※シュタインズ・ゲートの二次創作ではないです
「思い……出した!」
「そのスラングちょっと古くないか、ゴルシ」
あのアニメもう6年も前か。
「この世界は、ループしている!」
「HAHAHA、そいつは傑作だなゴルシ。ループしてんならこの美味いラーメンを永遠に食い続けてられるじゃねえか」
いつものラーメン屋でいつものようにラーメンを食べてると、ゴルシが突然厨二病みたいなことを言い出した。……いやそれはいつものことか。
「いやいやそうじゃなくてよ、
「面白いこというなゴルシ。それが本当なら無敗の七冠ウマ娘も夢じゃねえな」
「おう、七冠どころか八冠だってやったことあるぜ。上振れねえと無理だけど」
「……まるで見てきたように言うじゃねえか」
ゴルシの言うことはどれが本当でどれが冗談なのか見当つかないから、いつもノリで話してたけど、なんか今日のこいつは口調の割に真面目な顔つきしてる。
「見てきたどころか実体験だよ。言っただろ、この世界はループしてるって」
「百億歩譲ってループしてるとして、なんで今言い出したんだ?」
世界の真実が明らかになる場所が近所のラーメン屋なんて趣がないにも程があるだろ。
「ん? 今思い出したから」
「今ぁ?」
「うん。このラーメンの味なんか覚えがあるんだよなあって記憶の糸を辿ってったら今までのループ全部思い出した」
「……ラーメン食ってリーディング・シュタイナーに目覚めるのはお前くらいなもんだぜ」
冗談だと思いたいが、ゴルシだしなあ。
「で、他の世界線でも俺たちは快進撃でG1かっさらってるのか?」
「いんや、そういう世界線もある程度はあるけど、春天とかでポカしてお前クビになってる」
「マジかよ!」
切なすぎる……。クビになった世界線の俺、頑張ってくれ。
「そもそもアタシとおめーが組んだ世界線の方が少ない」
「……え? マジ?」
「マジ」
俺がゴルシの担当をしてない世界線なんであるのか……。正直世界線がどうのこうのよりもそっちの方がにわかには信じ難い……。
「例えば誰と組んでるんだ?」
「あー、ウオッカ、スカーレット、スペ、マックイーン、テイオー、スズカ、スカイ、エル、グラス、ルドルフ会長、マルゼン、それから……」
「チョマテヨ」
「今の中高生キムタクわかんねえぞ」
「え、ほんと? ってそうじゃなくて、俺節操なさすぎだろ」
何人のウマ娘に浮気してんねん。
「いやあ、別に同じ世界線で複数人囲ってるわけじゃねえし、いいんじゃね?」
「囲うって言うな。……てかなんかおかしくないか? ルドルフ会長とかマルゼンスキーって俺がトレセン学園に来た時は既に実績十分だったし、俺みたいな新米トレーナーと組むわけないだろ。そもそもトゥインクルシリーズなんてとうの昔に……アレ?」
シンボリルドルフは無敗の三冠ウマ娘として有名だが……なんか俺の記憶だと彼女がトゥインクルシリーズを走ってる記憶がない……?
「その辺で考えるのやめとけ、ウマ娘のアタシならともかく人間のあんただと脳が爆散するぞ」
「なにそれ怖い」
真理って知るだけで死ぬもんなのか。エドとアルって脳みそ強靭だったんだな……。
「てかゴルシはいいのかよ、俺が他のウマ娘のトレーナーやってるなんて」
「誰を愛そうがどんなに汚れようがかまわぬ。最後にこのゴルシの横におればよい!!」
「いや北斗の拳は中高生どころか大学生も知らんと思うが」
「公式でバキネタやってるんだから今更だろ」
「たしかに……ん?」
頷きかけたけどなんだバキネタって。
「まあアタシとあんたも偶然の出会いがなかったらこうなってないし、ボタンの掛け違いで世界線は変わるってこった」
「偶然の出会いってか必然の誘拐だった気がするけどな……」
いくら担当トレーナーが欲しいっつっても、ヒマそうだからって理由で無人の浜辺まで誘拐するやつはお前くらいだよ。
「なんかそういうの聞くと、別世界線の話とか気になってくるな。ゴルシ的になんか面白いのある?」
「そうそう、ハルウララの担当してた時もあったな」
「あー、あの子か。頑張ってるけどいかんせん周りの強さについていけてないところがあるよな……」
「でもお前が担当の時に有馬記念優勝してたことあったぞ」
「有馬記念優勝!? あの子の適正ダートの短距離だろ!?」
適正真逆じゃねえか! どんなトレーニング積ませればそんなん可能なんだよ!
