世界から天才音楽家と呼ばれた俺だけど、目が覚めたら金髪美少女になっていたので今度はトップアイドルとか人気声優目指して頑張りたいと思います。(ハーメルン版) 作:水羽希
「で、どうするんだ? 正直なことを言うとどの治療法もお前の期待には答えられそうにはないな」
「はい、知ってます。確か、誰も男に戻れたことがないんでしたっけ?」
抑揚の乏しい声でそう言うと春先生は「ああ、そうだ」と言ったあと赤い目を金藤さんに向ける。
「やるなら私は手術は失敗し死亡する可能性が高いから結友ちゃんが一時期やってた薬の投与の方を薦めることになるが……」
「私はオススメはしないねっ、あんなのはもう飲みたくないよーだっ!」
「そ、そんなにキツイ代物なんですか?」
ずっとニコニコしていた金藤さんが鞭に打たれたかのような顔をするなんて。きっと、副作用とかが大変で飲み続けるのも辛いモノなんだろう。
どれほどのモノなのか気になるな。ちょっとだけ好奇心というか少し興味がわいてくる。
「まさか、姫川さん……本当に“アレ”飲むの?」
となりにベットにいた金藤さんが神妙な顔つきでこちらをジッと見てくる。明らかに表情だけで飲むなと言っているような顔つきだ。
「え? う、う~ん、どうだろ? 話を聞く限り副作用が辛そうとしか……」
「別に辛いわけじゃないよ? で、でも、そ、そのぅ……あれは……」
「……? どうしたんですか? 辛くないのなら何がダメなんですか?」
「う、うぅ……思い出すだけでも恥ずかしいよぉ……言えないよぉ」
突然、顔を真っ赤にしてもじもじと体を動かし始める彼女。は、恥ずかしい……? 薬で文字通り恥ずかしくなるのか? それともなんか媚薬みたいな効果でもあるのか?
いまいち分からんな。とにかく赤面して顔を真っ赤にするぐらい恥ずかしい想いをしたってことか。俺も飲んだら黒歴史みたいになっちまうのか? そうだったら考え物だな。でもなぁ……
うーむ、膝を抱えて丸くなっている彼女をきょとんとしたまま見つめていると、「ごほん」とその光景を見ていた春先生が咳ばらいを行う。すると、彼女も若干頬を朱色に染めつつ――
「あ、アレはな。私も飲むこと自体はオススメはしないな。でも、男性ホルモンの分泌に一役あるのは確実だから一度は試してみるといいな……まっ、それでもオススメはしないが」
「そこまでのモノなんですか?」
「か、簡単に言えば性欲増強効果ってところだ」
「せ、せいよく――ぞ、増強っ?」
予想した通りの媚薬効果――って、マジかい! 本当にそんな効果あるのかよ。完全に面食らった、そんな淫乱な薬がなんで認可されてんだよ。
先ほどよりも顔が赤くなっている春先生が絞るような声で話す。
「男性ホルモンの大量分泌。確かにこれで精神面はかなりの男性に近くなるんだが……」
「だが……?」
「女性の体にとてつもなく欲情するから自分の体に欲情し始める」
「なんですか、そのポンコツは?」
「仕方ないだろ? 比較的安全なのはこれぐらいなんだ。それほどこの病気に対する有効な手段が乏しいってことだ。男性ホルモンなどの注射器による注入をしたら病気と相性が悪いのか反発してホルモンバランスが崩壊して全身不随になる患者もいたし」
「ぜ、全身不随……ですか?」
思ったより重篤な事態だった。まあ、死亡例もあるからそのぐらいのことは起きてもおかしくないか。でも、完全にこれって打つ手がなくないか? ポンコツの飲むか死ぬか放置か――って……
「これ、完全にどうしようもなくないですか?」
「うん、どうしようもない。結友ちゃんも最初はいろいろやったけど結局は経過を見て検査。あとはメンタルケアとかが一番良いと」
「要するに何もせずに放置ってことですか?」
「まあな、コイツは薬に耐えられなくて止めたが海外では頑張って飲み切ってるやつもいる。望愛くん次第だな」
「は、はい……分かりました。と、とりあえず薬はお試しに少しだけってことでいいですか?」
「あー、まあ、いいけど……本当に飲むのか?」
ここまで聞いておいてバカなのか? と、言いたげな蔑んだかのような顔をこちらに向けてくる。でも、こっちも何もしないわけにはいかない。強い決意を彼女らに向ける。
