剣姫転生 〜エルフの娘は世界最強の剣士を目指す〜   作:カゲムチャ(虎馬チキン)

118 / 146
無職転生書籍版完結! 記念の番外編です。
本当はスペシャルブック買ったから、それに関連するエピソードをやりたかったのですが、上手く纏まらなかったため、ふと思いついたネタをやります。
無念……!


番外 たーまやー

 北神流『花火』。

 それは私がベガリット大陸で遭難していた時、上空から地上を俯瞰して見ることで町を見つけ、遭難生活から脱したいという切実な思いから開発された技である。

 

 足の裏に発生させた衝撃波の魔術を全力で踏みつけ、踏みつけと衝撃波の二つの力で空中を跳ねる技。

 言うは易く行うは難し。

 この技は意外と難しい。

 まず無詠唱で衝撃波の魔術が使えないといけないし、踏みつけと衝撃波を発生させるタイミングが僅かにでもズレると効果が半減する。

 私のアホみたいな身体能力による超速の踏みつけに合わせようと思ったら、結構な魔術の発動速度と精密さを要求される。

 その代わり、正しく使えさえすれば一歩で1キロ近い距離を跳躍することができるスーパーな技でもあるのだ。

 

 その難易度の高さから、私はこの技を使う時、必ず手を使って衝撃波を作っていた。

 魔術は基本的に手から出る。

 二の腕あたりで魔力が魔術に変換され、最終的に掌や手に持った杖から発射される。

 ただ、これは練習次第で足とかからも出せるようになる。

 飛ぶ斬撃だって、練習すれば足刀で飛ばせるようになるからね。

 それと同じだよ同じ。

 今だって、花火じゃない衝撃波移動や衝撃波加速をする時、よく肘とかから魔術を出してるし。

 

 しかし、先に言った通り結構な難易度を誇る花火は、最も楽に魔術を使える手からの衝撃波じゃないと成立しなかった。

 けど、花火の発動に手を使っちゃうと、当然のことながら片手が塞がっちゃうわけで。

 そうなると空中戦の時とかは、花火を使う度に剣から片手を離さなきゃいけなくなり、その間は両手を使う強力な奥義の数々が使えない。

 空中戦なんてやる機会はそうそう無いだろうけど、赤竜山脈ハイキングではやったし、第二次ラプラス戦役で戦うことになる魔族達には飛べる種族も結構いるらしいし、この世界には天族なんて空中戦専門の人達だっている。

 何より、制空権を有するっていうのは強い。

 空中戦への備えは必要だ。

 

 ということで、私は長いこと他の真っ当な技の鍛錬をする合間に、花火の改良に着手してた。

 具体的には足から出した衝撃波を踏みつけられるようになりたいと。

 だけど、これが地味に難しい。

 衝撃波を出す、それを踏みつける、両方を同じ足で連続してやらなきゃいけないっていうのが難しい。

 一回成功の感覚を掴めれば習得できそうなんだけど、その一回が遠い。

 今まで、私は剣術の上達のために強い人の真似をして技を覚え、それを自分用にカスタマイズしたり、組み合わせたりして強くなってきた。

 けど、今回は殆ど自己流のオリジナル技。

 学ぶより切り開く方が遥かに大変なんだということを実感させられる……。

 私の糧になってくれた数々の技や奥義を作り出し、継承してきてくれた人達に感謝しなくては。

 

 そうして、某ハンター協会会長のごとく感謝の念に目覚めそうになりつつ、花火の改良を進め……数年をかけてついに完成した!

 見よ! これが私のオリジナル奥義、その完成形だ!

 

「奥義『花火』!」

「おお!」

「わぁ……!」

「ふむ」

 

 事務所にて『奥義』へと改名した花火を見せびらかす。

 足だけを使って空中を飛び跳ね、踊るように宙を舞う。

 ハッハッハー!

 某国民的海賊漫画に出てくる六式のあれより凄いという自負があるぞー!

 何せ、速度も飛距離も段違いだからなぁ!

 

「綺麗だ……」

 

 アレクが熱に浮かされたような目で見上げてきてた。

 そんな目で見られると照れるね。

 でも、気分は凄く良い。

 頑張って改良して良かった。

 

「なるほど」

 

 しかし、有頂天になって伸びた私の鼻っ柱は、次の瞬間にへし折られた。

 

「こんな感じか?」

 

 オルステッドがジャンプして空中に飛び出し、私と全く同じように宙を飛び跳ね始めた。

 その手には、持ち主が消費するはずの魔力を肩代わりしてくれる、魔術師の必需品こと魔力結晶が。

 オルステッドは魔力の回復が遅いため、自分の魔力はもったいなくて滅多に使わないから、魔術を使った軽い訓練とかのためにあれを持ち歩いてるのだ。

 

 だが、そんなことはどうでもいい。

 簡単に真似られた。

 私の努力の結晶が、簡単に盗まれてしまった!

 コピーに定評がある私でも、教えられてもいない技を、一目見ただけで完全再現とか無理だぞ!

 光域剣界や烈光の太刀を盗まれた時の比じゃないショックを感じる!

 敗北感が! 敗北感が凄い!

 

「ぬぅぅぅぅぅぅ!!」

「だ、大丈夫! オルステッド様がおかしいだけで、エミリーも充分に凄かったよ。そ、その、本物の妖精みたいに、綺麗で……!」

 

 悔しさで思わず地面に降り立ち、膝をついて地面をバンバンしていたら、アレクに慰められてしまった。

 顔赤くして必死で褒めようとしてくれてるアレクを見てるうちに、ちょっとずつ精神が癒やされていく。

 ほっこりしたというか、なんというか。

 ありがとう、アレク。

 

「しはん!」

 

 そして、この場にいた最後の一人。

 体のあちこちに鱗の生えた可愛い幼女が、キラキラした目で私に話しかけてくる。

 オーベールさんの娘、オリベイラちゃん(4歳)だ。

 今日はオーベールさんが出張で、奥さんもちょっと忙しいので、事務所で預かってたのである。

 

「それがしにも、あれ、おしえてください!」

 

 本当にキラキラした目で、まるで師匠と出会った頃の私みたいな感じで、教えを乞うてくるオリベイラちゃん。

 彼女を見て、私はとても穏やかな気持ちになった。

 

「……うん。いいよ」

 

 オルステッドには負けた。

 でも、こうして私が頑張って開発した奥義を受け継ぎたいと言ってくれる子がいる。

 それは、とても幸せなことなんじゃないかな。

 もしかしたら、色んな流派の開祖達もこんな気持ちだったのかもしれない。

 そう思った瞬間、私の中にあった敗北感はスッと薄れていった。

 

 

 

 

 

 後年。

 花火で空中に飛び上がり、そこから布を広げてムササビのように滑空することで、大した魔力を使わずに長距離を飛行することをオリベイラは可能とした。

 その技術を伝授され、広い戦場を縦横無尽に飛び回る北神流の忍者軍団が龍神陣営に誕生することになる。

 彼らを見た時、私は思った。

 なんか思ってたのと違うと。




・花火マスターエミリー
天地が逆転した龍の世界に放り込まれてもやっていける。
初代五龍将以外なら、龍士と空中戦をやっても多分勝てます。


・忍者軍団
ネタのように思えるが、実際に戦場にいたらマジで洒落にならない。
姫神三従士は全員がこれを更に改良したパラグライダー的な魔道具を操れるので、国を軽く落とせるエミリー+三従士が、地上の軍勢とか無視して、知らんうちに背後に回ってたりする。
悪夢。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。