家族になろうよと迫る幼馴染から逃れられない件 作:紅乃 晴@小説アカ
ちなみに俺は、なのフェイ推しだ。
せっかくこの世界にやってきたのだから、原作キャラとあれやこれやという憧れのようなものもあっただろう。
だが、あくまでそれは「魔法少女リリカルなのは」という作品を見ていたからであって、その作品内……もっと言うなら、主役級キャラに全く知らないキャラが絡んでいたらどうなるか?
最悪世界観が壊れて、原作崩壊なんて事もあり得るわけだ。俺が第三者の立場なら助走をつけて百合の間に入るイレギュラーをぶん殴るまであるぞ。
というわけで、俺は極力原作の主要キャラとは関わらないように生きてきた。
はやてのこと?あぁ、まぁ……細けぇこたぁいいんだよ。
それにガッツリ関わったのは闇の書事件の時だけ。それ以外の主要な事件については姿を見せないようにはしていた。無論、見えないところからの援護や援助はしていたが。
空港の火災事故も突入した救護班とは別に市民の避難誘導をしていたし、なのはたちが絡んでいない事件の調査などもしてなるべく主要キャラとは距離を取るように行動をしていた。
中でも、なのはたちがゆりかごに突入してヴィヴィオの奪還をしている時。クラナガンに放たれたガジェット100機ほどを一人で相手取って戦った時だ。
今思い出してもあの戦いは本当に死ぬかと思った。底なしのガジェットの戦闘力。魔力切れによるエンスト。そして自身の体力切れ。カツカツになりながらも倒れずに最後まで戦い抜き、気がついたらベッドの上だった。
疲労がピークを迎えていたからか、あまり入院期間のことは覚えていないがお見舞いに来たのははやてくらいだったはず。それもJS事件の事後処理で忙しいため、ほんの30分ほど顔を見に来たくらいだ。
クラナガンの被害は抑えられたし、ヴィヴィオを助けに行った原作組の方にも関わってない。我ながら完璧な援護射撃であった。
そして、JS事件も乗り越えてはやての秘書官としての日々を過ごしつつ、なのフェイを遠巻きに眺めて日々を送るはずだったのに。
「あ、タカトさん。はやてちゃんとの結婚おめでとう〜」
「やっと決心がついたんだね、心配してたんだよ?」
どぉ゛ゔじでだよ゛ぉお゛ぉお゛お゛ぉおぉ〜〜!!!(藤○竜也)
食堂で昼飯を食べようと向かったらなのフェイに結婚おめでとうって言われたでござる。つーか、結婚どころか付き合ってもいないんですけど!?友達であるとは思うけど、段階飛ばして家族は早すぎませんかね!?二人して何見てるかと思ったら結婚式用のパーティドレスでほげぇ〜ってなったわ!え?ヴィヴィオにもドレスコードさせるって?絶対似合うと思うよ!俺とはやての結婚式じゃなかったら是非とも姿を見たかったけどな!!
遠巻きに見ていたはずの主要キャラがやってきては、はやてとの婚姻を祝う言葉を投げかけてくるのだが、自分にはさっぱりだ!!さっき廊下でスバルとティアナにもおめでとうございますって言われたからな!?
エリオとキャロがおめでとうって言ってくれる後ろで、ヴァイスとグリフィスがなんとも言えない顔してたんですけどいったい何を聞いてるんですかね?飯食ったら小一時間くらい問い詰めなきゃ……。
「た、高町さんとハラオウンさん……俺ははやてちゃんと結婚するなんて一言も言ってないんだけど……」
「え、あれだけ仲良くしてるのを見せつけてるのに?」
「仕事の日も休みの日もはやての家に入り浸ってるのに?」
ちゃうねん。
満面の笑みでナイフを突き刺してくるんですけどこの二人。
というか、休みの日も入り浸ってるなんて心外だぞ!
ちゃんと休みの日は八神家以外でも過ごしてるわ!ヴィータを連れて遊園地行ったり、シャマルと映画見に行ったり、シグナムの通う剣道場で一緒に修行したり、ザフィーラが最近趣味で取ったバイクの免許に付き合ってツーリングいったり、はやてと買い物に行ったり……あれ?俺の交友関係、八神家が大半じゃね?
「はやてちゃんだけじゃなくて、シグナムさんやヴィータちゃんとも満遍なく仲良しさんだもんね」
「シグナムも一緒に修行するのは楽しいって言ってたよ?」
「ほ、他にも交友関係はあるってば!ほら!管理局の魔道士の先輩とか!男3人でキャンプ行ったりしたもんな!!」
「その時の楽しそうな写真、逐一はやてちゃんに送ってたよね?」
「たのしそうでなによりやわぁ、ってニコニコして写真を私たちに見せてくるはやては完全に奥さんの顔だったよね」
あかん、何言っても火に油を注ぐ結果にしかならんぞ。たしかにキャンプであったことはやてや八神家のグループチャットに投げてたけど、まさか二人に見せびらかしてたとは……。そういえば今度の休暇に八神家でキャンプに行くって言ってたからキャンプセットを準備しなければならないんだっけ。
「はやてのキャンプ計画の頭数に入れられてることに違和感を覚えない時点でかなり末期だと思うんだけど」
「しっ、それを言ったらダメだよ」
なんか二人がヒソヒソ話をしているけど、長年はやての秘書をやってきたから彼女のお願いには「はい、イエス、了解」のどれかで返事する癖がついちまってるんだよなぁ……!