「はい、でも、やっぱり何もしないよりもやった方がいいし、俺は男に戻るのを諦めたわけじゃない。少なからずの努力はするべきだろうと考えています」
「や、やめておいた方がいいよっ! 本当に大変なんだよ!?」
金藤さんが血相を変えて必死になって説得してくれる。だけど、俺の決意は揺るがない。まあ、性欲ぐらいならたぶん耐えられるし大丈夫だろうし。
「大丈夫ですよ。なんとか乗り切ってみせますよ」
「乗り切れないって!!」
「いつでも前向き。そっちの方がいいって言ってたですよね?」
「い、いや! それ前向き違う! ただの無謀だって!!」
「そうですか? まー、酷かったらやめるんでそんなに心配しなくても……」
「い、いや、だから――……あー、もう、しーらない! 飲むんだったら絶対に水分補給はしておいた方がいいよ。私からの最後のアドバイスだからねっ……あと、部屋から出ない方がいいよ……ホント。姫川さんもああなっちゃうんだろうなぁ……あぁ……ふにゅう……」
引き留めることを諦めたのかそっぽ向いてしまう彼女。最後の方は何を言っているのか聞き取れなかったが、たぶん俺に対していってることではなさそうだし大丈夫だろう。
「……まっ、お前が決意したなら止めないけどな。とりあえず薬は三日分、これでいいな?」
「はい、ありがとうございます」
「やばくなったらやめろよ? ったく、本当に勇気があるやつだな――……えっと、確かぁー、あとはお前の女としての戸籍ことだけだな」
「戸籍? そんな簡単にもらえるものなんですか……?」
「この病気に掛かったら国から保護って言ったろ? 戸籍、住所、家族構成、名前の偽造、年齢、ほぼ全ての完全にお前という女の子がこの国に昔から存在したというレベルでお前に関する書類が作られる」
「そ、そこまでやるですか……?」
「ああ、完全にお前という女が昔からこの日本に住んでましたってことにできるレベルだ。そこまでしないとさっき言ったみたいに被害に会う人間がいるからな――まあ、日本では実例はないけど」
「す、凄いですね……」
なんか国ぐるみで守ってもらえるだなんて興奮してきちゃうな。身を狙われて守られるという特別な人間ってのも悪い気はしないかも。
ふふ、これでちょっとだけ安心できた。これで生活に困ることはなくなるだろうし。だけど、まだまだ懸念があることには変わりがない。例えばだけど……
「え、えっと、職場とかにはどういう対応になるんですか?」
「それも安心しろ。絶対に口を出せないトップシークレットな対応するから」
「そ、そこまでしてもらうとなんだか気が引けますね」
「病気自体がトップシークレットみたいなものだからな……と、まあ、あとは書類関係のモノばかり。これからは私の仕事だ……とりあえずは今日はもう帰ってもらってもいいぞ。帰りは私が送っていく」
「い、いやっ! 別にいいですよ!」
「遠慮すんなって! どうせコイツも送っていかないといけないしな、それに今のお前らは未成年の女の子だし夜道は危険だろ?」
「そりゃあ、そうですけど……変な気分だなぁ、中身は大人なんだけど……」
「まっ、いいじゃん! 私たちは人畜無害な美少女。守られて当然な立ち位置だよっ」
「び、美少女って、それを自分で言っちゃうのか?」
「実際に可愛いからいいんです~♪」
「ああ~、確かに……うーん、まあいいか。じゃあ、よろしくお願いします、先生」
そう言うと春先生は「おう!」と返事をして会話を締めくくりは終わりになった。ひとまずは検査着から元の服に着替えてから病院をでることになった。春先生が隣の部屋から預かっていた服を二人分のかごの中に入れて持ってくる。
「ほい、じゃあ、私は鍵持ってくるからそれまでに頼む――抜いた奴はかごに入れてその辺に置いておいてくれ」
そう言ってベットの上にそれを置いたあとここからまた退出していく彼女。扉が閉まる音とともに部屋に静寂が戻り再び俺たちはこの部屋で二人っきりになった。金藤さんが俺の分のかごを持ち上げるとこちらに渡してくる。
「はい、どうぞ!」
「ありがとうございます」
受け取ると中を確認する。ミニスカート、下着や――うん、全部あるな。じゃあ、さっそく着替え始めようか。とりあえずは検査着を抜いて……って、あっ……!
