運命は先天的にお兄ちゃん子 ―歴代最少の契約者たち 転生先にて恩送り 作:yyuuss
「カノン、質問したいことがあるのだけどいいかしら?」
「いいですよレイラさん。何の話ですか?」
「クルとカノンは契約しているでしょ。契約すると色々と効果があることは知っているのだけど、人間と精霊の契約自体如何せん珍しいことでしょ。具体的な内容は知らないから教えて欲しいのよ。これでも私も昔は冒険したことがあってね、契約に関して興味があるの」
今度はレイラがカノンに質問をする。その内容は人間と精霊の契約についてだ。カノンンの母親となる以上レイラは契約の内容を理解すべきだと思ったのだ。それに対してカノンは気軽に了承をする。
「契約ですか。私も多少は知っているので分かる範囲でなら答えますよ」
「私も聞いてみたい。カノン、いいよね」
「いいよ~。私としても契約の内容についてある程度は知っておいてもらえると今度から一々説明する手間が省けるし」
カノンが精霊であることはこの場にいるレイラもマヤカも知っているので妙に誤魔化したり気を揉んだりする必要はない。カノンは気楽になりながら契約の機能の説明をし始める。
「理解しやすいところからだと、まずは念話ですね。この念話の機能は契約を基としたファンタジー小説とかにもよく出てくるからどんなものかは想像できると思います」
「声に出さずとも会話ができるという優れものだったはずだわ。聞かれたらまずい話やその状況の場合にピッタリなんでしょ」
「私も念話を使ってみたいけど、契約者は何百年のうちに一人しか現れない上にその枠には既にクルウドがいるとなると……私には一生縁のない話ですよね」
まず念話の機能のことから説明するカノン。まだ1つ目の説明であるのだが、いきなり便利な機能を例示されたことに、契約者であるクルウドやカノンとの違いを改めて痛感してマヤカは早々に肩を落とした。
「まぁそうね。ジベック王国から遠く離れた大陸の南側には念話石という念話と似たような効果を持つ魔結石があるらしいのよ。あまりの稀少さ故にどの国でも国自体が管理しているとか……。……私たちでは王国に余程恩を売ることでもないと手に入れられないわよね。これこそ縁のない話だったわ、忘れてちょうだい」
「……念話石ですか。魔結石にもそのような種類のものがあるんですね」
「ええ、そうらしいわ。実物を見たことはないのだけど、その念話石はとても綺麗な色をしていて光るとそれは神秘的って聞いたの。私たちでもお目にかかる機会があればいいのものね」
念話石とは魔結石の一種であり生産量の多い高暖石等とは違って中々お目にかかれない代物である。見た感じはラピスラズリのように濃青色であり鋭く輝く魔結石だ。ただ、珍しさや非常時の連絡手段として重要だと位置付けられているため、その多くは国家の所有となっている。そのため多くの庶民は念話石があることすら知らないでいる。
「レイラさん、王国に関わらずして手に入れることはできないんですか?」
「念話石自体があまり存在していないし、採掘地でさえも厳重に守られているようだからね。もし王国のパイプ以外で手に入れられるとしたら、現地まで赴いて闇取引でも持ち込むしか……。カノン、欲しいからといってそんなことは絶対しちゃ駄目よ。あなたは私の娘である以上犯罪まがいなことをするのは許さないからね。覚えておくの」
「レイラさん、私はそんなことはしないですって。そもそも私には念話石が無くとも念話ができるんだよ。念話できるのに念話石は要らないもん」
「まぁそうね。そんなことをするぐらいならカノンはクルと一緒に居たいはずものね」
我が娘が悪事を働かないようにと牽制するレイラに対してカノンは心配はご無用とばかりに契約によって念話ができることを強調する。その強調を受けてマヤカは私は特別じゃないんだと更に落ち込むのだが、そのことは2人は知らない。
「次に知識の共有だね。互いの持っている知識を共有することを可能にする機能です」
「これは聞いたことがあるわよ。昔見た本に載っていたの。『契約を交わす者、互いに見聞を広め、包み隠すこと無きように』と書かれていたはず。恐らくだけど知識の共有をすることで契約者が精霊族の世界のことを、契約精霊が人間族の世界のことを理解できるようにしたのだと思うわ」
「種族の違う者だからこそ互いをより深く知るために知識の共有をするってことですか。そういうことなんだ。知らなかったなぁ」
「カノンも知らなかったの?」
「うん、私は契約の内容の一部については知っているけどその背景までは調べていなかったんだ」
「昔の珍しい書物だったからね。カノンもその本を見る機会はなかったのね」
