世界から天才音楽家と呼ばれた俺だけど、目が覚めたら金髪美少女になっていたので今度はトップアイドルとか人気声優目指して頑張りたいと思います。(ハーメルン版) 作:水羽希
「おおおおおおお願いしますッ!! 本当にメンバーに入ってくるんですかッ!?」
「は、はい……何度もそういってるじゃないですか――」
「本当ですかッ!? 本当にメンバーに入ってくれるんですねッ!?」
「だ、だから何度もそう言ってますって……」
聞こえているのか聞こえていないのか――やれやれ、なんだか頭が痛くなってきた。
あのあと部屋で勧誘を受けた俺はさっそくというか急にこれでいいのか? と、言いたいレベルで金藤さんが所属するスターズプロダクションに連れてこられた。てか、偶然が過ぎると思えば金藤さんと青木さんの勧誘がどちらも同じことを言ってたなんて……もはや運命。
しかも、大手企業のスターズとか聞いてないぞ……たぶん、音楽界に所属したままだったら絶対にアイドルなんかなれなかっただろうな。女としての姫川望愛になれたからここに来れた感はある。
今の俺はどこにも所属――いや、ただの日本に住んでいるハーフ少女。生活金とかは貰えるとはいえニート生活は長くしててもいけないし地道にアイドルやってもいいかな。って、思っていたが、スターズだったなんて……地道とはいえない派手な女の子人生になりそうだ。
「あはあはあはあは――ゲホッ! ゲホゲホ! む、むせたぁ……」
「ちょっと、落ち着きなよ。青木さ~ん?」
「ゲホゲホ……それにしても、まさか結友ちゃんと望愛ちゃんが友達だったとは――そして、その望愛ちゃんをここに連れてきちゃうなんて……っ! さすが、我が事務所が誇る声優よ!」
「せ、正確に言えばちょっとだけ別系列だけどね、まあ、お隣さんみたいなもんだけど」
「でも! 系列は同じでしょ!? 友達、家族、仲間よ。結友ちゃあああん!」
「あ、はぁ、そうですね。家族だよね……」
あまりにも騒がしくてやかましいアイドルマネジャーに若干引いてる金藤さん。あ、あの元気な金藤さんがテンションで圧倒されているなんて……? 本当にうるさい人だ。
殺風景な部屋なのに賑やかに感じられるほどだ。ここの室内は出入り口が一つに大きな窓が一つ。中央にはテーブルとそれを囲む四つのパイプ椅子。俺たちは二人隣で入り口側の椅子に座り青木さん大きな窓を背に一人だけで向こう側に座っている。
目の前の青木さんはずっと荒ぶっている。俺はずっと引いている。金藤さんもテンションに圧倒されて唖然とした表情で固まっている。
「ふぅ……子供の前なのに大人げない姿を見せてしまいました……でも、本当に嬉しいですよ。望愛ちゃんが本当に入ってくれるなんて……っ! これでメンバーが揃いました!」
「確か、他に自分含めて三人必要だったんですよね? 他の子はもう集まってたんですか?」
「えぇ、しばらく前にね。でも、なんか――ビビッて自分に雷が走ったような――その……この子がいいなって子が全然見つからなくてね……だから、その雷のノアちゃんが来てくれてホントに……嬉しくて……」
「凄く嬉しいってことはもう分かりましたよ。あはは……」
「うふふ、今日からよろしくね! ――……結友ちゃんも協力してくれてありがと、まさか、軽く頼んでいた結友ちゃんが連れてきてくれるなんて……ホント、感謝っ!」
「それほどでも……私も今のあのユニットを助けれるのは姫川さんだけだって思ったし……」
「うんっ! こんなにビジュアルが完璧なんだもん! 音楽もできるみたいし――あっ、聞いておきたいんだけど、音楽ってどれほどできるの? どんな経験とか特技があるか知っておかないと!」
机に少し身を乗り出して窓から見える太陽が差す青空を背に聞いてくる。う~む、どれほどか……か、難しい聞き方してくるなぁ。なんて言えばいいんだろ? ――と、考えていると……
「むふふふ、青木さん! 驚かないでよね? 姫川さんはなんと世界的な――むごっ!?」
「ば、ばかっ! それはダメだろッ!!」
慌てて口を押えて最悪なカミングアウトを防ぐことに成功する。青木さんはその様子を目を玉のように丸くして見ていたが「あはは」と愛想笑いで誤魔化す。
もういいかな? 金藤さんの口を塞いでいた手を離すと不機嫌そうに口を尖らせて怒ってこちらを睨んでいた。バカ野郎、なんで戸籍が変わったのか聞いてなかったのかよコイツ……っ! と、言いたいが必死にこらえて左耳に耳打ちする。
「こら! なんで正体を隠してるか思い出してください、今は男じゃないから世界的な音楽家の姫川望愛ですっていうのは無理があるし、変に怪しまれたらどうするんですか?」
「……あ、そうだった……えへへ……」
「ったく、気を付けてください……金藤さんもそうなんですから……でも、どうしたもんか……」
「じゃあ、控えめに地区大会優勝とかは?」
「それでも女としての音楽の実績は何もないですよ。経歴に特技か……難しいことになったなぁ」
都合の良い言葉がなかなか見当たら凝り固まった頭を抱える。
言うまでもないと思うが春先生やその関係者ができるのはあくまで生まれた時から今に至るまでの必要最低限の経歴を作ること。あくまで生活に困らないようにしてもらえるだけ、ある意味だけど俺は彼女らに貰った女の姫川望愛を演じて生きていく――そういった解釈ができるだろう。
