それではどうぞ
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「...あ~あ~。ちゃんと聞こえてるかしら?」
後ろの人形から、聞きなれた声がする。それはとてもとても...悪い魔女の声だ。ハープの音色のような綺麗で、透き通った声が私に呼びかける
「大丈夫。なにも聞こえていないぜ。」
それに答えるのは、これまた悪い魔女。まあ会話してる相手の魔女には負けるがな。全体的に黒い服にとんがり帽子をして、
箒にまたがりふわりふわり。
典型的な魔女といった格好をしている。黒猫はいないぜ。近づくと逃げられるんだ...
「...ふざけないで。真面目に答えなさい。」
どうやらこっちの黒猫にも嫌われそうだ
「そうかっかするなよ。何だっけ、今日の夕飯だっけ?」
普段のパートナーよりも反応もがあるせいか、いつもよりふざけてしまう。こういうやつはいじり甲斐があって、話していてとても楽しい。
思わず笑みが私の顔からこぼれ落ちる。
「じつはその人形はこっちからも操作できるようになっていて...」
「わかったわかった!悪かったからそのレーザーをこっちに向けないでくれ!」
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そんなこんなしてるうちに、目的地に到着する。箒からふんわりと着地。
てくてくと歩いていき、地面が消えているところで止まる
「随分と大きな穴だこと。」
そこには大穴が開いていた。ふちが弧を描いていて瞳のような形をしている。覗き込んでみると全く何も見えない。常闇の世界が広がっている。
だが大量の妖気が漂っていることから、人ならざる者の存在が読み取れる。
湧き出る好奇心で私の頭の中がいっぱいになってゆく。
これからなにが起こるか、なにと出会うか、考えただけでワクワクが止まらない。
「...気味が悪いわね。」
「そうだな。」
「貴女のことよ。」
「え?」
突然のことで思わず素っ頓狂な声が出てしまった。
「なんでそんなにニヤニヤしてるのよ。」
どうやら顔に出てしまったらしい。
「気にしないでくれ。ただの悪い癖さ。」
「女の子がする表情じゃなかったわよ。」
「え、そんなに?」
「そんなにもよ。」
そんなにもか。一体どんな表情だったんだろうか。
考えてるうちに、なんだか恥ずかしい気分になってきた。ああ、人形越しに向こうの魔女が笑ってる様子が頭にぽわぽわと浮かんでくる。
だんだんと頬が火照ってきて、耐えられなくなった私は帽子を深くかぶる。
「ふふふ」
不気味な魔女の笑い声だ。きっとよからぬことを企んでいるに違いない。
「...ダレニモイワナイデクレ。」
ダメだこりゃ。
「それはあなた次第ってところね。」
心なしか人形の顔がニタニタと嘲笑っているような気がした。ああもうだめだ。さっきまでの仕返しがはじまる。魔女狩りだ。
「後で私の家でお茶会開いてもいいから...」
「あらほんと?それは楽しみねえ。いつするの?」
「一週間あとで...」
「ごめんなさい、よく聞こえなかったわ。『もう一度』言ってくれないかしら?」
物凄い形相で人形がギロリと睨んでくる...気がする。やさしい声だったが、絶対に逆らうまいとさせる気迫があった。
彼女の『要求』に私は...
「三日後に是非ともこの私に開かせてください。」
「はいよくできました。えらいわね。」
屈してしまった。
「さあいくわよ、魔法使いさん。」
とっても上機嫌そうな声が聞こえる。それはもう上機嫌が上機嫌で上機嫌になっている。
「ああ。」
対する魔法使いさんは生返事。頭のなかは客用に家をかたずけすることでいっぱいだ。
もう少しこのたわいもない事で、彼女との会話に華を咲かせている時間を過ごしたいと思っていたがもう忘れてしまった。
体から力を抜き、重力に身を任せる。そして少女の身体は深い闇の中へと真っ逆さまに落ちてゆく。途端に空気がじめじめとしたものに変わり。
地上を飛ぶときの爽快感はなく、いやな空気が頬を撫でていく感触ははっきりいって不快だ。
箒にまたがり指を鳴らす。
「パチン」
小気味よい音とともに箒の先に光の球がひとつ灯り、小さなランタンへと変化する。
それはサイズに見合わない程大きな光量をもっており大きな洞窟中を照らした。
同時に周りの不快な空気も心地良い澄んだ物へと変わる。
向かう先は遥か地底。ちょっと地上から離れた世界。
鬼が出るか怨霊が出るか
向かう先は遥か地底。ようこそ嫌われ者の住む世界へ。
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