2番目にカノンは知識の共有という機能を挙げる。この機能の存在理由としては互いの理解を深めることにある。契約後も互いのことを知らずに過ごすことは契約した者としては問題であるらしい。
「3つ目に視界共有です。これだけは特別で私は兄ちゃんの視界を確認できるんだけど、兄ちゃんからは私の視界は見られないんだ。どうも精霊特有の機能らしいね」
「クルウドが何を見ているか分かるってこと?」
「そうだよ。ただこの機能は許可制でね、視界共有するかどうかの権限が兄ちゃんあるから兄ちゃんが視界共有を停止したら私が見ようとしても見られないんだよね」
「普通は許可しぱなっしにするんじゃないの。もし停止したことがバレたらカノンが怪しむってことぐらいクルウドも分かっているだろうし」
「転生前にある程度生きていたのだからクルも馬鹿な真似はしないと思うわ。私としても視界共有の機能は初めて聞いたわ。精霊しか使えない機能である分あまり伝えられていないのかしらね」
クルウドは昼にこの機能についてカノンから聞かされていた時には難色を示していたのだが、3人の見解は一致しているようでクルウドが視界共有を許可すると思っているらしい。これでクルウドは嫌でも許可するしかないだろう。
また、この視界共有の機能はレイラが言うように人間族には使えない機能であるので契約者の伝記や本にはあまり書かれていない機能であるのだ。契約で解放される機能は人間も精霊も使えるものが大半であり視界共有のように片方しか使えない機能は特別なものだ。
「次で4つ目だよね。4つ目は記憶の鮮明化です」
「これも聞いたことがないわね。鮮明化ということは記憶をはっきりさせるのかしら?」
「半分当たりで半分外れかな。この機能を使えば記憶をはっきりすることはできるけどそれだけじゃないんだよ。その何時ぞやの記憶を今見ているかのように脳の中で再生することができちゃうんだ。フラッシュバックさせるっていうの? いやむしろ、仕組みとしては脳に錯覚を起こさせる感じなのかな。脳に作用するからか魔力の消費は他のよりも随分と多いんだけどね」
「ふ~ん。記憶の鮮明化だったっけ? 念話とかに比べると地味だし、魔力の問題もあって何かと使う場面がなさそうな機能ですよね」
「魔力の問題?」
次に記憶の鮮明化についての話をするカノン。これはクルウドが諸刃の剣と評して、使い方を危惧していた機能だ。
カノンの説明を聞いて魔力の消費が多いことにマヤカは反応する。それを見たカノンは不思議に思いレイラに尋ねる。
「魔力の消費が激しい魔法は色々と敬遠されがちだわ。魔力の消費量が多い魔法になるほど日常で使うことが少なくなるし、そもそも山間部等の危険な地域で暮らさないのならば相対的に消費量が多い高威力の魔法なんて使わなくても生活できるもの。例えばだけど、料理時に使う火属性の魔法だって初級の魔法で十分なのよね」
「ふっふっふ、2人ともこの機能の凄さが分かっていないみたいだね。デメリットがあるってことは当然その裏側にはメリットもあるんだよ」
「「メリット?」」
「兄ちゃんは転生してきたでしょ。だからこの世界とは違う世界の記憶も持っているってこと。つまり、兄ちゃんが元居た世界の技術やアイデアを記憶を通じて利用したり応用したりして恩恵が得られるんだよ。その点を踏まえると既に兄ちゃんは歴代の契約者の中でも一線を画しているからね」
「そういうことね。それなら魔力量に見合っただけの効果が得られるわ」
カノンの説明で納得がいったレイラは頷く。常人とは比べ物にならないほどにレイラは実に頭の回転や話の理解が早く、その博識さや頭の回転の早さはオッセラの街では有名である。その能力からお偉いさんとも関わることも多い。そんなレイラだからこそクルウドが転生したという話も受け入れられたとも言える。
「えっ、待って。……どういうことなのか理解が追いついていないんだけど。レイラさん分かりやすく説明してもらえないですか」
「クルが転生してきたというのは夕食前の話でマヤカも知っているわよね。その話の中でクルはこう言っていたじゃない。『俺は違う世界で生きていた。そこには魔法が存在しない代わりに凄まじい程に技術が発達していて、それはこの世界の技術とは比にならないんだ』ってね。記憶の鮮明化によってクルの記憶が有効活用できれば、私たちの生活をより発展したものに変えられるかもしれない。これがカノンの言うメリットなのよ」
「……でもそれだと転生したのはクルウドだけですから、クルウドしか転生前の記憶は見られないですよね」
レイラがカノンの説明の真意をマヤカに分かりやすく伝える。
「今までの契約の内容から推測するに、この機能も2人の間で共有できるものなのでしょう。視界共有はカノン限定ではあるらしいけど、それについては特別だって言っていたし。互いに鮮明化した記憶も共有できるのよね?」
