男女コラボは炎上する?男の娘なら問題ないよねっ! 作:ベジタブル
[ゆっきチャンネル]
7/14(日)
【雑談コラボ】先輩?後輩?男?女?【#黄緑空】
「先輩方、どーもッス! Virtual SKY所属、空創学園放送部1年、皆の黄色い後輩こと二科悠希ッス! そして〜」
甘い声で配信の開始を告げたのは、1期生の4人全員でお揃いの白いブレザーを着た、ショートカットの黄色い髪を揺らす女の子、二科悠希先輩だ。今日も元気にピョコッと突き出たアホ毛を揺らしている。
「は〜い、一般先輩の皆さんも、入部希望者の皆さんもこんばんは〜。空創学園放送部部長の三日月 翠です。今日は悠希ちゃんのチャンネルにお邪魔してま〜す」
二科先輩に続いて自己紹介をしたのは、緑色の髪をハーフアップにしたお姉さん、三日月翠先輩である。
優しくて頼りになる雰囲気が立ち絵からでも察せられる、Virtual SKYの姉的な立場の人間だ。実際に一之瀬明里先輩からは「みどねえ」などと呼ばれている。
が、しかし、1番多い呼び名は「部長」だろうか。二科先輩やファン――二科先輩のファンが一般先輩、三日月先輩のファンが入部希望者――からはそう呼ばれているようだ。
「それで...ね。まぁ今日はいつもの黄緑コラボじゃなくて、もう1人来てくれてるだけどさぁ」
「先輩方も気になってるみたいッスねぇ、あはは......いやでも、やっぱアタシ的にも気になるッスよ!」
「あぁ〜、そうだよねえ......悠希ちゃん的にはややこしい感じになるもんね」
「そッス、そッス! ま、そこら辺も今日は白黒ハッキリさせたいと思ってるんでね...早速来てもらいまッス!」
フラフラと上半身を揺らつかせながら、ボクに登場を促す悠希先輩。その動きに合わせて揺れる首元の黄色い――1期生の4人は制服こそ共通デザインだが、リボンとスカートの色がそれぞれのパーソナルカラーになっている――リボンが可愛らしい。
チラリと視聴者数を覗いてみれば、現在の同接数は2万人を超え、3万人に近い数字となっている。
昨日の初配信に比べれば少し少ないが、先輩方の普段の配信の視聴者数が1万人弱である事から考えても、十分多い方だろう。
昨日とはまた違った緊張を味わいながらも、昨日と同様に1度咳払いをしておく。
既に二科先輩がボクの立ち絵を表示してくれていて、後はボク自身の手でミュートを切って話始めるだけだ。
――よしっ!
「一般先輩、入部希望者、オソラーの皆さん、こんばんはっ♪ Virtual SKY所属、新人男性Virtual YourTuberの五河ソラです!」
「今日はお呼びくださってありがとうございました、二科先輩、三日月先輩。 今日は......というか、これからよろしくお願いしますね!」
「うんうん、こっちこそよろしくね〜......なんていうか新鮮ってか、フレッシュだなぁ。もう私たちにはない元気さというか......」
「ちょちょちょ!! やめてってば、ソラくんに恥ずかしいの知られちゃうから!」
「あぁ、部長の初配信気合い入ってましたッスもんねぇ〜、あはっ」
「知られちゃうっていうか、ボクも知ってますよ。直後の一之瀬先輩のハチャメチャさを見て、配信2回目で『わたしに求められてるのはアレじゃなかった』って言い放ったアレですよね?」
「なぁんで知ってるのぉ!?」
三日月先輩は驚愕の声を漏らし、二科先輩はケラケラと笑って両手を打ち合わせていた。
何で知ってるのか、と聞かれれば勉強したからである。
浩哉さんに話を持ちかけられるまではたまーに見る程度でしかなかったVtuberだが、自分がいざデビューするとなってからは、必死に配信に参加し、切り抜きを見ては有名な発言やネタを学んできたのだ。当然、切り抜きだけでは限度があるので、特に有名な配信や、初回配信などはキチンと最初から最後まで視聴しているのである。
少々時間が足りなかったので、
「そりゃそうですよ。ボク、皆さんの後輩であると同時に4人全員のファンですもん」
後輩である
「うあー、色々恥ずかしいわね...」
「そうですか? ボクは素敵だと思いますよ。見てくれている皆を楽しませようという一心で、そういう振る舞いをとったんですよね? それでいて、一之瀬先輩とのバランスを考えて、一生懸命考えたキャラクター性を捨てて、放送部に必要なピースを埋める選択をとった。コレって皆が出来るような事じゃないと思います!」
そう思った事を口にしてみると、何故だかコメント欄は爆速だし、三日月先輩は小声でブツブツと話しているし...
