壇クロト「んっ? IS? なにそれ美味しいの? そんなものよりゲームを創りたいんだけど?」的な物語である
因みに、息抜き交じりの小説である。最近かけないの…。
既存の兵器を遥かに凌駕する性能を持つが、女性にしか動かせないという新兵器「IS(インフィニット・ストラトス)」が発明されたことで女尊男卑となった世界。そして、その世界を構成する重要なファクターとなり得た男子禁制であるIS。
―――至極どうでもいい。
私はそう思った。そんなもの気に留める暇があったらもっと大事なことを目を向けなければならない。
わたしにとっては命ともいえるそれこそ、ISよりも重要で、この命をかけてでも今後創っていかねばならない。
幼いころから抱えていた趣味であり、今もなお熱中し続けているそれを創っていくことこそが、私にとって重要なもの。
ISなんぞそこらへんの女子や、ISを動かしたファーストやらに任せればいい。
それよりも私にとってやるべきことをしなければならな――。
【社長! 魔界村 3Dが100万本突破しましたっ!】
チャットに浮かんだその文字が私を叫ばせた。
「ぬわにぃいいいいいいいいいいい!? それは本当なのか!?」
私こと壇クロトは悲鳴ならぬ喜鳴を上げた。
先程まで教員の授業中で静寂に満ちていた教室が、私の声が響き渡るものの、特に気に留めない。私は既にパソコンの画面上に映っているリモート画面につながっている幹部にしか目を向けていなかった。
ミュートにしていた音声を認識させ、その場で会話をすることに決めた。
チャットなんぞでもう会話する気にもならん! 今すぐにでもしゃべりたい気分で一杯だっ!
『本当です、社長! 魔界村 3Dがついに100万本突破しましたっ! そのことで取材したいとのことですっ、しかも今日です今日!』
「ふはあははははははははあっ! これでより一層魔界村の名が広まったなああああぁあああああ!」
『社長、どうしますかっ!?』
「無論、取材を答えるに決まっているだろぉおおおお! IS学園(こんな場所)にいる理由などなぁあああああああああい!」
『そういうと思いましたっ、迎えのものをお呼びいたしましたのですぐに来ていただけたらと思いますっ!』
わたしはすぐさま帰る準備を始める。何やら凄まじい怒気やざわつきを感じるものの、それこそどうでもいい。
あぁ今日はなんて素晴らしい日なのだろうかっ。あの魔界村が100万本突破するとは!
「壇クロト……」
「うぅん、なにかねぇ!? 私は今急いでいるんだっ、邪魔をしないでくれたまえ!」
「貴様、今何の時間だ? 」
凄まじい怒気を放っている黒髪の女性――確か、えぇっと、まぁ担当教師で良いか――がこめかみを引きつかせながら言ってくるも、何ともつまらない質問をしてきた。
今が何の時間んんんんだぁぁとぉおおおおおおお?
「知るかぁあああそんなことをおおおおおおおお! わたしはとても忙しいんだっぁぁぁぁぁッぁああああああ、貴様のような年増なんぞに用はないわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
わたしの叫びに対して、何やら血管が切れた音と共にその担当教諭こと年増は出席簿を振りかぶった。
「今は授業中だ、このバカ者があああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
出席簿の攻撃を避けた私は怒声を上げる年増の黒髪女性を見て――今ようやく思い出した、こいつは織斑千冬だと。そして、ここは私が通うこととなったクソッタレなIS学園ではないかと。
やれやれ、どうにもゲームに関わると熱中しすぎて忘れがちになるのが私の悪い癖だな……ちょっとだけ反省しなければならない。
出勤簿を避けて、私はダッシュで教室から出ていった。
「それでは織斑千冬、私は今から取材に行くので、あとはよろしく頼んだ――ふはははははあはははははっはははは!」
「まてぇぇええええええええ、壇んんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんん!」
鬼のような叫びにも目を向けずに私は走り去っていく――途中で緑髪で教師とは思えないほど弱々しい女性とすれ違うものの。
「あっ、だ、壇クロトくんっ、勝手に出てはいけないっていうよりも、あの授業はあああああああああ!?」
授業だと? そんなものより早く取材を受けに行かねば!
壇クロトことゲーム開発会社【クロノスコーポレーション】の若き社長であり、IS学園二人目の男子生徒――であるはずなのだが初日から問題行動ばかりを繰り返したために、問題児として認定されたのは言うまでもない。
* * * * *
クソゲーしかねぇ。この世界に転生した私が思ったことはまずそれだった。
前世ではガチのゲーマーで、かつゲーム会社に勤めていた私。前世には様々なゲームがあった。それこそ子供や大人を魅了させる程の素晴らしいものが。
今世でもさぞかし素晴らしいゲームがあるのだろと思っていた矢先……対面したのはなんも魅力も感じないゲームばかりだった。
この世界にはあの有名なタイトルたちが存在しなかった――あるのは見たことも聞いたこともないばかりのものばかりのクソゲーばかりだった。しかも中々条件が厳しく、中々進めなかったり、キャラクターたちが矛盾するようなばかりの行動をとってアンチが多かったり、余りにも低予算で創られたであろうものばかりで、バグが多く進めなかったり、余りにも雑なステージ等々、新鮮味を感じなかった。
私の命ともいえるべきゲームたちがこんな目に合うとはっ、許しがたい、許しがたいぞぉおおおおおおお!
iSなどいうものばかりに目を向けてっ、娯楽の天国ともいえるゲームをっ、こんな無残な目に合わせ折ってぇえええええええええええええええええええええ、絶対に許さぁあああん!
そうだっ、これこそが私の使命なのかもしれないっ!
このゲームを侮辱するかのような世界をっ、塗り替えろというのが、転生した私の使命なのだっ!
ISぅ? そんなものはどうでもいいっ、私が今すべきなのはゲーム開発なのだっ、ISで何かをするのは同じ男子である……ファースト君とやらに任せようっ!
わたしは、私はゲームを創るのだああああああああああああああああああああああああああああああああ!
あぁ早く企画を練り上げ、提案しなくては――魔界村3Dが作れたのだっ、今度はゼルダを提案しなければならなぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああんっ!
「あっ、社長。そういえばご両親よりお預かりしているものがありますよ……社長専用のISですって」
「ふふふっ、父さんと母さんめ、そんなものはいらないといっているのに……だがまぁ、ありがたく受け取っておくか、起動するのは学園で良いだろう」
両親からプレゼントされたドライバーと、紫色のガシャットの入ったケースを持って、私は取材に赴いた――。
【マイティジャンプ!マイティキック!マーイティアクショーン!エックス!】
これは、ゲームを愛する男が、ISの世界でゲームをかたどるライダーで戦うお話―――――それよりも壇 クロトによる熱いゲーム制作の話の方が盛り上がるかもしれない……。
「……このゲームは?」
「うん? あぁ、それか、特撮をモチーフにしたゲームなんだが、私はどうもそういうのが分からない――」
「教えてあげる、だから作って」
「むっ、な、なんだこの目は――――私に何が何でもこのゲームを創らせるという強い意志を感じるぞぅうウウウ!」
ちょっとした恋愛もあるかもしれない