家族になろうよと迫る幼馴染から逃れられない件   作:紅乃 晴@小説アカ

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転生者の過去と夢と

 

 

 

 

俺は今日、神様とやらに見放されたらしい。

 

乗り込んだ飛行機がテロリストにハイジャックされて、有名な施設やビルに特攻テロをかますとか聞こえてきた。

 

今日は久しぶりの休みで趣味のサバゲーのために飛行機に乗って九州に旅行をするつもりだったのに。羽田空港を出た途端、拳銃やライフルを持った中東風のテロリストたちが飛行機を占拠したのだ。

 

銃を持つテロリストに怯える乗客たちは刺激しないように身を縮めて座席に丸まっている。俺もその一人だった。

 

色々と考えた。なんでこんな目に。なんで俺なんだ。神様助けてお願いしますなんても考えた。普段無神論者で、宗教勧誘に来たおばさんに「俺が神だ!」とかほざいていたくせに都合のいい限りだ。

 

だが、その緊張状態の時間が長ければ人間適応する。

 

冷静さを取り戻した俺は、ふと思った。

 

このまま座席に丸まっていても、この飛行機は特攻。そこまで覚悟ガンギマリしてるテロリストなら脅しなどでどうにかなるはずがない。自衛隊や軍が出張ってもこの飛行機は着陸しないはずだ。航空機の乗客乗員と、街に聳える施設。飛行機が特攻した時の被害を考えれば軍は迷いなく暴走する旅客機を撃墜するはずだ。

 

となると、今こうやって席で怯えて丸まっている俺たちの生存確率は果てしなく0%なのだ。

 

生きているのにもう俺たちは死んでいる。

 

死んでいるのだ。

 

そう思うと恐怖が一気に軽くなった。

 

そうだ。何を怯える?

 

俺たちはすでに死んでるんだ。

 

万が一にも今の状況なら助かることはない。それが現実逃避だというなら笑えばいいともまで思った。

 

どうせ死ぬなら座席のテレビでサービス提供されている映画鑑賞でも見て楽しみながら死ぬことと向き合えばいいじゃないか。

 

少々ネジが外れた思考回路が働き始めた頃だ。

 

通路を挟んで隣の座席グループにいた女の子が声を上げて泣き始めた。ふとそこを見る。

 

10歳ほどのまだ育ち盛りの女の子だった。髪はツインテールで、女の子らしい服を着ている。俺は少女を見て何故か、俺の好きな作品の主人公である少女を思い出した。

 

高町なのは。小学生のはずの彼女は突然魔法少女になったにも関わらず、襲いくる危機に毅然とした勇気で立ち向かった。困難に向き合って、必ず活路を見出し、友と大切な人のために戦う幼い女の子。

 

泣いている女の子は、もちろんそんな歳離れした達観した感性を持っているはずもなく、ずっと泣いていた。死の恐怖……ではない。この緊迫した空気感に恐怖したのだろうか。母親も恐怖に怯えながらも泣きじゃくる女の子を必死にあやしている。

 

そこへ、ライフルを携えたテロリストが固いブーツの音を立てながら近づいて行った。

 

伝わらない言語で何かを言っている。

 

中東方面の言語だろうか?母親も何を言ってるのかわからない様子だったが、その凄まじい剣幕から恐怖を覚え、娘を抱きしめながら「すいません、すいません」と謝っていた。

 

だが、女の子は静かになることはなく泣き続けた。テロリストは俺の横にある通路に立ってぶら下げていたライフルの銃口を構えた。母親の悲鳴と、それを庇おうとする父親の怒号が響く。

 

テロリストは俺の前にいた。サバゲーをしていた俺は、相手が纏うカーゴパンツに目を向けた。左右にホルスターが付いていて、俺から見て右側にはハンドガン、種類はおそらくグロッグか。反対側にはコンバットナイフが抜きやすいように鞘に収まった状態でホルスターにくっつけられていた。

 

どうせ、全員死んでいるんだ。

 

全員怯えるばかりで、今撃たれようとしている親子を庇うものはいない。頭を抱えて自分は生き延びようとしている。

 

もう、みんな死んでいるのに。

 

死んでる。

 

……ほんとうに?

