早く来てくれと呼び出された先にいたのは、わんわん泣いている雪風でした。陽炎リベンジャーズ。
*主人公は陽炎
「かげろぉ!!かげろぉオオオオオオ!!!」
「お~これはまたすごいわね…!」
雪風が号泣してるから早く来てと呼ばれて来てみたはいいけれど…いったいこれはどういう状況?
雪風だけかと思ったら陽炎型が揃いも揃って…もう全員この場にいるじゃない!というか雪風!泣いてもいいけどその金切り声はお姉ちゃん頭痛くなっちゃうからやめて欲しいかな!?
「ほらどうしたの?陽炎お姉ちゃんが来てあげたわよ?」
「うええええええん!!」
目の前でわんわん泣いている雪風の頭を撫でると彼女は私の胸に飛び込んできた。涙と鼻水でとんでもないことになってるけど仕方がないから私の胸を貸してあげるわ。
「よしよし…ほら、せっかくのかわいい顔が台無しよ?もう泣かないの!」
「だって~だってええええええええ!!!」
泣きわめく彼女を宥めようと優しく声を掛けるが一向に雪風は泣き止む気配がない。泣いてるばかりでは何故彼女が泣いているのかが分からない…。私は助けを求めるように周りにいた姉妹艦たちの顔を見る。
「それが…うちらもよくわからんのや」
「不知火たちが理由を聞いても今みたいに泣くばっかりで…。だから陽炎に来てもらったのですが…どうしたものでしょうか」
「う~ん、そうねえ~」
私同様、周りの姉妹艦たちも雪風がここまで泣く理由がわからないらしい。このまま雪風が落ち着くまで宥め続ければいいんだろうけど…この雪風のギャーギャーは当分おさまらなさそうね…。困ったわ!お姉ちゃんとしてはこのままずっと一緒にいてあげたいんだけど…なにぶん今日はですねぇ…この後それは大変な出撃任務が控えてまして、ええ。しかも旗艦が神通さゲフンゲフン!!
冗談はさておき、雪風がこうなっている原因を分からないまま放置しておくのはやっぱり癪だ。これは陽炎型の長女としてのプライドに関わってくる。
妹を泣かせた原因がなんであろうと私はそれを許してはならないのだ。たとえそれがただ単に拾い食いをして腹を壊しただけでも…。そう思ってもう一度周りを見渡す。
机に椅子、食べかけのアンパン…特に変わったものはないけれど―――何か雪風が泣いた原因が分かるものはないか。何か手掛かりは…。
「あの~」
「ん?」
「もしかしたら秋雲さん、雪風が泣いてる理由分かる…かも?」
「ええ!?」
おずおずと申し訳なさそうに手を挙げた秋雲…急に何を言い出すかと思えばそれすっごく重要なことじゃない!?というか驚いて思わず変な声を出しちゃったけどなんでそんな大事なこと今まで黙ってたのよ!
「いや~陽炎がいた方がいいかなって…」
そんなこと気遣わなくていいのよ!!別にお姉ちゃんだけ除け者にして…!なんて思わないから!まあ確かに…はぶられたらはぶられたで気にしちゃうけどさ!ちょっとお姉ちゃん面しすぎちゃったかなとか、日頃の関わり方間違えちゃったかなって思うかもしんないけどさ!
ま、まあいいわ…!秋雲がどことなく歯切れが悪いのが気になるところではあるけれど有力な情報が得られそう。
それで?雪風が泣いてる理由は何なry…
「いやーそれがさあ?この少し前に雪風が夕雲型のみんなと遊んでたのを見たんだけどぉ…。なんか急に仲間外れにされちゃったみたいでさあ!雪風ひとりを残してみーんな走って行っちゃっうんだもん!その時の様子と言ったらさry…」
「……………」
あーなるほどね!
そうだったんだ!やっと理由が分かったわね!
ふーんなるほどね~!そっかそっか、あははははは…
………………………
……………
……
…
「んなわけねーだろうが!!!」ガンッ
「ひえっ!」
近くにあった椅子を思いっきり蹴り飛ばしてやった。それでも私の中でポッポーと音を立てて煮えくり返るはらわたは鎮まりそうにない。
私が椅子を蹴り倒したことに秋雲はビクッとなっていたが、ほかの陽炎型のメンツは違うみたい。
自分の顔を見ることは出来ないけれど…今妹たちが浮かべている憤怒の表情がきっと私にも浮かんでいるんだろう。
やはり最高ね…陽炎型は!身内の為にここまで怒れるなんて…あなた達の長女であること誇りに思うわ!!