「あ、あーっと、その辺に、しといてあげて欲しいッス......」
「違うの、ホントは安易にぶりっ子演じて、恥ずかしくて無理があるなーって思っちゃって、素が出ちゃって、もういいやってなっちゃっただけなの...」
「先輩想い
「あれ? ボク何かやっちゃいましたか?」
なんだか、よく分からないが、失礼なことをしてしまったのかもしれない。
あっ、もしかしてそういう内実を暴露するっていうのは、営業妨害に当たってしまうのだろうか?
うーん...難しいんだなぁ。
「んんんーぅ! はい! 悠希ちゃん、今日の企画行くわよ!」
あっ、よかった、復活した。
「はいはい、了解ッス。企画って言っても大した事じゃないんスけどね〜。新人ライバーであるソラ先輩の事を皆に知ってもらおう! というか、アタシ達も知りたい! って事で、簡単な質問を30個ほど用意してきたッス!」
「まずはそれをドンドン聞いていくから、全部答えて貰った後に、それを掘り下げていこ〜って感じね。題して...」
「「五河ソラに聞きたい、30の質問!!」」
[1.名前は? ― 五河ソラ]
[2.性別は? ― 男]
[3.年齢は? ― 高校2年の17歳]
[4.誕生日は? ― 7月7日]
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
[27.性別は? ― だから男ですってば!]
[28.今後、配信でやりたいことは?
― 基本的にリクエストがあれば何でも]
[29.活動の目標は?
― 男性企業Vが増えやすい環境造り]
「はい、お疲れ様っシたー!」
「じゃあ気になった所から深堀りしていきましょうか?」
「いや、あの......なんか性別に関しての質問、4回くらいありませんでした!?」
男の娘キャラとしてのデビューも
そんなに女の子っぽいのだろうか......?
「んー、いやだってさぁ...うん、男だって事は分かるんだけど、でもやっぱ分かんないっていうか」
「そうッスよね! 男の子が女の子っぽい声を出してるようにも、女の子が男の子っぽい声を出してるようにも聞こえるっていうか...」
「言うなれば、性別『五河ソラ』みたいな事よね」
「えぇ...」
「そんな事より、まずは年齢の事ッスよ。ひっじょーにめんどくさい感じになってません?」
「あぁ、そういえば、学年的には先輩だけど、ライバーとしては後輩って事になりますね?」
「んで、悠希ちゃんはソラ君の事、ソラ先輩って呼んでるし、ソラ君は悠希ちゃんの事、二科先輩って呼んでるわよね?」
「確かにややこしいですよね」
「という訳で、アタシはソラっちって呼ぶので、ソラっちもアタシの事、先輩以外で呼んで欲しいッス!」
そ、ソラっち!?
う、うーん、二科先輩のファンに刺されたりしないだろうか...
まぁでも、二科先輩がボクの事を先輩と呼びにくいのは分かる気がする。
ソラの見た目は年齢の割に幼い感じに見えるし、そもそもリアルの年齢があっちの方が少し上だ。
浩哉さんに聞いた話によると、二科先輩は20歳の大学生だったはず。
それはさておき、呼び方、呼び方かぁ...
