運命は先天的にお兄ちゃん子 ―歴代最少の契約者たち 転生先にて恩送り 作:yyuuss
「今度は自分の子供に対して頭がおかしいと言うのですか。シーハさん、次の罰は1カ月食事抜きの断食とかでどうです?」
正直に告白したクルウドに対して頭がおかしくなったのかと言うシーハ。また自分たちの子供を馬鹿にされたことでまだ腹の虫が治まらないのかレイラは1カ月無飲食生活というとんでもないことをシーハに提案する。先程憤怒したレイラから 責を受けて青ざめていたシーハがそのせいで更に色を失う。
「……いやいや1カ月も飲み食いしなかったら死んでしまうだろ。だけどさレイラさん、今回ばかりはどう考えたって普通の反応だろう。空想上のフィクションの話だっていうのならまだしも、実際に起こったとなると……。事実は小説より奇なりとは言ったもんだが、誰が聞いたってにわかに信じがたい話ではあるだろ」
転生した張本人であるクルウドでさえも他人が転生したと言ったらまずはその人を疑うことから始めるだろう。よってシーハが物申すように今回ばかりは彼の態度はいたって至極当然である。この場面においてはむしろレイラが異常なまでに平静すぎるのだ。
「まぁ確かに一般の人々には信じてもらえないでしょうね。しかし、クルはあなたの、私たちの子供なんです。カノンの時もそうですけど自分たちの子供の言うことを親である私たちが信じてあげないでどうするんですか。クルもカノンも自身が置かれている境遇を十分理解した上で、昨日までは赤の他人だった私たちに話してくれているんですよ。ですからあり得ないと切り捨てるのではなくて、まずは受け入れて信じてあげましょう、シーハさん」
「……そこまでレイラさんが言うのなら。ああクルウド、分かったよ。俺もお前が転生したと信じてみるとしよう。ところで、レイラさんにとっても息子が転生したことが今までで一番衝撃的だったろう。昔のあれこれよりも勝るんじゃないのか」
レイラは先生が児童を諭すような口調でシーハやこの場に居合わせているマヤカに語り掛ける。今日一日のクルウドの様子を振り返ってみても、クルウドは各部屋の場所が分からずに右往左往していたり、転生を明かすまでは時々誤魔化す部分はあったものの、安易に嘘を付こうとはしなかった。このことからもクルウドが前に居た世界でしっかり育てられたのだろうとつくづく実感する。
「そうわね。色々な経験をしてきた中でもこれは格別なことよね。自分の息子が転生することは普通考えられないもの」
「レイラさんは衝撃的だと口にするわりにはいたって冷静に見えるのですが。私はクルウドが転生したことさえよく分かっていないのに……。もしかして初めから知っていたりしました?」
「マヤカと一緒で今初めて聞いたわ。ただ、クルが変わったなぁとは思う節は所々あったからそこまで感情が顔に出ていないのかしらね」
シーハやマヤカよりは圧倒的に博識なレイラであっても転生するという例は古い書物で見たような記憶がうっすらと残っているだけで、実例に関しては今まで聞いたことが無い。そのためいくら冷静沈着であってもこんなことが本当に起こるものなのかとキョトンとしたものだ。それでもポーカーフェイスであるレイラはその気持ちが顔に出ることなく平然としているように見えたようだ。
「まずクルが自分のことをいう時に一人称が僕ではなくて『俺』になっていたでしょ。他にも私のことを母さんって呼んでいたし、大通りで近所の人たちに婚約の祝福をしてもらった時もクルは凄く煩わしそうな顔をしていたのよ。目立ちたがり屋さんだったはずなのに。まだまだあるわよ……」
こうも挙げられてみると言動が違うどころか外見以外は全く別人のさまであったのに街の人たちからよく怪しまれなかったものだなとクルウドは苦笑いを浮かべる。話さなくても筒抜けだったのなら早めに話しておいて正解だったようだ。
「そう言われてみると納得だな。クルウドが俺のことを父さんって呼んでいたのも転生してきたからなのか。うう、ちょっと大人になったんだなと父さんは心の中で感動していたのに。クルウド、涙を返せぃ」