そのように考えると、この体ではそんな音楽関係で大きな実績は作ってない……それどころか何もないただ平凡なただの女の子だ。だったら、ここで答えるべき解答は――
「……えっと、音楽はただの趣味です。でも、誰にも負けないぐらいの意気込みはあります!」
「そうそう! 本当に姫川さんは音楽上手なんだよ! たまにキャラソンとかの仕事の時に私にたくさんアドバイスできるぐらいに上手」
今度はうまくフォローを掛けてきてくれる金藤さん。俺たちの言葉を聞いた彼女はふむふむと顎に手を当てて小さな植物を念入りに観察するみたいな目でこちらを見てくる。
「ふ~ん、そうなんだ。実力はどの程度なの?」
「ふ、普通の人がこれぐらいだったら、自分はこのぐらいです!」
日本語が通じない外国人に話すときみたいにオーバーなジェスチャーをしてみる。多少無理やりな感じがするが青木さんはクスクスと微笑をしながら聞いてくれていた。
「ふふふ、それだったら凄い上手ってことじゃない」
「はい、ピアノだったり歌だったり楽器だったりなんでもやれますよ!」
「そんなに上手だったらコンクールとかにも出ればいいのに――出たことないの?」
「出場経験はありませんね……口だけになりますが……」
「そっか……残念ですね。実績とかがあればたくさんPRできるのに」
「ううん! 青木さん、本当に姫川さんは凄いんですよ! 天才なんですよ! たぶんこのスターズに匹敵するアーティストはいないよ!! デビューしたらヤバいと思う」
「そ、そこまでなの? で、でも、そんなに上手だったら有名になったりとかしてると思うけど?」
「隠れた天才音楽家ってところだよ。だって、私は姫川さんの部屋でたくさん賞状――もごっ!?」
「だーかーら! それは言っちゃダメって!」
またまた口をふさいで発言を止めることになってしまった。手を離すと「ごめん」と言ってきたけど。ちょっと、ムカついたから「ふん!」とそっぽ向いたら無視のトラウマが蘇ったのかテンションが世界恐慌並みの急暴落した。
ちなみに、この後にこの時のことを聞いたら「本当に仲がいいんだなぁ」と思っていたらしい。俺と青木さんの話はまだまだ続く。
「ん、じゃあ、ダンスとか運動の経験とかは?」
「な、ないですね……それはまったく……」
「そ、そっか……さっきも言ったけど、本当なら実績があった方がいいの――まっ、好きならどんどん上手くなっていくと思うよ。他の子はかなりの実績があったりするけど……可愛いから大丈夫!」
「は、はい、追い付けるように精進します……」
青木さんの表情を見ていると……うん、あんまり実技面ではダメかな? と、思われてるような気がしていてならない。いや、絶対にそう思われてる。逆に言うとそれらを帳消しにしてまで弄ぶほどに俺の外見が優れているということなのか? 一目惚れってヤツじゃないかそれはぁ……?
特技面に関しては効果はいま一つみたいな表情をされたが、話はどんどんと進んでいき軽くここの施設の紹介とか練習メニューとかの話だった。まあ、さすが大企業といったところだろうか。それもが凄く充実していて聞いてるだけでもワクワクしてくる内容だった。
部屋の空気も最高だし俺も金藤さんも青木さんもみんな楽しく話せた。だが、最後にとんでもない話が出てくるとは考えてもいなかった。ここからまた話はスタートする。
「では、最後にだけど……って、たぶん子供の貴女たちにはよく分からないと思うけど、あとで保護者と学校の先生とかにお話し入れたいから帰りの時に大事な書類渡すね」
「え? 保護者? 学校?」
「ええ、そうよ。未成年だから当たり前じゃない。親御さんに許可は必要だし、早退だってしないといけないし、その辺の事情はちゃんとしないとね。一回ぐらいはお父さんお母さんに会わないといけないし」
「え、会う? ――は、はぁ、まあ、確かにそうですけど……」
変な汗をじわじわと流して落ち着かない素振りで返事を返す。や、やばい、この病気になって特別処置を受けた人は年齢が十三歳からになる――まあ、これはどうでもよくて保護者と学校のことだ。
「ん? どうしたの? 急に弱気になって?」
さっきとは変わって金藤さんの方から耳元に小声で話しかけてくる。俺はタイミングを見計らって青木さんに聞こえないようにして慎重に返事をする。
「ほ、ほら、不味くないですか?」
「え? 別に大丈夫だよ……私がちゃんと声優してるのが何よりの証拠――」
「違う違います、それはだいたい分かってたけど……うちの両親、どっちも今は海外にいます」
「――え?」
「しかも、日本に来る予定はここ五年はないです……」
「ええええ!? 大変だよっ! じゃあ、アイドルになれないじゃん! どうしようッ!?」
「こっちが聞きたいよ……」
「春先生に何とかしてもらおうっ!」
「そ、そんな便利アイテムみたいな扱い……ああ、どうするかぁ……」
予想外のことで悩む結果となり再び頭を抱えることになった中、青木さんの声が俺を現実へと引き戻していく。
「え、えっと、二人とも~? 今の話聞いてた? 結友ちゃんは仕事、望愛ちゃんはさっそくメンバーと顔合わせだよ~?」
おはようございます。寒い中今回もご愛読ありがとうございました。
お知らせで章のタイトル変更しました。なろうの方もそろそろ更新できそうですのでそちらの方もよろしくです。次回もどうかよろしくお願いします。