運命は先天的にお兄ちゃん子 ―歴代最少の契約者たち 転生先にて恩送り 作:yyuuss
第2章1話目 マラ・モロッカの伝記
こんにちは。私は枕の精霊であるカノンです。私たちも兄ちゃんが転生してきてからすくすくと成長して早いこともう3年が経ちまして現在7歳の3月を迎えています。春は寒くなくていい時期ですよね。
えっ? 3年程なんて案外短いって? いえいえ、そんなことはないですよ。私も経験上思ったのですが子供のうちに過ごす数年ってあっという間なんです。
そのあっという間の時間の中でも色々と変わっている部分も数多くありました。私の場合だとマヤカとの関係がいい例ですね。初めのうちはライバルとしか見ていなかったんです。しかし、マヤカと関わっていくうちにいつの間にか仲良くなって今では彼女が一番の親友です。
逆にこの3年ちょっとでも変わらなかったものと言えば、やっぱりレイラさんの有能っぷりとかですかね。上手いこと誤魔化してくれたおかげで私が精霊だってことは知られずに戸籍も作成出来ましたし、こうして悠々自適に過ごせているわけですよ。あとは……シーハさんのちょっかいのうざさも相変わらずのもので日々飽き飽きしています。あまりにも長いこと無視すると反抗期になったと叫んでうるさいので時々は会話してあげています。
さて、精霊にも反抗期があるのでしょうかね……? う~ん……、少なくとも私は聞いたことはないですが……。
――――――――――――――――――――
転生してから既に3年以上が過ぎ、また新たな季節がクルウドたちに訪れる。クルウドが転生したのは4歳の冬であるから5月生まれのクルウドにとって今回で4回目の春だ。
この頃になるとこの世界での常識やマナーを間違えることもない。転生したことによる人格の変化については初めは驚かれたものも、街の皆さんには目立ちたがり屋の少年が大人になりつつあるとして受け入れられたようだ。
もうそろそろ学校に通わなければならない時期が迫っていることをクルウドは心の中では自覚しつつも遠ざけようとして過ごしていた3月のある日のこと。クルウドはリビングでのんびりとしていると玄関のドアがノックされる。レイラは外出するために色々と用意をしていたのでクルウドが出ようとするもレイラに手で静止される。
応対を終えたレイラが玄関から戻ってくる。どうやら小包が届いたようだ。そして中身を確認しようと紐を解くとレイラが目を見開くのが確認できた。
「クル、やっと本が届いたわよ。流石アンディと言ったところかしら。まさか原本をそのまま送ってくるとは……、ほんとよく見つけ出したものだわ……。ただでさえ原本を写したものでも数が少なく絶版の上に、これはマラ・モロッカの日記だからおおよそ800年ほど前のものよ……」
アンディとはレイラの友人であり付き合いは20年以上にもなる。アンディはこのジベック王国の王都ホウサで製本から販売まで行う本屋を営む店主であり、その本屋は王都でも片手の指に入るほどの規模を持つ。
しかしアンディの性格上、店主であっても彼は店にいない日の方が多い。じゃあその時はどこにいるのかというと当の本人は古本を求めて日々旅に出ている。新たなる本との出会いが彼の趣味である。
そして、このアンディの性格を知っているレイラはオッセラの街では見つけられなかった本があるとアンディに手紙を出して本を送ってもらうことにしている。いつもは近況報告に加えて本のタイトルを記した手紙を送るのだが、今回は少し違う。本のタイトルではなく、人間と精霊の契約をメインとした契約者の実話が書かれている書籍の中でアンディの目に留まったものは全て送ってほしい、とレイラはしたためた。
「凄く驚いているようだけど、その本はそんなにレアなものなの?」
マラ・モロッカの伝記を目の当たりにして数分が経ってもなお、普段は何事にもポーカーフェイスを貫くレイラは未だ薄笑いを浮かべていた。レイラが表情を表に出しているのを見るのは久しぶりだ。その様子を見てクルウドは只ならぬものだと知ったうえでレイラに尋ねる。
「そりゃそうに決まっているでしょう。普通こういう貴重な原本とかって個人ではなく国が所有して管理しているはずなのよ。珍しいものを探し当てて送ってくれるなんてアンディも気前がいい。だってマラ・モロッカのものよ」
「国が管理するようなものが手元にあるって……。それって実は盗品だったりしない?」
「そんなことはないわ。アンディは本が関わると独特な行動をすることもあるけど、盗んだりすることはないの。……それに交渉術を持ち合わせているからね。半年で届いたのもアンディのおかげ。運搬込みで半年ってもはや奇跡と言ってもいいほどよ」
通常は2カ月もあればアンディは依頼を完了して本を手紙と共に寄越す。ただ、今回はやや特殊のお願いかつ入手困難であったため半年も掛かっていた。
レイラが言うには今回ばかりは無茶振りであったらしい。それでもたった半年で応えるとはアンディは中々にして恐るべし人物である。
「なぁ母さん、800年も前の本がこんな綺麗な状態で現存していることってあるの? 紙が破れることなく触り心地もいいし、黄ばみや汚れすらない。この本が新品だと言われても俺なら信じるけど……」
クルウドはマラ・モロッカの伝記を手に取るとパラパラとめくり中身を確認する。すると中古本とは思えないほどに完璧に初期の姿を保っていることが分かる。
