運命は先天的にお兄ちゃん子 ―歴代最少の契約者たち 転生先にて恩送り 作:yyuuss
私は精霊族のカノンです。転生がうまくいってせっかく直に会えたっていうのに誰かさんの態度が冷たいような……。美少女を目にしたことによる照れ隠しならいいのですが、ひょっとすると兄ちゃんは私のことを嫌っているのかもしれないです。特に兄ちゃんって呼ぶと俺はお前の兄ではないと少し怒気を帯びた顔つきで言うあたり怪しいです。しかし、もし兄ちゃんの不本意でないとしても、いやいや受け入れてもらわないと私困ります、一緒に居たいので。というわけで少し早い気はしますが私、兄ちゃんと契約しようと思います。いえ断定しましょう、私カノンは絶対兄ちゃんと契約してみせます!
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「兄ちゃんの知識に記憶はとても貴重だよ。この世界には魔法がある分明らかに技術は発達していないし劣っているから向こうの世界の技術はこちらの人々にとっては驚くほどのものだよ」
こう言われた深生は無言になって黙り込むと、自分が持つ情報の重大性を再確認する。
(それほどまでに魔法が人々の生活に与える影響が大きいんだな。確かに魔法で事足りるのなら技術は発展しない、のか。となると現代日本で技術にあふれて育った自分がふとした迂闊な行動を取ると変えてしまう可能性もあるってことか。恨みを買うのはごめんだから大人しく過ごすべきなのか)
転生者が異世界にて活動する場合たとえ普段から行動に気をつかっていてもどこかで必ずボロが出てしまうものだ。そして、そのボロは勘が鋭い奴に見抜かれてしまうのがオチだ。ならばいっその事初めのうちから包み隠さずに堂々としていりゃいいのではないかって、答えは考えるまでもなくノーだ。
大概このような場合において転生者ですと正体を隠さずしてのんびりと過ごせるわけがないのだ。理由はこうだ。まず、そのような者を貴族や国などがぬくぬくと放置することはない。次に目を付けられた以上は権力という名の下で身を捕らえられる。いい人ならご来賓として丁重に扱われるが、悪い場合はひどい拷問が待っている。どちらにしてもその世界での新しい技術を一から十まで教えなければならなくなる。断るのなら半ば脅迫という形で結局情報を吐かされることになるだろう。そうなればどのルートを辿っても俺は大切な時間を奪われることになってしまう。つまりは自由な時間が減るのだ。再び言い換えるならそれは面倒ごとに値する。面倒ごとはいらないのさ、なぜなら面倒だからねっ。よしキマった。
ちなみにこの仮説の参考文献は今までに読んだ転生もの関係の書籍やストーリーからだ。しかし、案外知識や記憶も役に立つもんだな。記憶のリセットとかは前言撤回するのでナシでお願いします。
「ね、兄ちゃん兄ちゃん。生でころころと兄ちゃんの表情が変わっていくのを見られて初めは新鮮で面白かったんだけど、もう見飽きたしぶつぶつと呟いていてちょっとキモいから仏になって。仏の心を忘れないで」
「そんなにキモかったんかよ俺。ってキモいって言うな。それに仏になれってどんな命令だよ」
どうやらあのキメに行った我が仮説はカノンに聞かれてしまった上に、あのブラコンのカノンにさえもキモいと言われてしまった。不幸中の幸いを探すなら、この場にほかの奴がいなかったことぐらいか。
「キモいって言っちゃったことに関してはごめんなさい。仏の意味は兄ちゃんに仏みたいに冷静沈着で寛大な心で許してほしかったから……。ケンカしたくないし」
「……何故上目遣いをしてくるんだカノン。心配するなって。まぁキモいって言われてショックだったけど人生の通算で2度目だし気になんて留めていない。それより契約の話をだな。早い方がいいんだろ?」
こいつこんな表情もするのかというレベルで頭をペコリとしつつも上目遣いでカノンは許してほしいと謝ってくる。べたべたと許可もなく触ってきたりはしゃいでいるカノンの姿なら一日でずっと見てきたがそんな顔は初めてだ。この状況はハニートラップだと分かっていても世の男性ならず女性でも引っかかるだろう。転生しても一応俺の心は男のままだし。まぁそもそも転生先であるクルウドも男ではあるが。とにかく年齢に見合わずどこか妖美でかわいらしい少女を目の前にして絶対に許さずにいられないじゃないか。すぐにでも場の空気を変えるためにもここはひとつ話題を戻すべきだな。上目遣いで見つめてくる姿が可愛すぎて見つめられすぎ毒だ。
「まだ、機能はあるけど他としては念話かな。念話っていうのは転生もの好きの兄ちゃんに説明することもないけど私と兄ちゃんの間で直接目を見て会話することなく離れていても互いの意識の中で会話できるシステムだよ。あと、私限定なんだけど兄ちゃんの見ている視界を私は見ることができるんだ~。え、なんで冷たい目で見てくるの。私が見れるのは兄ちゃんが見ているその景色だけだし、ちゃんとプライバシーに配慮して兄ちゃんの方でアクセス権限のオンオフ切り替えは出来るからさぁそんな目でこっち見ないでよぉ」
こ れではカノンに対する評価が難しい。謝ってきた直後であるのにも関わらず次は盗撮でもする気らしく、あ、こいつやるな、と万引きGメンのように厳しい視線をカノンに向けてみればカノンはふためいて取り繕ってくる。人の視界を勝手にのぞき見しようなんてこいつはストーカーとか変態の類いなのかとつい構えてしまったが、しょぼくれた顔を見るにどうも悪気はなさそうなのでスルーする。