「父さんが勝手に思い込んだだけで涙を返せとか無茶苦茶すぎるだろ。しかも、心の中でしか感動していなかったのだから涙は流していないくせに。しかし、転生したという事実を述べただけでよくもそう話が続くね。大抵転生したって言ったら転生前はどんな世界で暮らしていただとか、詳細とかに関心が向かない?」
「事あるごとに感動する、それが子育てでありまた親心ってものなのよ。それに転生前の生活などは簡単に聞いていいような話ではないと思うの。だからクルが話す気でいるなら話せばいいし、話したくなければ話す必要はないのよ」
レイラが無理に話すことはないと気を利かせてくれたが、クルウドは既に決めていた。転生した事実だけを突き付けるのでは説得力に欠ける。事細かに話すことで完全に信じてもらいたいのだ。
「いや、もう話すって決めているんだ。さっきから俺を拒むことなく耳を傾けてくれたことがとても嬉しかった。例え家族であっても容赦なく切り捨てるなんてどの世界でもありふれた現実だからさ……。……俺はここで生きる。俺は転生して今ここに居るから」
転生前の名前は鏑木深生であったこと。日本という国に住む一般的な高校生であったこと。日本には魔法がない代わりに絶大なほどに技術が発展しているということ。パンよりは断然米派であることなど、クルウドは住んでいた世界のことから自分に関わる情報まで挙げればきりがないぐらいに転生前のことを、そして転生した自分のことを近しい仲であるカノンやマヤカ、自身の親となるレイラやシーハたちにより深く知ってもらうために時には丁寧に、また時にはかみ砕いた表現を使いながら話す。
「一応これで一通りぐらいは言ったはずだと思う。自己紹介はこんな感じにして何か聞きたいことはあるかな。早くご飯にしよ」
クルウドは大分伝え終わったところで話を切る。話の所々で質問や疑問が出てきたのでそれについてに答えてながら話をしているうちに眠気の限界が近づきつつあったからだ。女性陣3人衆はそのことに気づいて質問をすることなく再び晩ご飯の支度をし始める。しかしシーハだけはお構いなしにと質問を続ける。
「クルウドは前の世界では17歳で誕生日を迎えたばかりだったんだよな。じゃあ実質21歳、いやもう22歳ってことか。祝わないとな」
「シーハさん落ち着いてくださいな。クルウドは前の世界で生きた分の17年が実質の年齢ですよ。子育てなのに全く手が掛からないだろうなぁ」
クルウドの精神年齢がすでに大人であり、子育ての苦労をもう味わえないことに気づきレイラは肩を落とす。どうやらレイラは困難な難題にぶち当たるほどやりがいを感じて燃えるタイプのようだ。
「……うん? こちらの世界での俺の年齢っていくつなの。こういう自分のことでも知らないことも多いんだよ。」
現代日本での年齢が17歳であることは間違いない。ならば、合わせると22歳になるということは現在クルウドは4、5歳のはずだ。どうもカノンから聞いていたのとは異なっている。
「クルは5月生まれの4歳よ。今は12月だからあと5カ月もすれば5歳のお祝いをしなきゃね」
「カノンから聞いた話だと3歳だったんだけど。どっちが正しいんだ?」
「兄ちゃんごめん。私が間違えていたんだと思う。精霊はその人がどんな人なのかある程度捉えることが出来るんだけど、どうしても精度が低くなるんだよね。だから兄ちゃんも私も4歳ってことで一緒になるね」
「2人とも、私も4歳なんだからね。クルウドはともかくカノンもこれからは幼馴染にしておく」
どうやらクルウドの年齢は3歳ではなく4歳のようであり、またカノンやマヤカの年齢も4歳だということも判明する。カノンとマヤカは義妹と幼馴染で関係は異なるといい、同学年であることにクルウドは少し運命を感じずにはいられないのだった。
「そういえばカノンはクルウドが転生したことを知っていたの? さっきからクルウドの言葉に対して全然動揺していないよね」
