあんな短い時間の間にこんなにも。」
クルウドたちがリビングに来るとレイラは一旦キッチンに戻りハーブといった香草を盛り付ける等の最後の一仕上げに取り掛かる。カノンやマヤカはテーブルに向かったが、クルウドはキッチンに寄ってレイラと会話をする。
技術の発展度合いが低いらしいこの世界において、現代日本ではあって当たり前とされているような冷蔵庫とか電子レンジといった白物家電が無い中でも、5、6皿の料理がそれぞれ大皿で盛られている。食事の材料はその日その日に買うのが一般的な生活スタイルであるこちらの世界では生鮮食品が欲しいのならまず買い物に出なくてはならない。しかも、買い物だけでなく調理しなくてはならないのだ。ものすごく効率的にこなさないと間に合わなかっただろう。
「そうかしら。大通りでクルたちと別れた後も1時間ぐらい近所の皆さんと話し込んでいたから……、そうね、買い物に1時間ほど、料理で2時間弱ぐらいは掛かっちゃったわね。いつもよりは時間が掛かるけどカノンの歓迎パーティーをするのだから当然よ」
「大通りで別れてからもう4時間も経っていたのか。契約の儀式は想定よりも長いこと掛かったんだな」
時間は意外と早く経つものだ。クルウドとしては契約の儀式前の近所の人たちによる婚約の祝福から今現在までこんなにも時間が過ぎているものとは思ってもみなかった。せいぜい2時間ぐらいだろうと思っていたほどだ。
「カノン、そこをどきなさいよ。私がクルウドの隣に座ります」
「嫌。マヤカはポツンと置かれたあの椅子にどうぞ」
レイラと話しているとテーブルの方から大声が響いてくる。カノンやマヤカの声だったよなと考えつつ様子を見てみると、また2人はケンカをしている最中であった。どうやら座る位置を巡ってトラブルになっている。こういうところは2人とも年相応だよなとクルウドは感じながら仲裁に向かう。
その2人のケンカの原因というもの、長細いダイニングテーブルの周りには5つの椅子が置かれており、長い2辺にそれぞれ椅子が2つと短い方の1辺に残りの椅子が1つ、つまり椅子がコの字になるように置かれていたことにある。
既に母さんと父さんはおしどり夫婦らしく仲良く隣り合わせになるように着席することになっているらしい。よって残りの席は長辺の2席と短辺にある1人席となるのだが、カノンもマヤカも短い辺にある余りの1つの椅子に座ることはすなわち、クルウドの真横に座れないとの理由で嫌がってケンカになったのだ。
「2人ともケンカせずともこの椅子を動かせばいいだけだろ。ほら見てみろ、母さんも父さんも困惑しているぞ」
そんなことでと気抜けしながらもクルウドは短い辺にある1人席の椅子を動かして3人が同時に横に並んで座れるように手配する。3人が横に並んだことで少々狭く感じるものの、これでケンカも収まったので気には留めない。子供たちの様子を困惑気味に見ていた大人たちのうちレイラは席の取り合いをするなんて可愛らしいと微笑んでいる。また、シーハは自分の子供にも関わらずクルウドのことを複数の女子に好かれるなんて男の敵だとか思っていたりする。
「それではそろそろ晩ご飯を頂こうか。そうだな、皆飲み物はどうする? お水でもいいけど今日は歓迎パーティーなんだしジュースにでもするか」
「シーハさん、気を遣わなくてもお水で十分ですよ。ジュースとは合わなそうなので」
「なあに、子供が気を遣う必要はないんだ。たまには豪華にいこうぜ。」
マヤカはあくまでお邪魔させてもらっている身ですからとやんわり遠慮する。しかし、そのような配慮は無用だと言わんばかりにシーハは椅子から立ち上がると軽い足取りでキッチンに行き棚からジュースを取り出す。そして別の棚に向かうと犯人が様子を窺うかのようにシーハはこっそりとボトルを手に取った。
シーハはクルウドたちとは対面して座っているレイラの視界には写らないようにと実に塩梅な角度を保ちながら自身の身体に隠れるように左手でボトルを持っている。ただ、レイラには何としてでも見られないようにワインのボトルを持っているため、子供たち側から確認されるとバレバレであったりする。
「シーハさんがお酒を飲みたいだけなのでしょう。もう、酔っぱらわない程度にしてくださいよ」
「――何故分かったんだ。ワインのボトルはうまく隠していたのに」