とにかく俺は、遠巻きに楽しんでるはやてたちの様子を見てるだけで満足なんだ!!その輪に入っていきたいなんて思ってないんだよぉおお〜〜!!助けて、神様!!このままじゃ俺は俺のことを助走をつけてぶん殴らなきゃならんくなる!!
【相変わらず、タカトはよくわからないな】
うるさいよ、リインフォース!あと必要なものだからって通販サイトでキャンプ道具を欲しいものリストに入れるのやめてもらえませんか?いや、買うけれども……!!
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闇の書事件で出会った管理局の魔導士、タカト・ハイラックス。
彼と初めて出会ったのは海鳴の街。
ヴィータちゃんとの戦いに負けて、そんな彼女たちを止めて、戦う理由を聞くために向かった空で、仮面を被ったタカトに遭遇した。
「悪いが、ここから先には行かせるわけにはいかん」
二つの短槍という独特なデバイスを使う彼の力は圧倒的で、カードリッジで強化されたレイジングハートでも押し勝つことができなかった。チャージをすれば妨害され、距離を取れば槍が飛んできて、ならばと思って接近戦をしたら防護を貫通する突きを放ってくる。
弾幕を張って面で押さえることで動きは抑えられたけれど、私自身も彼に釘づけにされた。
そんな攻防戦が何度か続いて、闇の書がいよいよ魔力を集めきった時だ。
はやてちゃんの力が覚醒して、リインフォースさんが現れた瞬間。
「かかったな、阿呆がっ!!」
今まで私たちと敵対していたタカトは踵を返して姿を現したリインフォースさんへと突撃。懐から出した機械で彼女の有する魔力の半分を無力化したのだ。
後から聞いた話では、タカトの特質な体質である「魔力の濃さ」によるデバイスの内圧破壊を防止するため、彼は魔力を薄めるために空のカードリッジに余剰魔力を封印して排出する機構を使用していた。
カードリッジによる魔力の底上げとは全く逆方向の作用を持つ彼のデバイスは、ありったけの空薬莢を詰め込んで覚醒した闇の書に突撃。放出される魔力をすべて空薬莢に吸収することで、闇の書の潜在的な魔力量を激減させたのだ。
それが彼の狙いだったらしい。今まで敵対していたことを気にしないで、彼は闇の書を止めるための戦いに挑んだ。
魔力量が半分になったとは言え、それでも劣らないポテンシャルを持つ闇の書は、逆に追い詰められたことによって加速度的に脅威を増させたのだ。
魔力を補給する意味合いでもフェイトちゃんを取り込んだ闇の書に、たった二本の槍で戦いを挑むタカト。なんども叩きつけられ、殴られ、なぶられても彼は諦めずに立ち上がって挑み続けた。
「なぜだ……なぜ、貴様はそこまでする!!」
「助けるって、約束したからだぁああーー!!」
そこで私は気づいた。彼は管理局の人間としてではなく、大切な家族を守るため、助けるために組織に反旗を翻してでも戦うことを選んだのだと。
その後、紆余曲折あってはやてちゃんと闇の書の意志でもあるリインフォースさんが帰ってきて、シグナムさんや、ヴィータちゃんも帰ってきた。
ボロボロな姿になったタカトは、はやてちゃんの頭を優しく撫でて笑ってこういった。
「おかえり、はやてちゃん」
それを皮切りに、はやてちゃんが大声で泣いてタカトの胸に飛び込んだのが印象的だった。
それから数年と経った。未だに私やフェイトちゃんのことを「名字」で呼ぶ変なところはあるものの、彼は闇の書事件後からずっとはやてちゃんを支え続けてきた。どんな辛い立場に立たされても、どんなに立場が危ぶまれようとも、彼ははやてちゃんの隣に立って付き従ってきたのだ。
JS事件後、タカトの大怪我のこともあって相談したいとはやてちゃんに言われて、私とフェイトちゃんは、彼女が彼を夫に迎えたいという話を初めて聞いた。彼女の心配も、不安もわかったので、私たち二人はそれとなく二人をくっつけるように奔走したのだ。
バレンタインも遠回りに断り、タカトが休みの日はヴォルケンリッターも休みを合わせ、デートがしたいと頼み込んできたはやてちゃんの仕事を手伝って、タカトとのデートにも送り出してきた。
すでに外堀は埋め立てられた上にみんなで住む豪邸が建築されてるのだ。
だから、タカト。どうかはやてちゃんを幸せにしてあげてください。私たちは応援してます。
さぁて、今日はヴィヴィオにも私とフェイトママが選んだドレスを見せちゃうぞ〜!!