剣姫転生 〜エルフの娘は世界最強の剣士を目指す〜   作:カゲムチャ(虎馬チキン)

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98 最凶襲来

 倒したアレクを王竜剣と一緒に引きずりながら仲間達のところに走って戻れば、そっちの戦いももう終わりかけてた。

 

 ちょっと遠くでガルさんはガ/ルさんになってて、愛剣の魔剣『喉笛』をエリスさんに託してた。

 悲しいけど、これも剣士のサガだ。

 レイダさんの時といい、今回のアレクといい、なんだかんだで知人や友人を斬らずに済んでる私は運が良いだけだよ。

 

 唯一の救いは、ガルさんの死に顔が割とやり切った感じの表情だったことかな。

 全力でやって負けたんだから仕方ないみたいな、自分の死に様に納得してるような顔だった。

 

 鬼神の方はまだ暴れてたけど、ルーデウスの大火力魔術を食らいまくったのか既にボロボロ。

 そこにまだ魔剣を持ったままの私が参戦してズバッといき、

 驚いたことに鬼神はそれでも気絶はしても死にはしなかったから、手足を斬り落とした後、ルーデウスの魔術でガッチガチに固めて拘束した。

 殺しを忌避してるルーデウスらしい。

 まあ、鬼神を殺すと鬼族全体とビヘイリル王国が敵に回るそうだから、決して甘いだけの判断じゃないんだろうけど。

 

 そんな感じで鬼神も無力化。

 でも、鬼神の相手をしてたルーデウスと師匠も無事じゃない。

 魔導鎧一式は完全に大破。

 二式改まで壊され、背中のスクロールバーニアまで半壊してる。

 師匠も剣を折られた上に左腕を失ってた。

 けど、ルーデウスが王級治癒魔術のスクロールですぐに治したから大丈夫だ。

 ついでってわけじゃないけど、ガルさんとの戦いで結構ズタボロにされたっぽいエリスさんとオーベールさんの治療も完了。

 

 ルイジェルドさんとスペルド族の戦士達は、地面に倒れてビクビクと痙攣してる。

 あれはルーデウスの電撃魔術を食らったな。

 戦いの中で援護でも入れたのか、それとも乱戦になったのか。

 電撃魔術は当たりさえすれば、何故か闘気の鎧を貫通して肉体を痺れさせるから、ルイジェルドさん達も殺さずに戦闘不能にすることに成功したって感じだと思う。

 

 そのルイジェルドさん達の相手をメインでしてたロキシーさんは息切れか、それとも魔力切れか、疲労困憊って感じで倒れてる。

 ウィ・ターさんとナックルガードも、三人がかり(四人がかり?)とはいえ、格上+数の暴力はキツかったみたいで、ロキシーさんと同じく疲労困憊でぶっ倒れてた。

 

 最後に、倒れたルイジェルドさんの口からコソコソと青いスライムが這い出してきて、ロキシーさんの口の中に入ろうとしたけど、魔力眼で気づいた私が核を砕いて仕留めた。

 このスライムが冥王かな?

 なら、これで終わりか。

 正直、仲間の何人かは死ぬかもしれないって覚悟してたし、最悪全滅するかもとまで思ってたけど、意外と何とかなるもんだね。

 

「驚いた……。ここまでの戦力を集めても歯が立たないとは……」

 

 核を砕かれたスライムが、ドロドロと体を崩壊させながら、そんなことを言い出した。

 声帯とか無さそうなのに、どうやって声出してるんだろう?

 

「あなたが、冥王?」

「そうですよ、妖精剣姫。まさか、こうもあっさりとやられるとは思いませんでした。

 これでも粘族史上最強の王として数百年を生きた自負があったのですがね」

 

 スライムだから顔色とかわからないけど、そこはかとなく悔しそうな声で冥王は語った。

 本当にどうやって声出してるんだろう?

