運命は先天的にお兄ちゃん子 ―歴代最少の契約者たち 転生先にて恩送り   作:yyuuss

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皆さん新年明けましておめでとうございます。自分と当作品共々今年も宜しくお願いします。

自分の抱負としましては、先月の進捗状況に不甲斐なさを感じているので今年は出来る限りペースを上げて投稿したいです。


大切な2人の天使

 カノンと昼飯を食べた後、俺はカノンたちに起こしてもらうまで呑気に昼寝をしていた。食後の皿洗いの時間からして1時間強。寝落ちの時でもないと椅子の上でこうも長いこと寝ていなかっただろう。

 

「クルウド。おはよう」

「兄ちゃん起きた?」

 

 うとうととしながらも眠気を落とそうと目をこする。ただでさえカノンもマヤカも可愛さ抜群。その上でボーっとして寝ぼけているからか俺の目には2人ともが可愛さ極限に見えた。マジなところ誰が見てもこの2人を青髪と銀髪の天使だと思うに違いない。

 

「うん……マヤカか。いつから居たんだ?」

「10分ぐらい前からかな。ねえカノン、クルウドの寝顔かわいかったよね」

「そっかぁ、マヤカはクルウドの寝姿は見ていないんだ。私はいつも見ているからね~」

「自慢っぽく言われると少しむかつく。わざとそう聞こえるように言っているでしょう」

「え? そんなことない~。私だけが知っていただけだよ」

 

 互いにマウントを取ろうとする姿勢は知り合ってから3年も経つ今でも変わらない。まぁ俺を巡る対決であるってことは俺にも少なからず原因がある?のだろう。だから初めのうちから俺は黙認していたさ。

 

――――――

 

 俺の家やマヤカの部屋の中にて散々マウント取りや口喧嘩をしてくれる分にはまだ許容できる。それなら家族以外には誰も見られることもなく、気苦労もしれたものだ。しかし、それを外で平気な顔をしてやられると色々と面倒くさい。

 

 まず、俺たちに注目が集まってしまう。それが俺としては普通に恥ずかしい。どちらかと言えば注目を浴びるのは苦手な方だ。出来る事なら目立つことなく細々と暮らしたい。

 

 そしてその注目の的になっている当事者がカノンとマヤカの美少女2人ときた。マヤカもここ西地区で一番のヤンセン食堂の看板娘であり、ホールや接客の手伝いをしているのでよく知られている。ならば余計に人の注目が俺たちに飛んでくるのは避けられない。

 

 この騒動の中に俺が関わっているのを知ると、野次馬の中にいる大抵の男どもが俺に向ける視線の多くは俺に対する嫉妬等の好ましくないものばかり……。睨みつけてくる奴もいる。正直疲れる。

 

 それでも親しくしている近所のおばちゃんたちが自分の子供を見ているような優しい視線を向けてくれるのがせめてもの救い?なのかもしれない。

 この近所のおばちゃん方。母さんみたいに専業主婦の人もいれば八百屋や肉屋といった自分の店でばりばり働いている人も多い。皆顔の広い母さんとは知り合いだし、カノンは愛嬌がありおばちゃんたちの人気者だ。また、俺が外に出る際にはカノンが同行していることも多く仲良し兄妹と思われているようである。

 だから俺もカノンも日頃から自分の子供のように随分かわいがってもらっている。もし俺1人だったらこのおばちゃんたちとはそこまで仲良くなってはいなかっただろう。

 

 

 

 しかも2人とも言い争っている時は脇目も振らず言い合うことも少なくないので誰かが止めなければならない。この時誰が止めるかというとその役割は当然俺に押し寄せられる。

 そうして嫌々ながらに言い合いを中断させると2人ともそこで俺の心情を察してくれて言い合いをやめてくれるが、それなら初めから自重してほしいところ。

 

 これだけでは終わらない。オッセラの街を歩くだけでその一連の言動を見ていた近所のおばちゃんや親父たちに色男だの、可愛い奥さんで羨ましいとか言われるのだ。それもまた疲れるもので……。

 

 ちなみに羨ましがっていたおっちゃんたちが女房であるおばちゃんに私は可愛くなくて悪かったね!と怒られる光景を何度見ることになったか。

 

 

 

 しかしながら、色男とかもてはやされる俺だが、そもそもカノンとマヤカに好意を持たれているだけであって他の女子からアプローチを受けたことも全然無い。ましては俺にはカノンとマヤカ以外に女子の友達もいない。……思い返してみると数回ほど近所に住む女子と仲良くなりかけたことがあった。だけどその度にいつの間にか俺の前に姿を見せなくなったっけ。

 

――――――

 

「クルウド? もしかして寝ている?」

「起きているよ。考え事をしていただけ。ん、言い争いは終わったのか」

「なんか疲れたからやめた」

 

 マウント争いから派生してカノンやマヤカのことを考えているうちに2人はいつも通り仲良くしていた。ずっと仲良くしていればいいのに。

 

「ところで、く、クルウドはさ、今のところ私とカノン、どちらの方が好きなの?」

「ど、どうした藪から棒に?」

「さっきカノンと言い合いをしていた時にクルウドはもうどちらかに決めたのかなぁという話になって。それならいい機会だし直接聞いてみようかなと」

 

 突然そのような質問をされて少し動揺した。だってマヤカが質問する時に顔をすごく赤らめて言ってきたのだ。可愛すぎるでしょ。反則級です。

 

「埒が明かないから言い合いをやめたっていうのは兄ちゃんには内緒だからね」

 

 ん? 俺に内緒にしたい話を俺の前で言うのはポカなのかあるいはわざとなのか? 