「よっ……と!」
未だ顔をうずめて泣きわめいている雪風を引き剝がして不知火に引き渡す。不知火の胸は完全に平らだから机に突っ伏してるみたいで泣きやすいと思うわよ、雪風!
そして不知火がナデナデしている間に私は近くにあった机の上にあがり、腕を組んで仁王立ちになる。
相変わらず雪風はわんわん喧しいし、秋雲はドン引きした様子で見ているけれど他の姉妹艦からの視線は熱い!
ざわざわとする中、頃合いを見計らって私は宣言した。
「…この中にうちの雪風やられてんのに迷惑だと思ってる奴いる?」
「陽炎型バカにされてんのにひよってる奴いる?」
「いねえよなあ!?」
私の呼びかけに対して彼女たちは何も言わない。ただ机上の私を見上げているだけだ。
でも分かる。言葉を介さずとも分かるのだ。
彼女たちの怒りに燃えた目の色が私の思いと同じなのは明白だった。
「夕雲型潰すぞ!!!」ドンガラガッシャーン
直後、私の言葉をかき消してしまうほどの轟音―――彼女たちの雄叫びが響き渡った。
■
「もう!雪風ちゃん勝手に居なくならないでよね!かくれんぼの鬼が居なくなっちゃったらいつまでも終わんないでしょ~?」
オラオラオラァ!と陽炎型全員で夕雲たちの寮へと殴りこむとソファーに座ってくつろぐ彼女たちを見つけた。それではいざ尋常に勝負勝負!と猛ダッシュを決めたんだけど。
思いもよらないことを夕雲に言われて陽炎型一同がポカンとなる。
へ? かくれんぼぉ?
「おかげでさっきまで夕雲型の全員オブ全員で雪風ちゃん探したんだからね!陽炎たちと居るって白露たちから聞いたからようやく今戻ってきたのよ?」
ほげぇ~
「これからは勝手に居なくならないでね、雪風ちゃん!」
「はいっ!!!」
!?
ちょ、ちょっとちょっと~!いつの間にか泣き止んだ雪風が夕雲たちと仲直りしてるよ~。どういうことなのぉ~!
「ゆ、雪風…これはどういう」
「?」
いや、こっちが?だわ!!!
そしていろいろと事情を聞いてみると…
「あ、それはですねぇ!夕雲さんたちが誰も見つからないからどうしよどうしよってなってたんですっ!でも頑張って探さなきゃって道を歩いてたらっ!なんとっ!雪風の前にアンパンが落ちてるじゃないですかっ!さすが幸運艦っ!圧倒的幸運っ!で、探している間にお腹もすいちゃったので…パクッと一口いただきましたっ!とってもおいしかったですっ!でもそしたらお腹痛くなっちゃいましてエヘヘ」
「…………」
はわわっ!とんだ勘違いなのですっ!(どっかの四番艦風)
…ってなんじゃそりゃあ!?
とりあえず雪風の頬を極限までびろーんと伸ばしておくわ!
「い、いたいれふ~」
ちなみに秋雲はいろいろと察したようで、いつの間にか夕雲たちの中に紛れ込んでいる。
今更夕雲たちと戦争する気はないし、この場でとっちめることはないけれど…。
うん!帰ってきたらみんなで歓迎するねっ!
あれ、そういえば…
そういえば何か忘れているような………
その時、ブツブツと音を立ててから鎮守府内に放送が流れ始める。私は雪風の頬をつねるのをやめ、放送に耳を澄ます。
ピンポンパンポーン
『あーあーこちら大淀です。鎮守府内に陽炎さん、陽炎さんはいらっしゃいますか?』
え、私?
『執務室で神通さんがお待ちです』
あ…
忘れてた…
血の気が引いていくのが分かる…
戻りたい…タイムリープ出来るなら戻りたいっ!
「た、助けてえ!誰か助けてえええええええええ!」ビャアァアァッ
そんな風に情けなくわんわん泣きわめく私に胸を貸してくれたのは…
「陽炎、不知火の胸あいてますよ」
ドヤ顔の不知火だけだった。
泣くのなら不知火の胸より浜風の胸に顔をうずめて泣きたい。