「恐らくこの本には魔法が掛けられているんだと思うわ。劣化の防止はもちろん雨風や熱に対しても効果があるんでしょうね」
「だから年月が経ってもなお新品のように見えるわけか。……この世界ではありとあらゆることが魔法で出来るんだな。奥深い……」
劣化しないと聞いてクルウドはそんな魔法までもが存在するのかと一驚を喫する。いつか使えるようになりたいものだ。
「今度こそ新しい知識が手に入るといいわね」
「ああ、そうであることを願うよ」
実はこれまでにも何度か歴代の契約者に関する書物をレイラに頼んで時々取り寄せてもらっているクルウド。そうして手に入れた数々の本ではあったが特に目ぼしいことは書かれていなかった。どの本にも契約についての記述も多少なりにはある。しかし、転生直後にカノンから聞いた情報を上回るものは一つもなかった。
そこでクルウドは歴代の契約者の中でもわりかし有名な人物の書籍に絞って注文を出した。その結果として今回届いた本というのがたまたま「再び絆を紡いだ契約者」として世に知られているマラ・モロッカの伝記であったという次第だ。
「それじゃあ私は出かけてくるから。何かはないとは思うけど何かあったら近くの大人たちに相談するのよ。クル、行ってくるわね。あとカノンにもよろしくね」
「了解。いってらっしゃい」
遊びに行くと言われていないので、カノンも家に居るはずだ。今は自分の部屋で過ごしているのだろう。
「ああそうだ。今家にはあまり食材がないから昼はどこかに食べに行くといいわ。お金は棚に入っているから。でも……カノンのことだからお昼は自分で作りたいと言うかしら?」
「そうだね。カノンなら買い物に出掛けてまででも昼ご飯を作るんだって言い張るんじゃない。大体2人の時は家で料理するのが基本だし。まぁ……俺が手伝おうとしてもいいからいいからって料理すらさせてくれないから見ているだけだけどね」
レイラが用事で家に居ないときは大体自分たちで作る。といってもほとんどカノンがこなすのだが…。どうも下手すぎてカノンに心配されているようだ。だけど、いささか過保護すぎる。俺の人生経験の合計はもう19年にもなるというのに…。
「まあね……、クルはあれだから……。カノンも心配しているのよ。それなら今日の夜にでも私のを手伝ってもらおうかしら」
「そうさせてもらうよ。……自分でも未熟だっていうのは分かっているからそう落ち込みはしないよ」
この世界に来てからも現代日本で暮らしていた時と同様に治らなかったものがある。それは不器用であるということだ。現代日本にて料理に興味が出てきたところで転生したクルウド。しかし、転生先のこの世界でも料理の腕は全然上がらなかった。これでは単に下手の横好きである。
「ん~、兄ちゃんどうしたの?」
「注文した本が届いたから一緒に読まないかって誘いに」
クルウドはカノンと読もうとカノンの部屋に入る。互いの部屋は別れているが、大体どちらの部屋かに集まって一緒にいる機会が多い。
「また頼んだの? 兄ちゃんが契約のことを知ろうとしているのは私としても嬉しいけど、今まで参考になった話が一つ二つぐらいしかなかったじゃん」
「今回は一味違うんだ。なんとマラ・モロッカの伝記が手に入ったんだ。カノンも知っているほどの有名な契約者だろ」
「マラ・モロッカって戦争後初めて契約者になった人だったっけ? 一応は知っているよ」
「有名な契約者が書いた本なら今までに記されていなかった機能の内容も載っているかなぁと思って随分前にお願いしておいた」
「まぁ確かに有名な人のなら新たな情報が書かれているかもしれないけど……。どうだろ?」
カノンは今回もあまり期待していないようである。マラ・モロッカという有名な契約者からでも契約の機能についての新情報が得られないとなると…、カノンが知っている情報が全てなんだろうか?
「そういえば、今日は母さんはいない日だけどお昼ご飯はどうする? 材料はない――」
「作る! 兄ちゃん、もうお昼ご飯にする?」
クルウドが言い終える前にカノンは張り切って宣言する。クルウドの予想通りお昼ご飯を作る気でいるようだ。
しかし、まだお昼というよりは午前中とされる時間帯だ。まだ朝食が腹に残っている。
「カノン、まだ昼になっていないからな。あと食材がないらしいから買い出しに――」
「大丈夫。今から買い物に行こっ! 兄ちゃんも早く準備してね」
「やっぱりそうなるだろうとは思ったよ。カノンはぶれないなぁ」
もう3年の付き合いである。この展開すらも予想していたクルウドは動じることなく素直に従うことにする。拒否することはできないし、そもそも拒否するつもりもない。元は一人っ子のクルウドもなんだかんだでカノンと一緒にいることが心地よくなったのだ。
皆さんが読む分には一話あたりどれぐらいの文字数がいいですか? これからの参考にします。
-
2,000字未満で1日おき投稿
-
2,000〜3,000字で2日おき投稿
-
3,000〜4,000字で1日おき投稿
-
3,000〜4,000字で2日おき投稿
-
4,000〜5,000字で1日おき投稿
-
4,000〜5,000字で2日おき投稿
-
5,000〜6,000字で1日おき投稿
-
5,000〜6,000字で2日おき投稿
-
6,001字以上で2日おきの投稿