「ああ、うん。……私は兄ちゃんと会って早々に教えてもらっていたの。私は兄ちゃんの契約精霊だからね。契約する前に私が精霊だと伝えたら兄ちゃんも教えてくれたんだ。そういうわけで互いに秘密の共有することになっちゃって。……まさか兄ちゃんも転生という大いなる秘密を持っていたとは思いもしなかったよね。精霊よりも転生の方があり得なさ過ぎて……、私も聞いたときは驚愕したよ」
「カノンには契約するときに伝えておいた。――母さんもマヤカも、……あとは父さんも聞いてくれてありがとう。手短に簡潔に伝えるつもりだったのに長くなってしまって。料理もすっかり冷めてしまったし。作ってくれたのに母さんごめん」
実際のところ、カノンが日本人であった鏑木深生をクルウドとして転生させたのだから知らないはずがない。でも、カノンも転生させるのに成功させた時には嬉し涙を流していた。嬉し涙が出るほどに驚愕したことにでもしておこうか。
「料理はまた温めなおせばいいのよ。高暖石を使ってパッパッと温めましょうか」
「高暖石って何? この世界には魔法だけでなく魔石まで存在しているの?」
魔法のみならず魔石のようなものまであるとはやはりファンタジーの世界のようである。庶民の生活にまで魔石が浸透しているのもこの世界では当たり前なのだろうとクルウドは認識する。現代日本での常識がそのまま通用する世界ではない。
「そっかぁ、転生したからクルウドは知らないんだよね。高暖石は
高暖石とはこの世界では日常的に使用される鉱石類の一つであり、見た目は少し赤みを帯びた石のことである。高暖石の純度に応じて石が発する最大の温度が決まっており、純度の高さによって石に刻まれた(ように見える)線の数が多くなるのが特徴だ。低純度のものだと最大温度がおよそ60度ほどであり、高暖石の発した最高温度はこの世界で今まで確認されたもので2500度前後にもなるという。それでも決して高暖石自体が燃焼するわけではないのだが、石の周りには熱が生まれているため中~高純度の高暖石に直接触れると想像した通りやけどする危険がある。
「この世界には魔法があるんでしょ? それなら石を使わずとも魔法で火を出して温めれることはできないの?」
「高暖石を使わずとも簡単な火属性の魔法を使えば火は出せるわ。それに高暖石を子供が誤って使うと怪我をしてしまうから危険ではある。それでも高暖石は魔法に比べるとすぐに暖かくなるの。あと一番の理由としては魔法が使える人はそんなに多くないからなの。正確に言い直すと、決して魔法が使えないんじゃなくてほとんどの人は魔法の一つ二つは使えるわ。ただ、使える魔法の中で火属性の魔法を持っていない人や使えたとしてもお湯を沸騰できないほどの小さな火を出すのがやっとの人も多少なりともいるのよ。だから高暖石には需要があるし、皆こぞって高暖石を使うの」
この世界の人間族のうちの9割以上の人々は何らかの魔法を行使することが出来る。ただ、あくまで魔法が行使できるだけということであって、決して普段の生活に役立てられるほど実用的な魔法を使える人はそこまでいない。高暖石を使う方が遥かにコスパがいいのだ。
こうして高暖石を使って温め直した料理を5人で頂く。そこには先程まで秘密を明かしたことで戸惑いが生まれたとは思えないほどに和気あいあいと食事を楽しんでいる姿があった。そして、クルウドは罪悪感を感じながらも素早く食べると「寝る」と一言だけ残して部屋に戻る。最後は眠気に誘われてクルウドは濃密な出来事が満載だった転生初日を終え、転生2日目を迎えようとする。
この時疲労が溜まっており深い眠りに付いていたクルウドは気づくことはなかったが、リビングでは女性陣3人衆による談合が行なわれていたのだった。
皆さんが読む分には一話あたりどれぐらいの文字数がいいですか? これからの参考にします。
-
2,000字未満で1日おき投稿
-
2,000〜3,000字で2日おき投稿
-
3,000〜4,000字で1日おき投稿
-
3,000〜4,000字で2日おき投稿
-
4,000〜5,000字で1日おき投稿
-
4,000〜5,000字で2日おき投稿
-
5,000〜6,000字で1日おき投稿
-
5,000〜6,000字で2日おき投稿
-
6,001字以上で2日おきの投稿