こうしてジュースとワインのボトルを手にしたシーハがまず第一関門は突破したことにほっとしながら座ろうとした時、レイラはその心を揺さぶる一言を述べる。子供たちだけではなくレイラにもうまく隠すどころか見え見えだったらしい。
「はぁ~。シーハさんジュースを取りに行った後どこに行きましたか。そう、お酒が保管してある別の棚に行ってその棚を開けていましたよね。そして、ジュースをテーブルに持ってきた時の左手が不自然でしたよ」
「毎回ああなのよ。シーハさん本人は隠しているつもりなのでしょうけどあからさまに不審な行動をするもの。その度に看破されるのに懲りないのよね」
こうも見透かされシーハは降参したかのようにがっくりする。レイラの発言から考えるに似たようなことが起きたのは一度や二度の事ではないとのこと。
「話したいことがあるんだ。ご飯を目の前にして待たせるのは申し訳ないけど聞いてほしい」
「どうしたんだクルウド。顔がこわばっているぞ。気楽に話してごらん」
シーハによるつまらない茶番もやっと終わったのでクルウドは秘密を明かすという本題に入ることにする。
『先に私から話すよ。ねえ兄ちゃんいいよね』
『カノンが先に話しても構わないよ。精霊の話は母さん以外には詳しく説明していなかったもんな』
『詳しくは言っていないね。でも皆なんだかんだで精霊とは知られているから』
念話が飛んできてカノンが先に明かしてもいいかと聞いてくる。クルウド自身は秘密を明かす順番にこだわりは無い。カノンに合わせることにする。
「まず私からね。私は人間ではなく精霊です。私は枕の精霊カノン・ベディ・エピローヴといいます。レイラさんには既に言ってはいたけど、ライバルであるマヤカにも知ってもらおうと思っていたのでいい機会かなぁと」
「ええ、聞いていた通りだわ」
「精霊って本当にいるんだ……」
「…………、カノンが精霊だって!? こんな愛くるしい見た目なのに……。……精霊族がねぇ……」
このように三者三様に反応が分かれる。レイラは予め聞いていたので遠い昔を思い返すようにうなずく。マヤカは若さ故の知識不足からなのか精霊が存在していることに純粋に衝撃を受けたようだ。シーハは見た目からは全く想像できないらしくカノンが精霊であることがどうも信じられないようだ。
「はい。私は精霊ですよ。これからもよろしくお願いします」
カノンは何事もなかったかのように再び精霊だと言い表す。
「……えっ、カノンは人間じゃないんだよな……。そうか、最近のアンドロイドは本物だと錯覚するほどに人間らしい振る舞いをするということか」
「シーハさん、そういうところです。カノンが今にも泣きそうになっているじゃないですか。カノン。シーハさんが単に馬鹿なだけだから、ごめんなさいね」
明らかにふざける場面ではないのにも関わらずシーハは今までの調子を崩すことなく冗談を言う。シーハ以外の4人のこの時の心情を表すと「こいつ、いい加減にしろよ。ふざけるのも大概にしろ」とかだったりする。隠そうかと悩んでいた秘密を明かしたのに軽薄な態度を取られたカノンはクルウドのもとに行くと泣き出しそうになる。
「ねぇレイラさん、馬鹿って言い方はないでしょ。言い方がきついって」
「いじわるをして自分の子供を泣かせる親が馬鹿ではないと言うんですか。シーハさん、頭を冷やしてきたらどうです?」
シーハにあまり反省の色が感じられない中で、クルウドはレイラの口調の変化を感じ取っていた。これはレイラのように普段温厚な人が怒る時の合図だ。温厚な人は滅多に怒ることはない。しかし、そういう人こそ怒った時が恐かったりするものだ。
「私だったら最低1カ月は口を利かないですね。しかもカノンとシーハさんは今日初めて会ったんですよね。初日からいじめるなんて……、これから一生仲良くしてくれないかも」
今にも泣きそうになっているカノンが可哀そうだと思ったのか他人の家の子であるはずのマヤカでさえシーハの言動を咎める。
「カノンごめんな。出来心でいたずらしてみようと思っただけでいじめてはいないよな……、なあ。……うん、そうだ冗談だよ、冗談。つい酔っぱらって言っちまったんだよ。カノン許してくれ」
マヤカが発した1カ月は口を利かないという文言はカノンを娘として仲良くしたいと願うシーハにとって重い一撃になった。シーハとしてはカノンとの距離を近づけるためのジョークであったのだが、泣かれてしまっては謝るしかない。しかし、シーハは2つの過ちを犯していた。一つ目は酔っぱらって言ってしまったと嘘を付いたこと。そして2つ目はいつも優しくて多少の事では動じないレイラが本気で怒ることはないと思っていたことだ。