 

俺は座席から静かに腰を下ろして中腰のまま目の前で俺に背を向けるテロリストを注視する。ライフルに意識を向けるが、サバゲーでもよく見る初心者でよくありがちな構えだった。脇は甘いし補助で支える手の位置も悪い。肘も伸ばしていて、あれじゃあ反動を吸収し切れないだろう。

 

彼らはおそらく、ハイジャックと機体を特攻させるための指示を受けた者たちだ。ろくに訓練も受けていない間抜け。

 

だから、俺が左側に装備されたコンバットナイフを引き抜いてもテロリストは即座に反応できなかった。

 

 

「……っ!!」

 

 

相手が振り向くまでが勝負だと勝手に思った。コンバットナイフを引き抜き、逆手に持って俺は迷うことなくテロリストの首にそれを突き刺した。刃渡り20センチほどのナイフは首の横から頸動脈、気管を貫通して反対側に切っ先が飛び出す。

 

テロリストは何が起こったかわからない顔をしたまま首を何度か手で触ってから体を崩れさせた。シートの角に体をぶつけてから通路に倒れ伏す。気管を貫いたのか、絶叫は上がらなかった。首からおびただしい量の血を噴き出して死んでゆくテロリスト。

 

死んでいる。そう思ったが、俺はまだ生きている。地の海に沈んだ相手こそが死んだのだ。

 

俺はすぐに傍にあったライフルを拾った。俺のいる客席のエリアにはもう一人のテロリストが哨戒で立っていた。だからすぐに気づかれる。時間との戦いだ。

 

ライフルを拾い、安全装置が外れているのを確認。装填スライドを引き弾丸が装填されているのを見ていると、さっきまで泣きじゃくっていた女の子とその両親と目があった。彼らの顔は恐怖が色濃く残っていたが、どこか安堵したものに変わっていた。

 

それだけで、充分だった。

 

 

 

 

 

あぁ、そうだとも。

 

どうせ死んでいるなら、派手に死のう。

 

 

 

 

 

俺は通路を駆けた。

 

4シート挟んで反対側にある通路で銃をぶら下げて立っているテロリストの後ろ姿が見えた。

 

利き手でグリップを持ち、親指の付け根と中指の位置をグリップの高い場所で固定した。

 

ハンドガードは添える程度。腕は伸ばしすぎず反動を吸収できるほどの余裕を残す。

 

ストックを肩に押しつけて安定性を確保。サイトは覗かない。走って狙いを定めるなんて無理だと思った。だから全身で相手に狙いを定める。

 

 

「全員伏せろ!!!!」

 

 

大声と共にトリガーを引いた。足音に気づいたテロリストが振り返ったがもう遅い。ダンッダンッタンッといつものサバゲーと同じように三点斉射を放つと相手の体に弾丸は吸い込まれた。腕と腹部と足。走っているからか集弾性はなかったものの撃った弾が全部犯人に当たったのは幸運だったのだろう。

 

撃たれた衝撃で倒れた犯人を上から見下ろして超至近距離から頭部に一発、胸の中心に一発。これで確実に死ぬはずだ。

 

それを見た乗客の何人かが悲鳴を上げるがもう関係ない。止まることは許されない。某ロボットバトルの主人公もハイジャック犯を制圧し始めたときは勢いに任せて一気にコクピットまで行ったのだ。俺もそれに倣って止まることなく前へと進む。後部から飛行機の前へと進むと銃声を聞いたテロリストが乗務員室の扉を開けているのが見えた。

 

距離が開きすぎている。相手は通路を走る俺を見てすぐにライフルを構えた。俺も走りながらもう一度トリガーを引く。

 

テロリストの撃った銃声と、俺が撃った三点斉射の銃声が響く。

 

今回は犯人の体に弾丸は当たらなかった。乗務員室の扉にあたったり、飛行機の天井にあたったり、テロリストの真横の壁にあたったり。

 

