運命は先天的にお兄ちゃん子 ―歴代最少の契約者たち 転生先にて恩送り 作:yyuuss
深生という名前の私の兄ちゃんに対してこちらの世界での理や覚えておかないといけない常識を少しだけ上から目線で自慢げに一から教えてあげているこの美少女である私を皆さんは知っていらっしゃるでしょうか? ご存知でない方はこれを機に覚えてくださいね。答えはとてもかわいくて愛嬌のあるヒロイン候補のそうこの私、カノン・ベディ・エピローヴ、種族は枕の精霊です。ふっふ、以後お見知りおきを。
(ああ、自分でとてもかわいいとか言っちゃうなんて、なんだかこっぱずかしいものですね)
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あれから多少時間が過ぎたのち、深生は気落ちしていた。転生先の身体も含めた自身の境遇もその理由の一つだ。
「聞いた感じだとこの世界は日本での生活とは勝手が違いすぎるんだろ。知識にしたってどれだけ覚え込まなきゃならないのさ。第一、設定が3歳児とかそもそも何なのさ。全然体が思い通りに動かねぇ。これでは近いうちに怪我しそうなんだが」
深生は浮かび上がってきた現状に対して不満を色々と口にする。深生にとっては転生したことで急に体が小さくなった感覚なのだ。部屋の中を少し歩いてみるも歩き方がぎこちない。
「どこに住んでいようが新しい生活を起きる都度慣れていくしかないしょ。早いうちから慣れていった方がこの世界での当たり前やマナーが体に染み込むし、このお年頃なら言動がミスっても若さ故とかとして何とかごまかせるよ。仮に15歳ぐらいの大人ぐらいから始めたとして、日常的に異質な言動をしたせいで頭おかしいとか兄ちゃんも言われたくないでしょう?」
悪口を言われたくはないし、頭おかしいとか噂された日には見知らぬ世界への恐怖から人生初の引きこもりになりそうな気がする。向こうの世界では一度もそういうピンチはなかった。それなら高校受験ぐらい必死になってこの世界の教養を身につけた方が賢明な選択と言えるだろう。
「それにこの年代にしといた方が大人の時からと比べてより長く兄ちゃんと一緒に居られるもんね」
「おい、結局お前の勝手じゃねぇか。だから俺はお前のお兄ちゃんじゃないって」
自分のために色々と考えた上で尽くしてくれたのだと感心していたが勘違いだったようだ。この少女のエゴだけで3歳児にされたとか……、単に俺被害者じゃん。しかし、お兄ちゃん呼びは慣れないどころか、そもそも兄弟ではないだろうよとツッコミをしたいが効果が薄そうなのでしないでおく。
「いいえ! 兄ちゃんは私の兄ちゃんです。私の、私による、兄ちゃんのための私、を至上命題にしてこの世界でも兄ちゃんをいつも支えるから不安にならずにいつでも頼ってね!」
案の定のことだったが、カノンは兄ちゃん呼びをやめない。カノンさんはどこかの国の有名な演説になぞらえたようにいかにも当然だという感じでおっしゃられるが、口に出すまでもなく普通に怖い。そりゃあこの世界で楽ができるのならこの上ないことだが、今までの会話にあたりこの娘はいわゆるヤンデレ気質ではないかと推測する。この感じは間違っていないはずだ。そうであればカノンの扱いには気を付けようと誓う。面倒ごとはこの人生にもいらない。
「……ああ、そうかい。どうせ、なんて言っても兄ちゃんって呼ぶんだろ。じゃあ兄ちゃんって呼んでくれ。それと自分を支えてくれるっていうならまず、この世界の情報が欲しい。全く情報がないのでは今現在もこれからも不便極まりないしな」
カノンがしつこいので兄ちゃん呼びを許可したが、兄ちゃんっていう呼称もいずれ慣れれば気に入ることもあるだろう。それよりもこの世界に対して圧倒的に知識不足であるため早急に情報が欲しい。情報を制する者が戦いを制しひいては世界を制すってもんだ。それほどに情報とは価値が高いものでもあるのだ。かわいらしい少女でも精霊ならばこの世界についてある程度は詳しいに決まっている。