途中までで手を掛けたぐらいでとあることに気づく。この検査着は浴衣を想像してもらえると分かりやすいと思うが両腕に袖を通した後は服にくっ付いている紐で前の方を結ぶという感じになっている。だいたい、その紐をほどくぐらいで俺の手は石になったかのようにピタリと動きを止めた。
「ねぇ、着替えるんだったカーテン閉めて……って、あっ……」
「ん? どっしたの?」
金藤さんの方を見るともうすっぽんぽんになっていた。仲良くなれたとはいえプライベートなので隠そうカーテンを閉めてからと提案したかったがどうやら遅かったみたいだ。まあ、この歳で少女の裸にあからさまな興奮はしないが……ちょっと気まずい。
ジロジロ見るのもアレだから反対の方向を向くと素っ頓狂な声が背中にぶつかる。
「ん? 着替えないの?」
「いや、カーテン閉めてからにしようと思っていたんですけど、脱いでしまったのならもういいかなと」
「んー? そんなに裸気にする? 他人の人に見られるのは結構慣れちゃったよ」
「い、いえ、そうじゃなくて……で、でも、見られるのか自分だけでもカーテン……」
考えてみると逆に体を見られるということは考えてなかった――カーテンに手を伸ばして閉めようとしたが下着姿の金藤さんが「あははっ!」と、ニコニコしながら明るい笑い声をあげた。声に少し驚いた俺はビクッと体を震わせて手を止めて彼女の方を向く。
「――ふふ、別に私は何とも思わないって、それにその体で生活していくんだったらこういうことにも慣れないといけないよ?」
「え、う、うーん、そ、そうかな?」
「練習だと思って何も気にせず着替えてみて……それとも……もしかしたら、重度の恥ずかしがり屋さんなのかなぁ~? ふふ、ジロジロ見られて興奮しちゃったり……?」
挑発的な笑みを浮かべて俺の顔に焦点を当てるかのようにして見つめてくる。
――べ、別に恥ずかしいとかじゃないし、それに男の頃はハーフゆえの高身長と骨格の良さを自慢するかのように堂々と着替えてたしー、銭湯の脱衣所とかで羨望の眼差しを集めたのはいい気分だったしー、それに今は彼女の言うとおりに美少女……こうして注目を浴びて体を自慢するのは今までしてきたじゃないか……っ!
うんうん、そうだ……そうに決まってる! ここはハーフ美女の気合の入れどころだ。震える手を精神力で押さえつけて検査着を脱いだ。上は付けてないので無機質なデザインのパンツだけを脱いであっという間に素っ裸になる。
「おっ、やればできるじゃん!」
「ちょ、ちょっと、変な感じだけど脱いじゃえば大したことないですねっ」
脱いだものを畳みながら勝ち誇ったかのようにして宣言する。金藤さんの方はもう服を着替え終わる直前であとは学校制服のブレザーを着るだけになっていた――……ん? 制服? どうしてそんなの着てるの? ……あとで聴けばいいか、今は着替え着替えっと……
かごの方に手を突っ込んでお目当ての下着を探し出す。おっ、あったあった! アイツらが選んだめちゃくそセクシーなヤツ。この布面積の少ない紫色の同性すら引き付けてしまうであろう派手なアダルトチックな――って、あっ……こんなの穿いてたことすっかり忘れてた……ッ!?
んん、どうしようか? 裸を見られたり見たりは最悪はいいが、いくら何でもこれは悪趣味というか……その、初対面で間もない人に見せられる姿じゃない……変な趣味に思われたらどうしよ?