ただ現実的な問題として、こっちの世界に来てから今のところ頼れる人がカノンと未だ確認はできていないが血のつながった親という3人だけではどうしても一番の情報源であるカノンとは縁を切りにくいし、今切ってしまうのは勝手がわからない現状として悪手すぎる。一応切り替えできるらしいしずっと視界共有はオフにしておけば問題なかろう。すぐにでも楽しく生き抜くために友達を作ってツテを増やさなければ。
「念話は使い勝手は良さそうだけど、視界共有はなしだ。こちらがカノンの視界が見れないとかフェアじゃないし。念話とかそれらってカノンと契約しないと使えないのか?」
「そりゃ互いに了承した上で契約することによって兄ちゃんも私も不思議な力がはたらいて常時意識を繋げられるんよ。その上で能力が強化されたり、互いの能力が使えたりするなどとってもお得なんだよ。ただ兄ちゃんが言ってた視界共有だけは太古の時代からどうやっても精霊しか使えないらしいんだ、そこのとこはごめん……」
視界共有が精霊固有で使える能力っていうのならしょうがない。お前のせいじゃないんだから気にするなと泣きそうになるカノンをなんとかなだめて落ち着かせる。使えない能力が一つぐらいあるからって泣いて謝ることか? 案外、素直に優しいのかもしれない。
「悪徳商法みたいに契約しろと押しつけてくるけど本当に大丈夫なんだよな。きちんと時機を見て解約できるのか。一人につき精霊もまた一人ならば他の精霊と契約したい時は解約しないといけないんでしょ。そこのところははっきりしておかないと後々不利益を被りそうなんでね」
若干語尾を強くすることでこの俺でも真剣に怒ることを示して、カノンが動揺してくれることに期待する。解約できないなどそれこそ悪徳セールスの戯言と同類だ。
「解約? そんなのできるわけないじゃん。っていうか私絶対兄ちゃんとの契約は破棄しないし、する予定もないんだから。っていうか精霊と一度契約したならもう解約はできないもん。そもそも浮気するなんて完全にアウトです。私はいつでも兄ちゃんを心のうちから信頼しているし一緒に過ごすのは決定事項なんだからね! 分かった?」
(二度あることは三度あるかのように普通に既定事項が何事もなく飛んできたよっ。カノンさんある意味で恐ろしや)
ツッコミしてくださいといわんばかりに、点火した爆弾を平気で投げるかのごとく発言するとは気が強い以上にこの娘かなりのやり手の部類に入りそうだ。どの世界においてもこういうやつと結婚すると尻に敷かれるのが手に取って理解できる。
ただ冷静になって考えると、ヤンデレの可能性大で重いことの多いカノンであってもここまではっきりと言うのだから契約を結ばないとこの身に災いが降りかかってもおかしくはない。実際によくある展開だしな。今までの会話にない程強引までに押し切っていることからも、あえてこれから起きる現実を教えることによって怖い思いをさせたくないという慈悲が感じられる。それに転生が完了したとも言ってたような気がするし、たとえ今死んだとしてももう高校生の鏑木深生には、そして、現代日本には戻れないような気もする。それなら精霊カノンとの契約が自分がこの世界で生きるために必須なのなら面倒ごとが増えてしまうがやむを得ない。面倒ごとは嫌だがこんなところで死んでたまるか。
「精霊カノン。君がそれ程自分の身を案じてそう言ってくれているのなら、自分と契約してくれないか。これは自分の意思で決めたことなんだ。この通りだ、よろしく頼む」
妙にかしこまった言い方にはなってしまったが、ここで精霊カノンの機嫌を損ねて契約が不成立にでもなってしまうものなら、これからの人生が色々と辛くなるだろう。特に情報面においてだ。情報を制する者は世界をも制するってもんだ。まぁカノンも自分のことがとっても大好きらしいし契約成功になるだろう。
「ふっふっ。精霊カノンってなんなの。私は今まで通りカノンって呼び捨てされた方が親しみやすいから名前の前に精霊って付けなくていいよっ。精霊って人間と契約しているのってまだまだ珍しいから注目されちゃうし、ばれちゃうと悪い輩どもが襲ってくるかもしれないじゃん。なんだかんだ私もかわいいし、精霊の力って普通の人から見るとすごい力だしね。これから契約を結ぼうと思うんだけどこの部屋はちょっと狭いからどっかある程度スペースがある場所にいこっ」
「そんなこと言ってもこっちに来て間もないからここら辺はさっぱり分からないんだけどどこに行けばいいのさ?」
転生してまだ初日のうえさっきまで長々とこちらの世界の説明を聞いていたので我が家付近の地理に詳しくはない。ここはオッセラだとはカノンに教えてもらってはいるが、ここがオッセラのどこかまではカノンも知らないようだ。
「聞けばいいじゃん、聞けば。この家にはこの街に長年暮らしている人もいるんだし」
カノンはこう言って自分の手を掴むと部屋のドアを開けて、リビングへと向かう。そして、そのリビングにはこの世界における自分の母さんが居たのだった。
皆さんが読む分には一話あたりどれぐらいの文字数がいいですか? これからの参考にします。
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