だが、効果はあった。真横と乗客乗員室の扉に当たった弾丸の音に怯んだテロリストは銃口を彷徨わせた。

 

 

「うわあぁああああぁあ゛ぁああ!!!」

 

 

俺はそのまま走って狼狽える犯人めがけて飛びつく。膝から行った攻撃は犯人を扉に叩きつけて押し倒した。

 

そのまま馬乗りになった俺は銃口を頭に向けて一発。血と脳髄が床に散らばって相手は即死。そこから先はパイロットがいるコクピットだ。馬乗りになっている死体から立ち上がった時、視界の端に黒い影が映った。

 

コクピットに入る扉が開いていた。

 

そしてそこから出た最後の一人がハンドガンを構えて出てくる。その銃口はすでに俺を捉えていた。

 

だめだ、やられる。

 

そう察した俺は……。

 

 

タンッダンッダンッ!!

バラララッ!!

 

 

ハンドガンの銃声。ライフルの銃声は同時だった。そして俺は崩れ落ちた。テロリストの撃った弾丸は全て俺の体を貫いたらしい。体が熱さを感じてから、急激に熱が抜けたような気がした。

 

体から何もかもが抜けていく感覚。なんとかして首を動かすと、俺の前に誰かが倒れているのが見えた。それはテロリストだった。俺が無我夢中で撃ったフルオートの弾丸がテロリストの胸あたりを抉り取っていたらしい。

 

うつ伏せになって倒れているから相手の傷を確認することは叶わなかった。相討ちかい。痛みはなく、けれど意識ははっきりしてるように感じた。アドレナリンでも出て、少し麻痺してるのかな。

 

コクピットから出てきたスカート姿の影が見える。誰かが大声をあげているのがわかった。けど何を話しているかわからない。

 

あぁ、だめだ。

 

はっきりしていた意識にモヤがかかり始めた。どんどん体から何かが流れ出してゆく。それは血なのか、俺の魂なのか。それとも別の何かなのか。

 

ただ、随分と心地がいい感覚だった。

 

ふと、俺は泣きじゃくっていた女の子のことを思い出した。あの子は無事だろうか?と。

 

 

〝ありがとう〟

 

 

そんな言葉が聞こえてきた。掠れて聞き取り辛かったが、確かに感謝の言葉だった。

 

みんな死んでいたはずだったのに、蘇ったのだと分かった。俺が蘇らせたんだ、と。

 

それだけで、俺は充分だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◾️テロリストに立ち向かった一人の青年。

 

13日に起こった旅客機ハイジャックテロ事件ですが、その事件は一人の青年の勇敢な行動によって阻止されました。四人のテロリストによって占拠されていた客室内で、青年は犯人の一人を倒し、そのまま反撃を行ったのです。彼は凄まじい速さで四人を倒しましたが、重傷を負い、旅客機内で息を引き取ったのです。

 

各方面からは銃を使ったことや、ほかの乗客にも危害が及ぶ可能性もあったなどの指摘がありましたが、彼の行動のおかげで旅客機に乗っていた359名の命は救われ、大都市に行われようとしていた旅客機特攻テロも防ぐことができたのです。

 

彼の親族や友人にもインタビューをし、英雄となった青年の生き様を追っていこうと思います。まずは彼の趣味であったサバイバルゲームの友人たちに………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気がつくと俺は、ソファの上に眠っていた。

 

 

「あぁ、目が覚めたのかい?」

 

 

そして目の前には人の良さそうな顔をした男がコーヒーを二つ持って目覚めた俺の顔を見ていた。

 

 

「ご苦労様だったね。あ、コーヒーはいける口かな?」

 

 

そう言って男性は俺を労わると、ローテーブルにコーヒーを置いて向かい側に置かれている一人掛けのソファに腰を下ろした。

 

 

「……ここはどこですか?というか……おれ……」

 

「君は旅客機でテロリスト四人を倒して死んだ。いわば現代の英雄として祭り上げられる魂だよ。そして強いて言うならここは死後の世界」

 