 

「見事です、妖精剣姫よ。その仲間達よ。

 ですが、まだ終わりではない。ヒトガミをあまり侮らない方がいい」

「ん? それは、どういう……ッ!?」

 

 その瞬間。

 冥王が完全に崩れて、最後の敵がいなくなったと思ったと同時に。

 

 とんでもない悪寒が全身を走り抜けた。

 

 背筋が凍りつくような感覚。

 とてつもない脅威が迫ってくる気配がする。

 それは私以外の皆も感じたみたいで、私と同じく一瞬にしてドバっと冷や汗を流しながら、気配のする方向を見た。

 

 そして、そいつが襲来する。

 

 砲弾のように吹っ飛んできた何かが、凄まじい勢いで私達の近くに着弾した。

 その衝撃で地面がめくれ、砂柱が立ち、魔術でもないのに衝撃波が吹き荒れる。

 ロキシーさん達やスペルド族の人達は近くにいたから守れたけど、そこらに転がしておいたアレクは王竜剣ごとどこかに飛んでいっちゃった。

 それを気にしてる余裕もない。

 一瞬たりとも、こいつから意識を逸すことは許されない。

 

「あちゃー。かなり急いでもらったってのに、間に合わなかったか。やっぱ凄ぇな、お前らは」

「ギース!!」

 

 そんなことを言って師匠に怒鳴られたのは、変テコな文様のついたローブを着たギースさんだ。

 師匠を見て、苦笑しながら肩をすくめてる。

 

 そのギースさんは、金色の巨人の肩の上に乗っていた。

 身長は約2メートル半。

 太くて逞しい六本の腕を持ち、異様な雰囲気を放つ黄金の鎧を身に纏う存在。

 

 纏う闘気の強さはわからない。

 見えないんだよ。

 こいつは私の魔眼に映らない。

 魔眼封じの装備を使った時のオーベールさんみたいに、ボヤけて見えるってわけでもない。

 完全に見えないのだ。

 こんなのは他に一人しか知らない。

 その一人っていうのは、私が絶対に勝てないと思った存在。

 マジモードのオルステッドだ。

 もうヤバさしか感じない。

 

「やれやれ、あんだけ苦労して集めた仲間があっさり全滅かよ。

 センパイ達が思ったより早く来やがるし、仕方なく本来の予定から変更したとはいえ、割と自信ある布陣だったんだがなぁ」

「フハハハハハハハ! つまり、相手がそれほどの強者だったということである!

 だが、元より我輩一人で充分であろう!」

「違ぇねぇ」

 

 アトーフェさんみたいな高笑いを上げる黄金鎧。

 その声に心当たりでもあったのか、ルーデウスが呆然とした様子で、黄金鎧の名前を呼んだ。

 

「バーディ陛下……!」

「うむ! 久しぶりであるな、ルーデウスよ!」

「……知り合い?」

「……魔法大学に留学してきた『不死身の魔王』だ。アトーフェの弟で、シャンドルさんの叔父さんだよ」

 

 ああ、聞いたことある人だ。

 『不死身の魔王』バーディガーディ。

 魔法大学の面々の話に何回か出てきたし、ランドルフさんの話にも出てきたシャンドルの親戚だ。

 知り合いの上に仲間の身内とは……やり辛いね。

 そんなこと言ってられる相手じゃなさそうだけど。

 

「なんで、こんなところに……」

「決まっておろう! 我輩がヒトガミの使徒だからである!」

 

 堂々とヒトガミの使徒を名乗るバーディさん。

 ……一応、これで揃ったってことか。

 ヒトガミの使徒は同時に三人まで。

 冥王、ギースさん、そしてバーディさん。

 残りの三人は……やっぱりギースさんの口車で勧誘したのかな?

 有能だよ、ギースさん。

 ヒトガミなんかより遥かに。

 

 でも、この二人を倒せば、今度こそ今回の戦いは終わる。

 しかも、オルステッド曰く、ギースさんはヒトガミの切り札だ。

 このバーディさんだって、間違いなくヒトガミが動かせる最強の使徒のはず。

 だから、この二人を倒せれば、ヒトガミとの戦いは滅茶苦茶有利になるんじゃないかと思う。

 

 そう。

 倒せれば。

 

「我は『闘神』バーディガーディ!

 ヒトガミの盟友にして、闘神の名を受け継ぎし者!

 4200年前、かの『魔龍王』ラプラスと相討ちになった最強の魔王である!」

 

 闘神。

 七大列強第三位。

 人知の及ばない真の化け物と言われる、列強上位の一角。

 まさか、ラプラスの前にこんなのと戦うことになるなんて……!

 

「『龍神』オルステッドに与する者達よ! 貴様らに決闘を申し込む! 行くぞ!」

 

 そして、黄金の鎧が動き出した。

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