「レイラさん流石、ご名答。この機能も契約者間で共有できるんだ。しかも、私の記憶の他にも兄ちゃんの記憶でも鮮明化できるよ」
「そうなんだ……。何だかすごいね」
契約によって解放される能力が多いことにマヤカは純粋に驚嘆していた。これはレイラも顔に出さないだけで同じ気持ちである。
「最後に記憶容量の拡大かな。記憶として留めておける情報量が増えます。これは特に説明することがないんだよね」
「確かに説明するまでもないような気がする」
「でしょ。今のところ一番効果が実感できなくてさ。記憶の量なんて数値として測ることもできないし」
「でも2つ合わせると中々効果的じゃないの。記憶の鮮明化で新たに手に入れた記憶は記憶容量アップの機能によってほかの記憶を忘れないで済むのだから」
「……組み合わせて考えると記憶容量の拡大も魅力的に写りますね。なんで私はその発想に至らなかったんだろ。レイラさん、ナイスです」
「あらあら、カノンの役に立てたようなら何よりだわ」
今までカノンは記憶容量の拡大については契約の機能のうち最も使えないものとして付属品のように考えていたようだ。レイラの意見を聞いてカノンは記憶容量の拡大の機能について見直すのであった。
「私が知っている機能はこれだけだよ。でも機能もまだまだありそうなんだけどね」
「カノンは何個ぐらいあると思っているの?」
「私は5つ知っているけど、少なくとも倍はあるだろうなと見当を付けるかなぁ」
カノンをもってしてでも契約によって発動できる機能は全部は知らない。そもそも契約者及び契約精霊の数自体が少ないがためにその契約による機能の全貌はまだまだ明かされていないような未知なる部分が多いのが実情なのだ。
「夜更かしのしすぎは身体に悪影響だしそろそろ私たちも寝ましょうか。まだ一日目ではあるけどカノン、この家は気に入ってもらえたかしら」
「シーハさんはうざいですけど、それを除けば最高です。レイラさんは優しいですし頼りになりますし、自分の部屋もありますし。思ってもみなかったほど至れり尽くせりで有り難い限りです。……あくまでシーハさんを除けばですが」
「カノンはまだ敬語が抜け切れていないわね……。フレンドリーでいいのよ。それにしても、シーハさん完全に嫌われてしまったようなのね。カノン、シーハさんは見た目はあんな感じだけど、さっきのは嬉しさのあまり空回りしていたのよ。ちゃんと言い聞かせておくから今日のは見逃してあげて、ね、お願い」
「レイラさんがそのように言うのなら……。ねえマヤカ、シーハさんっていつもあんななの?」
「まぁそうね……。私が初めてお邪魔した時もカノンのように同じ洗礼を受けたわ。でも、何度も接するうちに善人であるってことは分かったわよ」
カノンは夕食前の一件のこともありシーハのことはあまり好ましく思っていないが、悪い人ではないことは接した時にすでに分かってはいたのでレイラのお願いを受け入れる。
「そりゃそうでしょ。良いところが無い人がレイラさんと結婚できるわけないない。レイラさんは女でも憧れる高嶺の花なんだよ。皆にとっての理想の鏡なんだから。レイラさんみたいになりたいものだよ」
「いくら何でも買い被りすぎよ。私は陰ながら努力して大成したタイプの人間だから、努力は怠らない方がいいっていうことは自信を持って言えるわ。2人とも何事も挑戦&努力が大事よ」
「そうですよね。よし、私はカノンに負けないように自分磨きをしっかりして、恋のライバル争いに絶対勝つ」
「マヤカ、それはないね。私が婚約からそのまま結婚まで一直線に進むんだから。私だって負けないもん」
努力が大事だと言われて2人とも初めに思い浮かべたのはクルウドを巡る恋のライバル争いのことである。どういう訳かカノンとマヤカが絡むとどんな話をしたとしても最終的には恋のライバル争いの話になるらしい。
「はいはい、2人ともおしまいなさい。寝る前なのにまた熱くなっちゃって。そんなに闘志を燃やしていたらすぐ寝られなくなるわよ」
強制的にその話題を終了させて子供たちを寝かせるレイラ。カノンとマヤカが寝室に戻ってから独り言のようにレイラは呟く。
「…………クルも私と同じように苦労者になりそうね。子供が親に似ると言うのは本当のようね……」
皆さんが読む分には一話あたりどれぐらいの文字数がいいですか? これからの参考にします。
-
2,000字未満で1日おき投稿
-
2,000〜3,000字で2日おき投稿
-
3,000〜4,000字で1日おき投稿
-
3,000〜4,000字で2日おき投稿
-
4,000〜5,000字で1日おき投稿
-
4,000〜5,000字で2日おき投稿
-
5,000〜6,000字で1日おき投稿
-
5,000〜6,000字で2日おき投稿
-
6,001字以上で2日おきの投稿