 

は?俺は目の前で自分でいれたコーヒーに舌鼓を打つ男を見つめた。彼は俺の茫然とする表情に気付いたのか、コーヒーカップの縁に指をそわせながら言葉を続けた。

 

 

「まぁ、あれかな。ここはカウンセリングルームみたいなものさ。普通の人はこんな場所にはこない。というか、死後の世界なんてぶっちゃけないからね」

 

 

言ってることが意味不明だった。強いて言うなら死後の世界と言ったと思ったら、死後の世界なんて無いとも言う。男性はふむと頷くと、簡単に説明するとと前置きをした。

 

 

「普通人は死ぬとその蓄積されたエネルギーは変換される。力の循環システムとでも言うべきかな?あー、いわゆるサイクルだよ。輪廻転生、あれはいい例えだと思うね。ただ、本当に純粋なエネルギーの循環なのさ」

 

「魂みたいなもの……?」

 

「そんな高徳的なものじゃないさ。人も生き物で動物。エネルギーは平等で普遍的だ。だから循環できる。魂だとか宗教的な観念を生み出したのは人がそう信じたいと思った願望に過ぎないのさ」

 

「願望……なら、なんで俺はここにいるんですか?」

 

「いいことを聞くね。そのためのカウンセリングなのさ。君は359人とあの事故で死ぬ予定だった1958人、合わせて2317人の天命を変えたのさ」

 

「天命……?」

 

「あー、例えて言うなら運命とでも言うべきか、定められた結末というべきか……まぁどっちでもいいけれどね。それを君は変えてしまった。偶然なのか、奇跡なのかは置いといてね」

 

 

相手の男が言っていること。要領が掴めない。相手は何者かすらもわからない。だが不思議と、その話に引き込まれるような感覚はあった。

 

 

「さて、君は善意であったのか、それとも悪意であったのかは知らないが、結果的には2000人近い運命を変えたのだ」

 

「それって罰せられることないのか?」

 

「ははは!とんでもない。罰せられることではない。だが、そう言ったことができる意識は貴重だ。故にエネルギーになる前に我々はそれを回収して、こうやってカウンセリングをするのさ」

 

「それは……なんのために?」

 

「君のような存在は人の中でも貴重だからさ」

 

 

その途端、俺は目の前の男にぞわりとした何かを感じた。真っ黒な、深淵のような目が俺を見つめている。男はにこやかに笑うと言葉を続けた。

 

 

「人というのは不思議なものだ。ほかの生き物とは違う独特な生き方をし、独特な価値観を持ち、それを競い、争い、滅ぼし合う。愚かであり貪欲で野望のためなら同じ人間を家畜のように殺せるくせに、希望や絆や夢なんていう光を生み出して他人にそれを見せつけて生きさせることもできる。そんな真似を器用にできるのは人間くらいなものさ」

 

「だから私はその可能性を知りたい。君のような何かに導かれた存在がどういう結末を迎えるのか」

 

「君のようなあり方は世界を救うのか。あるいは世界を滅ぼすのか。あるいは何も変わらないまま死んでゆくのか」

 

 

男はそこで前に体重をかけていた頭をソファに預けた。コーヒーカップを手に取って俺にそれを掲げる。

 

 

「君のカップは置いておくよ。だからここでまた会える日を楽しみにしている。その時は聞かせてくれよ?君がどう言った天命を歩んだのかを」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は冷や水をかけられたように目を覚まして、ベッドから起き上がった。全身が嫌な汗をまとっていて、随分と気分が悪い。

 

時計を見ると深夜で、起きる予定の時間までは四時間ほど前だった。

 

俺は荒れた呼吸を落ち着かせてベッドに再び横たわる。

 

随分と懐かしい夢を見たものだ。そうかんがえながら、俺は真っ暗な天井を見上げていた。

 

 

 

 

 

俺の名前は、タカト・ハイラックス。

 

このミッドチルダで魔法使いをしている転生者だ。

 

 

 

 

 

 

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