「――? ねぇ、いつまで裸でいるの? 服、着ないの?」
後ろの方を見ると着替えが終わった金藤さんが不思議なモノを見るような表情で首を傾げていた。俺はとっさに彼女の方を向くと持っていた下着をパッと背に回して隠す。
「えっ、い、いや……そ、その、やっぱり、カーテン閉めていいかなって……」
「今さら? ふふっ、やっぱり恥ずかしくて耐えられなくなっちゃった?」
「ち、違うっ! ちょ、ちょっと! そ、その……こ、こ、これは――」
「おっすー! お前らの靴、持ってきたぞ――!」
くっそバットタイミング過ぎる……! 突然、何だと思ったら春先生が戻ってきてしまった。自然と下着を持っていた手に力が入り体中に脂汗がじわっと流れる。うすら寒さに似た感覚を感じながらこちらまでやって来る先生の方に視線を合わせる。
「ん? どうして望愛くんだけまだ裸なんだ? 何かあったのか?」
「ううん、ただ、姫川さん、なんか着替えるの恥ずかしいみたいだよ? ほら、真っ赤になって固まっちゃってるし」
淡々と金藤さんがそう言うと春先生は顔をしかめる。その後、肩をすくめて「やれやれ」と呟くと持っていた俺たち二人の靴を床に置くとコツコツと音を立てて歩み寄ってくる。
「んー、まあ、複雑な状態で恥ずかしい気持ちは分かるけど生きてくためにはなぁ……」
「だ、だから違うんですって! 恥ずかしくはないんですって!」
「じゃあ、なんで着替えないんだ? 早く済ませろよ」
「は、はいっ! わ、分かってます……分かってます……うぅ……」
彼女らに見えないように背中に隠してある両手のモノをまたまた強く握りしめる。くそくそくそくそくそくそくそっ!! あ、アイツらがこんなの選ばなかったら今頃は普通にできてたのにぃ! あーもう! 絶対に許せねぇ!! ああああ! もうおおおおっ!
恥ずかしくない! でも、これを着るのは悔しくて恥ずかしくてしょうがないし、怒りでもう……あー、ダメだ。もう心の中はいろいろな感情でカオス化してて彼女たちの顔をまともにみることすらできない……俺はうつむいて地面を向くと目を閉じで噛み締めるようにして唇を噛む。ぎゅーっと。
「……あー、もう、分かったって! そんな全裸で涙目になって全身真っ赤にされるとこっちも変な気分になるわ――そこまで嫌うんだったら隠れてもいいから早く済ませてくれ、みっともない」
「姫川さん、えっちぃ……」
髪の毛をくしゃくしゃと掻き毟りながら俺の醜態を蔑むように目を向ける春先生。何を想像しているのか分からないが恍惚とした一目惚れしたかのような表情を浮かべる金藤さん。あー、腹が立つ。俺が悪いわけじゃないのになんでこんな目に……っ!
「う、うぅ……だから本当は違うんですって……っ!」
「違う違うって……何が?」
「だからこれは……」
「これは? 恥ずかしくないなら普通にできるだろ?」
「いや、だからこれは――」
「ああ! いい加減にしてくれないか? ――ったく、なんであんなドスケベな下着は着れるくせにこれは全くダメなんだな……」
心底あきれたかのようにそう言う彼女であったがそんなことはどうでもいい。それよりもさっきの発言に気になりすぎる点があった。
「ちょ、ちょっと! なんでし、下着のこと知ってるんですか――ッ!?」
「えー? 当たり前だろ? 脱がしたの私なんだし……でも、思い出してみたら凄いよな。勝負下着っていうか……それはその、私はまず穿けないな。あんなのよく穿けるぜ……」
「えっ? なになに? どんなの穿いてたの?」
生きのいい魚が食いつくかのようにして話に割り入ってくる金藤さん。あは、はは、もう、バレてたんだ。しかも、金藤さんにも絶賛話し中だし――……もう、どうでもいいや……
力が尽きた――糸が切れたかのように足から力が抜けてペタリとベットに座り込む。気力が完全に抜けたのか持っていた下着も手から離れて床に落ちていく。
「おいおい、ベットは清潔にだぞ? 何も着ずにそのまんま直接座るのは汚れる――って、あ、そうそう、これだよコイツが穿いてたの」
先生が床に落下した紐を拾い上げると金藤さんに見せつけるかのようにして広げる。すると、悪魔のような笑みをこちらに向けると笑い吹き出し、およそ女性のモノとは思えない鼻の下を伸ばしたむっつりとした顔をする。
「えっろ、なにこれ~ほぼ紐じゃん……結構やるねー姫川さん……ぷぷぷ」
「――はは、もう、嫌だ……」
いつも応援ありがとうございます。作者でございます。
お知らせですが、ハメ版を見ている方が大半だと思いますがそろそろなろう版の方も再開を視野に入れています。なろう版の方は書き直しということでほぼハメ版のストーリーをなぞる部分が多いですが、ハメ版はなろう版に比べて一部の表現の規制が緩いと聞いたので、せっかくなので一部パターンは変更してみたいと考えています。
その代わり、なろう版の方ではそれが抜け落ちた劣化ということにもしたくないので別のエピソードとかいれて――という感じで考えています。もちろん、こちらもどちらかを優遇するかという考えだけはないので安心してご覧になっていただければなと思います。
ではでは、今回もありがとうございました。