剣姫転生 〜エルフの娘は世界最強の剣士を目指す〜   作:カゲムチャ(虎馬チキン)

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番外 メリークリスマス!

 本日はクリスマス。

 嬉しいことに、雪も降り始めてホワイトクリスマスだ。

 北方大地では雪なんて珍しくないし、普段ならむしろ移動の邪魔になって鬱陶しいだけだけど、今日だけは特別。

 ということで、私も気合い入れてみました!

 

「メリー、クリスマス!」

 

 私はアリエル様が送りつけてきたミニスカサンタコスを身に纏い、プレゼント袋を担いでグレイラット家の甥っ子姪っ子達のところへ突撃した。

 聖闘気(昔は龍聖闘気もどきって呼んでた)があれば、ヘソ出しルックでも寒くない。

 お腹にある昔の傷跡が見えちゃってるのがアレだけど、そこはスルーしてくれることを祈ろう。

 

 ちなみに、例年はとある世界最強の男がサンタをやってるんだけど、今年は決闘で私がその座を奪ってきた。

 相手は本気モードからはほど遠かったし、実力で上回ったわけじゃなく、奇跡に奇跡を重ねたような運勝ちだったけど、それでも勝ちは勝ちだ。

 私はサンタの称号と共に列強二位の地位まで奪い取った。

 今の私は無敵だ!

 そうして、意気揚々とサンタになった私は……。

 

「うわっ。エミリー姉、いい歳して恥ずかしくないの?」

「ぐふっ!?」

 

 ララの容赦のない一言によって、膝から崩れ落ちた。

 列強二位のこの私が指一本すら使っていない弟子にボッコボコにされ、心を抉られ、手放してしまったプレゼント袋が床に転がる。

 

「あれ? そういえば、私って、今、いくつ……」

 

 我が不肖の弟子こと、ララが現在13歳。

 ララはルーデウスが19歳の時に生まれた子で、そのルーデウスと私は同い年だから……。

 あ、私ってアラサーじゃん。

 それどころか、前世まで足したらアラフォー通り越してアラフィフ行くぞ。

 そんな奴がヘソ出しのミニスカサンタコスではしゃいでるとか……。

 

「あ、ああ……!? ああああああああ!?」

「エミリー!? 落ち着いて! 大丈夫! 大丈夫だから!」

「ララ! 今のは絶対にダメなやつですよ!」

「ごめんなさい」

 

 その場に居合わせた姉が発狂し始めた私を優しく介護し、ロキシーさんが擁護してくれた。

 やばい。本気で涙が止まらない。色んな意味で。

 

「エミリー。大丈夫だ」

「ルーデウス……」

 

 と、その時、やけに真剣な顔をしたルーデウスが、姉にあやされる私の肩に優しく手を置いた。

 何故か、とても目が怖かった。

 

「大丈夫だ。見た目は15歳くらいなんだから、それでいいじゃないか。ウチの神だってそう仰っている」

「え? 神?」

 

 ルーデウス、いつの間に宗教になんて入ってたんだろう?

 自称神がアレだったから、反動で他の神に走ったのかな?

 おのれ、ヒトガミ。

 

「わー! エミリー姉、きれい!」

「クリス……」

 

 騒ぎを聞きつけたのか、家の奥からトテトテと赤髪の幼女が現れた。

 グレイラット家の末っ子、クリスティーナことクリスだ。

 クリスは曇りのないキラキラとした目で私のことを見てきた。

 私はそんなクリスを優しく抱き上げて、

 

「お姉ちゃん、綺麗? 痛く、ない?」

「痛い? エミリー姉、かわいいよ!」

「……そっか。ありがとう、クリス」

 

 私はクリスをそっと下ろして、転がってたプレゼント袋に手を突っ込んだ。

 

「メリー、クリスマス」

「ありがとー!」

 

 私からのプレゼントを、クリスは笑顔で受け取ってくれた。

 天使。

 あの狂犬のごときお方から生まれたとは思えない。

 まあ、あの人も年々丸くなってきてるというか、狂犬っぽさが鳴りを潜めて立派なお母さんになってるんだけど。

 

 ちなみに、グレイラット家の子供達は、毎年のようにトナカイのコスプレをしたルーデウスと世界最強のサンタの襲来に慣れてるので、クリスマス文化を理解してくれてる。

 あ、考えてみれば、ルーデウスだっていい歳してトナカイやってんじゃん。

 オルステッドだって約100歳、ループを含めれば数万歳なのにサンタやってるし、私だって気にすることないよね。

 ヘソ出しルックに関しても、私より遥か歳上の身内(お婆ちゃん)が、その格好で冒険者界隈を闊歩してたんだから大丈夫だ。

 

 エルフは外見年齢が命!

 私は15歳、私は15歳、私はピッチピチの15歳。

 よし。

 

「はい。ララも、メリー、クリスマス」

「ありがと」

 

 暴言を吐いたバカ弟子だけど、私は15歳だから気にしない。

 ちゃんと当初の予定通り、ララにもプレゼントを渡した。

 ララはいつもの無表情に、ちょっとだけワクワクしたような顔を浮かべて、

 

「新しい、修行用の、模擬剣。デザインに、凝ってみた」

「うへぇ……」

 

 冒険者から鍛治師に転職したタルハンドさんに依頼して作ってもらった刃引きの剣。

 ララも最近目覚め始めた、中二チックなカッコ良さを盛り込んでもらった。

 ジークもアレク経由で感染したし、ララは私経由で感染したしで、ルーデウスが頬を引きつらせてたけど、別に良いじゃん。

 中二病は個性の範疇だよ。

 

「おー」

 

 ララも修行用って聞いて嫌そうな顔してたけど、装飾は気に入ったのか、持ち上げて嬉しそうにしてる。

 良かった良かった。

 

「はい。ルーシー、アルス、ジーク、リリ」

 

 他の子達にもプレゼントを配っていく。

 そうしてから、私は次の目的地に向かって飛び立った。

 ソリの代わりに花火で宙を駆け、次はオーベールさんの家に。

 煙突から突入し、ビックリして斬りかかってきたオーベールさんにごめんなさいしてから、オリベイラにプレゼントを渡す。

 

「はい。オリベイラ」

「ありがとうございます、しはん!」

 

 うん。可愛い。

 それを確認してから、次はウィ・ターさんやナックルガードの子供達のところへ。

 付き合いの深い子供達のところへプレゼントを届け終わったら、次は事務所の転移魔法陣でミリスやアスラや剣の聖地に飛んで、お婆ちゃんのところのクライブや、イゾルテさんとドーガのところ、ニナさんとジノくんのところにも行った。

 エミリーサンタは国境を越えるのだ。

 

 で、最後に。

 

「ただいまー」

「おかえり、エミリー」

「もう始まってるわよ」

 

 シャリーアの自宅に帰って、いつもよりちょっと豪華な食事の席についた。

 ……で、だ。

 

「お、おかえり、エミリー。その、す、凄く似合ってるよ!」

「ああ、うん。ありがとう、アレク」

 

 なんか、当たり前のような顔してアレクが我が家の食卓にいるんだよなぁ。

 割といつもの光景ではあるんだけど、聖夜にまで来るあたり本気を感じるというか。

 そろそろ根負けしてしまいそうだ。

 まあ、それはそれとして、アレクの真っ赤な顔見てると、私もまだまだ捨てたもんじゃないなと思う。

 

 そんな感じで、今年のクリスマスは過ぎていった。




この物語はフィクションです。
無職転生にクリスマスはありませんし、剣姫転生にもクリスマスはありません。
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