「言葉にして伝えてもいいけど、それだと理解できない部分も多くなるよね。じゃあ手っ取り早く契約しようよ。兄ちゃんこっち来て」
「は、ちょい待て、まず契約ってなんだよ?」
突拍子もなく契約しようと言われても何に対する契約なのかさっぱり分からない。わざわざ言うってことはゲームのイベントみたいなものなんだろうか。しかし、カノンは無駄なことを長々と説明しやがったくせに契約のイベント的な話を一度も喋ってくれなかった。それなら省略しがいのあるくだらない話よりも契約の方を詳しく説明しろってものだ。急に話を持ち掛けてくるとかカノンは悪徳セールスよりもたちが悪いのではないか。誰が悪徳セールスなのか自分は見抜ける自信は割とある。
「説明してなかったっけ。私たちみたいな精霊族は精霊以外の普通の人間や魔人、獣人といったようなヒトと契約を結ぶことで結んだ者との間で互いの能力を共有したり高め合ったりできるんだよ。ただ、精霊も数としてはたくさん存在しているんだけど警戒心からなかなか契約を結ぼうとはしないんだよね。そもそも大半の人間は契約を結べるだけの資質を持ち合わせていないし、たとえ資質のある人間が精霊にアプローチしても万が一に契約を受け付けてはくれないから」
聞いただけで想像すると精霊は数としては多そうだ。ただ、精霊という種族は気難しいのか契約しようとはしないらしい。そして、そもそも契約するには人間側にも条件があって「資質」が必要とのこと。ということは資質が無ければ契約はできないよな……。
「自分には契約するための資質はあるのか? ないのなら言わないとは思うが」
気になることをカノンに聞いてみる。自分には資質をどのように計るのかは分からないが、精霊なら資質の有無ぐらい分かるものだと思う。
「資質がなかったらそんなことは言わないよ。期待させるだけさせてから出来ません、っていくらなんでもひどすぎるよ。兄ちゃんにはきちんと資質はあるからね」
資質があるってはっきりしたことで、深生はほっと一安心した。まだ、気になることも多いので続いて聞いてみることにする。
「さっきの話なんだけど魔人とか獣人とかってホントに存在するのか。憧れを通り過ぎるほどファンタジーな世界だったんだな、ここは」
カノン情報だとこの世界には魔人や獣人もいるらしい。どんな感じの見た目なのかすごい気になる。どうせならこの精霊ではなく初めに魔人とか獣人に会いたかった。まぁ人間と敵対していたら殺されたかもしれないがその時はその時だし、転生ものオタクとしては実際にこの目で見られるのなら死んでも悔いなどない。
「もう急に目を輝かせてしまって仕方ないなぁ。この世界には兄ちゃんが転生もので知っているような種族ならそれなりにいるよ。ここからは遠いけどね。」
よし決めた。10歳とか15歳ぐらいになったら成人を迎えるだろうから魔人とか獣人の国に行こう。それぐらいの年になれば体力も増えるだろうし、魔法も使えるようになるだろう。異世界っていったらいつでも冒険は付き物だ。
ただ、そうすると旅の前にカノンとは絶対に別れないといけない。遠いなら長い旅になるし自分のわがままによってカノンにまで危険を及ばせる気はない。これまでもこれからも関わってしまった以上、その人にまで迷惑をかけるのは流石に良心が痛む。
「話を契約に戻すよ。精霊の性格もあって人間と契約している精霊は少ないんだけど、転生時にきちんと確認したから兄ちゃんはちゃんと資質も持ち合わせているし、私も兄ちゃんと契約する気まんまんだから契約には問題ない。実際契約して失うものはないし損はないよ。契約によって発動する便利な機能もあるし」
「例えばどんな機能があるの? 普通に便利なら考える余地はある」
楽して人生を過ごすなら珍しい能力は必要ですよね。契約できるだけの資質を持っているとしても自分の心や魂などではなくやっぱりこの身体本体のおかげなのだろうか……。深生は少しだけ考えていたがパッと顔を上げると、答えが出なさそうな問題は気にせずに生きていけばいいはずだと一人納得する。果たしてどんな機能があるのか。