 

 と思っていたらカノンが目くばせをしてきた。これはカノンの計画的犯行だな。

 

 マヤカはカノンをあざとく見ていそう。あっ、ちょっと機嫌を悪くしたようだ。

 

「ん……。クルウドが転生してきてからもう3年でしょ。中間発表するにも今はいい時期だと思うの」

「恋のライバル争いの中間発表か?」

「そうよ。カノンとの婚約が解消されるのは成人になる時で10歳の時。だから結婚に至るまでもう中間地点を通り越したぐらいね」

 

 おっ、推測が当たったようだ。前の内容から考えれば大体想像は付く。

 

 俺がこの世界に転生してクルウドとして過ごすようになったのは4歳の冬からだ。そして、結婚が認められるのはマヤカが言うように10歳の時だ。誕生日まで俺は2ヶ月、4月生まれのマヤカだと来月になる。カノンも6月生まれなので3人とももうすぐだ。今は7歳なのであと2年半後ぐらいである。

 

「6年に渡る争いももう後半戦なのか。何だか感慨深いな」

 

 カノンやマヤカと出会ってからの3年を思い起こす。振り回されることも多いが楽しい日々だ。これからも続いていくのだろう。

 

「それでクルウドはどっちが良いの?」

 

 俺はカノンとマヤカをそれぞれ見た。今の俺には答えは1つしかない。

 

「……2人ともではダメかな?」

 

この場における一番無難な回答である。カノンのこともマヤカのことも大事に思っているので自分の気持ちに嘘偽りもない。

 

「何となくそうなるとは思っていたけど」

「う~ん……、優柔不断だね」

「今目の前にはカノンとマヤカの2人の美少女が居るのに1人に絞れって言われてもねぇ…………。選べないだろ」

 

 互いに選ばれたかった女子2人にとっては不本意な結果である。反応がいまいち悪い。

 

「カノンだってある程度予想していたんでしょ。突然どちらか一人を選べって言われて迷いなく決心できるほどのクルウドではないし」

「優柔不断なのが兄ちゃんだもんね」

「カノンを選べばマヤカが怒るし、マヤカを選べば今度はカノンが拗ねるだろ」

 

 何か小心者扱いをされつつあるがスルーする。

 

「それもそうね。クルウドがこのタイミングでカノンを選んでいたら……、私は一生顔を合わそうとしないかな。……でも私が告白されたことで親友が泣きじゃくっている姿はね……見たくない」

「マヤカは私や兄ちゃんには結構甘いよね。それがマヤカの良いところだけどあまり情を移さない方がいいよ」

「それは親友だから言ってくれている? それとも恋のライバルとしてかしら?」

「もちろん親友だからだよ。マヤカが友達でも何でも無かったら何振り構わず蹴落としただろうけど」

 

 マヤカは気配り上手で優しく一歩引くことのできるお姉さん気質。一方でカノンの方は言うなれば一直線に突っ走る性格である。よって張り合っている時は別だが、2人と一緒に居る時にはどうしてもカノンがぐいぐいと積極的に来るのに対しマヤカは少し控える構図になりやすい。それをカノンは甘いと言っているのだろう。

 

「ねえ兄ちゃん、でも好きの重さなら私の方が上だよね」

「そんなことないはず。カノンよりも私」

「それに2人とも同じぐらいに好きだ。決して生半可な気持ちで言ってはいない」

 

 まだこの話題を引きずるまでに熱意を持っているのだと感じて、間髪入れることなく答える。時間をおいて期待させてからこの回答をするのは酷であるし、2人それぞれに魅力があるのだ。

 

「……複雑だよね。マヤカの良さが私にも分かるから尚更」

「クルウドが私たちだけを見ているっていうのが分かっただけでも」

「うん、下手に変な虫が付くよりかはマヤカの方がずっとましだけど」

「ライバルはカノンで十分だわ。カノン一人だけでも手強いのに」

 

 カノンとマヤカは互いの顔を見ると笑い合う。それはまるで直前まで激しい試合を行っていたスポーツ選手が互いを称えるようだった。

 

「そうだ、3人で住めばいいんだ。気心の知れた親友同士なら仲良くやっていけるだろ」

「駄目よ。一夫多妻には国の特別な許可が必要だわ。私たちには当然王国関係者とのコネもないし、申請したところで門前払いされるはずよ。前にも言わなかったっけ」

 

 俺としては事実婚みたいな感じで考え合わせていたのに直ちに否定されてしまった。事実に勝る満足感はないものだろうが……。

 

 それでも彼女たちにとって法的に認められた上での結婚が理想なのだ。それ故、恋のライバル争いはまだまだ続く。

 

「必然的にカノンとは争わなくてはならないの」

「これからも勝負だね、マヤカ!」

「ええ!」

 




皆さんは初日の出はご覧になられましたか。

学校編と銘打っているからには次話からは学校を登場させねば。

皆さんが読む分には一話あたりどれぐらいの文字数がいいですか? これからの参考にします。

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