「ボトルを開けすらもしていないのにどうやったら酔っぱらうんだよ。まさかこんな父さんだったとは……。うん呆れた」
クルウドは呆れてついツッコんでしまった。そもそもワインを飲む時間もなかったのに酔うわけがない。ここまでくるといくら何でも言い訳がましい。
「もうシーハさんいい加減にしてください! 青色に青色を塗り重ねたって青色のままのように噓に嘘を重ねたって嘘には変わらないんですよ。罰としてシーハさんだけ食事の後の甘味は没収します。今日からしばらくの間はなしですからね。ほんと酒を少し飲んだだけでもすぐ顔を真っ赤にする人が真っ青な顔でよくそんなことが言えるわ」
クルウドがツッコむのとほぼ同時に、ついにレイラが嘘を付きまくるシーハに対して怒る。その形相は恐ろしく、いわゆるマジギレをしているようだ。シーハも怖気付いたのか何も喋らなくなり仏像のように固まっている。
「んん、あのさ……、なんか大荒れになっているけどまだ俺の話は終わっていないから話をしてもいいかな」
クルウドとしてもこんな気まずい状況では言いたくはないのだが、家への帰り道までには既に転生初日に言おうと内心では決めていたことを変える気はなく、もし拒否されても押し通すつもりでいた。
「クルウドも話があったんだよね。……どんな内容でも受け入れるつもりだけど、私はクルウドとの結婚を諦めてなんていないから」
マヤカはクルウドがカノンとの結婚の許可を得ようとしていると盛大に勘違いした。それを受けてクルウドは婚約だって半ば強引に決められたんだよなぁと苦笑しつつ今日の昼の出来事を思い起こす。
『うぅ、ぐすっ……。兄ちゃん言い忘れていたんだけど、私が兄ちゃんを転生させたことは伏せておいて。バレるとこればかりは厄介になるからお願いね。ぐすっ~』
カノンがどうしても自分が転生させたことは話さないでと懇願する。クルウドもこれぐらいなら誤魔化そうだと思い、上手いこと誤魔化すための筋書きを再構築し始める。
『……ああ、分かった。しゃべらないように上手くまとめておくわ。ところでさ、念話する時さえも演技をしなくったっていいだろ。それより父さんの顔見てみろよ。母さんにこっぴどく られて顔面蒼白だぞ』
『私ってそんなに演技下手なのかなぁ。兄ちゃんに見破られるなんて』
『涙を流していないからそうなのかなぁって思っただけだよ。服も濡れていなかったし。じゃあ俺も話すとしますか』
クルウドはカノンも自身の秘密を話したのだから俺も話さなければと理由を付けて気合を入れると、気持ちが昂りすぎないようにと淡々と話し始めた。
「実を言うと、俺はこの世界に転生してきてクルウドとして今ここにいます。ここで生きることにします。信じることが難しいのは重々承知だけど皆には信じてほしい。この世界で生きる手伝いをしてほしい……と思っているんだ。受け入れてもらえたら嬉しいのだけど……」
クルウドは言っている時もなお少しためらいを残していた。この人たちなら多分今の自分を受け入れてくれるのは分かっている。それでもためらいの気持ちがあったのは自分が本当にこの世界で生きていく覚悟が足りず、心の中では後ずさりしてしまう弱さがどこかからともなく主張してくるのだ。初めは淡々と話すことが出来たのに、次第にクルウドは不安に苛まれながらも最後まで自身の思いを告げた。
「クルは転生してきたのね。確かに信じられないことではあるけどクルはクルなのだから家族には変わりないよ」
「転生? クルウドが転生したってレイラさんどういうことですか。生まれ変わりってこと?」
「転生しただと。ファンタジーとしてそういうのがあるってことは知っているが……。いいやあり得ない。お前、頭がおかしくなったんじゃないのか」
その一世一代の告白に対しての皆の感想はカノンの時と同じように反応は三者三様に別れたのだった。
やっと話数が二桁に到達しました。このままだと三桁には届きそうなので次の大きな目標は第2章までの完成と三桁の100の半分に値する50話への到達にします。
まだまだこれからですのでこれからもよろしくお願いします。
皆さんが読む分には一話あたりどれぐらいの文字数がいいですか? これからの参考にします。
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