「おっ、兄ちゃんもノッてきたね。まずはこの機能、知識の共有です。私の欲しい知識を好きなだけコピーできます。知識の可視化ができるとかできないとか。もちろん、私も兄ちゃんの知識を得ることができるよ。手早く情報を得るには効果的だし、契約するのはこれが目的でもあるよ」
「なるほどね。契約した者同士なら知識の共有ができるから契約しようよ、ってことか」
契約することで知識を得られるのなら効率的だと感じる。知識の可視化とはいまいちピンと来ないが、これもまた便利なまでに理解しやすくなるように作用するのだろうか。
「そういうこと。兄ちゃん、次の便利な機能は記憶容量の拡大だね。人間の脳は記憶できる情報量に限界があるのは知っているよね。このままいくとこの世界で過ごすために必要な情報がどんどん増えてしまって、今までいた日本での記憶は忘れてしまうかもだけど、契約することで記憶容量がアップします。これで大事な記憶も遠い思い出も覚えておけるよ」
「それはそんなにすごいのか? 自分にはそんな大した知識も記憶もないぞ」
皆さん本当にその通りなんです。カノンは自分の知識についてやけに期待しているようだが、所詮、料理も家事もできない平凡な高校生の知識や記憶では役に立つものなんて一つもない。
現代日本と全く同じでない限りは、こっちの世界で生きていくなら心機一転を計って現代日本での記憶は忘れてリセットするのもありなのではとも思える。余計な記憶は判断に行動を誤らせる罠にしかなりえない。
「兄ちゃんの知識に記憶はとても貴重だよ。この世界には魔法がある分明らかに技術は発達していないし劣っているから、兄ちゃんの居た向こうの世界の技術はこちらの人々にとっては驚くほどのものなんだよ」
クルウドは精霊とか魔人とかが当たり前にいる世界なら魔法も存在すると信じていたが、予想通りこの世界には魔法が存在している。それも技術を凌駕しつつあるほど魔法が一般的に使われているため、技術があまり発達していない。仮想体験の時にもオッセラの街の中で移動手段として馬をよく見かけたことをクルウドは思い出す。
「まだまだあるよ。次のものは記憶の鮮明化。鮮明化の方は文字通り一度でも見た記憶を脳の中で鮮明化してまるで今見ているかのように映像にして見ることが出来るっていう機能ね。この機能はここがポイント! 一度でも見たっていうところがミソなんだよね。つまり、たとえ兄ちゃんが今忘れているような記憶やチラッと目をやっただけの記憶でも鮮明化できるんだ。ただ、この機能の弱点として私たちの頭、脳に直接作用するから魔力の消費が他の機能に比べて果てしないこと、そして、脳の中で映像化されるから兄ちゃんと私しか見られないことだね。まぁ後者の方は契約するのが私たちなんだから当然と言っちゃ当然だけどね」
一度見た記憶なら忘れたものでも復元するかのように見ることが出来るなんてことは現代日本での技術を集大成しても恐らくは無理だ。このような素晴らしい機能には美しいバラには棘があるように、代わりとして知識の共有化や記憶容量の拡大とは違ってデメリットも存在する。その一つが魔力の消費量に表れている。脳に負荷が掛かるようなので魔力が他の機能より必要になる点は致し方無いところだろう。
「ある意味記憶の使い方には気を付けないとならなそうだな」
深生はそう言うと自分の記憶の事でしばらく悩みこむのだった。
これで5話が終わりました。作者はよく分かっていないのですが、1話あたりどれぐらいの字数がいいのでしょうね。
まだまだ物語は始まったばかりなので、これからも末永くよろしくお願いします。
皆さんが読む分には一話あたりどれぐらいの文字数がいいですか? これからの参考にします。
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