「なんかそん時のあんたはマジで目が血走ってたな。『因子継承……愛嬌……切れ者……こんなチャンス二度とねえ……』って」
「何言ってるかわからんけど……」
わかりたくもねえ……。
「他にはそうだな……ネイチャにひたすら勉強させてた時もあったな、トレーニングもさせずに」
「それはトレーナーとしてどうなんだ? お前に才能はないからトレーニングなんかやらずに将来のために勉強してろってことか?」
「うーん、アタシも各世界線のことを全て把握してるわけじゃないからわかんねーけどさ、なんかその時のネイチャは他の世界線以上にネチャネチャしてたな」
「……ギャグ?」
「ちっげーよ、ゴルシ様がこんなつまんねーギャグ言うわけないだろぉ? なんていうかさあ、湿度が高いって言うの? 自分を高めることよりも他人の足引っ張ってやるーみたいな薄暗い目つきしてたな」
「グレてんじゃん……」
「あのネイチャと走ってたやつらはみんな見えない力に引っ張られてるみたいに沈んでたな」
「もはや魔物じゃねえか」
いったいその世界線の俺はどんな育て方したんだよ。普通、勉強させてただけでそんなふうにねじ曲がるか?
「1680万色に光り輝いてた時もあったな、アレにはさしものゴルシちゃんも爆笑しちまったぜ」
「それは……なんだ? イルミネーションでも体に巻いてたのか?」
「いんや、タキオンの試薬飲んで物理的に肉体が発光してた」
「それ絶対ヤバい薬だろ!」
何がどうなったら体が発光する薬が出来上がるんだ、ホタルの因子でも混ぜてんのか?
いや、そもそも……
「そもそも、
そんなウマ娘いたっけ。いや、トレセン学園にウマ娘は多いし単に俺が知らないだけか。
「タキオンはタキオンだろ、アグネスタキオン」
「あー、アグネスタキオン? 結構前に退学してたよな」
なんか選考レースにも出ずに引きこもって研究してたから追い出されたって話を聞いたな。
「……なるほどなあ、おめーがアタシのトレーナーになったらその分、割を食うウマ娘がいるってことか。おめー、罪な男だな」
「いやいやいやそんなこと言われても俺記憶ねえし!」
他の世界線での行動の責任まで取れねーよ。
「他にもマックEーンとか、担当ウマ娘でもないのになぜか毎回いるキタちゃんとかの話もあるけど聞くか?」
「……遠慮しとく」
なんかこのままゴルシと話してると恐ろしい深淵に触れてしまうそうな気がする。……もうとっくに触れてるとか言うなよ。
ウーウマダッチ! ウーウマピョイウマピョイ!
「ん? なんか電話鳴ってるから取るわ」
「おう」
ゴルシ、スマホ持ってたのか。俺連絡先知らないんだけど……。
「あー、今日収録だっけ? 忘れてたわ! 10秒でスタジオ行くから待ってな!」
「ん? 収録? スタジオ?」
今までゴルシの担当トレーナーやってきてそんな単語一回も出たことないけど、なんの話だろう。
電話を切ったゴルシは俺に向けて両手を合わせてこう言った。
「すまん今日ぱかチューブっ! の収録だったの忘れてたわ、ちょっくら行ってくるから会計よろしく!」
「それはいいけど……10秒でどうやって行くんだ?」
「そりゃお前、こうに決まってるだろ」
四つ足動物のように片足を後ろに蹴り上げるとブォンという効果音と共になにやら次元の裂け目みたいなのが現れた。
「じゃ、また明日な!」
「……うん」
そう言い残すとゴルシはその裂け目に飛び込んで行った。
それを見送った俺は、もう考えるのをやめて目の前の伸びきったラーメンを啜った。
多分こんなに不味くなったラーメンを食った世界線は俺だけだと思う。
続かない