「じゃ、じゃあ悠希さん、で...どうですか?」
「うんうん! いいじゃないッスか!」
「そうね、他人行儀な感じがしないと思うわ。なんというか、悠希ちゃんのセンパイ呼びと違って、ソラくんのは壁があるように感じられたもの......うん、私も翠さんでいいわよ?」
「え、え、えと...じゃあ翠さん...こ、これでいいですか?」
うああ、なんかちょっと恥ずかしいかもしれない。
でも、それ以上に嬉しいかも。
「おっ、照れてるんスか? 照れてるんスか!?」
「あ、あはは、その...普段、叔父さん以外を名前で呼ぶ機会なんて無くて、えへへ」
「......寂しい学校生活なんスね」
「あはは...」
「否定しないのね......」
別にボッチという訳でもないが、必要以上に親しくなっている友人が居ないというだけだ。
部活にも参加していないし、放課後に遊びに行ったりもせず、直ぐに家に帰って家事をしているから、いつの間にかそんな感じになってしまっていたのである。
♪ ♪ ♪
「ふぅん、じゃあオソラーさんが楽しんでくれるなら、何だって挑戦してみよーって感じなのね?」
「そうですねぇ...コレといった尖った武器がない僕には努力する事しかできませんから。色んな方面に手を出してみて、自分のスタイルを作っていくつもりです」
「ま、一芸と言ったら、既に存在そのものが一芸みたいなもんなんスけどね...」
性別についての質問は重複していたが、それを引いても大体20問とちょっとを、先輩達の進行に合わせて答えていった。
先輩方まかせで楽しく答えさせて貰っている間に予定していた1時間の終わりが近づいてきて、残りは2問分。
見事なタイムキーピングだなぁ......
「目標としては、男性Vの星、みたいな感じでいいの?」
「そこまで大仰な事を言うつもりはないですけどね......単純にボクと一緒に遊びたいなって思ってくれる男の人が増えて欲しいって事です」
ボクの初配信からも分かるように、今は男性のVtuberには厳しい時期だ。
いずれそういった厳しい目は無くなっていくだろうが、男とも女とも取れない中途半端なボクがその橋渡しとなりたい...
というか、そうして所属男性Vを増やし、業界に新しい風を吹かせようというのが事務所の意思だ。
「沢山の女のVtuberさんが活躍してらっしゃる現状がダメって言うつもりは全くないんですけど、企業所属の男の人だからこそできるって事もあると思うんです」
「まだこの業界は発展途上ッスもんね......アタシ達が大きくしていかないとって事スか」
「ひとまずは4人プレイのゲームを男性だけでやる、くらいが夢として丁度いいかもしれないわね」
「いいですね、ソレ!」
うん、夢が広がる話だ。
そういう風になれたら、きっと
「っと...そろそろいい時間になってきたッスね」
「えぇ、じゃあ最後、気になってた人も居たと思うけど、実はさっきの質問の時、29問目までしか聞いてなかったのよね」
「という訳で、最後の質問をしてこの配信を締めたいと思いますッス」
「じゃあ、30問目......五河ソラさんのママはどなたですか?」
ママ、というのは当然、実の母親という意味ではない。
そんな事言ったら身バレどころの騒ぎじゃなくなってしまう。
そうではなくて、この場合のママというのはL2Dの体を
ちなみに3Dの体を作ってくれた人の事はパパと呼ぶらしいが、僕にはまだまだ関係のない話だ。
さて、ではボクの体を作ってくれた人は誰か。
それは......
「はい、それは明日の同じ時間にコラボ配信をさせてもらう予定の、四ノ宮葵先輩ですっ!」
「という訳で、明日のコラボ配信は『親子コラボwith赤いの』となりますので、オソラーの皆様は期待していて下さいね〜」
「チャンネルは葵センパイの方でやるみたいですからお間違えのないようにお願いするッス!」
「ではでは、今日はこの辺で失礼するッス! お疲れ様っシた〜」
「は〜い、おつみどり〜」
「おつソラっ! でした〜」
[五河ソラChannel]
チャンネル登録者数:1.46万人
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
『普段、叔父さん以外を名前で呼ぶ機会なんて無くて、えへへ......』
照れた声色で話す、画面の中の
ボサボサに伸びきった髪の毛をガシガシと掻き回しながら、天井を見上げた。
電気を消した暗い室内を彩るのは、
手で顔――特に口元を覆いながら、今度は下を向いて、そして叫ぶ。
「かッッッッッッッッわよッ!!!!」
くぐもってはいても尚大きい叫び声は、お隣の住人にも聞こえてしまったらしく、ドンッという壁を叩く音が返ってきた。
でも、そんな事がどうでも良くなるくらい、己の心は今、幸福感に満たされていた。
今度は小声で――器用に――叫ぶ。
「ソラたん......一生推す!!!!」。
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