剣姫転生 〜エルフの娘は世界最強の剣士を目指す〜   作:カゲムチャ(虎馬チキン)

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もう何回目になるかもわからない、北神流『流入効果狙いの術』。
今回はヒロアカです。
というか、昔書いてたやつのリメイクです。
なので、今回のテーマはヒーローについて。


番外 エミリーとヒーロー

「正義の、味方?」

「うん! 僕はチェダーマンになりたいんだ!」

 

 甥っ子のジークが、キラキラとした目でそんなことを言う。

 チェダーマン。

 ルーデウスが子供達を楽しませるために考えたお話。

 前世における国民的ヒーロー、顔がアンパンでできた愛と勇気が友達のあいつを、この世界向きにアレンジしたお話の主人公だ。

 あんこの詰まったパンじゃ伝わらなかったから、チェダーチーズになったって聞いてる。

 

 ジークはそんなチェダーチーズのヒーローになりたいらしい。

 さすが、アニメや漫画のヒーロー達に憧れた私の甥っ子。

 ジークは姉の息子で私の血を継承してるから、特に似たんだね。

 可愛い子だ。

 まあ、子供なら大抵はそういう時期があるような気がするけど。

 

「師匠は体を鍛えて、剣や魔術を学べばなれるって言ってた! エミリー姉もそう思う?」

「うーん、そうだねぇ」

 

 アレクはそんなこと言ってたのか。

 だけど、アレクよ。それじゃ、ちょっと足りないんじゃないかね?

 剣と魔術を鍛えただけでなれるほど、ヒーローってのは甘いもんじゃない。

 私は悪の剣士も好き(二次元に限る)だったから、別にヒーローガチ勢ってわけじゃないけど、それでもカッコイイヒーローには、戦闘力以外の共通点があると思ってる。

 

「それも、大事、だけど。一番、大切、なのは、『心』」

「心?」

「そう。どんなに、辛くても、苦しくても、諦めない、折れない、止まらない。

 最後まで、頑張れる人。

 それが、本物の、チェダーマンだと、思うよ」

「おお!」

 

 ジークの目がキラキラと輝いた。

 ふっ、甥っ子にそんな目で見られるのは気分が良いぜ。

 子供の琴線に触れるカッコイイこと言えたみたいで良かった。

 

 実際、カッコイイヒーローの一番カッコイイ部分っていうのはそれだと私は思ってる。

 どんな困難に見舞われても、どんなに悲しいことがあっても、それを乗り越えて最後まで戦える人。

 

「なりたい! 本物のチェダーマンに!」

「うん。ジークなら、なれるよ。

 最初から、できなくても、いい。折れても、いいし、諦めても、いい。

 でも、最後には、必ず、立ち上がって、戦う。

 そう、なれれば、すっごい、カッコイイよ」

「うん!」

 

 ジークの笑顔が眩しい。

 私も、この可愛い甥っ子に誇れるような奴でありたい。

 今の私なんて、まだまだだ。

 七大列強第五位だの、希代の天才剣士だのと言われてるけど、私はただ人生をめっちゃ楽しく生きてきただけだ。

 痛い思いは沢山したし、紛争地帯に飛ばされた時とかは地獄を見たけど、なんだかんだで本当に辛いことを経験したことが無い。

 親しい人との死別とかね。

 一応、ガルさんが死んだのはそれに当たる気もするけど、あの人、凄い満足そうな死に顔だったし、どうも悲劇って感じがしない。

 

 数十年後に巻き起こるだろう第二次ラプラス戦役。

 いや、不意に『闘神』なんて化け物が出てきたりしたんだから、もっと身近なところにだって危機は転がってると思う。

 その危機が悲劇に変わった時、本当に辛いことに出くわした時、奮い立って頑張り続けられるかどうか。

 そこが私が本物の英雄になれるかどうかの境。

 ジークに誇れるような奴であれるかどうかの境。

 

「お姉ちゃんも、頑張る。一緒に、頑張ろう、ジーク」

「わかった!」

 

 ああもう、素直で可愛いなぁ、ホントに。

 あのバカ弟子(ララ)にも見習ってほしい。

 同じ血を分けた姉弟で、何故こうも違うのか。

 いや、ララはララで可愛いと言えば可愛いんだけどね。

 ダメな子ほど可愛いみたいな感じで。

 

 

 

 数日後。

 なんかジーク経由でアレクにその話が伝わったみたいで、アレクは目標を定めたみたいに、今まで以上に修行に身が入るようになった。

 「うぉおおおおお!」って叫びながら、やる気がバーニングしてる。

 私も負けてられないぜ!


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